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2012年4月28日 (土)

トルド・グスタフセン・トリオ Tord Gustavsen Trio の「The Ground」, 「Changing Places」~ジャケ党を泣かせるアルバム(7)

過去の美と郷愁と哀愁の2アルバム検証

TORD GUSTAVSEN TRIO 「THE GROUND」
    ECM  ECM1892 B0004123-02 ,  2004
        (Recorded january 2004 , Rainbow Stuudio ,  OSLO)


Theground

 先日紹介したノルウェーのトルド・グスタフセン・トリオの3rd「BEINB THERE」のジャケも素晴らしかったが(参照: 2012.4.11 “美旋律と哀愁の極致” http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/tord-gustavsen-.html )、ここに取り上げる過去の2アルバムもなかなかジャケは注目に値する。特にこの2ndのジャケ・デザインには見事なボケ味の生かされたカットで、自ずから中身の音楽に期待を持たせてくれるのであった。

Tradgustavsen  彼らのアルバムのピアノを中心としての演奏は、その美しさと哀愁と、しかもその品格は極上で、私の秘蔵品といってよい扱いをして来たが、前回3rdアルバムを取り上げた以上、この過去の2作もここで取り上げることとした。

 実は私自身、トルド・グスタフセンにはこのアルバムから入ったのであった。そして彼の全てのアルバムにとりつかれるという結果になってしまったのである。

 トリオメンバーは1stから3rdまで変わっていない。

  Tord Gustavsen : piano
    Harald Johnsen : double-bass
    Jarle Vespestad : drums

Thegroundlist  収録曲は左のとおり。”all composition by Tord Gustavsen”となっており、グスタフセンのリーダー・バンドである。
 導入の一曲目”tears transforming”そして2曲目”being there”は優しくしかも心が洗われるような名曲と言って良い。ピアノ・ソロのような流れにドラムス、ベースが静かに支えていくがごとく演奏である。
 更に5曲目”colours of mercy”、6曲目”sentiment”もタイトルとのものの慈悲、感傷そのものである。
 そしてこの流れは破綻無く、最後まで続くのである。
 
 こうしたタイプのジャズ・ピアノ・トリオものとしては、静かな夜に一人で聴いていれば最高の代物である。ピアノの美しさも絶筆もの。私にとってはこのアルバム以来虜になってしまったわけである。

Tord Gustavsen Trio 「changing places」
     ECM ECM1834 B0000060-02 ,   2003
   (Recorded December 2001 and June 2002 Rainboow Studio ,Oslo )

Changingplaces

 これがこのトリオの1stアルバム。2003年リリースである。私にとっては上に挙げた2nd「THE GROUND」が気に入って即手に入れた。
 やはりこの1stも全くその期待は裏切っていない。2ndは当然この1stが好評で一年という早さでリリースされたのである。

Changingplaceslist この1stの収録曲は左の13曲で、やはり全てグスタフセンの構成によるとされている。
 冒頭の曲”deep as love”から安らぎを誘う。11曲目の”your eyes”も同様だ。
 2曲目、12曲目の”graceful touch”そして9曲目の”where breathing starts”は、いつかどこかで聴いたよな懐かしい旋律がピアノによって流れ、思わず何か自己の過去を思い起こさせるようなところがある。
 このアルバムね全編を通じて”静”であり、”郷愁”、”哀愁”、”癒やし”、”叙情”と言ったところか。

 やはり3rdや2ndもそうであったが、この1stから、トリオといっても全てがグスタフセンの主導で曲作りはされ、彼らのオリジナル曲であるがピアノ・ソロに近い曲が進行して、ドラムス、ベースが前面に出ず、バックを構築している。確かに聴き方によってはクラシック・ピアノ演奏を聴いているような雰囲気にもなる。

 とにかくノルウェーからの極上のピアノ・トリオを我々は聴けるところに感謝したい気持ちである。
 

 

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2012年4月25日 (水)

