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2012年3月31日 (土)

ジャケ党を泣かせるアルバム(3)~ステファン・ケレッキSte'phane Kerecki & ジョン・テイラーJohn Taylor  「PATIENCE」

Ste'phane Kerecki & John Taylor 「PATIENCE」

             Zig-Zag Territores     ZZT 110402  ,  2011

Patience

 やや紫がかったブルーを基調とした、この引き潮時と思われる海辺のシーンは印象的だ。このジャケットを見たときに、ジョン・テイラーJohn Taylor のベテラン・ピアニストの名前が目に入ってきた。しかし私のジャズとの接触は、そう広くはないし結構好きなものに偏っての人間で、このステファン・ケレッキSte'phane Kerecki というベーシストは知らなかった(多分このアルバムが4作目?)。どうもフランスはパリでの活躍のようだ。しかしこのジャケの出来と、ベースとピアノのデュオということになれば、とにかく私が聴いてみたいと思ったのは自然の結果でもあった。

Patencelist_2  さて、内容は左のような12曲。(*印は二人のインプロビゼイション)

 スタートの”prologue”がなんとケレッキのベースはアルコから始まって予想と違って驚くが、このジャケのような自然に心奪われるような世界に導かれる。ベースをピアノが追従してゆく形で始まり、次第にベースはフィンガー奏法に変わり、なんとも言えない異空間に誘われる。とにかくこの両者の意気投合は素晴らしい。
 2曲目”manarola”は、がらっと変わって、ベースのケレッキの多彩なリズム感ある独奏から始まって、テイラーのピアノも登場し、次第に緊張感ある音に変化してゆく。
 3曲目”patience”は、アルバム・タイトルの曲”堅忍”と訳していいのだろうか?、ベースはやや暗めの世界に導くが、不思議にテイラーのピアノが、やや希望ある解りやすい旋律を絡めて面白い。

Stephane1  デュオ作品というだけあって、両者の攻め際が偏らず上手いコンビネーションが出来ている。
 ケレッキの現代性を感じられるベース・プレイも技術的挑戦意欲もみれるが、音楽的美しさも心得ているように思う。 特に5曲目の”gary”では、ピアノの美しさには驚きである。テイラーってこんなに人間っぽい美の世界でしたっけ?。まあいい、前衛的なところで攻められるかと思ったら、こんな優しさに私は極めて満足である。
 ”luminescence”は、両者のセンスの結晶としての光を感ずる。

Patiencemembers  とにかく年齢は知らないが、このケレッキはまだかなりの若さだと思うが、やはりそれなりにベーシストの世界を探求している姿がありありだ。つまり多くの奏法を編み込んでいる。そのあたりは前衛的でもあり、昔のテイラーのピアノの世界にも共通しているのではないだろうか?。それを知ってか?その姿をサポートしている70歳のテイラーの優しさが溢れた好盤である(おそらく親子の関係といえる歳の差があると思う)。
 デュオとしては、それに見合って、それぞれの音がクリアに録音されていてそのあたりも私好み。
 このジャケを眺めながら聴く彼らの演奏は、私の気分は最高であった。

 

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2012年3月29日 (木)

ジャケ党を泣かせるアルバム(2)~エンリコ・ラバ・クインテット Enrico Rava Quintet 「TRIBE」

ENRICO RAVA QUINTET 「TRIBE」

    ECM Records ECM 2218 B0015932-02 ,  2011
         Recorded October 2010  ArteSuono Studio, Udine

Tribe

 もう50年近く前から活躍しているイタリアン・モダンジャズ・トランペッターのエンリコ・ラバ Enrico Rava は多くのアルバムをリリースしているが、これは彼の最新作アルバム。このジャケットの魅力は何気ない一瞬を絵にしているところであり、又色の奥深さが私のお気に入りだ。このタイプを絵にして仕上げるセンスには如何にも惹かれてしまう。
 このアルバムは、エンリコ・ラバがクインテットを結成しての4曲のインプロヴィゼイションと、残るは全て彼のオリジナル曲。

Enricoravaqmembers (クインテット・メンバー)

   Enrico Rava : Trumpet
   Gianluca Petrella : trombone
   Giovanni Guidi : piano
   Gabriele Evangelista : double-bass
   Fabrizio Aferra : drums

