美旋律と哀愁の極致=トルド・グスタフセン・トリオ Tord Gustavsen Trio ~ジャケ党を泣かせるアルバム(5)「BEING THERE」
TORD GUSTAVSEN TRIO 「BEING THERE」
ECM Records, ECM 2017 B0008757-02 , 2007
トルド・グスタフセンTord Gustavsen はノルウェー出身(1970年生まれ)のジャズ・ピアニスト。とにかく彼のピアノはわかりやすい旋律、そしてその美しさには定評がある。北欧の哀愁といってもよい世界を持っている。どうゆう訳か、日本人にとってはこの世界はたまらないという人が多い。彼の近作ではカルテットのアルバム「WELL」(2012)があり、これもなかなか良盤。しかし私はもともとジャズ・ピアノではトリオものが好きであるので、取りあえずは、このアルバムから取り上げる。
彼のピアノ・トリオのアルバムは、2003年から3枚あるが(「Changing Places」2003年、「The Ground」2005年)、これは2007年の3枚目。
いずれのアルバムも素晴らしく、又ジャケ・アートは魅力的。その点もここで取り上げることになった一つのきっかけでもある。
(members)
Tord Gustavsen : piano
Harald Johnsen : double-bass
Jarle Vespestad : drums
このトルド・グスタフセンは、私の好きなピアニストの一人であるが、ノルウェーのトロンハイム音楽院とオスロ大学でジャズを学んだ逸材。しかもそのジャスに専念する前には心理学を学んで学位を取得しているというインテリでもある。現在はオスロに住んでジャズ・ミュージシャンとして活動中。
いずれにしてもメロディーを重きをもっての彼のピアノ・プレイは、静かにゆったりとそして一つ一つの音を大切に余韻を持たせながら演奏する。ジャズのテクニカルな展開を前面に出すと言うよりは、内省的な旋律を聴かせ、人生を語るがごとくのピアノの響きは我々の心を打つというタイプ。
収録曲は左の13曲。ECMらしい好録音でもある。
1曲目の”at home”を聴くと、ゆったりと美しいクラシック・ピアノ・ソロを聴くかのごとく感覚になる。その旋律も懐かしき過去を回想させるがごとく心を引きつける魅力あるもの。ベースとブラッシングによるドラムスも静かにサポートする。
この13曲中7曲目の”karmosin”以外は全てこのピアニストのグスタフセンによるコンポジションと記されている。しかしこの”karmosin”も珍しくドラムスの音からスタートし、ベースがリズムを刻み、ピアノが静かにゆったりと旋律を奏でるという形をとるが、やはりピアノの美しさは一つも崩れない。
2曲目”vicar street”、8曲目”still there”、11曲目”around you”の3曲はまさに過去から未来に通ずる美しさのこのトリオの真骨頂。
”vesper”は静の極致、最後の曲”wide open”は彼らの”美”を発展的に纏めている。
ジャズと簡単に言っても多種多様であるが、このピアノ・トリオのアルバムは、静かな夜遅くに一人でしみじみと聴くのには最高のものと言える。このアルバム以前の2枚のトリオものも素晴らしいので、追ってここで紹介したい。
(視聴)
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コメント
これいいですね。13曲全部聴いちゃいました。この共通して漂う気だるさは「大人の別れ話」みたいな印象で私は好きです。久々にステレオで聴きたくなりました。
投稿: /ten | 2012年4月12日 (木) 01時12分
/tenさん、コメントどうも・・・有り難うございます。このアルバムは私の秘蔵品の一つです(笑)。最近このブログはそろそろ締め時かなぁ~~とも思いつつ(または少し方向転換かなぁ~~?)、取り上げました。
そうそう、このジャケもいかがですか?、遠くの雲の切れ目に少し光が見えるところがニクイのですが・・・・?。
投稿: 風呂井戸 | 2012年4月12日 (木) 09時12分
こちらで紹介されるアーティストは知らない人が多いのですが、それをキーワードにYouTubeで検索すると大概聴けるのを知ってよく利用しています。それぞれに好みもあろうかと思いますが、なかなか自分の壺に納まる出会いも少なくなってきているので、スローペースでも続けて頂いた方がありがたいと思います。
ジャケの写真は面白いと思いますが、このトリオが奏でるイメージとの重ね方が私にはなかなか上手くいかないのです。煩悩を越えたスケール感いう意味にも感じますが、ネガティブなポジティブみたいなイメージでしょうか、なんか上手く言えません。
投稿: /ten | 2012年4月12日 (木) 13時31分
/tenさんのおっしゃるとおり、このジャケの写真と彼らの音楽とのイメージは合わないと言えば合わないほうですね。
(/tenさんの2011年7月17日の#102の方が、このアルバムのジャケには合うかも知れないと思うのですが・・・・)
まだ書きたいアルバムが積もっていますので、もう少し・・・・気ままにやりますか。
投稿: 風呂井戸 | 2012年4月12日 (木) 21時07分
#102>
ははは、なるほど、そう言われればそうかもしれません。
面白いのはどちらも明るめの曇天なこと。
憂鬱で孤独で静寂で・・・でも不思議と not negative。
無情ってことなのでしょうか。
投稿: /ten | 2012年4月12日 (木) 22時05分
通りすがりです。トルドさんを検索したら。
いいですね。感動しました。
投稿: xys | 2014年12月25日 (木) 20時48分