大人のジャズ・ヴォーカル~キャロル・ウェルスマン Carol Welsman のニュー・アルバム「journey」

相変わらず癖のないヴォーカルを披露

Journey 「Carol Welsman / journey」 Justin Time Records  JUST 244-2  ,  2012

 ダイアナ・クラールとよく比較されるカナダのジャズ・ピアニスト・ヴォーカリストのキャロル・ウェルスマンの久々のニュー・アルバム。

 前作「I Like Men」(日本編集盤「Memories of You」)はペギー・リーをトリビュートしていただけあってのオーソドックスなスタイルに徹していた彼女であるが、今回もそのパターンは全く変わっていない。(参照:2010.8.28”聴きやすいジャズ・ヴォーカル” http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/carol-welsman-8.html
 ハービー・ハンコックお墨付きのピアノ・プレイは今回も披露しつつ、ヴォーカル・アルバムを作り上げた。

Jouneylist 収録曲は左のような全14曲。
 今回もバックは自己のピアノにベース(Marc Rogers)、ドラムス(Jimmy Branly)のトリオのパターン。曲によってギター、トランペットが加わる。
 このアルバムは彼女の曲はなく、スタンダード・ナンバーに徹している。内容は多彩。
 とにかく癖のないそして低音が充実し高音部まで素直な唄い方をする彼女のヴォーカルは、ジャズのお手本的なスタイルである。1996年の2ndアルバム「inclined」では、カナダのジャズ・レポート誌で”ベスト・女性ヴォーカリスト・オブ・ジ・イヤー”に選ばれただけのものがある。その点は一般受けはよいのでは?と思うところであるが、若干寂しいところでもあると言うところ。更に演奏も変な凝り方はなく非常に聴きやすい。

 躍動するリズムカルなピアノ演奏の曲”route 66.”でスタートする。そして2曲目”on the road again”とアルバム・タイトルどおりの楽しい旅行がイメージされる。夜のイメージを醸し出す女性ヴォーカルものが多いが(私の趣向はどちらかというとそっちのほうなのだが)、このアルバムは明るい昼間の姿である。しかし悪くはない。
Carolwelsman6  ”by the time i get to pnenix”は、じっくりと歌い込む。ピアノのプレイも間をうまくとって美しく旋律を聴かせ、ドラムスのブラッシングやシンバルの音も控えめでよく、私好み。このあたりは大人のジャズ・ヴォーカルそのもの。そんな意味では”two for the road”も同様であり、この曲にはギターも加わって味わい深い。
 ”samba do avia'o”のサンバもよいが、”travelin light””detour ahead””Si J'Etais un homme”のようなスローな曲はなかなか聴きどころである。

 こうしたオーソドックスなジャズ・ヴォーカルも、日本ではもう少し評価し注目されても良いのではと思いつつ聴いているのである。

 

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2012年4月22日 (日)

ジャケ買いの極致~FARMERS BY NATURE 「out of this world's distortions」~ジャケ党を泣かせるアルバム(6)

ジャケとのマッチングが見事なフリージャズ

FARMERS BY NATURE 「out of this world's distortion」
      AUM FIDELITY    AUM 067 ,  2011
      ( Recorded June 24, 2010 at Brooklyn, NY )

Outofthisworldsdistortions

 1. for fred anderson
  2. tait's traced traits
  3. out of this world's distortion grow aspens and other beautiful things
  4. sir snacktray speaks
  5. cutting's gait
  6. mud,mapped

Fbnmembers  (members)
   Gerald Cleaver : drums
   William Parker : bass
   Craig Taborn : piano

 ジャケ買いが、こんな刺激的なアルバムに到達するとは思わなかった。久々の興奮であった。やっぱりジャケ買いも失敗も多いが、こんな獲物にも有り付くのだ。アメリカン・ジャズの底力?をみせつけられた思いである。
 
 このアルバム・ジャケの写真は、幽玄であり、静であり、そして緊張感の世界。それが1曲目”for fred anderson”でものの見事にマッチングしている。このごくありふれたピアノ、ベース、ドラムスのトリオであるが、そのメンバーについてはベースにウイリアム・パーカーの名がみえる。彼らは誰がリーダーということはないようだが、この1曲目において完全に彼らの世界に没入させられる。パーカーの弓引きによって描かれる幽玄な世界にピアノの響き、それは次第に霧が晴れていくがごとくに微妙な間をとった流れで進行し、そして最後に補足するがごとくドラムスのプレイによってこの曲は完成する。素晴らしい。
 