このように、ピアノトリオ+トランペット、トロンボーンという形であるが、それにギター(Giacomo Ancillotto)も曲によって加わる。

Tribelist 収録曲は12曲で、*印がクインテットのインプロヴィゼイション。
 冒頭の”amnesia”は、トランペットのリードにより、ゆったりと全楽器が、何か古い記憶をたどるが如く演奏され、何が起こるかと興味をそそる。
 2曲目”Garbage can Blues”は、イタリアらしくピアノの美しい旋律が、これもゆったりと流れて、これぞこのアルパムを聴いて良かったと思いに浸れる。このムードには私は弱いのだ。
 ”choctaw”、”cornettology”の2曲は、いよいよ彼らのやりたいところに突入。トランペットが荒々しく、ピアノも強く連弾する。
 4曲目の”incognito”は10分の曲、トランペットの嘆きを奏でて、それぞれのメンバーが静かにその世界を絶妙に支えてゆく。これぞ、エンリコ・ラバの世界。Guidiのピアノがなかなか健闘していて、曲のイメージは人生の隠れた姿を描いているが如くで、私のお気に入りの曲。
 6.7.8のインプロヴィゼイションも、トランペットとピアノがリードして、スローの中の連携プレイが見事。特に7”Tears for neda”のピアノは美しく、そこにトランペットの人生を知り尽くしたラバの哀愁が漂う。さすがイタリアの世界と言いたくなる。
 ”Paris baguette”、”planet earth”の2曲に於いても、やはり哀愁の世界である。そして Guidi のピアノの健闘が光る。
 アルバム・タイトルの”Tribe”という曲が11番目に登場するが、日本語では部族とか一族とか仲間という意味だと思うが、なかなか活力ある曲。

Enricorava1b  このアルバムは、ジャケのセンスの高さにも負けないなかなかハイレベル名演であり、聴き応え十分である。しかもとくにイタリアらしい日本人の心に響く何かを持っていて魅力たっぷり。
 私の気持ちとしては、特にエンリコ・ラバの多くのアルバムの中でも、名盤に入ってもいいと思うところだ。
 

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2012年3月27日 (火)

ジャケ党を泣かせるアルバム(1)~「ヘルゲ・リエン・トリオ Helge Lien Trio / Natsukashii」

 ヘルゲ・リエン・トリオ Helge Lien Trio  「Natsukashii 懐かしい」
                      OZELLA MUSIC OZ036 CD   (2011)
                     REC.September 24-26, 2010, Oslo, Norway

Natsukashii_3

 このところ、最も気に入ったCDアルバムのジャケットがこれだ。とにかく彼らのアルバム・ジャケは過去のものも素晴らしいが、この近作は抜群。
 望遠レンズを使ってのモノクロ作品。とにかく見入ってしまう。しかもこの作品、このピアノ・トリオのピアニストであるヘルゲ・リエン自身の作のようだ。驚きである。
 私のようなジャケ買いが絶えないものにとって、このトリオの場合は中身はおよそ推測できるところであり、即座に入手した代物。紙ジャケでつや消しの素晴らしいもの。これがLPだったらなぁ~~と、しきりに思うところなのだ。

Natsukashiitrio  このトリオは、ヘルゲ・リエンのピアノを中心としたノルウェーのジャズ・グループ。

 Helge Lien : piano
  Frode Berg : Bass
  Knut September : Ds

 このメンバーで、多分本アルバムは、2001年の1st「What are You Doing The Rest of Your Life」以来7作目となる。かなり固い繋がりの仲間の作品と見てよい。
 そしてなんと、アルバム・タイトル及び第1曲目が”Natsukashii 懐かしい”と言う日本語であるところが又嬉しい。そして又、ピアノの旋律が日本的で懐かしい気持ちを起こさせる美しいノスタルジックな曲である。日本を知っての作品に相違ない。

Natsukashiilist 曲リストは、左のとおり。前々作「To The Little Radio」(2006年)はスタンダード集、前作「Hello Troll」(2009年)は、オリジナル曲集であったが、今回も全曲オリジナルである。
2曲目”Afrikapolka”4曲目”E”は、それなりにビートを効かした曲。彼らの醍醐味が覗かれるところ。3曲目の”Bon Tempi”は、ゆったりとした曲だが、次第にトリオでやや前衛性を持って盛り上げていくところが味がある。
 もともと彼らはクラシック畑出身であるので、”Sceadu”の意味は分からないが、クラシック・タイプの意味深な曲。
 そして”Meles Meles”は、”Natsukashii”同様ピアノの旋律の美しい曲だ。
 7曲目の”Hymne”は、オリジナル曲であるだけにメンバーがそれぞれの個性を交錯させてトリオの醍醐味である物語を展開。
 ”Umbigada”、”Small No Need”は、前衛性のある曲。スリリングな展開も聴きどころ。
 こうして、アルバムとしては緩急、美しさと前衛性など織り込んでのバランスも良く取れている。

