ジャケ党を泣かせるアルバム(2)~エンリコ・ラバ・クインテット Enrico Rava Quintet 「TRIBE」
ENRICO RAVA QUINTET 「TRIBE」
ECM Records ECM 2218 B0015932-02 , 2011
Recorded October 2010 ArteSuono Studio, Udine
もう50年近く前から活躍しているイタリアン・モダンジャズ・トランペッターのエンリコ・ラバ Enrico Rava は多くのアルバムをリリースしているが、これは彼の最新作アルバム。このジャケットの魅力は何気ない一瞬を絵にしているところであり、又色の奥深さが私のお気に入りだ。このタイプを絵にして仕上げるセンスには如何にも惹かれてしまう。
このアルバムは、エンリコ・ラバがクインテットを結成しての4曲のインプロヴィゼイションと、残るは全て彼のオリジナル曲。
(クインテット・メンバー)
Enrico Rava : Trumpet
Gianluca Petrella : trombone
Giovanni Guidi : piano
Gabriele Evangelista : double-bass
Fabrizio Aferra : drums
このように、ピアノトリオ+トランペット、トロンボーンという形であるが、それにギター(Giacomo Ancillotto)も曲によって加わる。
収録曲は12曲で、*印がクインテットのインプロヴィゼイション。
冒頭の”amnesia”は、トランペットのリードにより、ゆったりと全楽器が、何か古い記憶をたどるが如く演奏され、何が起こるかと興味をそそる。
2曲目”Garbage can Blues”は、イタリアらしくピアノの美しい旋律が、これもゆったりと流れて、これぞこのアルパムを聴いて良かったと思いに浸れる。このムードには私は弱いのだ。
”choctaw”、”cornettology”の2曲は、いよいよ彼らのやりたいところに突入。トランペットが荒々しく、ピアノも強く連弾する。
4曲目の”incognito”は10分の曲、トランペットの嘆きを奏でて、それぞれのメンバーが静かにその世界を絶妙に支えてゆく。これぞ、エンリコ・ラバの世界。Guidiのピアノがなかなか健闘していて、曲のイメージは人生の隠れた姿を描いているが如くで、私のお気に入りの曲。
6.7.8のインプロヴィゼイションも、トランペットとピアノがリードして、スローの中の連携プレイが見事。特に7”Tears for neda”のピアノは美しく、そこにトランペットの人生を知り尽くしたラバの哀愁が漂う。さすがイタリアの世界と言いたくなる。
”Paris baguette”、”planet earth”の2曲に於いても、やはり哀愁の世界である。そして Guidi のピアノの健闘が光る。
アルバム・タイトルの”Tribe”という曲が11番目に登場するが、日本語では部族とか一族とか仲間という意味だと思うが、なかなか活力ある曲。
このアルバムは、ジャケのセンスの高さにも負けないなかなかハイレベル名演であり、聴き応え十分である。しかもとくにイタリアらしい日本人の心に響く何かを持っていて魅力たっぷり。
私の気持ちとしては、特にエンリコ・ラバの多くのアルバムの中でも、名盤に入ってもいいと思うところだ。
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