« イリアーヌ・イリアス Eliane Elias(5): 2つのアルバム「Kissed by nature」、「Sings Jobin」 | トップページ | 雪の日の幻想 -3-  Kieth Jarrett「PERSONAL MOUNTAINS」 »

2012年2月 6日 (月)

イリアーヌ・イリアス Eliane Elias (その6): 「Bossa Nova Stories 私のボサ・ノヴァ」

オーケストラをバックにしてのヴォーカル・アルバムにも存在感・・・・・

 前回は、ブラジル出身のイリアーヌのヴォーカルとジャズ・ピアノ・プレイとの関わりのよくわかるアルバムを取り上げた。しかし近年は、ヴォーカル・アルバムとピアノ・プレイ・アルバムを、実は明瞭に分けているのではないかと思う。と、言うことはヴォーカリストとしての存在意義にも自信があるとみていいところだ。ここではヴォーカルを前面に出したアルバムに焦点をあててみよう。

Bossanovastories 「Eliana Elias / Bossa Nova Stories 私のボサ・ノヴァ」 BLUE NOTE  50999 2 28103 28 ,  2008

 このアルバムでは、イリアーヌのヴォーカルが中央、前面に位置して録音されている。そしてバック・バンドは彼女のピアノにマーク・ジョンソンのベースは当然として、ギター(Oscar Castro Naves,  Richardo Vogt)、ドラムス(Pauro Braga)、それにオーケストラという布陣になっている。これは明らかに彼女のヴォーカル・アルバムという形を狙ったものだ( 参考までに、この翌年には彼女はヴォーカル抜きのピアノ・トリオ・アルバムをリリースしている「Eliane Elias Play Live」 )。なぜなら、彼女がジャズ・ピアノ・プレイを前面に出したのであれば、おそらくオーケストラは必要ないと思うからである。

Bossanovastorieslist_2  収録曲は左のようにジョビンのボサ・ノヴァ曲から始まって多彩に14曲。
 アルバム「Sings JOBIN」(1998)と異なって、同じボサ・ノヴァ・アルバムといえども、彼女ヴォーカルを主体とした曲の仕上げと録音になっている。聴き比べてみると面白いところ。例えば冒頭に”The Girl From Ipanema (イパネマの娘)”が登場するが、その違いが明瞭で興味深いのである。

Eliane4_2  このアルバムを通して聴いてみると解るが、基本的には彼女のソフトであり、低音から高音にいたるまでややハスキーな包み込むような唄は変わってはいない。しかし音量においてはここでは明らかに彼女のヴォーカルの比重が多い。そしてそれは言葉においてもブラジルのポルトガル語が主であった「Sings JOBIN」に比べて英語も多くなり、ヴォーカルを聴かせようとしていることがわかる。今時の流行の女性ジャズ・ヴォーカル・アルバムのパターンなのだ。 そしてその仕上がりは、情熱的な南国でなく、彼女の世界といえるややアンニュイという雰囲気をうまく表現している。やはり唄における技量も一流であることが解かる。

 その他、”chega de saudade 想いふれて”、”desafinado”などポピュラーなボッサ曲を聴かせてくれるし、”day in day out”では、オーケストラをバックにしての説得力あるイリアーヌ節をも堪能できる。
 このアルバムのこうした彼女のピアノ・プレイを控えめにしたところは、ちょっと寂しいところでもあるが、ストリングス・オーケストラがバックを支えてヴォリューム感は増している。

Lightmyfires  このアルバムのようなヴォーカル・アルバムとしての仕上げのものは、近作アルバムは「light my fire」 (左 2011 = 当ブログ2011.8.27「ボサノヴァとジャズ・ピアノとヴォーカルと」参照)であるが、ここでもアルバム・タイトルになっている曲の”light my fire”を聴くと、もはや彼女のヴォーカルも熟成の感ありと言っていいだろう。

 

|

« イリアーヌ・イリアス Eliane Elias(5): 2つのアルバム「Kissed by nature」、「Sings Jobin」 | トップページ | 雪の日の幻想 -3-  Kieth Jarrett「PERSONAL MOUNTAINS」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

女性ヴォーカル」カテゴリの記事

イリアーヌ・イリアス」カテゴリの記事

コメント

しっかりと熟れたボーカル…という印象しか持ってなかったのでこういう切り口での聴き方は新鮮でした。さすがです。
聴く側の自分はまだそこまで成熟しきれていないのでただただまろ〜んとした時間に見を任せているだけでした(笑)。
やっぱ良いですね、この人は。

投稿: フレ | 2012年2月 7日 (火) 20時31分

 フレさん、こんばんわ。コメントどうもです。
 夏でもないのに、暖房を効かしてゆったりとボッサを気分を出して聴いている私です(笑)。
 なんとなく周期的にイリアーヌを聴きたくなるんですね。しかし「kissed by nature」は、ピアノの味もよく名盤と思います。

投稿: 風呂井戸 | 2012年2月 7日 (火) 23時37分

風呂井戸さんのブログ楽しくて結構チェックしてるんですよヘ(゚∀゚*)ノ実は読者なんです(笑)普段はあんまりコメントとかしないほうなんだけど(照)見てるだけなのもアレかなって思ってメッセしてみました(笑)風呂井戸さんに仲良くしてもらえたら嬉しいですv(^-^)v一応わたしのメアド載せておくので良かったらお暇なときにでもメールください(≡^∇^≡)ココログやってないからメールしてもらえたら嬉しいですヘ(゚∀゚*)ノまってるねえ(^-^)/

投稿: まりこ | 2012年2月 8日 (水) 20時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: イリアーヌ・イリアス Eliane Elias (その6): 「Bossa Nova Stories 私のボサ・ノヴァ」:

» Eliane Elias - Bossa Nova Stories [ロック好きの行き着く先は…]
Eliane Elias - Bossa Nova Stories (2008) 私のボサ・ノヴァ ライト・マイ・ファイアー  いつものことながら、全くボサノバ方面に進むなんて思ってもいなかったのだが、Amy Winehouseの遺作「Lio...... [続きを読む]

受信: 2012年2月 7日 (火) 20時28分

« イリアーヌ・イリアス Eliane Elias(5): 2つのアルバム「Kissed by nature」、「Sings Jobin」 | トップページ | 雪の日の幻想 -3-  Kieth Jarrett「PERSONAL MOUNTAINS」 »