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2012年6月29日 (金)

エスビョルン・スヴェンソン・トリオE.S.T.回顧(1): プログレッシブ・ロック、クラシックそしてフュージョン・ジャズ

涙なしには語れないスウェーデンのあだ花

 北欧のジャズを語ると言うことは、今は亡きこのエスビョルン・スヴェンソン・トリオE.S.T.(Esbjörn Svensson Trio) を語らないと始まらない。私が彼らを知ったのは、下のアルバムからだ。当時一瞬、”おやクリムゾンを追った世界か?”とも思えたジャズ・アルバムに興奮したものだった。

E.S.T. 「SOMEWHERE ELSE BEFORE」
COLUMBIA  CK85834  ,  2001

Somewhereelsebefore

  Esbjörn Svensson : piano
  Dan Berglund : bass
  Magnus Öström : drums

 先日このトリオには触れたので(参照:2012.6.1「ロック・ジャズを超越して逝ってしまった~E.S.T.」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-3e11.html)詳細は省くが、ピアノの美しさ、そして多彩な音を展開するベース、単なるリズム取りでない音と空間の極限に迫ろうとするドラムス、この3者が絶妙にトリオ・ミュージックを展開する。もともとピアノ・トリオというと、ピアノがどうしても主体になりがちであるが、彼らは見事に3者の繰り出す世界が一つになっているのだ。そしてなんとジャズというよりはプログレッシブ・ロックの手法の音を歪ませたり、デジタル・アンプ/エフェクト・シュミレーターを使い、SEを効かせるというところは驚異であった。

  1. somewhere else before
   2. dodge the dodo
   3. from gagarin's point of view
   4. the return of mohammed
   5. the face of love
   6. pavane
   7. the writh
   8. the chapel
   9. in the face of day
  10. spam-boo-limbo

 このアルバムは、彼らがヨーロッパでその知名度と不動の人気を勝ち取った1999年のアルバム「From Gagarin's Point of View」と2000年のアルバム「Good Moning Susie Soho」からの寄せ集め(U.S. Compilation)盤であったものだ。

      *

e.s.t. Esbjörn Svensson Trio 「301」
ACT  ACT9029-2 ,  2012
Recorded January 2007 at Studio 301, Sydney, Australia

301

 エスビョルン・スヴェンソンが44歳にて2008年6月事故死してしまって、もう彼のトリオの世界にはお目にかかれないのかとファンの落胆は大きかったわけであるが、ここになんと今年ニュー・アルバムが出現した。
 これは彼の亡くなったときに出来上がっていたオーストラリアにての録音アルバム「Leucocyte」(2008年リリース)に未収録の音源があり、それを纏めたものであったようだ。これはシドニーの”スタジオ301”にて録音されたもので、この「301」というアルバム・タイトルとなったらしい。

301list 収録曲は左のように7曲、しかしこれが当時のアルバムから漏れたものとは思えない充実感のある曲が聴ける。

オープニングの”behind the stars”が、スヴェンソンのピアノが静かに美しく語る。そして2曲目”inner city,city lights”に於いては、彼らの代名詞でもあるノイズの世界は深淵に広がり、ベースとドラムスのブラッシングが異空間を展開。そこにピアノも便乗するがごとく不安感ある世界に導くが、次第に美しさに変化して、例のキース・ジャレットシ様の声も入ってかれらのトリオの味が十分聴くことが出来る。
 ”houston,the 5th”では、見事にノイズが曲と化し、この手法はピンク・フロイドやキング・クリムゾンもかって試みた世界であったとも言える。6曲目の”three falling free partII ”は、ピアノ・トリオというよりは、オストロムのドラムスにベルグンドのベースがバトルを繰り返し、そして終章は三者の壮絶なバトルとなる(圧巻だ)。最後の7”the childhood dream”は、如何にも回想的なピアノの響きで優しいフレーズにより人生を美しく描いてくれる。あゝこれが彼らの最後の世界なのだろうか。