 ジャケに惚れながらも、なかなか中身も味のあるアルバムとして聴き応えある。録音も良いところも味噌。
 彼らはノルウェーでのジャズに関しての権威ある賞をいくつか受賞しているようで、なるほど実力ある北欧のジャズの世界観を知る思いである。

(視聴)

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2012年3月25日 (日)

大人のジャズ・ヴォーカル~リサ・リンズレイ Lisa Lindsley 「Everytime We Say Goodbye」

丁寧な歌い上げは天下一品

Everytimewesaygoodbye 「LISA LINDSLEY / Everytime We Say Goodbye」Blondsongstress(U.S.A)  ,  2011

 この女性ジャズ・シンガーのリサ・リンズレイ Lisa Lindsley もなかなか大人の味を聴かせてくれる。映像をみると結構大柄に見えるが、声は意外に可愛らしい発音をする。しかしその歌のこなしは、どの曲もじっくりと歌い上げ大人のムードいっぱいである。
 彼女はアメリカ、ユタ州 Ogden の出身。父親の影響でジャズを聴きながら育ったという話。誕生日は彼女の好きなサラ・ヴォーンと同じ3月27日のようだが、生まれた年は不明。まぁ40歳代でしょうね。アメリカ特有のジャズスクールにて学んだ経歴があり、サンフラシスコを中心に活躍している模様。

 さて、このアルバムもスタンダード・ナンバーを歌い上げたものである。

1. Nearness of You(5:58)
2. Don't Explain(4:23)
3. Alice in Wonderland(3:47)
4. Inside a Silent Tear(4:54)
5. The Very Thought of You(6:35)
6. It's Only a Paper Moon(3:07)
7. Everytime We Say Goodbye(8:29)
8. Why Don't You Do Right(3:34)
9. Girl from Ipanema(7:28)

Lisa2web  何と言っても、アルバム・タイトル曲のコール・ポーターの”Everytime we say goodbye”が聴き応え十分だ。バックのピアノがゆったりと美しく奏でられ、彼女の唄も、言葉一つ一つを丁寧にそして語り終える最後の一呼吸まで大切に歌う。これを聴くとかなり鍛え上げられたヴォーカリストだと解る。
 バックは、Geoge Mesterhazy (piano, melodica, keyboards) と Fred Radolf (bass) の2人が務める。そのバックも実に落ち着いた主としてピアノ、ベースのみの演奏で、音を十分に意識して聴かせるところが良い。
  ”Inside a silent tear”では、バックに Melodica が使われ、支えるが如く彼女のヴォーカルとともに歌い上げ、落ち着いた独特の夜のムードを作り上げる。
 ”The very thoght of you”は、彼女のヴォーカルのみでスタートして、その後ピアノが流れるパターンで、ジャズ・ヴォーカルの醍醐味を知らしめ、又ピアノ・ソロの流れも満喫できる。
 面白いのはジョビンの”Girl from ipanema”だ。ボサノヴァとは又ひと味違ったバラード調のヴォーカル・ジャズになっていてベースの響きも納得の出来、この曲としてはちょっと異質のタイプの仕上げで興味深い。

 自主制作盤といってもよいものだが、録音の質も悪くない。このアルバムも、静かに夜の安息を得ようと聴くには良盤だ。

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2012年3月23日 (金)

大人のジャズ・ヴォーカル~ケイト・リードKate Reid 「The Love I'm In」

実力派のジャズ・ヴォーカルは実に心地よい

Theloveimin 「Kate Reid / The Love I'm In」 2011年自主制作

 女性ジャズ・ヴォーカルものも、何となく積もり積もってきた。その中の一枚ではあるが、近年流行のキュートで美しくそして愛らしい世界もいいが、このアルバムは久々の大人のジャズ世界だ。

 このケイト・リードKate Reidという女性は、これが2枚目のアルバムであるが、1stアルバム「Sentimental Mood」共々自主制作であって、そんな関係からかどうも情報が少ないが、彼女の名前を冠した"Kate Reid Quartet"を持ってしてLos Angelesで活躍しているようだ。年齢もみるところ20歳代という若さではなく、30-40歳代という円熟タイプ。
 そして彼女はジャズ・ピアニストでありヴォーカリストというミュージシャンであるが、これまでにはセッション・シンガーとしての多くのミュージシャンとの交流もあり、実力派と言っていいのだろうと思う。
 
