ジャケ党を泣かせるアルバム(3)~ステファン・ケレッキSte'phane Kerecki & ジョン・テイラーJohn Taylor 「PATIENCE」
Ste'phane Kerecki & John Taylor 「PATIENCE」
Zig-Zag Territores ZZT 110402 , 2011
やや紫がかったブルーを基調とした、この引き潮時と思われる海辺のシーンは印象的だ。このジャケットを見たときに、ジョン・テイラーJohn Taylor のベテラン・ピアニストの名前が目に入ってきた。しかし私のジャズとの接触は、そう広くはないし結構好きなものに偏っての人間で、このステファン・ケレッキSte'phane Kerecki というベーシストは知らなかった(多分このアルバムが4作目?)。どうもフランスはパリでの活躍のようだ。しかしこのジャケの出来と、ベースとピアノのデュオということになれば、とにかく私が聴いてみたいと思ったのは自然の結果でもあった。
さて、内容は左のような12曲。(*印は二人のインプロビゼイション)
スタートの”prologue”がなんとケレッキのベースはアルコから始まって予想と違って驚くが、このジャケのような自然に心奪われるような世界に導かれる。ベースをピアノが追従してゆく形で始まり、次第にベースはフィンガー奏法に変わり、なんとも言えない異空間に誘われる。とにかくこの両者の意気投合は素晴らしい。
2曲目”manarola”は、がらっと変わって、ベースのケレッキの多彩なリズム感ある独奏から始まって、テイラーのピアノも登場し、次第に緊張感ある音に変化してゆく。
3曲目”patience”は、アルバム・タイトルの曲”堅忍”と訳していいのだろうか?、ベースはやや暗めの世界に導くが、不思議にテイラーのピアノが、やや希望ある解りやすい旋律を絡めて面白い。
デュオ作品というだけあって、両者の攻め際が偏らず上手いコンビネーションが出来ている。
ケレッキの現代性を感じられるベース・プレイも技術的挑戦意欲もみれるが、音楽的美しさも心得ているように思う。 特に5曲目の”gary”では、ピアノの美しさには驚きである。テイラーってこんなに人間っぽい美の世界でしたっけ?。まあいい、前衛的なところで攻められるかと思ったら、こんな優しさに私は極めて満足である。
”luminescence”は、両者のセンスの結晶としての光を感ずる。
とにかく年齢は知らないが、このケレッキはまだかなりの若さだと思うが、やはりそれなりにベーシストの世界を探求している姿がありありだ。つまり多くの奏法を編み込んでいる。そのあたりは前衛的でもあり、昔のテイラーのピアノの世界にも共通しているのではないだろうか?。それを知ってか?その姿をサポートしている70歳のテイラーの優しさが溢れた好盤である(おそらく親子の関係といえる歳の差があると思う)。
デュオとしては、それに見合って、それぞれの音がクリアに録音されていてそのあたりも私好み。
このジャケを眺めながら聴く彼らの演奏は、私の気分は最高であった。
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