Estmemphoto  このトリオは、electronics を効果的に使っているわけであるが、私のようにプログレッシブ・ロックの多くのタイプに馴染んできた流れから入り込むと、全く違和感はない。しかし、ジャズ愛好家が過去のピアノ・トリオとして聴くと多分ネガティブな反応を示す人もいるのではとも思う。しかし、これに馴染むとオーソドックスなピアノ・トリオものちょっと空虚になると言う感覚にもなるのである。
 
 このトリオは、ピアノのスヴェンソンが殆どの曲を書いて、それをトリオ・メンバーが対等な力を発揮して発展させてきた経過があり、彼を失った今となれば、この世界はこれで哀しいかな終止符ということなるのであろう。振り返るとスウェーデンのあだ花であったと言える。
(もう少し彼らの世界をいずれ綴ってみたい)

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2012年6月22日 (金)

北欧女性ロック・ジャズ・ヴォーカル: カリ・ブレムネスKari Bremnes 「NORWEGAN MOOD」、「MÅNESTEIN」

これぞノルウェーの世界か

Kari BREMNES 「NORWEGIAN MOOD」
hot records    HOT 1090  ,  2000

Norwegian_mood
 これもして、友人から届いた一枚。
 ノルウェーでは実力派と言われる女性ヴォーカリストのカリ・ブレムネス。このアルバムは彼女のノルウェー語でのアルバムから、ベスト盤として英語で歌ったもののようだ。
 どうも彼女は既に十数枚のアルバムをリリースしている(1987年から)が、日本ではそれほど注目もされていなかったように思う。しかしなかなかこの一枚を聴いてみると、どちらかというと柔らかく穏やかで、素直な歌声と言っていいいし、それなりに評価される味もある。又曲はジャズというよりはノルウェーのトラッドぽく、フォークぽく、暖かな素直な歌い回しで、ポップス的な因子の加味されたジャズの一形と言っていいのだろう。(ところが、興味が湧いて取りあえず手に入れてみた1997年のアルバム「Månestein ムーンストーン」には、この後で取り上げるが、驚かされることになる)
 日本では、多分この世界は聴くとそれなりにファンとなっているものがいるのであろうと想像するのだが、知らなかったのは私だけか(笑)。

 1. a lover in berlin / 2. coastal ship / 3. montreal / 4. my heart is pounding like a hammer / 5. birds / 6. day / 7. wave on rock / 8. the copenhagen cavern / song to a town / 10. riddle beside another riddle / 11. to give tou a sing

Kari1  彼女は1956年生まれのシンガー。父、兄、弟もミュージシャンという環境で、1987年からオスロのKirlelig Kulturverksted というレーベルから作品を多くリリース。もともと言語、文学、歴史、演劇研究などの道を学んで修士号をもつ。ジャーナリストとしてのキャリアがあり、インテリ・シンガー・ソングライターのタイプ。

 このアルバムは第1曲”a lover in Berlin”は、軽快なリズムでスタートしまろやかなヴォイスで唄うその醸し出すイメージもいい。2曲目”coastal ship”は何となく華々しさとは別の北欧の静かなイメージが感じられる。
 5曲目の”birds”は物語を歌い上げるようで、しかもバックの演奏もベースのリズムとギター、ピアノの響きが洗練されていて良く、私は結構お気に入り。
 とにかく、このアルバムはA級。そして驚きは過去のアルバムだ(↓)。

  *

Kari Bremnes 「månestein ムーンストーン」
OMCX-1016 ,   1997
 

Manestein

 とにかくノルウェー語のヴォーカル・アルバムと言うことであったが、仕入れてみた。ところがなんと恐るべしノルウェーである。お見事なロック色の濃いジャズ・ロックを取り込みつつ多彩な曲を盛り込んだアルバム。このアルバムはカリ・ブレムネスがデビューして10周年になる1997年の6作目。
 このアルバムの収録曲は一曲”ローズ”以外全て彼女のオリジナル曲で、そして彼女のヴォーカルが中心であるが、バックの演奏も一流。なんと”Kari Bremnes Band”となっている。

Kariband_2 Finn Sletten : percussion
Bengt Egil Hanssen : keybord
Bjørn Jenssen : drums
Børge Petersen-Overleir : Guitar
Bjørn Kjellermyr : bass
Kari Bremnes : vocals

