イリアーヌ・イリアス Eliane Elias(5): 2つのアルバム「Kissed by nature」、「Sings Jobin」
ジャズを知ってのヴォーカルは出色
イリアーヌの何枚かのアルバムを既に取りあげているが、彼女の得意とするボサ・ノヴァというと、夏のイメージに支配されるわけであるが、それがなんと寒い冬でも暖かい部屋での聴く彼女のアルバムはやはり味がある。先頃あるところで、もともとジャズ・ピアニストである彼女の唄は上手いのか?下手なのか?という面白い話題があったので、その回答になるようなアルバムを取りあげてみる。
「eliane elias / kissed by nature」 RCA VICTOR(BMG) 09026-63914-2 , 2002
このアルバムは意外に取りあげられていないが、実は中身は濃い。特に注目点はイリアーヌのピアノがかなり重要な位置にある曲仕上げと、ヴォーカルもそのほどの良さの占める役割にある。つまりヴォーカル・アルバムというよりは、ジャズ演奏の中にヴォーカルも一つの役割を果たしているというパターン。
Eliane Elias : piano, vocal
Marc Johnson : bass
Joey Baron : drums, percussion
(+Paulo Braga(drums,percussio), Randy Grecker(trumpet, flugelhorn), Rick Margitza(sax), Paulo Andre Tavares(guitar) )
13曲のうち2曲(1,7)はremixで登場(12,13)。基本的にはジャズ・トリオ演奏で、それに曲によりトランペット、サックスなどが加わるパターン。
しかしインストゥメンタル曲に彼女のヴォーカルがサポートするが如く唄われるのだ。その絶妙さが音楽を知ってのヴォーカルであり、そしてそのややハスキーな声での歌い回しが魅力的でこれぞジャズ・ヴォーカルと言っていい。この中にはインストゥメンタルの曲(10,11)もあるが、演奏面での彼女のピアノも繊細で流れが見事。1曲目の”kissed by nature”は英語で唄われ12曲目のremixとともに出色。しかしインスト曲の”october”、”september”の演奏には完全に虜になり引き込まれてしまう。素晴らしいアルバムである。
「Eliane Elias sings JOBIN~海風とジョビンの午後」 Blue Note 09926-63912-2 , 1998
かってアントニオ・カルロス・ジョビンを演奏した「Eliane Elis Plays Jobin」(1989)というアルバムがあったが、彼女の尊敬するジョビンを10年後の1998年に再度取りあげてピアノ演奏はもちろん今度はヴォーカルも取り入れてのアルバム。
確かに、ブラジル出身であるだけにボサ・ノヴァの伝統に根ざしたスタイルは我々に訴えるところが大きい。
Eliane Elias : voice, piano
Michael Brecker : tenor sax
Oscar Castro-Neves : guitar
Marc Johnson : bass
Paulo Braga : drums
Cafe' : percussion
納められた16曲は左のとおりで、ジョビンの”イパネマの娘”、”ワン・ノート・サンバ”と有名な曲が目白押し。
とにかく爽やかでソフトでありながら、何となく倦怠感をみなぎらせるボサ・ノヴァ特有の世界はこのアルバムでは特に 顕著である。
曲の録音と仕上げにおいても、ジョビンの曲を大切にして、それぞれのミュージシャンの音を丁寧に配置して、彼女の単なるヴォーカルものという仕上げでないところがいい。従って彼女の唄は常に中央ではなく”flando de amor”では左からギターの調べ、彼女の唄はやや右寄りから囁く。”how insensitive”や”forgetting you”を聴くと、哀愁すら感じられ美しいピアノに乗っての惹きつける魅力のヴォーカルとはこれだと言いたくなる。
そして全編を通して、力みがなく、しつこさもなく、むしろさらっと流すヴォーカルはベテランの味そのもの。
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