絵画との対峙-私の愛する画家(2) 「安藤育宏」
偶然の再会によって・・・・・
好きな絵画との出会いは私の場合大抵偶然だ。もともと絵画は自分で描きたいほうであり、そんな為か特に名を馳せた人の絵画鑑賞というよりは、あゝこんな絵が描けたらなぁ~と思う絵に注目してしまう。前回紹介した”相原求一朗”もそうであったが、実は今回取り上げる”安藤育宏(やすひろ)”は、昭和50年代だったろうか、絵画の材料を求めてある画材店に足を運んだ際に、偶然壁に掛けてあったSM(thumb hole 227×158mm)の小さい絵によって私との関係が始まった。それが”安藤育宏”の「シャルトル早春」であった。(画像はクリックにて拡大します)
←安藤育宏「シャルトル早春」 (SM)
これが、その絵画であるが、現在の私の部屋の壁にこのようにある。その出会いの時、比較的若い店主に値段を聞くと思いのほか高い。しかし私はこのキャンバス上の絵具の乗せ具合に惚れてしまった。多くの色を画面上で重ね合わせて行き、各色を生かしながら見た目に一つの色合いを感じさせる。
私はあまり当時絵画を買いたいとは思っている方でなく、むしろ自分の趣味の作画に参考になるような絵を眺めていればよいほうであった。この時は、小さい絵であるし、値段的にも対応できるかなと思い、ふと欲しい気持ちが湧いて、価格交渉して結局手に入れた。店主もフランスのパリ郊外のシャルトルに行って来て思い出もあり、この絵に日本で出会ってイメージが気に入って仕入れてきたと言っていたものである。
そしてキャンバス裏に記載されている作者の名前も見たのみで記憶に止めていなかった。それほど私は画家が誰ということには興味も無く、むしろ”この絵は自分にとって感動するかどうか”という事のみであったのである。 さて、その後20年ぐらいの月日も経って、軽井沢にふらっと出かけた際に、あるホテルで絵画の展示販売会をしていた。そこで見渡すと、F4号という小さめの絵であるが目にとまった。これもその色の乗せ具合と全体のイメージが気に入って衝動買いした。
←安藤育宏「風車(オランダ・キンデンダルク)」 (F4号)
(こう話をしていると、私はよく絵画を買っているように聞こえるが、そうではなくてその気で買った3枚目がこれである)
ところが、その作品が偶然にも安藤育宏作で、なんと20年前に買ったものと同一の人であったのである。まさに驚きの偶然であった。このために一気にこの作家に興味を抱くことになったのである。
安藤育宏(あんどうやすひろ) (1933-2010)
1933年 宇都宮市生まれ
1956-1960 一水会展に出品
1962- 白日会展に出品(奨励賞他受賞、2004年中沢賞受賞)
1976- 日本橋三越他にて個展32回
フランス・イタリア等外遊15回
白日会委員・審査委員
日本美術家連盟会員
千葉県松戸市に住み地域での絵画活動も盛んであった
安藤育宏「雨上がり・PARIS」 2004 油彩・キャンバス 97×130㎝
第80回白日会出展(中澤賞受賞)
(「日本の美術 画家が描いたヨーロッパ」 2004 美術年鑑社 より )
私が惹きつけられる魅力は、キャンバス上の色彩の表現にある。多彩な色の純度が高く、それをキャンバス上で重ねていく。そして作り上げる色彩は深みとマチエールの美しさが何とも言えない魅力だ。
安藤育宏「レストランのある通り-パリ・モンマルトル」 1983 油彩・キャンバス F15号
(私の所蔵品 ↑)
これは、なんとか手に入れられた作品。タイトルどおり、モンマルトルの通りに面した味のある建物のレストランを描いている。日本人にとってはパリの一つの魅力でもある歴史ある美しい建物の並ぶ通りの一風景であるが、その情景を非常によく感じ取れる。彼は決してたゞ写実的に描くのでなく、印象を表現する色彩の妙が私にとって魅力なのだ。
現在は、生前彼の住んでいた千葉県松戸市関係に、画伯としての活動によりその流れを受けた人々が絵画を愛した活動を展開している。
安藤育宏に関しての私の持っている情報は少ない。一昨年に亡くなられて、私も諸々の情報を得る機会を失ってしまっている。しかしこうして残された作品には彼の心が見えて実に私は嬉しいのであるが、どなたか何かを教えてくれると有り難いのであるが・・・・・。