Bandの布陣はこんなところだが、それぞれノルウェーのトップ・ミュージシャンらしい。なるほど、ヴォーカルものとは言え、バック演奏も魅力たっぷりの音とアンサンブルを聴かせる。やはりバックあってのヴォーカル、ヴォーカルあっての演奏という代表格。

 これは、初めて私が接した上のアルバム「NORWEGIAN MOOD」で描いた印象とは別世界の魅力たっぷりアルバム。それがなかなか板に付いた演奏と、彼女の醸し出す不思議な世界がたまらない。へぇ~~、こうゆう曲をこなしてきた彼女であったのかと驚きであった。ロック曲良し、異様空間への曲良し、トラッドっぽい曲良し。ラブ・ソング良しと言うところ。

1. 彼らを見たことがある
2. 天使の見守る場所
3. 5月に
4. 隠し事じょうず
5. 目に見えない者
6. ローズ(映画「ローズ」タイトル曲のカヴァー)
7. ムーンストーン
8. ちょうどいい時機
9. ポートベローの昼時
10. 何かが変わる

11. ある男への歌

 収録のノルウェー語の曲名は解りにくいので、和訳曲名は上の通り。
1曲目の”彼らを見たことがある”は、ベ-スとドラムスが快適にリズムを刻むロック曲。カリのヴォーカルもリズムを生かして魅力たっぷり。とにかくスタートでパンチを食らう。これは良い。このパターンは5曲目にも見られる。
 アルバム・タイトルの7曲目”ムーンストーン”の異空間は聴きどころ。かってのプログレっぽいロックの持つ一面であった不可思議な世界が臭いつつ、彼女の美しいヴォーカルが漂う。
 最後の”ある男への歌”という曲が、このアルバムを締めくくるにふさわしくまさに大人のラブ・ソング。”二人って難しい、引き潮があり満ち潮がある”と唄っているらしい。静かな哀愁あるピアノが美の極致。
 アルバムのジャケは、”トゲのあるハート”だそうで・・・意味深な世界。まさにそれにふさわしいアルバムであった。

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2012年6月17日 (日)

北欧ジャズ・トリオ=ソレン・ベベ(サン・ビービー)・トリオ Søren Bebe Trio : 「A Song For You」

極めて優しく美しく、そして丹念なプレイが印象的・・・

SØREN BEBE TRIO 「A Song For You」
Spice of life SOL SV-0022  ,  2012

Asongforyou1w
Søren Bebe : piano
Anders Mogensen : drums
Niels Ryde : electric bass

 デンマークの若手ピアニストを中心としたトリオもの。最近北欧ものにおいては、ジャズとはいわず、ロックにおいても目がない私ですが、それを知ってか知らずか友人よりの紹介もの。
 このアルバムは彼らの3rdアルバムであるが、日本に紹介されたのはこの前の2ndアルバムからであった。

1. maria / 2.a song for you / 3. oh,shenandoah / 4. hope / 5. nocture / 6. country road / 7. remembering B / 8. again and again / 9. a song for you, too / 10. free,free,set them free

Triomembers  収録曲は”シェナンドー”以外は全てオリジナル曲。いずれにしても一般に評価はなかなかよい。確かに内容は曲のタイプは民謡、フォークやポップスからの影響もあるようなところも垣間見るが、ピアノ・トリオ・ジャズを美しく、しかも優しく、そして丁寧な演奏を聴かせる。
 オープニングの”Maria”は、スローに静かに澄んだ北欧の風景を描かせるに十分な展開。続く”A Song for You”はアルバム・タイトル曲、やはりどちらかというと静かに優しさを前面に語り聴かせるように演奏される。
 そして私のあくまでも想像の域をでないが、デンマーク地方にかってからあった民謡的なフレーズを諸々の曲に取り込んでいるのではないだろうか。さらに曲によってはクラシックっぽい味の演奏もみせる。
 ただし、全体的な曲の仕上げにおいてはやや近代感覚に若干こなれ不足が感じられるが私だけだろうか?。北欧と言ってもスウェーデンのE.S.T.などと聴き比べると特にそんな印象で、つまり刺激性が少ないのである。
 ベースのRydeは、double-bass でなく、electric bas でピアノを支えるパターン。これについては人によって好みがあろう(私はdouble-bass の方に魅力を感ずるが)。
 ドラムスのMogensenは歴戦の勇士で実績のある演奏を聴かせる。シンバル・ワークとブラッシングが印象的。
 リーダーであるSøren Bebeのピアノの響きは美しい。彼は2004年にデンマークのRoyal Academy Of Musicを卒業している。直ちにトリオ演奏に着手して、2008年にこのメンバーにて1stアルバム「Searching」をリリースした。これはまだ私は聴いてないが、日本で最初に取りあえず輸入盤としてリリースされたものは、次の2ndアルバムがあるのでそれは聴いている。

