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2012年2月29日 (水)

ピンク・フロイドPink Floydのボックス・セット 「IMMERSION BOX SET=THE WALL」登場

ピンク・フロイドのIMMERSIONボックス・セットの完結「ザ・ウォール」

Thewallboxrg

Thewallbox 「PINK FLOYD : IMMERSION BOX / THE WALL」 EMI Records  ,  2012

 ピンク・フロイドのIMMERSION BOX SET の第3弾だ。(CD6枚 DVD1枚 の 計7枚組)

 内容は、オリジナル・アルバム「THE WALL」の2011リマスター版CD2枚。
  ライブ盤の「Is There Anybody Out There? The Wall Live 1980-81」の2011リマスター版CD2枚。
 この4枚は取り敢えず聴き比べてもらうのが一番良い。
 
Thewallbox5  「WORK IN PROGRESS PART1&2」
 そして注目といえば、このCD2枚。
 初お目見えとして、ロジャー・ウォーターズの多くのオリジナル・デモを筆頭にして、その他バンドものとデヴィッド・ギルモアのデモが2枚のCDに収められいる。しかしこれはかなりマニアックで、本当にフロイドのすべてを知りたい者にとっての音源だ。
 ところで、このデモものは、曲が未完であるだけにピンク・フロイドに直接接しているような実感がかなり湧いてくる。例えばあの”comfortably numb”は映画「THE WALL」にみるように、”The Doctor”というタイトルで作られていた様が見えてくる。
 そしてこの内容から、ロジャー・ウォーターズが当時如何に哀しく、そして又如何に絶叫したかが、デモの一曲一曲にみえて来る。その点はアルバム以上に感じ取れる。
 ”is there anybody out there?”は非常に美しい。又”outside the wall”の曲の重要性も知ることが出来るし”it's never too late”という曲への流れが印象深い。この企画は取り敢えず私にとっては思った以上に貴重だ。

Thewallbox2  映像ものとしてはDVDが一枚あるが、その他とにかくこれまでのボックス「狂気」、「炎」と同じだが、左のように"おまけ"が多い(以下のようなところ)。
<特典・その他豪華特典>
1. ストーム・トーガソンがデザインを手がけた27センチ四方の44ページ・ブックレット特製写真集
2. ストーム・トーガソンによる27センチ四方の特製アート・プリント
3. ストーム・トーガソン特製コメントつきコレクターズ・カード5枚
4. 『ザ・ウォール』ツアー・チケットのレプリカ
5. 『ザ・ウォール』バックステージ・パスのレプリカ
6. 特製スカーフ
7. マーク・フィッシャーが描いたステージ風景のカード
8. レンガをイメージした白いビー玉3個
9. ストーム・トーガソンの初期デザイン・スケッチをフィーチャーした特製コースター9枚
10. 4~8ページのクレジット・ブックレット

Thewallbox7 左が7枚目の"AUDIO VISUAL DVD"だ。
内容は・・・
   1. the happiest days of our lives (earls court 1980)
   2. another bricke in the wall, Part2
   3. behind the wall
   4. gerald scarfe interview

1.は、1980年ライブ・ステージ映像。こうゆうのがあるんですから、この”THE WALL”トータルのステージ映像ものをリリースして欲しいと思うところである。

3.”behind the wall” は50分以上のフロイド・メンバーの回顧と、ライブ・ステージ映像がかなり登場する。こうしてみると従来から言われているところのライブ・ステージ映像はプロ・ショットで完璧に捉えられていることが、明らかに推測できるのだ。今となると、ウォーターズとギルモアが一つのマイクに口を寄せて歌うところは如何にも懐かしい。
 そして一方、このフロイド・メンバーが、この時に如何にお互いの繋がりに破綻が来していたかが、あからさまに語られてもいる。「狂気」で頂点に立ってしまった事から生まれたロジャー・ウォーターズのロック・ステージの空しさと懐疑を窺い知ることが出来るし、そしてそれがこの「THE WALL」を産むことになったが、その過程も語られる。

 これから30年以上経って、現在ロジャー・ウォーターズは最後のビック・ステージと銘打って、3年に渡ってこのロック・オペラ「ザ・ウォール・ライブ」を世界を股にかけて行っている。現代に於いても「THE WALL」の描く世界は全く色あせていないのだ。

 

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2012年2月28日 (火)

スノーウィ・ホワイトの”Snowy White & THE WHITE FLAMES”ユニットの5作目「 The Way It Is ....」

スノーウィ・ホワイトのトリオ・ユニット考察~その4~

Thewayitis「Snowy White & THE WHITE FLAMES / The Way It Ts ....」  WFVp001CD  ,  2004

 2004年のスノーウィ・ホワイトのトリオ・ユニットの5作目(インディーズ盤であるが、録音はなかなか優秀)。
 このアルバムは何か事情があったのか、2つのパートに別れると言っていい。一つは、いわゆるオリジナル・メンバーに2作目(「NO FAITH REQUIRED」)からのサポート・メンバーのJuan"Rabitt"BundrickのHammondが加わっての2001年の録音もの(前作時の収録ものか?)と、もう一つは2003年になってのドラムス(Richard Bailey)が変わり、更に常にスノーウィ・ホワイト盤支えているKuma Harada(bass)などが加わっての多彩なメンバーによるものが9曲という全12曲構成。

   1. no stranger to the blues
   2. bird of paradise
   3. black magic woman
   4. what i'm searching for
   5. angel inside you (part1)
   6.     〃        (part2)
   7. falling
   8. the way it is
   9. a piece of your love
  10. this time of my life
  11. easy
  12. sweet bluesmaker

