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2012年1月 4日 (水)

ロジャー・ウォーターズRoger Waters:「サ・イラ Ca Ira~希望あれ」

フランス革命とロジャー・ウォーターズの信条の接点は??

Roger2  年に、2-3回しか聴かないアルバムだが、新年を迎えてなんとなくこのアルバム「Ca Ira サ・イラ」を取り出して約2時間弱を聴き込んでいた私でした。
 考えてみれば、ロジャー・ウォーターズがクラシック・オペラに挑戦していることを知って、あの「ザ・ウォール」の最終章におけるロック・オペラを思い出しつつ、如何なるものかと興味を持ってから、一昔という10年は有に過ぎての最も難産なアルバムだった。彼のスタジオ・アルバムの「死滅遊戯」(1992年リリース)の制作最中にも動いていたものとして情報が入ったわけで、1980年代末から構想は始まって、結局我々のところに届いたのは2005年であった。

Caira 「Roger Waters / CA IRA "THERE IS HOPE" ロジャー・ウォーターズ サ・イラ~希望あれ」 SONY CLASSICAL/COLOMBIA S2H 60867 ,  2005

 ピンク・フロイド時代、そしてソロ時代と彼の作品の変遷の中で、なんと”フランス革命”に正面から音楽で対峙したものとしての注目は世界的に関心が持たれた。しかもロックとは一線を画してクラシック・オペラ作品ということも驚きであった。
 ウォーターズのこのフランス革命(王政、旧体制の崩壊、封建的諸特権の撤廃)のヨーロッパにおける重要性と、彼の生きる信条に接点があったことは想像に難くない。

Cairagil  もともと1989年のフランス革命200年祭に対しての企画であった脚本家・戯曲原作者のエティエンヌ・ロダ=ジルとその妻ナディーンから示された一生に一回と言われるほどの壮大なオペラの原案があった。ウォーターズが必要だという彼らの提案にウォーターズが乗った事によるという。それにはフェリップ・コンスタンチン(EMIのピンク・フロイドの宣伝担当で、ウォーターズとの親交が深い)が係わってのことであったらしい。
 そしてこの「サ・イラ」の当初の3者による企画は1992年9月に200年前のヴァルミーの戦いの勝利の記念としてのバスティーユ広場に於いての演奏だったという。それに合わせ精力的にウォーターズは企画に乗っての9ヶ月後には、2時間以上のデモを完成させていたのだった。しかしそれは二百年祭企画側との折り合いは暗礁に乗り上げ実現できなかった。代わりにウォーターズはまさに時を同じにして、ジェフ・ベックをフューチャリングしてのアルバム「死滅遊戯」を公開したわけだが、これは意図として行われたか、偶然かは定かでない。

 ”サ・イラ”というのはもともと自由、平等、友愛のフランス革命の時に市民に広く唄われた革命歌であり、ウォーターズはロック音楽の中から自由、解放、人間と精神のポイントに焦点を当ててきたところからの接点は確実にあった事が推測される。
 しかし、この企画の中断はウォーターズにとっては相当のショックであったようで、その後2000年まで語ることもなかった。
 しかしこの企画は再び動いたのである。それは2004年の「マルタのEU加盟祝賀式典」にて3曲13分21秒が流れたのである。これは見事なライト・ショーと共に世界に中継され、そしてウォーターズの「サラ・イラ」は世界にフル・オーケストラとオペラ歌手によるクラシック・オペラ・アルバムとして公開され、オペラ・ショーも世界を巡っての公開となったものだ。しかし残念なことに脚本を書いたエティエンヌとナディーンの両人、舞台美術の構成をしたコンスタンチンの妻は、既になくなっていてこの完成をみることが出来なかったのであった。

アルバム「サ・イラ」
condductor: rick wentworth

choirs: london voices, italia conti childrens choir, the london oratory choir
principal characters: bryn terfel, ying huang, paul groves, ismael lo

DISC 1

第1幕
  1. ギャザリング・ストーム
  2. 序曲
  3. 1765年、ウィーンの庭園
  4. 「アントワン嬢、アントワン嬢…」
  5. 王と棒と鳥
  6. 「正直な鳥、どこにでもいる普通の鳥…」
  7. 「私は国王になりたい…」
  8. 「盾という盾を…」
  9. 民衆の不平不満
  10. 無秩序状態のフランス
  11. 「笑うとはどのように生きるかを知ること…」
  12. 「近くにいる奴隷商人や地主や偏見を持った人々…」
  13. バスティーユの陥落
  14. 「真夜中に凍え…」
  15. 「土砂降りの雨が街通りを濡らす…」
第2幕
  1. 踊りと行進
  2. 「ここで発表をいたす!…」
  3. 「ワインで顔を赤くした…」
  4. 手紙
  5. 「スペインにいる親愛なる我が従兄弟のブルボンよ…」
  6. 「国家という船は航海に出ている…」
  7. 銀と砂糖とインディゴ
  8. 「変化の風が…」
  9. 法王の布告
  10. 「パリでは地下で轟音がしている…」

DISC 2

第3幕
  1. 逃亡する国王
  2. 「だがブイエ侯爵には奥の手があった…」
  3. 「帽子を脱ぐというのは…」
  4. 「一斉射撃のこだまは一向に消えない…」
  5. パリ・コミューン
  6. 「パリ・コミューン万歳…」
  7. 「国民議会は混乱している…」
  8. ルイ・カペの処刑
  9. 「さようならルイ、もうこれであなたはおしまい…」
  10. マリー・アントワネット-この世での最後の夜
  11. 「さようなら、私の優しい妹よ…」
  12. 自由
  13. 「大虐殺を生き延びた茂みの中で…」

 私はクラシック音楽も愛好者の末席を汚してはいるが、オペラに関してはほぼ白紙同然である。しかしロジャー・ウォーターズが彼の音楽人生の中でも、このような歴史あるヨーロッパにおいても音楽として重要な位置にあるオペラの作成に着手し、そしてしかも重要な歴史事実をテーマにしたことに彼の生き様が見えてくるのである。
 とにかく音楽を愛するなら、一度は聴いてみても損はない。美しい旋律と、唄、合唱、そしてメリハリのあるフル・オーケストラの演奏に何かを感ずることが出来ることは間違いない。

(参考) リリース 英国2005年9月
           日本2006年1月
     チャート・最高位(クラシックチャート)
           英国 1位
           米国 5位

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コメント

これまた久々にアルバム見ました。
随分昔に聴いてそれきりでしたが…、今聴いたらまた感動が違って面白いかもしれない…とふと感じました。
未完の大作にならなくて良かったですよね。

投稿: フレ | 2012年1月 4日 (水) 23時16分

ブログを拝見しました。欧州の写真みました。滝本先生からの推薦で関空で時間があったため、紹介にて。中国歴史研究会メンバーで今から2泊3日で蘇州に参ります。ぜひ、次回の旅行はご一緒したいものです。加藤

投稿: | 2012年1月21日 (土) 15時53分

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