| 固定リンク
« サンタナSANTANAの久々のオリジナル・ニュー・アルバム「SHAPE SHIFTER」 | トップページ | コリン・バロンColin Vallon のジャズ・トリオ活動は期待株「Rruga」~ジャケ党を泣かせるアルバム(8) »
「文化・芸術」カテゴリの記事
- ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 映像盤「US + THEM」(2020.10.05)
- 白の世界 (その1)5題 / (今日のJazz)大橋祐子Yuko Ohashi Trio 「BUENOS AIRES 1952 」(2019.02.26)
- 平成の終わりは平和の終わりでは困る? 2019年米国と日本の不安(2019.01.08)
- ロジャー・ウォーターズの世界~ストラヴィンスキー「兵士の物語The Soldier's Tale」(2018.11.03)
「趣味」カテゴリの記事
- 山本剛 TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO 「 REQUESTS - Tsuyoshi Yamamoto Trio LIVE」(2025.03.13)
- 「ジャズ批評」誌=ジャズオーディオ・ディスク大賞2021 (追加考察) セルジュ・ディラート Serge Delaite Trio 「A PAZ」(2022.03.19)
- MQAハイレゾで蘇る・・(1) シェルビィ・リンShelby Lynne 「Just A Little Lovin'」(2021.09.18)
- ハイレゾHi-Res音楽鑑賞「MQA-CD」 = そして スーザン・ウォンSusan Wongの3アルバム(2021.08.13)
- 2020-2021 冬の想い出 (3)(2021.04.24)
「絵画」カテゴリの記事
- 中西繁傑作作品「雨の舗道」(2018.05.26)
- 抵抗の巨匠・アンジェイ・ワイダの遺作映画「残像」(2018.03.05)
- 中西 繁「哀愁のパリ」油彩画展からのお話(2015.10.08)
- 男のロマンのエッセイ集:中西繁著「À Paris~ゴッホの部屋の日々」(その2)~映画「男と女」(2015.03.12)
- 男のロマンのエッセイ集:中西繁著「À Paris~ゴッホの部屋の日々」(2015.03.06)
「私の愛する画家」カテゴリの記事
- 中西繁傑作作品「雨の舗道」(2018.05.26)
- 中西 繁「哀愁のパリ」油彩画展からのお話(2015.10.08)
- 男のロマンのエッセイ集:中西繁著「À Paris~ゴッホの部屋の日々」(その2)~映画「男と女」(2015.03.12)
- 絵画との対峙-私の愛する画家(5) 「五十畑勝吉」(2012.06.13)
- 絵画との対峙-私の愛する画家(4) 「三塩清巳」(2012.05.30)
コメント
15,6年前、池袋三越で安藤画伯の絵を見入っていたら、隣から、”この絵がお好きですか ”と言う老紳士。 彼が、安藤画伯、その人でした。
ヴェネテイアの風景画で、画伯もその自分の画は
時間を掛けて描いたもので、売り物ではないんです、とのこと。 気に入ったので、頼み込んで譲ってもらいました。 小さな絵ですが、大事にリヴィングに飾っています。その翌年、三越で又会えると思っていましたら、その後消息が分らず、亡くなっていたのですね。 再会したかったのに、です。
投稿: KEN SATO | 2015年6月 1日 (月) 08時13分
KEN SATO さん、コメント有り難うございます。嬉しいですね(ニッコリ)、私は安藤育宏画伯の絵についてお話できるのは、KEN SATOさんが初めてかも知れません。とにかく・・・・多彩な純度の高い色をキャンバス上で重ねていく手法と思われる作品の美しさに、もう昔の話ですが、惚れ込んでしまいました。
お互い貴重な作品を大切にいたしましょう。
投稿: 風呂井戸 | 2015年6月 1日 (月) 17時26分