Fbn1st_2  とにかく彼らは左の「FARMERS BY NATURE」(AUM Fidelity, AUM 053, 2009年)というアルバムでデビューして、この2ndアルバムをリリースしたのだ。つまり1stのアルバム・タイトルが、時にあることだがこの2ndではバンドの名前となった。
 さてこの2ndの話に戻るが、2曲目”tait's traced traits”にはがらっと変わって、三者のバトルに近いフリー・ジャズの刺激的展開に圧倒される。これだけそれぞれが独自の複雑な緩急がその絡みによって構築された一体感が凄い。それは18分を超える。
 3曲目”out of this world's distortions grow aspens and other beautiful things”には、今度はベースのフィンガー・プレイでのスタートではあるが、再び1曲目の深遠な世界に戻り、追従してピアノがデリケートな響きによって世界の歪みを超越する芽生える姿が迫ってくる。ここにポジティブな世界観が読み取れる。この曲名の前半部分がアルバム・タイトルとなっているのだ。
 5曲目の”cutting's gait”は、2曲目と対を成してこのアルバムを形作っている。
Williamparker3  最終曲”mud, mapped”では、やはり弓弾きベースが深遠な世界に導き込み、スリリングなピアノ、連打のドラムスが異様な世界と現実との境に我々を置いていく。後半の盛り上がりが素晴らしい。最後は弱音で幕を閉じる。

 このアルバムは、取りあえずは強者(つわもの)のトリオのフリー・ジャズであって、久々にこのタイプに接する機会となって、私自身にも強烈な刺激が伝わってきたのである。 流れとしては、やはりベースの位置が大きく、続いてドラムス、そしてピアノといった感じである。
 このピアノ・ベース・ドラムスのトリオによるジャズ世界は、先頃紹介した私の愛するトルド・グスタフセンのトリオものとは世界観に於いて相対する位置にあると言えるが、しかしそこにはジャズの奥深さを感じざるを得ないのである。これも一つのジャケ買いの始末記であった。

 

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2012年4月19日 (木)

ホリー・コールHolly Cole のニュー・アルバム「STEAL THE NIGHT」

なんと、映像付き(CD+DVD)のライブ・アルバムが登場

Stealthenight 「HOLLY COLE / STEAL THE NIGHT」 Alert 61528-10449  ,   2012  (Recorded Live  at Glenn Gould Studio, Toronto, Ontario, CANADA , 8.11.11)

 ホリー・コールHolly Coleは昨年来日を記念して日本版ベスト・アルバム(「私の時間」)をリリースしているが、実は彼女も50歳になろうとしているわけで(1963年カナダはノヴァ・スコシア洲、ハリファックス生まれ、しかしあのジャケ写真は若すぎる)、ここにライブ・アルバムのニュー・アルバムが出るとは実は思っていなかった。しかもCD+DVDで、映像ものが主力になっていて驚きである。昨年収録のライブ映像で、5.1サラウンドものと来るから私にはたまらないプレゼントである。
 カナダは最近ジャズ界に於ける活動は盛んで、特に女性ヴォーカルものは勢いがある。そんな中でも歴史的には彼女は先陣を切ったほうで、現在の多くのものに影響を及ぼしている。

Stealthenightlist1  さてこのアルバムは、彼女としては15枚目になるという。特にニュー・ソングというよりは、過去に評判の良かったもののライブものと考えて良い。なんと言っても”calling you”は、是非又聴いてみたい曲であるが、ここに彼女のキャリアを凝縮して4曲目に登場する。
 収録曲は映像ものDVDでは左のように12曲。
 スタートは勢いのよい”charade”で登場。この曲順はステージのそのものでなく編集したもの。曲調が急緩の交互配列になっている。諸々のところでの写真を見ると、彼女も相当なオバさんになっていると思っていたが、このステージの姿を見ると年齢相応といえばそうだが、思いの他元気で若いとも言える。声量も十分あるし、例のごとく曲の内容や編曲による唄の表情は、多彩に変化する。それは相変わらずの変幻自在で、低音にはボリューム感たっぷりで高音部の変化もホリー・コール節そのものがここでも観て取れる。
 ”good time charlie”ではピアノとベース主体のバック演奏で、今度はしっとりと歌い上げる。
 彼女はもともとジャズ・ヴォーカリストということになるが、ジャンルはそれに止まらずオルタナティブな感覚も身につけているところがミソ。
Stealthenightlist2  ”smile”もピアノとベースのリズムの刻みが面白く、それにスローに歌うホリー・コール独特の歌い回しで彼女の唄に仕上げているところが見事。
 あの”tea for two”も、こうゆう曲になってしまうのかというほど、編曲と唄の妙が聴ける。
 ホリー・コールの曲”you've got secret”は、比較的シンプルなベースとクラリネットの落ち着いたバック演奏ににのっての彼女の語り唄は、やっぱり大人の味が十分に感じられ、私はつい乗ってしまう。