 今回のこのアルバムは、以下の12曲が収録されている。よく見ると結構スタンダード・ナンバーをこなしていることが解る。

1. Just Squeeze Me 
2. The Lamp Is Low 
3. Where Do You Start 
4. Nice & Easy 
5. So in Love 
6. I'm Through With Love 
7. I Love You Porgy 
8. Something Good 
9. Portrait in Black and White 
10. With Every Breath I Take 
11. Close Enough for Love 
12. Nobody Else But Me

Kate1_2そして曲の造りは、彼女の中・低音部の安定した歌声が中心に、ヒアノ・トリオのバックがかなり控えめに大人のジャズの世界というムードを作り上げる。そして時にそのムードを更に盛り上げるべくのテナナー・サックス、トラン・ペットの響きが聴かれる。
 オープニングのM1はデューク・エリントンの曲で、どちらかというとダイアナ・クラールを想わせるヴォーカルで、気持ちよくスウィングして聴かせる。
 M3となると、静かに彼女のピアノとベース、それにケイト節がじっくりと聴かせてくれる。非常にその流れは気持ちよく、そして安定感を生み出してくれる。日頃カルテットで演奏していると言うことで、ヴォーカルと演奏のその間の捕り方の呼吸に隙が無い。
 コール・ポーターの曲M5あたりから彼女の説得力あるヴォーカルと演奏が、このアルバムにおいてジャズの良さを知らしめてくれる。
 M7は、特に静かな夜にほっとした安堵感を求めるのであるなら最高である。
 なかなか大人の世界を感じさせる良いジャズ・ヴォーカル・アルバムなのである。

 Kate Reid : Voc. Piano
  Otmaro Ruiz : Piano (5,9,11)
  Ernie Watts : T.sax
  Chris Conner : Bass
 
Steve Barnes : Drums

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2012年3月18日 (日)

アイオナ IONA (2) ~ 名盤とライブ映像盤

キリスト教としての神と人間との関わりをロックを通して歌い上げる

Journeyintothemorn 「IONA / journey into the morn 明日への旅路」     (1995年)   re-released Open Sky Records OPENV9CD , 2009

 前回から話題にしているアイオナの1995年の4thアルバム。これは彼らの名盤と言われているもの。私は最新作「Another Realm」(7th)から逆行的に彼らのアルバムを聴いているのだが、このアルバム・ジャケは、'95年リリースのジャケとは異なっているが、一瞬キング・クリムゾンの「アイランズ」(射手座の三裂星雲の天文写真)を思い起こさせるところだったが(これは石に彫られた紋章?)、なんと2曲にスペシャル・ゲストとしてRobert Fripp の名前が見える、あのフリップ様ですよ(Guitar Synthを演奏)。

 このアルバムも、ケルティック・ロック・バンドのアイオナのベンブリッジDave BainbridgeとホッグJoanne Hoggが中心で作られてはいるが、彼らのケルティックなサウンド作りの一つの特徴であるイリアン・パイプとホイッスルの奏でるドノックリーTroy Donockleyが、1stからのゲストでなくここでは正式メンバーになっている。

Journeyintothemornlist  曲は左の14曲。冒頭では賛美歌とも思われるケルト人のゲール語で歌われる神々しさに満ちあふれている祈りの曲からスタートして、このアルバムの前途を暗示する。
 2曲目の”Irish Day”は、前回取り上げたアイオナ島にクリスチャンとしての拠点を作り上げたコロンバを唄っているらしい。ホイッスルの音、ギターのメロディーとの交錯が見事。
 ”Wisdom”では、ロックらしいリズムの展開があって一安心。
 ”Everything changes”は珍しくゲストのヴォーカルがホッグの歌声のバックに流れて両者で美しく歌われ、なかなか聖歌とポップの融合といった感じで良い曲。
 ”Inside my heart”は、美しいacギターとホッグの歌で始まり、後半にはelecギターが歌い上げるという彼らのバンドの特徴とも言えるパターン。
 しかし一曲一曲すばらしく無駄がない。”Encircling”は、11分
を越える3部構成の曲。シンフォニックで静から動の展開が見事で、そこにケルティックなホイッスルが哀愁を添える。確かにこのように攻められるとたまらない。
 ”Lindisfarne”は、このドラマティックな展開と美の世界は、アイオナの極致。
 10,12は、インスト・ナンバー、キー・ボードとホイッスルとが描く世界に痺れ、そして12の神々しい世界に圧倒される。
 ”Drive presence”にはロバート・フリップのギターシンセがバックに流れる。