Snowywhite4  これでもスノーウィ・ホワイトのギター・プレイは、相変わらず例のレスポールの他にアコースティック・ギターも登場させて彼なりの多彩なパターンを披露してくれる。
 スタート”no stranger to the blues”はアコースティック・ギターでのブルースでホワイトの優しいヴォーカルから始まるが、中盤からガラッと変わって女性ヴォーカルもバックに加わってエレキによるハード・ロックに変わる。”birds of paradise”はハモンドオルガンの静かな流れで、ホワイトのヴォーカル、そして彼のギターが泣く。
 ご愛敬にサンタナで有名なpeter greenの”black magic woman”も演ってみせる。サンタナもブルース・ギターが得意だが、両者の違いもなかなか面白い。
 ”what i'm searching for”はkuma Haradaのボンゴも加わってラテン・タッチの軽快な曲。
 そしてホワイト自身の曲”angel inside you(part1&2)”がいい。パーカッションをバックにリズムを刻み、ハモンド、サックスの登場もあり、それにホワイトのギターが熱く歌い上げる。ジャズィでもあり、曲の流れの緩急のバランスもよく更にピアノの味付けもあって私の好きな曲だ。
 ”falling”は、珍しいホワイトの歌らしい唄(笑)が聴ける。
 このアルバムも殆どがホワイト自身の作曲した曲だが、後半の曲にはMax Middletonのピアノの入る曲が多く、それなりに味付けが良く楽しめる。締めの”sweet bluesmaker”は、如何にもホワイトらしい泣きのギターとピアノとの交錯が気持ちいい。
 
 昨年(2011年)に、元祖の”THE WHITE FLAMES”のトリオも復活しているし、現在はなんと3年目になるロング・ランのロジャー・ウォーターズの「ザ・ウォール・ツアー」にトリブル・ギターの重要な位置にて参加しており、これからのスノーウィ・ホワイトはまだまだ健在で期待度は高い。

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2012年2月25日 (土)

スノーウィ・ホワイトの トリオ・ユニット~SNOWY WHITE and THE WHITE FLAMES

  1996年からのユニット”SNOWY WHITE & THE WHITE FLAMES” は、ギターを中心に多彩なロックを展開(7アルバムをリリース)

Snowy_white_2010  ブルース・ギタリストと言って良いだろうスノーウィ・ホワイト(1948年生まれ)は、何度かここで取りあげている。それでも、まぁ私のお気に入りですから、まだまだ過去の名盤を書き続けたい。

 その彼のユニットの一つ”Snowy White & THE WHITE FLAMES” は、ブルースに限らず、トリオ編成で普遍的ロックにアプローチしている。(平行して彼のブルース・プロジェクト・ユニットは、別メンバーの”the Snowy White Blues Project”の名の4人編成チームがある)
 もともと彼のソロ・アルバムのアルバム名が「White Flames」(1983年)であったことから、10年以上後にはなるが、1996年(ホワイト48歳)に結成したユニットにこの名前を付けたと思われる。

 (members)
   Snowy White : guitars , vocals
   Walter Latupeirissa : bass,  acoustic guitar
   Jaun van Emmerloot : drums, percussion

 この彼が迎えたリズムセクションのメンバー2人は、オランダ出身のなかなかの実力派だ。そして2007年までライブものを入れると6枚のアルバムをリリースする。そして昨年(2011)久々にニュー・アルバムが登場した( 「REALISTIC」 SWWF2011http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/snowy-white-rea.html 参照)。ここでは、このユニット結成時のアルバムを振り返ってみる。

Nofaithrequired 「Snowy White and THE WHITE FLAMES / NO FAITH REQUIRED」  VP398CD  ,  1996

 このアルバムは、このユニットの1stアルバムだ。殆どがホワイトの作曲。そしてトリオ以外に Juan "Rabitt" Bundwick のオルガン、Kuma Harada のサポートもありこのアルバムを充実させている。
 彼が、このアルバムではブルース・ギター、泣きギターを思うがままに、あの一種独特のヴォーカルとともに披露している。面白いことにWalter Latupeirissa はベース以外に、アコースティック・ギターで色づけしているところが、なかなか味がある。

Nofaithrequiredlist 左が、収録曲リスト。冒頭のアルバム・タイトル名の曲”no faith required”は、軽快なパーカッションでホワイトの語り調のヴォーカルでスタートするが、中盤にはエレクトリック・ギター・プレイが炸裂。”a miracle i need”の多彩な彼のギター・テクニックには圧倒される。しかしホワイトのヴォーカルはメロディーを唄い上げるというものではないが、そのブルースにみる哀調を巧みに取り入れていて不思議に納得させられる。
 ”midnight blues”は、バックには静かにオルガンの流れがあり、美しい哀調に満ちた彼のギターの調べを聴かせてくれて、まさに心が安まる。これを聴くと私は完全に虜になってしまうのだ。
 ”slave labour”は、一転してリズム隊が頑張って楽しい。ここに登場するはlatupeirissa のアコギも面白く、このトリオの意気が感じられる曲。
 このアルバムは結構ハード・ロックも加味して非常に楽しめる。そしてセールス的にも成功し、それによりこのユニットを長続きさせることになる。

Littlewing 「Snowy White and THE WHITE FLAMES / Little Wing」 Hypertension-Music  HYCD298 175  ,  1998

 このスノーウィ・ホワイトのユニットの1998年リリースの2ndアルバム。ここでも11曲中8曲はホワイトの作曲。そしてLatupeirissa が一曲作曲している。

