不思議な魅力を醸し出す~ホリー・コール Holly Cole
聴いていく度に味が増すというのは彼女の唄だ
なんとなく聴いてきたホリー・コール。病み付きになると言うこともなかったが、ベスト盤以外最近ニュー・アルバムもないままだと、ちょっと寂しくなるというこの頃でである。
私は全アルバムは持っていないが、2~3のアルバムを今年になってなにとはなしに引っ張り出して聴いていると、やはり聴く度に味が増すというのは彼女の唄だと思う。
「HOLLY COLE」 KOCH Records KOC-4404 , 2007
多分このアルバムがベスト盤を除くと最近作だと思う。何故か彼女のネームがタイトルで、その意味は?と考えると最終盤と言うことなのか?。日本盤は「シャレード」だった。
ここには”charade”とか”i will waite for you シェルブールの雨傘”などのポピュラーな曲が登場するが、このアルバムにおいても、彼女の唄は相変わらず異空間に導き入れるようなムードに包まれている。明るくはないが、その影のある世界感がなかなか魅力的なのだ。低音が充実していて、そしてスモーキーな歌声は、高音になると艶やかに伸びる。
とにかくカナダ出身で、1963年生まれであるので、このアルバムは40歳過ぎてのもの。それだけその大人のムードは隙がない。
曲目は左のとおりである。そしてこのアルバムのバック・バンドは、Piano、Guitar、 Bass Drums という常識的布陣に加えて管楽器が幾種類か加わる。それはfluto、clarinet、 trombone、 french horn、 alto ,tenor, barritone saxophone などなど曲によって入れ替わっての参戦。
オープニングの”the house is haunted by the echo of your last goodbye”は、フル・バンドのゴージャスなバックで、ちょっと古くさい感があるところもあり、その上もともとこうしたゴ-ジャス・スタイルは私はあまり好まない。そのあたりは過去のTRIOものの方が好きである。しかし、軽快な”charade”もホリー・コールらしく独特で、その後の3曲目の”シェルブールの雨傘”から、ホリー・コール節がいよいよ始まり、中盤後半はバックの管楽器も単管によるものが多くなり、彼女のヴォーカルが生きてきて、その独特な深い流れの世界に浸れる。”you're my thrill”、”reaching for the moon”などは好きですね。
「HOLLY COLE TRIO / BLAME IT ON MY YOUTH ホリー・コール/Calling You」 EMI TOCP-54229 , 1992
さて、やっぱり私のホリー・コールのアルバムで好きなのはこれですね。このシンプルなトリオ構成がよい、彼女の歌声がじっくりと響いてきてその歌唱力のレベルの高さと同時にその味が実感できる。
もっとも世に彼女の名を轟かせた曲は”calling you”ですから、その収録アルバムとしても人気がある。この曲は映画「バクダット・カフェ」のJevetta Steeleの歌ったテーマ曲のカバーというが、日本でもかなりインパクトがあって広く聴かれた曲だ。これは彼女の3rdアルバムであるが、日本では彼女のデビュー・アルバム。
(members)
Holly Cole : voice
Aaron Davis : piano
David Piltch : string bass
左のような全10曲が収まっている。スタートの”trust in me”から2曲目の”i'm gonna laugh you right out of my life”がこのアルバムの色づけと方向性を見事に表現した出来で、これも一つのポイント。始めに語ったようにまさに異空間に導くのである。
チャプリンの”smile”も、静かな中に熱情のある曲にこのように変身させているところが見事。
”calling you”は当然だが、続く”good will”もベスト盤にも採用される出来の良い仕上がり。そして”on the street where you live 君住む街角”は、やや前衛的なバックから始まり、おやっと思わせるがここまで変身させるこのトリオの意欲が感じられ、私は結構気に入っている。
現在は多分50歳を過ぎている彼女であるが、昨年「私の時間~ベスト・オブ・ホリー・コール」(EMI TOCP71060)というベスト盤が日本でお目見えしているとはいえ、やはりこのあたりで新作の便りはないものかと、心待ちしているところである。
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