 とにかく予期せぬ映像を加味したニュー・アルバムの登場で、昨年日本に来ての活動ががあったとは言え、ここにホリー・コールの健在ぶりを十分感じ取れた。
 ただ、欲を言えば彼女のセンスを生かした新曲のニュー・アルバムも欲しいところでもある。

参考:2012.1.8 「不思議な魅力を醸し出す~ホリー・コール」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/holly-cole-9b3c.html

(members)
   Holly Cole : vocals
   Aaron Davis : piano
   David Piltch : bass
   David Direnzo : drums
   John Johnson : all horns
   Robert Pilth : guitars

Stealthenightband

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2012年4月16日 (月)

ニコレッタ・セーケNikletta Szökeのニュー・アルバム「Inner Blaze」

相変わらず独特の節回しで・・・・・・・

Innerblaze 「Nikoletta Szöke / Inner Blaze」 ATELIER SAWAMO AS119 ,  2012

 前作「Shape of My Heart」のジャケが抜群に良くて、つい手を出したこのハンガリーのニコレッタ・セーケのアルバム(参照 2011.5.9「ハンガリーからの女性・ジャズ・ヴォーカル」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/nikoletta-szoke.html)、あれから一年、早くも5thアルバムの登場だ。
 今回も、バックはラカトシュ Robert Lakatos のピアノ・トリオで同じである。ただし曲によってギターとサックスが加わった。
 前作の私の感想としては、”ピアノ・トリオ・アルバムに彼女のヴォーカルが添えられた”といったところに結論づけた。今作も同様ではあるが、かなり彼女のヴォーカルが前作よりは前に出てきている。それでもやはりラカトシュLakatosのピアノは雄弁だ。
 アルバム・タイトルの意味は”内なる炎(情熱)”といったところだろうか?。

Innerblazelist 収録曲は左のとおりで、12曲中8曲はカバー曲。残る4曲はラカトシュらの曲で、彼女の英語での詩Lyricsである。

 しかし相変わらず彼女のヴォーカルはサラっとしている。又その節回しが、ハンガリー人である為かどうかは解らないが、一種独特。そのため今まで聴いていた曲も別の曲のよう聴こえるのだ。
 今回もStingの曲が登場する。私にとってはエヴァ・キャシディで気に入っている”Fields of gold”だ。これがあまりにもエヴァの印象が強いためどうもしっくりこない。しかしこの曲の異なったイメージこそが実はニコレッタ・セーケであると言ってよいのかも知れない。何か仕事をしながら呟いているようなヴォーカルなのである。
 3曲目の”Contemplation”がなかなか聴きどころである。この雰囲気は如何にも東欧の世界。ピアノが美しいし、サックスが歌う。そしてそれに追従して彼女のヴォーカルが聴き慣れない節回しを楽しませてくれる。
 ”charade”も中間部のバンドの演奏がなかなか魅力的。

Nikolettatrio アルバム・タイトル曲の”Inner Blaze”は、これも旋律の流れが異様である。多分このトリオの世界であろうが彼女がよくつきあっているなぁ~と思うところは次の”Vision”、ラストの”mornings to remember”においても同様だ。ヴォーカルがどこか音程が狂ったごとくに流れていく。つまりトリオ演奏にヴォーカルを付けたという感じなのだ。しかし彼女の声は下手な細工がなくて素直でよい。これが魅力と言えば魅力と言えないこともない。いやはや不思議なジャズ・ヴォーカルの世界である。

 (members)
   Nikoletta Szo"ke : vocal
   Robert Lakatos : piano
   Jo'zsef Horva'th Barcza : bass
   Andra's Mohay : drums
   Ma'rton Fenyvesi : guitar
   Ga'bor Balla : Saxophone