Littlewinglist  スタート曲”discoveri”は、何か異国の雰囲気を醸し出して次第にハードになってゆくパターン。このアルバムは結構ハード・ロックを奏(や)って見せてくれる。
 ホワイトのピッキングを効かせた演奏や泣きのギターとふんだんに暴れてみせる。バックのリズム隊も結構パワーで叩き込んでくる。ブルースだけのユニットでないことがよく解る。
 アルバム・タイトル曲”little wing”は、ゆったりとリズムを刻み、ホワイトには珍しいメロディーを歌い上げるヴォーカルといったところ。

Littlewingmembers_3  ハードな曲は多いが、やはり締めくくりとなると、”that ain't right”では、ギターもヴォーカルも、ホワイト節を聴かせ。最後の”melting”はインスト曲でストリングスが流れ、ホワイトの泣きのギターが心打つ。

 このスノーウィ・ホワイトのユニットは、ギター中心のロック・グループではあるが、ただそれだけに終わらないで、幅広いロックのパターンを網羅して楽しませてくれるところが味噌である。

 

 

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2012年2月22日 (水)

サンタナ SANTANA 健在~「GREATEST HITS-SANTANA ~Live at Montreux 2011」

久々のサンタナ・バンドの炸裂~新婚のサンタナ、まさにお元気~
最新2011年ライブ、Blu-Rayで登場!!

M2011bl 「GREATEST HITS SANTANA~Live at Montreux 2011」 Blu-ray  Eagle eye media EEB334099 ,  2012

 カルロス・サンタナ Carlos Santana は、2010年7月に”Universal Tone Tour”の真っ最中、イリノイ州(Mewest Bank Amphitheatre (Tinley Park) )で、ドラマーのシンディ・ブラックマンCindy Blackmanにステージ上でプロポーズ。見事12月にはハワイのマウイ島で結婚式を挙げた。

 そんな老骨に鞭打っての頑張りが評判のサンタナの2011年モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのステージ映像が、ブルー・レイ、DTSサウンドで登場した。
 近年のサンタナは、時代の話題のアーティストを引っ張り出してのギター・プレイや、ブルース・ジャズ・メンバーとの交流などを多くこなしていたが、今回はサンタナ・バンドのパワーの炸裂。過去の彼のヒットをがんがん演奏。これはなかなかご機嫌だ。

M2011bl2   そしてなんとサンタナの妻となったドラマーのシンディ・ブラックマン・サンタナが7曲目の”corazon espinado”に登場して、ドラムを叩き、その後にはソロ・プレイも披露、なかなかの圧巻。
  Raul Rekow 、Karl Perazzoなどのコンガ、パーカッションなどのリズム隊も健在でラテン色をアッピール。ドラムスはDennis Chambers が担当、ソロ・プレイも見せる。キーボードは David K. Mathews、ベースは Benny Rietveld という布陣で、Andy Vargas とTony Lindsayのヴォーカルは変わらず頑張っている。更にバンドには、トランペット、トロンボーンも加わっていて11人編成。

M2011bl3  更には、12曲目”make somebody happy”には、いつの間にか髭をはやしたデレク・トラックス、そしてスーザン・テデスキがゲスト共演。サンタナ・バンドに色を添えてなかなか華々しいステージとなる。
 
 とにかく下の曲目を見てのとおりで、久々に”black magic woman / gypsy queen”も登場。サンタナ・バンドの過去のヒット曲集で、ハード・ロック、ラテン・ロックやジャズィなアプローチの曲のオンパレードで久々の快感に浸れる。
 しかもAC/DCの”back in black”、ディープ・パープルの”smoke on the water”なども登場して楽しませてくれる。
 なんといってもこのブルー・レイ・アルバムは、映像はもちろんサウンドも良くサンタナの映像ものとしては嬉しいもの。しかしほんとにカルロス・サンタナは歳の割には(1947年7月20日生まれ63歳)諸々衰えていませんね。
 
(収録曲)

1. Spark of the Divine / Sun Ra
2. Back in Black
3. Singing Wings, Crying Beasts / Black Magic Woman/Gypsy Queen
4. Oye Como Va
5. Maria Maria
6. Foo Foo
7. Corazn Espinado
8. Jingo
9. Europa
10. Batuka / No One To Depend On
11. Duende / Open Invitation
12. Make Somebody Happy / Right On
13. Smoke On the Water
14. Evil Ways / A Love Supreme
15. Sunshine of Your Love
16. Smooth / Dame Tu Amor
17. Woodstock Chant
18. Soul Sacrifice
19. Samba Pa Ti
20. Bridegroom / Into the Night
21. Love, Peace & Happiness / Freedom

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2012年2月21日 (火)

雪の日の幻想 -6-  Keith Jarrett 「BELONGING」

雪の日の幻想 H  ( NIKON D700 + Remodeled Lens )

Dsc_2562mono

<今日の一枚 jazz>

Belonging 「jan garbarek  keith jarrett  palle danielsson  jon christensen  /  BELONGING」 ECM Records  ECM 1050 78118-21050-2 ,  1974

 キースのヨーロピアン・カルテット作品。ヤン・ガルバレクのサックスとキースのピアノとの絡みというか、協調というか、そのあたりが聴きどころ。クリステンセンのドラムスは妙に重くなくこのカルテットとしての役どころを考えてのことか。
 私としては2.4.6の3曲は、どちらかというとスローなテンポの作品で好みです。特に”solstice”は、ガルバレクのソプラノ・サックスが頑張って歌い上げるが、キースのピアノが美しい。そのピアノをベース(ダニエルソン)は絶妙なサポートを演ずる。

   1. spiral dance
   2. blossom
   3. 'long as you know you're living yours
   4. belonging
   5. the windup
   6. solstice

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2012年2月18日 (土)