 確かにこのアルバムは、隙もない演奏で無駄のない曲構成、そして展開のダイナミックかつ情感あるメロディ、完璧に神と人間の世界に迫っての曲作りは見事と言っていい。
 彼らの名盤であると同時に、ロックの世界に於いても名盤と言いたい。
  
 

Ionaliveinlondon DVD映像盤 「IONA / Live in London」 OPENSKY DVD2

 丁度、前記アルバム「Journey into the morn」発表直前のライブ・映像アルバムである。
 私のようにライブものが好むものとしては、なんとしてもライブ映像が欲しくなるところで、このDVDアルバムを入手した。
 2004年ロンドン大学にて11月18日に収録されている。

バンド・メンバーは、ホッグとベインブリッジ以外は、このバンドから出たり戻ったりしているが、この直後の上の名盤「Journey into the morn」の時には変更もあるが、このライブものは彼らのほぼ常連メンバーの5人。
   joanne hogg : vocal,keyb. etc
   dave bainbridge : elec & acous Guitars, keyb. etc
   troy donockley : uilleann pipes, low & tin whistles
   phil barker : bass
   frank van essen : drums, violin

Livelist3 収録はDVD二枚で左の通り。
 過去のアルバムからと、この後にリリースした上のアルバムのメインの曲も演奏している。
 こうみると、やはりキーボードの入ったプログレ・ロック・バンド構成と言った方がよいかも知れない。そこにケルト音楽の象徴的イリアン・パイプとホイッスルを演ずるトロイ・ドノックリーの演奏が日頃見慣れないために興味深い。
 しかしドラムスのエッセンがヴァイオリンを弾いたり、ギターのベインブリッジはギターの他、キーボードもこなす。そしてホッグは美しいヴォーカルと同時にキーボードも演ずる。5人による多くの楽器の綾も見所聴き所といったところ。そして壮大にして美しくダイナミックなシンフォニック・ロックを演ずる彼らの姿に感動すら感じてしまう。 彼らのライブ映像もそう多くないので貴重と言えば貴重。

 しかし、彼らがデビューして20年、今になってこれにたどり付いたことに若干過去の私の幅のなさを反省しつつ、このところの聴き込めば聴き込むほど味のあるバンドとしてここに取り上げた。
 

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2012年3月12日 (月)

ケルティック・ロック・バンド~アイオナ IONA 「Another Realm」

ロック・バンドの演ずるケルト音楽への世界

 ケルト音楽というと、アイルランド、そしてスコットランドに及ぶケルト人の民族音楽、そしてそこには敬虔なキリスト教を基盤にして立っているという感覚で私なんかは捉えている。そしてそれは何故か郷愁をさそうところがあるが、一つにはアイルランドの不幸な歴史を知る事からも感じてしまうのであろうか。
 ケルト音楽の流れは、ヨーロッパに広く特にフランス、スペイン、ポルトガルの地方にも及ぶ(それはヨーロッパの先住民族であったケルト人が、古い歴史の中で西に追いやられた結果であるという)。一方イギリス統治下のアイルランドやスコットランドからの何百万人の悲劇的移民により、ケルト移民文化がアメリカ東海岸、カナダに至るまで広がった。特にアイルランドからの移民によるケルト音楽のアイリッシュ・ミュージックは米国における黒人のブルースとの融合するところにも至るのである。そのあたりは私も興味を持っているところだ。それには彼らの音楽がカントリー、ブルーグラスに発展したことの結果であったと言うのだが?。更にそのことは考えてみれば最終的にはロックを産むところにも影響を及ぼしてゆくことになる。

 こんな流れの中で、何時の時代でも常に話題は必ず起こるケルト音楽ではあるが、ここにロックからケルト音楽を作り上げているグループのアイオナIONA を知って取り上げることになった。

Anotherrealm 「IONA / Another Realm」 OPEN SKY CD16 ,  2011

 このアイオナ は、1990年より多くのアルバムをリリースしている。その20年以上の歴史の中で、これは最新作の7作目(ライブ・アルバムを抜いて)。
 もともとロックを聴く流れの中で、私はどちらかというとプログレッシブ、サイケ、シンフォニック又はジャズィな方向にあり、意外にフォーク系には落としも多かった。このバンドは最も私が夢中になった時代よりは近年になるためか、トラッドにはそれなりに関心もあったにもかかわらず、全く接してこなかった。しかも、これ程のシンフォニックな世界を落としていたのだ。 
 ところが、関西方面のプログレマニアのnr氏が、どうもこのバンドに捕らわれているようであり、そこで私も聴いてみたというところである。