 澤野工房がいやに力を入れているニコレッタ・セーケ、実はこの彼女のアルバムは、聴きこんでゆくと意外に癖になるという代物なのでもある(余談だがこのニュー・アルバムのジャケは、残念ながら前作のような魅力的なものではなく平凡なもの)。

 

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2012年4月13日 (金)

ご機嫌な春~ニッキ・パロットNicki Parrott 「さくらさくら SAKURA SAKURA」

さくら満開の春に・・・・・

Sakurasakura 「Nicki Parrott / SAKURA SAKURA  さくら さくら」 VENUS RECORDS VHCD-1068 ,  2012

 このアルバム、実は買おうか買うまいか迷った上に結局買ってしまったもの。
 オーストラリア出身でニューヨークで活躍中のベーシスト&ヴォーカリストのニッキ・パレットについては、ここでは何度か取り上げているので細かいことは省略するが、このところはヴォーカルがかなり前面に出てきた感もある。

 まあ、かってはベーシストとしての出番が主力であったものから、意外にも魅力的なヴォーカルと愛嬌ある顔立ちとでこうした方向に向いてきた。
 このニュー・アルバムは自分のジャズへの探求から来たものというよりは、明らかに売りを考えてのシーズンにマッチさせてのアルバムというところはみえみえで、私は若干購入に躊躇したというわけである。

 この日本のVENUSレコードの企画で、少々値段も高い。それはまあよいとしても、私の好みはあまり脳天気に明るいジャズは好まないために買い控えていた訳であるが、やっぱり春が訪れて桜も咲くと人間やっぱり気持ちは高揚するのだろう、買ってしまったというわけである。

Sakuralist  収録曲は左のとおりスタンダード・ナンバー集。やっぱり最初の注目は5曲目の”さくらさくら”であるが、ブーンブーンとベースが響き、ギターによる伴奏で彼女の歌が始まる。どうもチェロの音も入っているが、それなりに日本のムードはでているのかなぁ~~と思うが、ウグイスの鳴き声まで入ってご愛敬。
 なにせ、昔はペレス・プラードの演奏で楽しんだと言うかそれで私は育ったような”チェリー・ピンク・マンボ”の”チェリー・ピンク・アンド・アップル・ブロッサム・ホワイト”まで3曲目に登場するが、このあたりは春の明るさってところでしょうね。
 
 私としてはスローなバラード調が好みであり、6曲目”some other spring”、8曲目”spring can really hang you up the most”、11曲目”there'll be another spring 春はまた来る”あたりがこのアルバムでは良かったと言うところか。こうして聴いてみると立派なスタンダード・ジャズ・ヴォーカル・アルバムであった。

 それでも7曲目”i love paris”は、期待以上に思いの外に愛嬌があった。10曲目の”suddenly it's spring”のリズムカルなプレイも楽しんで欲しいところ、春ですから。

Nicki6b  とにかく春ですね。というところでこうしたアルバムも悪くはないなぁ~~と言っておくが、そうレベルの高さを期待しないで、取りあえず文句は言わずに、今年の春以降の日本の高揚も期待して受け入れましょう。

(members)
   Nicki Parrott : Vocal & bass
   John Di Martino : piano
   Paul Meyers : guitar
   Lisa Parrott : soprano & bariton saxophone
   Tim Horner : drums
   Dominick Farinacci : trumpet
   Martin Wind : cello

(参照:ニッキ・パロットに関する過去のアーテイクル)
2010.5.15 「Black Coffee」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/nicki-parrott-b.html
2010.5.21 「過去の2アルバム検証」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-da7d.html
2011.2.19 「Like a Lover」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/nicki-parrott-l.html
2011.9.30 「君の瞳に恋してる」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/nicki-parrott-7.html

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2012年4月11日 (水)