イタリアン・ロックの軌跡(3):ルチオ・バッティスティ Lucio Battisti 「AMORE E NON AMORE 8月7日午後」

彼のを語らないとイタリアン・プログレッシブ・ロック話は始まらない・・・・

 イタリアものを語るには、やっぱりこのルチオ(ルーチョ)・バッティスティを見ておかないと、どうも話がうまく回転しない。そんなとこから彼に焦点を当てておく。

Luciobamoreenonamore 「Lucio Battisti / AMORE E NON AMORE  8月7日午後」 KING RECORDS KICP 2105 ,  1991 (1971年作品)

 
これはシンガーであり、シンガーソングライターであり、プロデューサーでもあるルチオ・バッティスティ(ルーチョとかルーチオとか言うが、日本で当初はルチオと呼んでいた)の3rdアルバムであるが、何と言ってもイタリアのロックの道を作り上げた作品として注目度は現在においても高いもの。
 それはイタリアン・プログレの代表ともいっていいPFMやフォルムラ・トレを産み、そしてイル・ヴォーロへの流れへと発展させた起爆剤の作品であるからだ。

 イタリアのポピュラー音楽界のドンともゴットファーザーとも言われる彼が、カンタウトーレとしてのスーパー・スターであるが上に行った一つの実験でもあった。
 彼の歌もの曲と、ここに集まったのちにPFMを結成するフランコ・ムッシーダ以下の4人、そしてフォルムラ・トレを結成するアルベルト・ラディウス、更にソリスト、アレンジャーとして有名になるダリオ・バルダンの6人のセッションによるインスト曲を加えてのアルバムを作ったのだ。

Luciobamoreenonamorelist_2 曲は左のとおりの8曲であるが、1.3.5.7の4曲が彼の唄もの。そして2.4.6.8が、セッションでの奏でるインスト・プログレ曲という「対」になった構成。
 このアルバムは、日本タイトルは4曲目のタイトルからとっての「8月7日午後」というものだが、もともとのタイトルを訳すと「愛と愛でないもの」となり、内容が対をなしている形をとっていることを表していると思われる。
 その”8月7日午後”というインスト曲も”8月7日午後、自動車の墓場の焼けるような鉄板、ぼくだけ、静寂しかしながら僕は異常に生きている”という長いタイトル曲で、ギターの音を中心としての静かに語られ次第にキー・ボードが加わる不思議な曲。と、思えば対照的に5曲目の”私を求めるなら”は、唄もののロックン・ロールだ。
 2曲目も”プラタナスの下に座ってマーガレットを口に洗剤の白い泡で汚染された黒い川をながめながら”というタイトルで、イタリア・ムードのあるジャズっぽいインスト・プログレ曲。3曲目は、この後のイタリア・ヴォーカルものの形を見せた佳曲。
 6曲目の”フィオーリ”は、これぞこの後のイタリアン・プログレの開花である曲の方向を示唆したキーボードの哀愁あるなかなか心に染みこんでくる名曲。むしろクエラ・ベッキア・ロカンダを思い起こす。

Batisti5  このバッティスティは、1943年生まれで1998年に、55歳で亡くなっている。そもそもはミラノで作曲家としての活動であったようだが、作詞家のモゴールとの連携で、シングル曲など発表を経て1969年にデビュー・アルバム「LUCIO BATTTISTI」を発表。
 この記念すべきアルバム「8月7日午後」は3枚目のもの。彼はこれ以降、イタリアン・プログレ・バンドを支えるべくヌメロ・ウノ・レーベルを起こしている。そして彼はイタリアン・バンドを世界に売り出したのだ。更に彼自身も多くのアルバムを作成、全19アルバムが確認される。

Luciobumanamenteuomo 私の所持しているアルバムで、プログレっぽいものは、まず左は彼の5作目のアルバム。

「Lucio Battisti / umanamente uomo : il sogno 人間の夢」 BMG Ariora PD 74009 ,  1989  (1972年作品)

 これは彼のやりたいことを自由気ままにやったという感じだ。1曲目からアコギと彼のヴォーカルが印象的な優しい魅力的な曲。面白いのは、フォルムラ・トレの代表的な曲”sognando e risognando 夢のまた夢”が、ギターをバックにしてのバッティステイの唄で7曲目に聴けることだ。勿論彼の作曲曲だから彼のアルバムに登場してもおかしくないことだ。しかし私の痺れたフォルムラ・トレの演奏の原曲を聴く思いである。彼のアルバムは全てプログレ系ではないが、このアルバムはどちらかと言うとプログレを含めての広いロック分野を網羅している。

Luciobaminalatna 「Lucio Battisti / ANINA LATINA (二大世界)」 BMG Ariora PD 74012 , 1989  (1974年作品)

 これは、私流に解釈すると彼の最も傑作に入るかも知れない。ラディウスやラヴェッツィも参加しているせいか、まさにイル・ヴォーロを彷彿とさせる。原題は”ラテンの魂”と言っていいのだろう。情熱の感ずる中に、多彩な音が入り交じってそして一つの統一感ある昇華した世界に引っ張り込むところは、只者の作品ではない。
 音の広がりと浄らかさ、そして感動呼ぶ愛燐の情感がたっぷりで彼のプログレっぽい最右翼の作品。彼の8作目のアルバムだ。

 イタリアン・プログレシブ・ロックを語るときに、必ず一つのキーとなっていたルチオ・バッティスティに焦点を当ててみた。

 

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2012年2月16日 (木)