   ------

SØREN BEBE TRIO 「FROM OUT HERE」
YOUR FAVOURITE JAZZ  YFJC 012,  2010

Fromouthere

 これはこのトリオの2010年の2ndアルバムであり、日本では初めてのお目見えした(輸入盤発売=diskunion)したもの。

Fromohlist_3  収録曲は左の9曲。もちろんメンバーは3rdと同じ。立派なのは全てオリジナル曲。Bebeが7曲、RydeとMogensenそれぞれが1曲ずつである。
 私はこの2ndは、上の3rdより後で聴いたわけであるが、このアルバムも同様にリリカルというという言葉が当てはまる演奏で、そして美しさがにじみ出ている。
 若干3rdと異なるのは、エレクトリック・ベースとドラムスが3rdほど引っ込んでいないで、トリオとして3者のインタープレイが前面に出ているところが多いと言っていいのかも。
 従って、実はこちらのアルバムの方がジャズっぽい。そしてやや前衛的なところも加味されて面白みもあるというところである(Bebeの曲の3曲目”wheeling”など)。

 ”heimat”はピアノも美しく、どこかで聴いたようなフレーズが出てきて心安まるし、8分に及ぶが中間部に盛り上がりもあって纏まった曲仕上げになっている。
 アルバム・タイトルとなった曲”from out here”は、Søren Bebeの力量を示しつつ、確かにオリジナルさを感じさせる曲だ。どちらかというと彼のピアノが主体をなしていて、後半ようやくドラムスとベースの音が絡んでくる。この曲と次の”song for alberte”がアルバムの中間部に位置していて、彼ららしいアルバムに仕上げる重要な役割を果たしていると言っていいのだろう。
 ”unresolved Love”はMogensenの曲だけあって、珍しくドラムスの音からスタートして、追いかけるようにピアノが、ベースが続くといた形をとっている。
 全編オリジナルであるだけ、アルバムトータルにみても統一感覚ある一つの世界を感じさせる出来だ。


 どうもこの2枚を聴いてみると、2ndの方がトリオらしさが出ているし刺激性もある。一方最近作(3rd)においては、Bebeのピアノがかなり優先されてきたと言うか主役の立場が強まった感があるが、今後はどの方向に歩んでゆくのか?、いずれにしても楽しみなトリオではある。

(試聴)

 

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2012年6月13日 (水)

絵画との対峙-私の愛する画家(5) 「五十畑勝吉」

まさに風景画のお手本

 私のように下手な横好きで、時に絵を描いていると、なるほどこう描けば良いのかと、お手本が欲しくなる。そんなところでは、既に取り上げた中西繁、安藤育宏、そしてここで取り上げる五十畑勝吉は私好みの私が勝手に決めている師(先生)である。とくに私の場合は描くとしたら風景画が多い為尚更のことである。
(供覧絵画はクリックにて拡大)

Photo_2
五十畑勝吉「初秋相模川(相模原)」 油彩・キャンバス M10号
(別冊:一枚の繪~画集 風景を歩く 1986 一枚の繪(株)より )

