トルド・グスタフセンTord Gustavsen のカルテット・アルバム「The Well」~思索を導き耽美の世界へ
サックスの加わったカルテットで描く郷愁と哀愁
「Tord Gustavsen Quartet / The Well」 ECM Records ECM 2237 B0016444-02 , 2012
ノールウェーのジャズ・ピアニストであり、私にとっては至宝扱いのトルド・グスタフセンに焦点を当てているが、このアルバムは彼のカルテット演奏の今年のニュー・アルバム。
彼のトリオ3作は、私にとっては驚きに近い、過去のジャズ・トリオものとは一線を画した美しい旋律と静と郷愁と哀愁の叙情性豊かな作品であった。
(参照)2012.4.11”美旋律と哀愁の極致” http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/tord-gustavsen-.html
2012.4.28”郷愁と哀愁の2アルバム検証”
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/tord-gustavse-1.html
さてこのアルバムのメンバーは、Tore Brunborg のテナー・サックスが加わってカルテットとなり、トリオ時代の3アルバムにおけるベースは変わっている。
Tore Brunborg : tenor saxophone
Tord Gustavsen : piano
Mats Eilertsen : double-bass
Jarle Vespestad : drums
そしてその作風はカルテットになって変化はあったのであろうか?。
収録曲は11曲(左)。全てトルド・グスタフセンによるもの。従ってかってのトリオ3作と基本的には同じ流れを感ずる。
冒頭の”preludo”そして続く”playing”の2曲は、従来のトリオの郷愁のパターン。
3曲目の”suite”は8分以上の曲。例のごとくグスタフセンのピアノが静かに流れ、弓引きによるベースがムードを高め、それに続いて哀愁あるテナー・サックスが登場し流れてくる。ここに来てトリオと違った世界が生まれるわけだが、このあたりにグスタフセンの前進的アプローチを感ずることが出来る。しかし、究極は郷愁を感じさせてゆくところはやはり彼の曲なのだ。
”communion”に於いては、サックスを前面に出して旋律を奏で、ピアノが後押しをしてゆくパターンをとるが、やはり”静であり聖である感覚”に導くところは同じである。
そして”circling”、”gasgow intro”は再びピアノが静を奏でる。
7曲目”on every corner”、8曲目のアルバム・タイトル曲”the well”は、このアルバムのカルテット演奏の目指す究極のかたちなのであろうか、ピアノ、サックスが交互に美しく旋律を歌い上げる。
しかし、最終曲”inside”の深遠な世界は凄い。
いずれにしても、このグスタフセンのアルバムは、郷愁と哀愁を叙情的に描くところはトリオにしてもカルテットにしても同じである。ただ私の印象としては、表現法が適切かどうか疑問だが、トリオもののピアノを主とした響きは10代~20代の青春時代の郷愁で、カルテットのサックスの音を生かしたパターンは30歳代以上の郷愁と言った世界であった。
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コメント
サックスが入ると急にジャズ色が濃くなりますね。
トリオだとジャズであろうとなかろうと心地よく聴けるのですが、
カルテットだと少し重くなる感じがします。
まあ好みの問題なのかもしれませんが。
投稿: | 2012年5月 2日 (水) 11時41分
コメント発信者の名前がありませんが、見当はついています(笑)。
私はジャズはピアノ・トリオ(p+B&Dr)が好きなんですが、バックで哀しく泣く全面に出ないトランペットは、まあ好きな方です。
これから、このトルド・グスタフセンが、どの方向に向かって行くか・・・注目ですね。
投稿: 風呂井戸 | 2012年5月 2日 (水) 20時09分
あ、失礼しました。名前を入れるのを忘れてました。
以前はトリオというのはそれほど好んではいませんでした。なぜかは自分でも分かりませんが、若い頃はエネルギーが余っているせいかトリオは少し地味っぽい印象があったのかもしれません。
でも、今はなぜかトリオは落着いてゆったり聴けていいなあと思うようになっています。それだけ歳をとったということなのかもしれません(あくまで私の場合)。
それとドラム抜きのベース+何かという組み合わせもたまにいいと思う事があります。アートペッパーのブルースインなんて昔好きでした。
投稿: /ten | 2012年5月 3日 (木) 13時28分
それにしても、つい先日こちらで初めてグスタフセンを知ったにも拘わらず、目つきがシド・バレット似の若々しかったグスタフセンが、僅か数週間で坊主頭のオヤジっぽくなってしまって、そのギャップに何か片付かないものがあります。坊主が悪いことは全然ないのですが、自分の中のある印象が何かごちゃ混ぜになりそうです。(たわごとで失礼しました)
投稿: /ten | 2012年5月 3日 (木) 14時01分
/tenさん今日わ。
坊主頭(グスタフセン)>いやはや確かに!もともと後ろの方からやや薄めでしたら・・・(笑)近頃は思い切ってというところでしょうか?
ベースとピアノのデュオというのもなかなかしゃれているものがありますね。先頃取り上げた「PATIENCE」(S.KereckiとJohn Taylor)も最近ではお気に入りです。そうそうKeith JarrettともCharlie Hadenとの「JASMINE」もこのタイプのディオですね。両者の一つ一つの音を余韻も含めて楽しめるところは魅力です。
投稿: 風呂井戸 | 2012年5月 3日 (木) 15時11分
はじめまして。
WDGSDUKR、と申します。
2009年、11月27日のブログで、DENON DP-80の修理に関してのコメントを拝見し、自分も同じ機種を修理に出したくて、修理店を探していたもので、お差支えなければ、ご紹介いただけませんでしょうか?よろしく、お願い申し上げます。
投稿: WDGSDUKR | 2012年5月 4日 (金) 09時56分
WDGSDUKRさん、DENON DP-80 に関するコメント拝見しました。この機種は殆ど問題なく修理可能です。それほど経費もかかりません。DENONのサービスセンターで取り扱っています。首都圏ですと”首都圏サービスセンター”が横浜あります。(その他全国主たる各地にあります)
私の場合は近くのオーディオ修理店を通して横浜に搬送修理いたしました。現在も健在です。この機種はDENONでまだ対応していると考えて良いです。是非ともアナロクを愛好を・・・・。
投稿: 風呂井戸 | 2012年5月 4日 (金) 12時40分
風呂井戸さん、こんにちは。
了解しました。すぐ、行動に移してみたいと思います。ご親切にありがとうございました。
>>>是非ともアナロクを愛好を・・・・。
ええ。残念ながら、正直、CDはアナログに勝ち目なし、というのが、偽りなき率直な感想です。アナログ世代がCDを経由し、再びアナログに戻ってくると、アナログの、あまりに温かみのある音にため息が出てきます。でも、もしかしたら、カップ麵しか食べたことのない人間なら、おいしいのは、カップ麵であり、一流店の味ではない、と断言するのかもしれませんけどね。
投稿: WDGSDUKR | 2012年5月 5日 (土) 07時04分