イタリアン・ロックの軌跡(2) : イル・ヴォーロ IL VOLO 「IL VOLO」 & 「Essere O Non Essere? 」

スーパー・グループの奏でるスリリングな哀愁と宇宙空間

 私が過去に感動したイタリアン・プログレッシブ・ロックを対象として、ここで再考察しているわけであるが、何から取りあげて良いか若干困る。それはあまりにも多彩であるが為に・・・・。
 そこで特別な理由無く、最近になっても時々聴いているものから少しづつ書いてみようかと・・・そんな流れである。(まあこれを機会に、埃がのりつつある棚をまさぐってみようとも思ってますが)

Ilvolo 「IL VILO / "IL VOLO" & "Essere O Non Essere?"」 KING RECORD  K32Y 2051 ,  1981 (1974,1975作品)

 これもバンド・メンバーを見ただけで興奮する。つまりスーパー・グループそのものだ。そしてこのアルバムは彼らの残した1974年と1975年の2枚のアルバムをカップリングしたもの。(左のように1stのジャケをこのカップリング盤は使っている)
 彼らのバンド名の”volo”は、英語は”flight”つまり”飛行”という意味だと思うが、この時代大きな飛躍を試み、多分世界進出を試みたのかも知れない。
 基本的には、私のお気に入りでもあったイタリアン・プログレ・グループの”フォルムラ・トレFormura Tre”の発展系であるも、ツイン・ギター、ツイン・キーボード、ベース、ドラムスの6人編成。
 PFMの世界進出を成功させたイタリアのレーベルの「ヌメロ・ウーノ」の一つの企画であったろうと思うが、話題のグループ結成でもあった。

Ilvolo2b (左は2ndのジャケ)

   vince tempera : p, k
   alberto radius : g, vo
   mario lavvezzi : g, mandolin, vo
   gabriele lorenzi : org, synth
   gianni dall'agio : ds, perc, vo
   bob callero : b

 メンバーはこの6人、その内ギターのアルベルト・ラディウスとオルガンを中心としたガブリエーレ・ロレンツィが、イタリアン・ロックを代表するといってもよいバンドの”フォルムラ・トレ”解散後にこのバンドに集結。又イタリア音楽界を代表するキーボード奏者でありプロデュサーのヴィンチェ・テンペラ(前回紹介したジガンティの「TERRA IN BOCCA」の作曲とピアノ)。ロレンツィがいたことのある”カマレオンティ”にやはりいた名ギタリストのマリオ・ラヴェッツィ。ジャンニ・ダラリオのドラマー、ボブ・カレロのベーシストも一流のセッションマン。
 こうした一流のミュージシャンの集結したスーパー・グループによる作品がこのアルバムだ。

Ilvololist2   曲は左のとおりの14曲で、1~8が1st、9~14が2ndからである。作曲はそれぞれが提供している。
 1stは、唄ものと演奏のバランスの取れた曲群であるが、2ndは、殆どインスト曲といっていい。
 
 スタートは、キーボートの静かなうねりと曲名どおりの蚊の鳴くが如きギターで始まるが、一転して一気にスリリングそのもののリズムと全楽器で展開するアンサンブルは身震いする。ヴォーカルはあまり前面に出ないパターンでの曲構成を推し進める。
 メンバーそれぞれの担当するパートが繊細きわまりなく、又そのリズムの交叉が一級の芸術品。
 ギターも3の”情念”では見事に泣いて見せ、それにアコースティック・ギターが絡んでヴォーカルも美しくまさにこれがイタリア・プログレと言ってしまう。
 異質の技術を持った強者が結集して作り上げた完成度の高い曲群には無駄が全くなく、間のとり方や音の強弱は繊細にしてダイナミック、聴くものにとっては鳥肌の立つ思いである。

 この作品群が、当時世界的に何故羽ばたくことがなかったのか、不思議と言えば不思議である。この1970年代中期に於いて、こうしたロックの技術的高度化は、むしろ一般の若者にとってはついて行けないところまで行ってしまったことによるのかも知れない。つまり身近なところから遠ざかってしまったのが大きな要因かとも推測出来る。考えてみれば巷にはあのパンク・ロックの流れが動き始めた時でもある。確かにイギリスでは1976年にはセックス・ピストルズのデビューもある。
 
 おそらく、流れる時代の中で、その時代を勝ち取ることが出来なかったのがこのイル・ヴォーロなのかも知れない。しかしイタリア・プログレを語るにおいては、このイル・ヴォーロは忘れるわけにはゆかないのだ。

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2012年2月14日 (火)

イタリアン・ロックの軌跡(1): ジガンティ i GiGanti 「犯罪の唄 TERRA IN BOCCA」

これはまさに衝撃であったジガンティ!!

 イタリアン・プログレッシブ・ロックには、取り付かれた人も多分多いと思う。70年代ロックは英国主流であった中で、イタリアを知ったものにとっては衝撃にも似た感動があったものだ。私もそんな人間の一人であるが、これは1980年代のCDによる再発ブームが大きな役割を果たしていた。
 当時は幻のアルバムといわれるものも、CD化の動きによって手に入ることができるようになったものが幾つかとあり、このジガンティ i GiGanti もCDで手にしてその感動も大きかったものだ。
 そんな昔の時代を思い出しながら、最近なんとなく回顧といった状態でイタリアン・プログレ・アルバムを聴いている。そこで手持ちのコレクションを、少しづつチェックしていってみたい。

Gigantiterrainbocca

「ジガンティ i GiGanti / 犯罪の唄 TERRA IN BOCCA poesia di un delitto」 (1971年作品) ①Vinyl Magic VM013 , ② KING KICP2103  , ③ BELLE ANIQUE   BELLE091627