 実は、五十畑勝吉は日本の名勝といえる場所に出向いて、美しい自然を描いているのではなく、日本のどこにでもある身近なところに対象を求めている。
 彼の著書「油彩と水彩で~風景画を描く」(主婦と生活社)にある彼の言葉にみるのは、”私が描く風景は人物を点描として入れたり、建物を主題に描くことはほとんどない。自然の風景であっても、人の営みを感じさせるような場所が好きだ。・・・・”と記している。
 確かに五十畑の絵には、そこに何か郷愁を感じたりするのはその為かも知れない。そしてそれは私だけでは無いであろう。


Photo_5五十畑勝吉「北信初冬(中野)」 油彩・キャンバスM10号
(別冊:一枚の繪~画集 画家80人による100点 1985 一枚の繪(株) より) 

 北信州での一枚。これに対しての彼のコメントは、”私は以前から近場での取材が多く、地方への取材はほとんど行きませんでした。・・・・・北信五岳の名山と紅葉の季節はこれまでの私はあまり描かなかった題材です。又遠方へ蛇行する山間の民家と平野にも、何かきびしい自然の美しさというものの魅力を感じ、描いてみました”と書いている。
 枯れ始めている雑草に囲まれた道は、こうした山間の地の代表的姿であり、そこに又人の営みがあっての姿がある。彼はこうした枯れた雑草の道を晩秋、早春などに前景に入れる手法をよくとっている。それが又、彼の絵の我々に語るところとなっていて、それが一つの魅力にもなっている。
 この絵に於いても、きびしい冬を迎える前の短い秋の風景であるが、紅葉の美しさというよりは、なにか郷愁を誘う世界を描いている。

Photo_2
五十畑勝吉「河原の道(津久井小倉橋付近)」 油彩・キャンバス P8号
(別冊:一枚の繪~画集風景を歩く 1986 一枚の繪(株) より)

 ここに描く五十畑の秋は燃えるような紅葉ではない。木々は紅葉しているが、道と川の境には雑草が茂みそして枯れている。川に沿った道は遠くの橋に向かっている。美しい景勝地ではないが、人の営む世界の中からのなにかほっとする美しい一風景だ。これが五十畑の世界であると言って良い。
 描く技法も、非常に私にとってはあこがれのもの。特に枯れ枝の線の描き、雑草の描き、この独特の線の流れは非常に魅力的である。
 五十畑自身の書いたものを見ると・・・・・・・”私は美術学校で学んだことがない。キャンバスを張ったり、絵具の使い方や、下地の塗り方など、絵の好きな仲間に教えてもらったり、技法書を読んだりして学んだものである。それ以上のテクニックや絵画論なとアカデミックな考え方は持ち合わせていない。私の描き方は自分で考えたものである。” と語っている。

五十畑勝吉(いそはたかつよし) 略歴
 1933年 東京都文京区生まれ
  中央大学卒
 会社勤務の傍ら独学で油彩を学ぶ
 日展、一水会、大潮展、朔日展など入選
 一枚の繪でも活躍
 1985年 第14回現代洋画精鋭選抜展金賞
 無所属
 個展開催

C五十畑勝吉「残雪の道」 油彩・キャンバス F6号

 早春で、平地に雪をみる風景。日本ではごくありふれたどこにもある農道からみた風景。こうしたところのほうが絵ごころをさそうというのが五十畑勝吉である。
 枯れた雑草、もう緑も見え始めたときの積もっている雪と土とのコントラストの地肌。そして雑木林などの描きが魅力的。
(小生所蔵画)
 

(ここに登場する諸画伯及び五十畑勝吉画伯への敬称は失礼ですが普遍性を期して敢えて省略しました。ご了承ください。 又絵画の供覧は著作権法第32条に準じています。問題があればご連絡ください)

 
 

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2012年6月10日 (日)

ピンク・フロイドの回顧シリーズDVD~「原子心母 Atom Heart Mother」特集

最も4人のピンク・フロイドらしいとき~いまだに出される70年代初期のコレクター・アイテム

Dvdthespacesbetween_2 PINK FLOYD 「ATOM HEART MOTHER-THE SPACES BETWEEN~collecter's edition」 MATERPIECE PREMIUM   MPP-002-1/2/3 (2DVD+1CD) ,  2012