Anotherrealmlist_2 収録曲は全15曲、約90分に及んでいる(左参照)。
 基本的にはロック・グループだが、トラッドを演奏しているのでなく、全て彼らによって作られた曲である。

 メンバーは当初からは変更もあるが、このアルバムは5人で演奏している女性リード・ヴォーカル・バンド。
   Joanne Hogg : vocal, piano, keyboard etc
   Dave Braindridge : elec. & ac. guitars, keybords etc
   Frank van Essen : drums, violin etc
   Phil Barker : bass
   Martin Nolan : uillean pipes, low whstles, tin whistles etc

Hogg    このバンドの演奏は、どう表現するば良いか難しいが、キーボードが美しく流れ、シンフォニック・パターンのロックを展開するが、何と言っても特徴的なアイルランド生まれのイリアン・パイプスの音色とそのケルティックなメロディーは一番の特徴。そしてジョアンヌ・ホッグの歌声が美しい。
 それにデイブ・ベインブリッジのelec及びacギターが、語りかけるような演奏から、ロックのダイナミックな響き、時として泣きまで聴かせる。
 ベース、ドラムスはロックの味を失っていない。そしてその他、ヴァイオリン(なんとドラマーのフランク・ウァン・エッセンはこのヴァイオリンも弾く)やアイリッシュ・フルートと言われるティン・ホイッスルなどが民族的なケルトの世界を展開してみせる。多彩な楽器を駆使してあくまでもシンフォニックなロックの世界から、宗教的な敬虔な世界まで築いてゆくところは見事と言える。

 ホッグの魅力的なヴォーカル曲ばかりでなくインスト曲も何曲かある。
 Disc1のオープニングの”As it was”はDsc2の最終曲”as it will be”に繋がるアルバム仕立てになっていて、壮大なドラマの展開を予想させる静(聖)なる曲。2曲目”The ancient wells”で、ロック・アルバムのオープニングである。
 ”An atmosphere of miracles”は、3部に別れた15分を越える大叙情詩。美しさからスタートし安堵へ、ホッグのヴォーカルが響き渡る。そしてベインブリッジのギターが泣き、最後は大宇宙を描く。このアルバムの一つのハイライト。
 Disc2では冒頭の”Ruach”では哀愁漂う美しさに圧倒される。そして”Speak to me”への流れは魅力的。”Saviour”、”The fearlesss ones”などは宗教的ニュアンスが強い。
 ”White horse ”は雄大なシンフォニック・ロック・ナンバー。

Dave  このバンドは、このギターのベインブリッジとヴォーカルのホッグ、そして当初はデヴィッド・フィッツジェラルド(sax,fl)の3人により、1989年にゲスト・ミュージシャンを加えて結成され、1stアルバム「IONA (日本盤=緑の聖地)」をリリースしたことから始まっている。このあたりまでは私は目下アプローチしてないが、この時から、独特なケルティック・ロックを展開したようだ。
 
 このアイオナIONA というのは、島の名前だ。この島は5.6×1.6㎞という小さな島で、スコットランド、インナー・ヘブリディーズ諸島というところに属しているのだという。住民はなんと百数十人しかいない。昔、アイルランドを追われた聖コルンバという人がキリスト教の拠点して修道院を創設し重要な巡礼地にまで築き上げ、ついには聖なる島となったところらしい。
Band1_2  その名を付けたバンドであるから、メンバーはクリスチャンそのものであり、しかも作られている曲は宗教的テーマを持っているのだという。
 しかし、我々にとってはそうした意味は重要であるのかも知れないが、そのことは別にして、言語の関係から、その意味までは理解出来なくても、一つ一つの曲そしてアルバム全体流れから、何か心に響いてくるものが感じ取れる音楽として魅力があれば、それはそれ十分である。私の感想としては、そうした音楽を聴かせてくれるバンドであることは間違いない。

 20年以上の歴史あるバンドのアルバムを、今回初めて聴いてみたという私であるが、一口にロックとはいえ、こうした心洗われる世界もあることが、非常に頼もしくも感じたところである。
 
 

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2012年3月 7日 (水)