美旋律と哀愁の極致=トルド・グスタフセン・トリオ Tord Gustavsen Trio ~ジャケ党を泣かせるアルバム(5)「BEING THERE」

TORD GUSTAVSEN TRIO 「BEING THERE」
ECM Records,   ECM 2017 B0008757-02 ,  2007

Beingthere

 トルド・グスタフセンTord Gustavsen はノルウェー出身(1970年生まれ)のジャズ・ピアニスト。とにかく彼のピアノはわかりやすい旋律、そしてその美しさには定評がある。北欧の哀愁といってもよい世界を持っている。どうゆう訳か、日本人にとってはこの世界はたまらないという人が多い。彼の近作ではカルテットのアルバム「WELL」(2012)があり、これもなかなか良盤。しかし私はもともとジャズ・ピアノではトリオものが好きであるので、取りあえずは、このアルバムから取り上げる。
 彼のピアノ・トリオのアルバムは、2003年から3枚あるが(Changing Places」2003年、「The Ground」2005年)、これは2007年の3枚目。
 いずれのアルバムも素晴らしく、又ジャケ・アートは魅力的。その点もここで取り上げることになった一つのきっかけでもある。
   (members)
    Tord Gustavsen : piano
    Harald Johnsen : double-bass
    Jarle Vespestad : drums

Tordgustavsen

 このトルド・グスタフセンは、私の好きなピアニストの一人であるが、ノルウェーのトロンハイム音楽院とオスロ大学でジャズを学んだ逸材。しかもそのジャスに専念する前には心理学を学んで学位を取得しているというインテリでもある。現在はオスロに住んでジャズ・ミュージシャンとして活動中。

 いずれにしてもメロディーを重きをもっての彼のピアノ・プレイは、静かにゆったりとそして一つ一つの音を大切に余韻を持たせながら演奏する。ジャズのテクニカルな展開を前面に出すと言うよりは、内省的な旋律を聴かせ、人生を語るがごとくのピアノの響きは我々の心を打つというタイプ。

Beingtherelist 収録曲は左の13曲。ECMらしい好録音でもある。
 1曲目の”at home”を聴くと、ゆったりと美しいクラシック・ピアノ・ソロを聴くかのごとく感覚になる。その旋律も懐かしき過去を回想させるがごとく心を引きつける魅力あるもの。ベースとブラッシングによるドラムスも静かにサポートする。
 この13曲中7曲目の”karmosin”以外は全てこのピアニストのグスタフセンによるコンポジションと記されている。しかしこの”karmosin”も珍しくドラムスの音からスタートし、ベースがリズムを刻み、ピアノが静かにゆったりと旋律を奏でるという形をとるが、やはりピアノの美しさは一つも崩れない。

Tgtrio  2曲目”vicar street”、8曲目”still there”、11曲目”around you”の3曲はまさに過去から未来に通ずる美しさのこのトリオの真骨頂。
 ”vesper”は静の極致、最後の曲”wide open”は彼らの”美”を発展的に纏めている。
 
 ジャズと簡単に言っても多種多様であるが、このピアノ・トリオのアルバムは、静かな夜遅くに一人でしみじみと聴くのには最高のものと言える。このアルバム以前の2枚のトリオものも素晴らしいので、追ってここで紹介したい。

(視聴)

 

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2012年4月 6日 (金)

ケイティ・メルアKatie Melua ニュー・アルバム「SECRET SYMPHONY」登場

マイク・バットMike Batt のプロデュースでの奮起は??

Secretsymphony 「KATIE MELUA / SECRET SYMPHONY」 DRAMATICO  DRAMCD0078  ,  2012

 取り敢えず3年ほど前から私の注目している英国のケイティ・メルアだが(”ケイテイ・メルアの世界”2009.7.28 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-bdf3.html)、彼女のニュー・アルバムの登場だ。前作「the house」は2010年のリリースだから、既にあれから2年近くなるんですね (2010年8月に取り上げているので参照して欲しい=”ニュー・アルバム「the house」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/the-house-cb90.html)。
 これはスタジオ・アルバムとしては5thアルバムとなるが、前作では自立し卒業したかに見えた師匠のマイク・バットのプロデュースによってのお目見えだ。

 確かに、前作「the house」は、100%ケイティ・メルア自身の曲によって作られていたが、残念ながら良くできたアルバムであったが、話題性はあまりなかった。
 その為かどうか解らないが、今回のアルバムは、過去に世話になったマイク・パットに全面的にゆだねられている感がある。まあ、つまり彼からは卒業できなかったと言うところであろう。それも、昨年一年を通して英国ではアデル旋風が吹き荒れて、こうしたややJazzyなポピュラー派は相当な影響を受けたであろう事が想像されるところ。

