オーディオ・ファンに愛される~ジャシンタJacintha
優しくさりげない歌声が包み込む・・・・・・
先日、高音質CDに焦点を当てて現状を見た時に、やはりオリジナルのマスターテープの重要性を知るわけであるが、それが日本ビクターとしても高音質CDとしての”xrcd24”を作成に当たって、このマスターテープが手に入れられるかどうかで対応が難しくもなる場合がある。
そんな中で、シンガポールで活躍している女性ジャズ・ヴォーカリストのジャシンタJacintha(ジャシンサと呼んでいる人もいる)の場合は、やはり欧米のアーティストよりはそのオリジナル・アナログ・マスターテープは、多分想像するにCD化の為には使いやすい環境にあるのか、彼女のアルバムは殆ど高音質化(SACD 、xrcd、Gold CD、LP)に配慮されている。従ってオーディオ・マニアの世界では結構聴かれているようだ。彼女の歌に最も接しやすいアルバムをここで紹介しよう。
「BEST OF Jacihtha」 Groove Note GRV1042-3 , 2008
このアルバムはジャシンタの過去にリリースされた7枚のアルバムからの所謂ベスト盤である。そして通常のCDでなく、高音質を狙っての最も現在採用されているSACD盤だ。幸いにHYBRID盤であるために、一般のCDプレイヤーにも一応対応している。そして全15曲のうち8曲はマルチチャンネル・トラックで5.1サラウンドとして再生出来る代物。
彼女のジャズの歌声に接するには、音質も高度化されていて恰好の代物。全15曲は左のとおりである。一見して解るように、ポピュラーなジャズ・スタンダード曲で占められているので、とにかくとっつきやすい。***印がSACDマルチチャンネルもの。
いずれにしても、とにかく音質が良く、彼女のヴォーカルの位置は聴く我々のまさに眼前にあり囁くが如く唄う。そしてバックのバンドの音が冴え渡り、オーディオ的満足感は高い。そして彼女の唄は、澄んだ優しい声で低音のヴォリュームもあり全曲優しさの中に包み込む。あるところでは、彼女の唄を”elegant”、”romantic”、”sophisticated”、”stylish”と表現されているが、まさにそう言っていいだろう。
彼女のスタジオ・アルバムは・・・
Here's To Ben 1998
Autumn Leaves 1999
Lush Life 2002
Jacintha Is Her Name 2003
Girl From Bossa Nova 2004
Live Flows Like A River 2005
Jacintha Goes To Hollywoog 2007
このベスト盤に登場する曲は、世界的ベスト・ヒット集といったところで、どこからも取り付ける。その中で”The Look of Love”は、昔はセジオ・メンデスで有名で、近年はダイアナ・クラールが唄ってヒットしているが、このジャシンタ版はバックにピアノ、サックスが入って、それなりの特徴を発揮している。そして”Autumn Leaves”が抜群にいいです。編曲も良いし、バックのトランペットの切ない響きも聴きどころ。”Light My Fire”は私の好きな曲だが、フルートとギター、ボンゴがバックで支え無難に唄ってはいるが、かってここで取り上げたイリアーヌの世界までは至っていない。それは比較が酷なところか。”Danny Boy”は7分以上の曲になっていて非常に情感を込めて唄われている。
このジャシンタの世界は、優しさに包まれたいという人にはお勧めであるが、一方ジャズ特有のスウィングする流れそしてやや危険なムードなどを求めると、ちょっと虚しくなるところでもある。まあそのあたりは好みで聴いて欲しいところ。
ジャシンタは、本名 Jacintha Abisheganaden といい1957年マレーシア生まれ、父はスリランカ人でジャズギタリスト、母は中国人でピアニストという音楽家庭で育っている。シンガポール国立大学で英語の学位を取り、ハーバード大学にても学んでいる。米国での活動もあり、そしてシンガポールではヴォーカリスト、ステージ女優などで国民的スターとか。
近年は、女性ジャズ・ヴォーカルは、相変わらず白人の世界に圧倒されているが、日本人や韓国人そしてこうした東洋人の活動も注目しておきたいところ。
ジャシンタは幸い日本でのオーディオ技術によって紹介され、オーディオ・マニアには愛されているが、もう少し広く一般に注目されてもよいアーティストといえよう。
(試聴)
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