イタリアン・ロックの軌跡(4) : マリオ・パンセーリMario Panseri 「ADOLESCENZA 秘められた記憶」

プログレッシブ・ロックにおけるカンタウトーレの活躍

 ”イタリアン・プログレッシブ・ロック”という世界が、日本においての一大ブームを引き起こしたのは、1970~80年代における時代だったと思う。当時はイタリア独特のメロディー・ラインやシンフォニックなアプローチ(ジャズィなタイプももちろんあったが)に圧倒され、ブリティッシュの影響を受けながらも、イタリア独特の世界に満ち満ちていて我々に迫ってきたものだった。
 そしてその流れの中に、どうしても無視できないところに、カンタウトーレといわれるシンガーソングライターの大きな役割が見えてくる。そこには前回検証してたルチオ・バッティスティはもちろんであるが、彼らの活躍はロックの世界に大いに影響をもたらしたし、又彼らの作品もプログレ派には注目されそして受け入れられたのであった。そんな中から印象の強かった一枚を取り上げてみる。
 

Adolescenza 「Mario Panseri / ADOLESCENZA 秘められた記憶」 (イタリア1973年作品) BMG VICTOR (EDISON) ERC-28019 ,  1989

 歌ものと言われたものでも、曲を形取る方法論に於いて、プログレッシブ・ロックとしてのシンフォニックな演奏やはたまたメロトロンやギターそしてピアノに於いても美しく時として激しく迫ってくるものが多く出現した。
 このアルバムもイタリア独特の哀愁を多種多様な楽器で奏でると同時に、その歌にも魅力があった作品。
 イタリアが最もプログレッシブな波の高かった1973年の作品(RCAレーベル)だが、CDとしての日本リリースはそう古くなくEDISONの企画のEUROPIAN ROCK SERIES にて1989年にリリースされたもの。当時直ちに飛び付いたものである。
 カンタウトーレであったマリオ・パンセーリMario Panseri の作曲、歌、アレンジという才能を見せ付けた最も印象深い作品だ。(私は知らないがアルベルト・モラヴィアという人の小説「アゴスティーノ」をテーマにしている)そしてアルバム・タイトルの”ADOLESCENZA”は、”思春期”とい意味であるが、この EDISON盤の日本タイトルはなかなか味がある。

 1. 貴女の季節
 2. 家 (君の家)
 3. 迷路 (君は知らない)
 4. 海の果て
 5. a)隣人 (母の側)
   b)失望
 6. a)初めての友達
   b)貴女の横顔
 7. 苦悩 (君の混乱)
 8. 神秘の瞳 (あの目)
 9. 消えた子供 (君はもうあの子供じゃない) 

Adolescenza2  収録曲は2つに分かれた2曲を入れて9曲。これらが一つのコンセプティブにアルバムを通して歌い上げられていて、トータル・アルバムの仕上げとなっている。
 少し内容について触れてみると・・・・・
 1.のオープニングは、ピアノのアルペジオ奏法をバックにオーボエによる旋律が流れるという楽器の綾で、やや暗めの哀愁感あるヴォーカルととに、何とも言えない印象深い旋律の曲
 2.となるとベースがゆったりと刻むリズムに非常に美しいストリングスも入った曲が流れて、続いてアコースティック・ギターも美しく弾かれヴォーカルも魅力的。突如エレクトリックなギターが唸ってロックと化すかと思いきや再び美しい曲に戻る。
 4.はドラムスの効いたロックで始まりトランペット、トロンボーンと思われる管楽器も加わって圧巻、そしてフルートがイタリア・プログレの世界の色を見せ、最後は海の如くピアノにより静かにおさまる。
 5.は、このアルバムでも聴かせどころの青春の哀愁を歌い上げる世界と、ドラマチックな世界の交錯は見事と言わざるを得ない。
 実はこの多彩なバック・ミュージシャンが不明である。もちろんベース、ドラムスのリズム隊は各所でポイントを占めるが、生ピアノ、チェンバロらしき音、シンセサイザー、ストリングス・アンサンブル、acギター、elecギター、ホーンなどなど多種多様な楽器が彩る限りない愛と哀愁が響き渡る。多分彼自身の演奏もかなりの位置をしめているのではないかと推測する。
 とにかく、これぞイタリアの美のアンサンブルの世界である。
 7.から8.は、如何にも若き人間の甘い苦悩ともいえる姿を、ややジャズィでプログレッシブな激しさと、一方普遍的なもの哀しさをゆったりとピアノにより美しく描く。非常に格調高い。
 9.で聴かれるジャズ・キーボード、ジャズ・ギターのセンスの良さには驚かされる。