Secretsymphonylist  曲は左の11曲であるが、彼女自身はシンガーソングライターであり、自己の曲も多いと思うが、このアルバムでの登場は3曲で、しかもその内の2曲は、マイクの世話になっている。一方マイクの曲は4曲と多く、更にケイティの曲2曲に彼が関係している。バック・オーケストラもマイクの指揮によっていて、実質彼の作品と言うところ。
 歌詞はアルバムのブックレットには載っておらず、彼女のホーム・ページに載せてあるという手法をとっている。

 全体の印象は、かなり落ち着いたやや大人っぽくなったケイティ・メルア(1984年グルジア生まれであり今年ようやく30歳になる)のヴォーカルを中心に、バックはオーケストラが美しく流し、ギターが印象的な曲作りをしている。ジャズっぽい面はあまりない仕上げ。
 相変わらずケイテイの唄は、嫌みのないややあどけなさの残った声で、聴く者にとっては安堵感に繋がってゆく。又グルジアの悲劇を克服してきた彼女の姿から、なぜか美しい中に哀愁を感じてしまうのは、私だけであろうか。
 ただし、このDRAMATICOは、なかなか録音の質は常にハイレベルにある。。

Katie5  かってエリザベス女王にお墨付きをもらったというのが彼女のキャチ・フレーズであるが、それだけその唄には品があると言ってもいいのであろう。

 このアルバムの印象も極めて好感の持てる曲の集合体といったところ。ただしこの曲が看板作というパンチの効いたものは今回は感じられなかった。彼女のアルバムとしては平凡な部類かもしれない。
 ただ不思議なのはマイク・パットの曲の後にケイティ自身の曲が来ると、彼女の曲が引き立つという現象が起こる。これは過去に於いてもそうであったのだが、やっぱり相性が良いというところなんでしょうね。

 いずれにしても、女性ヴォーカル・アルバムとしては良質の一枚であることは事実。しかし残念な事に、これはそうした評価で終わってしまいそうなのだ。つまり過去のケイティ・メルアの世界から一歩発展性が見て取れなかった。私的にみた期待度は、もう少しジャズの世界に足を踏み込んでほしいと言うところ。つまり、ここらあたりで一歩前進しないと、これで終わってしまいそうなのである。

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2012年4月 4日 (水)

ジャケ党を泣かせるアルバム(番外編)~メセニー&メルドー「METHENY MEHLDAU QUARTET」

ギターとピアノのデュオの発展型としてのカルテット

Mmquartet_3 「METHENY MEHLDAU QUARTET」 Nonesuch Records  NONESUCH 104188-2 ,  2007

 前回、メセニーPat Metheny のソロ・アルバムを取り上げた中で、是非とも彼のギターのジャズ界に於ける活躍を感じ取れるアルバムとして、このメルドーBrad Mehldou のピアノとの共演を取り上げたので、少々このアルバムを整理しておく。

 もともと両者の共演はメセニーのプロデュースによって2006年にリリースされたデュオ・アルバムの「METHENY MEHLDOU」 ( WPCR-12454 , 2006 ) の成功だった。そして一年後にメルドー・トリオにメセニーのギターが乗ってのアルバムが、この「QUARTET」だ。

  (members)
    Pat Metheny : Guitar
    Brad Mehldau : Piano
    Larry Grenadier : Bass
    Jeff Ballard : Drums

Mmquartetlist 収録は左の様に11曲。
 メセニーが7曲、メルドーが3曲、両者で1曲という内容。
 カルテットであり、リズム隊がしっかりバックを出しゃばらずに支えているため、メセニーのギター、バルドーのピアノが凌ぎを削って襲ってくる。しかしその様は面白いようにお互いに融合しての何かを求めているが如くの曲作りにひきこまれる。パターンはやっぱりフュージョンの世界である。
 3曲目”fear and trembling”では両者のバトル様のアクティブな演奏が展開して、その後の4曲目”don't wait”は、ピアノが美しく、又7曲目”en la tierra que no olvida”は、ギターの美しさと引き続いてのピアノの美しさ、そして後半には交互に変わる主役の美も面白い。