 このアルバムを聴くと何故か最低1週間は頭から離れないという最強の代物。そして我々の手に入ったものは、3種類ある。最初に私が聴いて驚いたのはLPの71年ものでなく、1980年代になってのイタリアの Vinyl MAGIC のものだった(上)。つまり地方に生息している私には、そう簡単には初期LPは手に入らず上京して手に入れたものがそのCDだった。後にキングが日本盤としてリリース。そして又ベル・アンティークが高音質SHM-CDでリリースするのである。ところが私が当初感激したVinyl MAGIC盤は、後にオリジナルとは別テイク(デモ・テープ)であることが解るのだが、その別テイクにても衝撃的感動を得た。そしてキング盤、ベル・アンティーク盤がオリジナル・マスター音源でリリースしている。

Gigantimembers  このジガンティが何故プログレ・アルバムが作ることになったかは不明だが、全曲作曲している後のIL VOLOのヴィンチェ・テンペラ(Piano)をゲストに迎えての壮大な絵巻を展開したのはまさに衝撃と言っていい。メンバーは下記のとおりで、このアルバムの後には、イタリア・プログレ界の兵(つわもの)として日本にも伝わってきたギターにマルセロ・デラカサ(LATTE E MIELE)、そしてAREAのアレス・タヴォラッツィ(Guitar)、エラーデ・バンディーニ(Drums)名前もある。いやはや豪勢そのもの。

members

Drums: Ellade Bandini, Enrico Maria Papes
Bass: Ares Tavolazzi, Sergio Di Martino
Piano & Organ: Francesco Marsella, Vince Tempera
Guitars: Ares Tavolazzi, Sergio Di Martino, Giacomo Di Martino, Marcello Dellacasa
Mellotron: Francesco Marsella & His Ten Fingers Ten

 曲目は下記のとおりであるが、アルバム一枚の組曲だ。

1. 最初ゆっくりと(Largo Iniziale)
2. 非常のゆっくりと (Molto Largo )
3. 前進 ( Avanti )
4. さらに前進~つきのない時~プリン・プリン(Avanti Tutto-Bruto Momento-Plim Plim)
5. 発作的プリン・プリン~優雅に、歩く速さで(Alim Alim Al Parossismo-Delicato Andante)
6. 暴動~突然の結末 ( Rumori-Fine Incombente )
7. 遠い結末~無へのアレグロ (Fine Incombente-Allegro Per Niente)
8. デブのメス猫が行く~右往左往 (Tanto Va La Gatta Al Largo-Su E Giu)
9. 極端にゆっくりと~全てはこころの内に(Larghissimo-Dentro Tutto)
10. 音の始まり~悲しい水切り遊び(Alba di Note-Rimbalzello)
11. 楽しい水切り遊び ~脅迫的に、しかしはなはだしくなく~結末 (Rimbalzello Compiacente-Ossessivo,ma non troppo-fine)

2terrainbocca_2 (左がVinyl MAGIC盤、右がBELLE ANTIQUE盤)
 このアルバムは語るよりは聴いてみることに尽きるが、イタリアン・ブログレのエッセンスを全て網羅していると言って大げさではない。私自身はイタリアン・プログレの入り口のバンドはPFMであった訳であるが、このようなアルバムが存在していたことを、後に知って驚いたのだった。
 BELLE ANTIQUE盤には歌詞とその訳まであるが、当初聴いたVinyl MAGIC盤のときには内容がよく解らなかった。イタリア語辞書を買ってそのアルバムのタイトルから想像していくという程度。後に解ったことで、このアルバムはイタリアの暗黒の権利を我がものにしていたマフィアを題材にしている。唄い描かれたのは、一人で対抗した純朴な農民である。この主人公の16歳の息子は惨殺されてしまうが、その姿がこのアルバム・ジャケに見れるのだ。

 美しくも激しくそして印象的な哀愁のある曲が展開する。ギター、ピアノの美しさとメロトロン、オルガン、シンセサイザーの圧倒的な響き、イタリア独特のヴォーカルが押し寄せる波の如く迫ってくる。しかしその内容には怒りと悲しみの物語が展開しているのだ。

 確かにBELLE ANTIQUE盤は、オープニングから重厚で、技術陣のミックス作業も緻密であり、フェイド・アウトなどの手法もあって完成されたアルバムの形を呈している。しかしVinyl MAGIC盤も荒削りさがむしろ面白く、サウンドも良好で、これはこれ楽しめることも事実。

 ここにイタリア・プログレの最強盤を紹介した。

 

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2012年2月13日 (月)

雪の日の幻想 -5-  Keith Jarrett 「EYES OF THE HEART」

雪の日の幻想 G  ( Olympus E-P3 + M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm )

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<今日の一枚 jazz>

Eyesoftheheart_2 「KEITH JARRETT / EYES OF THE HEART」 ECM Records ECM-1150  78118-21150-2 ,  1979

 1976年5月オーストリア、ブレゲンツのコルンマクルト劇場での”アメリカン・カルテット”の最後のアルバム(ライブ)。
 ライブものにも係わらず非常に繊細な流れがヘイデンとキースの掛け合いに感ずる。”eyes of the heart p.1&p.2”には彼らでなければないような作品だとも言える。
 カルテットによるインプロヴィゼイションの難しさも浮き彫りになったアルバムとも言われているが・・・・。
 ”encore(a-b-c)”は荒々しさを奏でつつ、最後にキースの静かなソロで纏め上げてこのカルテットに終止符を打ったのだ。

   keith jarrett : piano, soprano sax, osi drum, tambourine
   dewey redman : tenor sax, tambourine, maracas
   charlie haden : bass
   paul motian : drums, percussion

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2012年2月12日 (日)

雪の日の幻想 -4-  Keith Jarrett 「Dark Intervals」

雪の日の幻想 F  ( Olympus E-P3 + M.Zuiko Digital 40-150mm )