早速のコメントが頂けるとは、思っていませんでした。 彼の絵に、想いをお持ちの方が、いらっしゃること、うれしいですね。
安藤画伯も、彼の地で喜んでおられるでしょう。
投稿: KEN SATO | 2015年6月 2日 (火) 19時18分
はじめまして。
千葉県の日本医科大北総病院の一階の長い廊下に画伯の「ヴェネチアブラーノ島」と「水路のある風景」という作品があります。いつも長い待ち時間に観せて頂いています。今日は絵の光に魔法をかけられてしまったようで、ネットで調べようとお名前をメモして、こちらに辿り着きました。素晴らしい御紹介を見せていただきまして、どうも、ありがとうございました。
投稿: のん | 2015年6月 6日 (土) 15時05分
のんさん
病院で素晴らしい絵が見られて、いいですね。
きっと、一瞬でも、気が晴れるとしたら、
安藤画伯の絵は、妙な薬より、はるかに効果あり
ですね。 ワタクシは、今77歳。 東京生まれの
東京育ちですが、昨年より鴨川に移り住んでいます。 近くに、亀田病院があります。
どうぞ、お元気で。
Ken
投稿: KEN SATO | 2015年6月 6日 (土) 17時48分
のんさん、私の拙いブログにコメント頂いて有り難うございました。
安藤育宏画伯は晩年は千葉県松戸市に拠点があったようですから、千葉県にはやっぱり活動の跡がしっかりあるのですね。興味深い情報を有り難うございました。
北総病院は、印西市ということですが、訪れる者にとって何か安まる安藤画伯の作品のようで、機会があれば私も拝見したいものと思いました。それにつけても、のんさんはそちらにお通いのようですが、お体を大切にどうぞ。
KEN SATOさんも、いろいとコメント頂いて賑わせて頂いて嬉しく思っています。これからもよろしくお願いします。
投稿: 風呂井戸 | 2015年6月 6日 (土) 18時33分
風呂井戸さん
ふと、画伯と会った時の会話を思い出しましたので、ひと言。 ” 前から、クロード モネ に憧れていて、フランスの彼の最後の住処近くまで出かけて行き、そこで暫く画を描き続けたのですよ ” と画伯が漏らしておられたことです。 想えば、私は
1989年から5年ほどシカゴにいましたが、よく
シカゴ美術館で、モネの絵も見ていました。モネは
好きなので、画伯の画を衝動購入したのも、モネの絵と重なったのかもしれませんね。
投稿: KEN SATO | 2015年6月 7日 (日) 13時48分
風呂井戸さん
お久しぶりです。 実は、本日、安藤画伯の絵を入手したのです。 ”シャルトルの水辺”(8号) というから、風呂井戸さんがお持ちの絵が描かれた頃の作品ではないでしょうか。 松戸の美術会などに、この十数年、問い合わせなどしてましたが、いい情報は得られず、今日に至ったということです。
なんと、偶然で、ヤフオクで購入したのです。
いい気分になって、ご一報しました。 では。
投稿: KEN SATO | 2016年4月15日 (金) 17時25分
KEN SATOさん、それはそれはお目出度うございます。好きな絵画を持つのは嬉しいことですよね。安藤育宏画伯はシャルトルがお気に入りであったと思いますね。私はここで紹介したものとは別に実はF4号の「花の咲く水辺~フランス・シャルトル」というものも手に入れてます。
KEN SATOさんとは、感動の絵画に共通点があるということで何となく親近感が湧いてきます。これからもいろいろとお話をして頂ければ嬉しいです。
投稿: 風呂井戸 | 2016年4月15日 (金) 18時13分
風呂井戸さん
早速のお返事、有難うございます。お元気そうで何よりです。
ところで、絵のはなしではないのですが、Jazzにも
お詳しいので、もしご存知でしたら、何かお知らせください。 実は、私の住んでるところに、かつてのサックス奏者であったという冬梅さん(83歳)
という方が別階におられます。 松本英彦あたりまでは知ってるのですが、冬梅というのは聞いたことがありません。 ということで、よろしく。
投稿: KEN SATO | 2016年4月15日 (金) 18時55分