Patmethenybradmehldau

 貫禄のメセニーに、若きパワーのメルドー(若いと言っても1970年生まれであり、この時は30歳後半)のコンビとはいえ、メセニーのフュージョンの世界はやはりメルドーの刺激になるのであろう。スタート曲”a night away”にみるように、両者のバランスに乱れなく、彼らの世界はこれなんだと言っているような展開は、古くからのコンビのようにも聴けてくる。
 ”the sound of water”の1曲のみではあるが、メセニーが42ストリングス・ギターを美しく聴かせる。もう1~2曲、このパターンも聴きたかった。それでも”serect beach”では、スローなペースで、ギター・シンセによる美しい音はやっぱり聴きどころでもあり、それに美しさで輪をかけてゆくメルドーのピアノもなかなか聴き応えあって、私にとっては好きな曲。

 このところのメセニーの話題に、数年前の気になったアルバムを取り上げてみた。

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2012年4月 2日 (月)

ジャケ党を泣かせるアルバム(4)~パット・メセニーPat Metheny 「WHAT'S IT ALL ABOUT」

PAT METHENY 「WHAT'S IT ALL ABOUT」

           Nonesuch Records   NOUNESUCH 527912-2 ,  2011

Whatsitallabout

 このジャケは、まさに”ザ写真”と言ったところですね。夜景にて光る街灯、そして濡れた路面、路面の電車レールに歩く一人の影。
 こうゆうのは、見ただけで私の場合は、中身はどうあれ買ってしまうアルバムです(笑)。
 このパット・メセニーPat Metheny というのは、パット・メセニー・グループのリーダーであるギタリスト。2006年にはピアノとのデュオ”パット・メセニー&ブラッド・メルドー”で話題になったが、このようなソロ・ワークスがある。

Pat_metheny2

 彼は1954年にアメリカ、カンサス・シティ生まれ、13歳からギターを独学で始めたとの紹介がある。ゲイリー・バートンに寄り添い、そして彼の推薦で18歳でバークリー大学の講師も務めたという。1978年には、ギター、ピアノ、ベースのトリオを中心としたパット・メセニー・グループを結成して活動を展開。
 彼のミュージックを表す言葉として、あるところで・・・・”ジャズとフュージョンの間に横たわる壁に風穴を開け、新風を吹き込んだ両階級統一チャンピオン・ギタリスト”  と、紹介されていたが、なるほどこのアルバムよりも過去のアルバムにそれは感ずるところがある。

Whatsitallaboutlist2  さて、このアルバムは彼のバリトン・ギターのソロ作品である。収録は左のような10曲。ポール・サイモン、バート・バカラック、カルロス・ジョビンなどの曲を多重録音overdubsなしのストレートな独演である。ジョン・レノンとポール・マッカートニーの”and i love her”が最後に演奏されている。

 冒頭の”the sound of silence”など聴き慣れた曲であるが、このギターの音の良さと、彼なりきの演奏で新しさを感ずる曲に出会える。やはり売れっ子であるだけの曲仕上げに納得のところだ。
 このジャケの素晴らしさがなければ、多分私は買わなかったアルバムであるが、こうして手にしておいてよかったと思うところ。
 特に”garota de ipanema”の仕上げには驚く。間のとり方の説得力とこの曲の変化とはメセニーの真骨頂なのであろう。続く”rainy days and mondays”の彼の捉え方にも脱帽、はっきり言って原曲とは違った世界に導かれる。とは言っても全編難しさはない。気楽に聴いていてよいというアルバムでしょう。
 約50分の収録時間であるが、やはり全曲がこのパターンであるので、通してアルバムを聴いていると若干後半マンネリ感に陥る。これは仕方のないところであろうか。

Mmquartet2  左は、私の過去に聴いたメセニーのブラッド・メルドーBrad Mehldauトリオとのコラボ作品。

「METHENY MEHLDAU QUARTET」 Nosesuch Records  NOSESUCH 104188-2  ,  2007

 このジャケも、森林限界を超えた荒涼とした高山の1カット。なかなか印象深いもの。
 このアルバムはメルドーのピアノ・トリオにメセニーが、42ストリングス・ギターやギター・シンセなどで弾きまくっているが(Acousギターは一曲のみ)、こちらのイメージがどちらかというと、私にとってはメセニーの印象であった。ギターとピアノのコラボはいいですね。これは好きなアルバムであるのでここに付記しておく。

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