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<今日の一枚  jazz

Darkintervals 「Keith Jarrett / Dark Intervals」 ECM Records  ECM 1379  78118-21379-2  ,  1988   (1987録音)

 1987年東京サントリー・ホールでのソロ・ライブ。オープニングの曲”opening”は暗闇の世界を感じさせる重々しさ。しかし次第に小品を繋げて展望の見える世界に導く。
 日本に於ける録音も良くやはり貴重な作品である。彼のソロ・アルバムでも私にとっては最右翼にある。
  (いつも思うのだが、曲間の拍手は消して欲しい。全曲をトータルに聴いて初めて彼の世界を知り得るので・・・・・・)
  1. opening
  2. hymn
  3. americana
  4. entrance
  5. parallels
  6. fire dance
  7. ritual prayer
  8. recitative

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2012年2月10日 (金)

雪の日の幻想 -3-  Kieth Jarrett「PERSONAL MOUNTAINS」

雪の日の幻想 E  by Olympus E-P3 + M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm

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<今日の一枚 jazz>

Personalmaountains 「Keith Jarrett / PERSONAL MOUNTAINS」 ECM Records  ECM1382 78118-21382-2 , 1989 (1979録音)

 1979年の日本ライブ(中野サンプラザ)。ヨーロピアン・カルテットの最後のアルバム。こうした美しさはそう聴けるものではない。心に訴えてくるというのはこうゆうアルバムを言うと言っても良い。これがなんと録音してから10年以上没になっていたというから不思議なところ。私の愛聴盤。

   keith jarrett : piano, percussion
   jan garbarek : tenor & soprano saxophones
   palle danielsson : bass
   jon christensen : drums

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2012年2月 6日 (月)

イリアーヌ・イリアス Eliane Elias (その6): 「Bossa Nova Stories 私のボサ・ノヴァ」

オーケストラをバックにしてのヴォーカル・アルバムにも存在感・・・・・

 前回は、ブラジル出身のイリアーヌのヴォーカルとジャズ・ピアノ・プレイとの関わりのよくわかるアルバムを取り上げた。しかし近年は、ヴォーカル・アルバムとピアノ・プレイ・アルバムを、実は明瞭に分けているのではないかと思う。と、言うことはヴォーカリストとしての存在意義にも自信があるとみていいところだ。ここではヴォーカルを前面に出したアルバムに焦点をあててみよう。

Bossanovastories 「Eliana Elias / Bossa Nova Stories 私のボサ・ノヴァ」 BLUE NOTE  50999 2 28103 28 ,  2008

 このアルバムでは、イリアーヌのヴォーカルが中央、前面に位置して録音されている。そしてバック・バンドは彼女のピアノにマーク・ジョンソンのベースは当然として、ギター(Oscar Castro Naves,  Richardo Vogt)、ドラムス(Pauro Braga)、それにオーケストラという布陣になっている。これは明らかに彼女のヴォーカル・アルバムという形を狙ったものだ( 参考までに、この翌年には彼女はヴォーカル抜きのピアノ・トリオ・アルバムをリリースしている「Eliane Elias Play Live」 )。なぜなら、彼女がジャズ・ピアノ・プレイを前面に出したのであれば、おそらくオーケストラは必要ないと思うからである。

Bossanovastorieslist_2  収録曲は左のようにジョビンのボサ・ノヴァ曲から始まって多彩に14曲。
 アルバム「Sings JOBIN」(1998)と異なって、同じボサ・ノヴァ・アルバムといえども、彼女ヴォーカルを主体とした曲の仕上げと録音になっている。聴き比べてみると面白いところ。例えば冒頭に”The Girl From Ipanema (イパネマの娘)”が登場するが、その違いが明瞭で興味深いのである。

Eliane4_2  このアルバムを通して聴いてみると解るが、基本的には彼女のソフトであり、低音から高音にいたるまでややハスキーな包み込むような唄は変わってはいない。しかし音量においてはここでは明らかに彼女のヴォーカルの比重が多い。そしてそれは言葉においてもブラジルのポルトガル語が主であった「Sings JOBIN」に比べて英語も多くなり、ヴォーカルを聴かせようとしていることがわかる。今時の流行の女性ジャズ・ヴォーカル・アルバムのパターンなのだ。 そしてその仕上がりは、情熱的な南国でなく、彼女の世界といえるややアンニュイという雰囲気をうまく表現している。やはり唄における技量も一流であることが解かる。

 その他、”chega de saudade 想いふれて”、”desafinado”などポピュラーなボッサ曲を聴かせてくれるし、”day in day out”では、オーケストラをバックにしての説得力あるイリアーヌ節をも堪能できる。
 このアルバムのこうした彼女のピアノ・プレイを控えめにしたところは、ちょっと寂しいところでもあるが、ストリングス・オーケストラがバックを支えてヴォリューム感は増している。

Lightmyfires  このアルバムのようなヴォーカル・アルバムとしての仕上げのものは、近作アルバムは「light my fire」 (左 2011 = 当ブログ2011.8.27「ボサノヴァとジャズ・ピアノとヴォーカルと」参照)であるが、ここでもアルバム・タイトルになっている曲の”light my fire”を聴くと、もはや彼女のヴォーカルも熟成の感ありと言っていいだろう。

 

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2012年2月 4日 (土)

イリアーヌ・イリアス Eliane Elias(5): 2つのアルバム「Kissed by nature」、「Sings Jobin」

ジャズを知ってのヴォーカルは出色

 イリアーヌの何枚かのアルバムを既に取りあげているが、彼女の得意とするボサ・ノヴァというと、夏のイメージに支配されるわけであるが、それがなんと寒い冬でも暖かい部屋での聴く彼女のアルバムはやはり味がある。先頃あるところで、もともとジャズ・ピアニストである彼女の唄は上手いのか?下手なのか?という面白い話題があったので、その回答になるようなアルバムを取りあげてみる。

