大人のジャズ・ヴォーカル~キャロル・ウェルスマン Carol Welsman のニュー・アルバム「journey」
相変わらず癖のないヴォーカルを披露
「Carol Welsman / journey」 Justin Time Records JUST 244-2 , 2012
ダイアナ・クラールとよく比較されるカナダのジャズ・ピアニスト・ヴォーカリストのキャロル・ウェルスマンの久々のニュー・アルバム。
前作「I Like Men」(日本編集盤「Memories of You」)はペギー・リーをトリビュートしていただけあってのオーソドックスなスタイルに徹していた彼女であるが、今回もそのパターンは全く変わっていない。(参照:2010.8.28”聴きやすいジャズ・ヴォーカル” http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/carol-welsman-8.html)
ハービー・ハンコックお墨付きのピアノ・プレイは今回も披露しつつ、ヴォーカル・アルバムを作り上げた。
収録曲は左のような全14曲。
今回もバックは自己のピアノにベース(Marc Rogers)、ドラムス(Jimmy Branly)のトリオのパターン。曲によってギター、トランペットが加わる。
このアルバムは彼女の曲はなく、スタンダード・ナンバーに徹している。内容は多彩。
とにかく癖のないそして低音が充実し高音部まで素直な唄い方をする彼女のヴォーカルは、ジャズのお手本的なスタイルである。1996年の2ndアルバム「inclined」では、カナダのジャズ・レポート誌で”ベスト・女性ヴォーカリスト・オブ・ジ・イヤー”に選ばれただけのものがある。その点は一般受けはよいのでは?と思うところであるが、若干寂しいところでもあると言うところ。更に演奏も変な凝り方はなく非常に聴きやすい。
躍動するリズムカルなピアノ演奏の曲”route 66.”でスタートする。そして2曲目”on the road again”とアルバム・タイトルどおりの楽しい旅行がイメージされる。夜のイメージを醸し出す女性ヴォーカルものが多いが(私の趣向はどちらかというとそっちのほうなのだが)、このアルバムは明るい昼間の姿である。しかし悪くはない。
”by the time i get to pnenix”は、じっくりと歌い込む。ピアノのプレイも間をうまくとって美しく旋律を聴かせ、ドラムスのブラッシングやシンバルの音も控えめでよく、私好み。このあたりは大人のジャズ・ヴォーカルそのもの。そんな意味では”two for the road”も同様であり、この曲にはギターも加わって味わい深い。
”samba do avia'o”のサンバもよいが、”travelin light””detour ahead””Si J'Etais un homme”のようなスローな曲はなかなか聴きどころである。
こうしたオーソドックスなジャズ・ヴォーカルも、日本ではもう少し評価し注目されても良いのではと思いつつ聴いているのである。
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