 20年少々前に知った私にとってはとにもかくにもベタ褒めのアルバムなのである。そして未だに聴き惚れてしまうもの。これが1973年という年のイタリアに生まれていたのかと信じがたい程だった。ブリティッシュのピンク・フロイドで言えば「狂気」の時であり、キング・クリムゾンで言えば「太陽と戦慄」の時だが、全く異なったアプローチの世界であるだけに、まさに恐るべしイタリアなのである。
 彼にはこれ以外に2枚のアルバムがあるが(それらは私は聴いていない)、2ndであるこの一枚が最高傑作と言われている。

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2012年3月 5日 (月)

ピンク・フロイドPink Floyd 「ザ・ウォールTHE WALL ~IMMERSION BOX SET」検証(2)

「ザ・ウォール IMMERSION BOX SET」 の”1979年 DEMO CD”
見えてくる哀愁の世界

Thewallboxxyz

今回の”THE WALL - IMMERSION BOX SET”の目玉は、2枚のCDに納められたDemo音源と言ってもいいのかもしれない。そこには興味ある姿が見えてくる。

WORK IN PROGRESS PART 1, 1979

Thewallboxdemo1_2

 上が1枚目の内容。3群に別れているが、多くがロジャー・ウォーターズのオリジナル・デモが納められ、その後にバンド・デモが聴ける。 (41音源収録、サウンドは期待以上に良好)
 ロジャー・ウォーターズのデモは、かなり初期のもののようで曲はトータルには聴けないが、要所の原点が聴き取れて興味深い。
 2.オープニングのSEはこのほうが、まさにピンク・フロイド的。9.Don't leve me now はこちらの方が更に切ない。 12.Another Bricks in the wall ~13.goodbye cruel world は旋律も異なり、アルバムに慣れきっていると、このようなacギターによるタイプのほうも面白いような?感覚になる。21.the trialは凄い。
 23.preludeはアルバムには登場しないが、映画の導入の曲とが交錯して面白い。24.another B I T Wはこちらの方が、深遠な感じ。このパターンでアルバムを作ると又違ったものになりそうだ。25.The thin ice の冒頭と末尾のギターがいい。
 27.teacher,teacher においても、ウォーターズの切ないヴォーカルが印象的。
 30.Youg lust は、アルバムとはかなり違った旋律のヴォーカル・パート。
  33.Sexual Revolution は、ギターとドラムスのリズム取りが大きく違って興味深い。
 PROGRAMME 3 のバンド・デモはかなりアルバムに近くなっている。

 こうしてみると、このロジャー・ウォーターズのオリジナル・デモは彼の「ザ・ウォール」の発想が手に取るように見えてきて、もともとの作品の目指すところは、全体に完成アルバムとはかなり異なった悲哀と哀愁のあるタイプであったことが解る。

WORK IN PROGRESS PART 2, 1979

Thewallboxdemo2

 ここでは、ロジャー・ウォーターズのデモから1.Is there anyody out there? の重要性を知るし、バンド・デモは、アルバムに近づいた曲の仕上げが聴ける。
 Doctor (comfortably numb)は2曲収録しているが、5. ではウォーターズの出だしのヴォーカルは歌詞も異なっているが、これからアルバムのものへと進めていったのであろう。全体的には完成に近い。15.ではギルモアのヴォーカルが中心。こうしてみると、完成曲の通りに、スタート部分はウォーターズのDoctor の流れで、その後にギルモアのデモを生かして両者を交互に登場させて完成したことが解って興味深い。
 デヴッット・ギルモアのデモは2曲のみであるが最後に聴ける。これでは22.Confortably numb では、完成もののギルモアの歌うパートが彼の係わったところであることが見えてくる。23.のギター・プレイの部分は彼のオリジナルであることは当然だ。

 こうして、全64曲のデモ集を聴くと、確かに当初これだけの曲をウォーターズが作っていたことに驚くし、この後リリースしたアルバム「ザ・ファイナル・カット」に使われた曲も何曲かあったと言われているので(ここでは登場しないが)、如何に当時彼はステージは否定的であった一方、別の意味で意欲が高揚していたかが窺い知れる。さらに当時既にこの後の彼のソロ・アルバムの「ヒッチ・ハイクの賛否両論」のデモも出来ていてメンバーに示していたと言うし、そのエネルギーたるは、やはり若かったんでしょうね。
 そしてメンバーにこの「ザ・ウォール」を選ばせて、これを見方によれば彼の意地で無理矢理完成させたアルバムとしては、その完成度の高さに驚くのである。

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