Kissedbynature 「eliane elias / kissed by nature」 RCA VICTOR(BMG)  09026-63914-2 ,   2002

 このアルバムは意外に取りあげられていないが、実は中身は濃い。特に注目点はイリアーヌのピアノがかなり重要な位置にある曲仕上げと、ヴォーカルもそのほどの良さの占める役割にある。つまりヴォーカル・アルバムというよりは、ジャズ演奏の中にヴォーカルも一つの役割を果たしているというパターン。
    Eliane Elias : piano, vocal
    Marc Johnson : bass
    Joey Baron : drums, percussion
    (+Paulo Braga(drums,percussio), Randy Grecker(trumpet, flugelhorn), Rick Margitza(sax), Paulo Andre Tavares(guitar) )

Kissedbynaturelist_2   13曲のうち2曲(1,7)はremixで登場(12,13)。基本的にはジャズ・トリオ演奏で、それに曲によりトランペット、サックスなどが加わるパターン。
 しかしインストゥメンタル曲に彼女のヴォーカルがサポートするが如く唄われるのだ。その絶妙さが音楽を知ってのヴォーカルであり、そしてそのややハスキーな声での歌い回しが魅力的でこれぞジャズ・ヴォーカルと言っていい。この中にはインストゥメンタルの曲(10,11)もあるが、演奏面での彼女のピアノも繊細で流れが見事。1曲目の”kissed by nature”は英語で唄われ12曲目のremixとともに出色。しかしインスト曲の”october”、”september”の演奏には完全に虜になり引き込まれてしまう。素晴らしいアルバムである。

Singsjobin 「Eliane Elias sings JOBIN~海風とジョビンの午後」 Blue Note  09926-63912-2 ,  1998

 かってアントニオ・カルロス・ジョビンを演奏した「Eliane Elis Plays Jobin」(1989)というアルバムがあったが、彼女の尊敬するジョビンを10年後の1998年に再度取りあげてピアノ演奏はもちろん今度はヴォーカルも取り入れてのアルバム。
 確かに、ブラジル出身であるだけにボサ・ノヴァの伝統に根ざしたスタイルは我々に訴えるところが大きい。
    Eliane Elias : voice, piano
    Michael Brecker : tenor sax
    Oscar Castro-Neves : guitar
    Marc Johnson : bass
    Paulo Braga : drums
    Cafe' : percussion   

Singsjobinlist_3  納められた16曲は左のとおりで、ジョビンの”イパネマの娘”、”ワン・ノート・サンバ”と有名な曲が目白押し。
 とにかく爽やかでソフトでありながら、何となく倦怠感をみなぎらせるボサ・ノヴァ特有の世界はこのアルバムでは特に 顕著である。
 曲の録音と仕上げにおいても、ジョビンの曲を大切にして、それぞれのミュージシャンの音を丁寧に配置して、彼女の単なるヴォーカルものという仕上げでないところがいい。従って彼女の唄は常に中央ではなく”flando de amor”では左からギターの調べ、彼女の唄はやや右寄りから囁く。”how insensitive”や”forgetting you”を聴くと、哀愁すら感じられ美しいピアノに乗っての惹きつける魅力のヴォーカルとはこれだと言いたくなる。
 そして全編を通して、力みがなく、しつこさもなく、むしろさらっと流すヴォーカルはベテランの味そのもの。

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2012年2月 3日 (金)

雪の日の幻想 -2- Keith Jarrett「MYSTERIES」

雪の日の幻想 C    by Nikon D700 + Remodeled Lens

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                                   *     *     *     *     *

雪の日の幻想 D    by Nikon D700 + Remodeled Lens

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<今日の一枚  jazz>

Mysteries 「KEITH JARRETT / 秘蹟 MYSTERIES」 (1975.12.10&11 録音)IMPULSE  UCCI-9053 

 これも、キース・ジャレットのアメリカン・カルテットの作品。確かにキースのアルバムで、ここまでサックスの演奏が大きな役割を持ったのはこのカルテット時代であろう。ここでもデュース・デットマンの貢献は大きいし、チャーリー・ヘイデンのベースもこの不思議な世界を描いている。
 ここではキースは、ピアノ以外にフルート、ウッド・ドラムス、パーカッションなどのプレイを曲作りの中で披露している。
   1. rotation
   2. everything that lives laments
   3. flame
   4. mysteries

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2012年2月 2日 (木)

雪の日の幻想 -1- Keith Jarrett「DEATH AND THE FLOWER」

雪の日の幻想 A    by Nikon D700 + Remodeled Lens

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                              *      *     *     *     *

雪の日の幻想 B      by Nikon D700 + Remodeled Lens 

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<今日の一枚  jazz >

Deathandtheflower_2 「Keith Jarrett  DEATH AND THE FLOWER 生と死の幻想」 impulse 32XD603 , 1974年作品

 このアルバムなくしてキース・ジャレットの関わりはなかったと言いたくなるほどの私にとっては重要なアルバムだ。ヘイデンのベースが関わっているアメリカン・カルテット(1971~77)の作品として、又 キースのマルチ・プレイヤーとして、更に彼のインプロヴィセーションの世界として、そして彼が描く世界観として、全てが凝縮したアルバムである。
   1. death and the flower
   2. prayer
   3. great bird

(当ブログ 「キース・ジャレットの世界(3)」2010.6.14 参照)
 

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