 最近は、ブートBootlegではピンク・フロイドものもあまり手を付けずにいるが、久々に昔の気持ちに返って手にした映像・サウンド盤。(この1970年当初のライブは、アルバム「モア」、「ウマグマ」、「原子心母」のステージ版で、私にとっては最も思い入れのある時であるから)
 ここに取り上げると言うことは、内容の評価が良かったからと思って頂いて良い。
 とにかく第2期ピンク・フロイド(シド・バレット脱退後)の崩壊せずに存続の道を歩ませたターニング・ポイントの作品”原子心母 Atom Heart Mother”を中心にしての貴重映像音源集だ。(DVD2枚CD1枚の3枚組)
 
(ブートによる”原子心母”の考察は当ブログ”2008.1.1Bootlegからみるピンク・フロイドの真髄「原子心母」”参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/bootlegpink_flo_7901.html )

<DVD1> (主たる内容)

① ORIGINAL ALBUM TRACKS
    5.1 Surround and Original Quad-Mix


 これが結構頂きもの。なんとオリジナル・アルバム「原子心母」全曲が、貴重なQUAD4チャンネル・マスター音源を5.1サラウンド・サウンドで聴ける。映像はイメージ・ビデオ・プロモ映像が展開。なんといっても今となっては手に入らないQUAD4チャンネルを収録してくれたのである。 オートバイの排気音などSEの効果は抜群だ。

② KQED LIVE FROM SAN FRANCISCO 1970
    (LIVE at KQED  TV Studios San Francisco CA. USA April 30th 1970)
     01. atom heart mother
     02. cymbaline
     03. grantchester meadows
     04. green is the color
     05. careful with that axe, eugene
     06. set the controls for the heart of the sun

Grantcesterm  映像とサウンドの良好で有名な1970年KQEDライブをマスター映像から完全収録。
 1968年アルバム「神秘」リリース後は、とにかくリーダーであったシド・バレット脱退によるピンク・フロイドのメンバーの前には、聴衆のニュー・リードギタリスト・ギルモアに対する抵抗も見られ、ピンク・フロイドは難局に立っていた。
 ロジャー・ウォーターズは、悪戦苦闘の中で曲作りに専念して、ライブでは”太陽賛歌”、”シンバライン”、”グリーン・イズ・ザ・カラー”、”ユージン、斧に気をつけろ”などを作り演奏し、ヴォーカルも上出来のギルモアを前面に出して、必死のピンク・フロイド存続に精を出していた時だ。次第に彼らのシドとは異なったニュー・スタイルも支持を得るようになり、1969年ウォーターズは幻の組曲「The Man」「The Jouney」の制作を試み、ライブでも演奏。”グリーン・イズ・ザ・カラー”、”グランチェスターの牧場”、”ユージン斧に気をつけろ”などがその中の曲。しかしこの組曲のうちのいくつかの曲が、資金のために提供した映画「モア」に取り入れられ、組曲の試みは分解してしまった。
 そしてこの1970年になった頃、ギルモアに一つの旋律が湧いた西部劇のテーマ曲を、4人それぞれの個性を織りまぜて、メンバー達が様々なバリエーションを加えての共同作業で”the amazing pudding ”を作り上げ、ウォーターズのインスピレーションにより”Atom heart mother”に命名して発展させ、ライブに追加し登場さた。丁度その当時のライブ映像がじっくりこれで見れるわけだ。
 更に、今年になって公開されたこの映像のグレード・アップされたものも、このDVDに納められている(上のギルモアとウォーターズのギターは、その”grantchester meadows”の演奏)。

③ OSSIACH FESTIVAL AUSTRIA 1971

 このオシアッハの珍しいドキュメンタリー・フィルム映像が登場。アルバム「Atom Heart Mother」リリース後であって、バックにオーケストラ、合唱団が控えての”原子心母”演奏の模様が見られる。この後、8月には来日して、あの伝説の箱根アフロディーテのライブということになる。

70floydmembers  <DVD2>

① ST.TROPEZ FESTIVAL 1970
    (TVLive at Festival de Musique St.Tropez France Aug. 8 1970)

 これも有名な映像もの。もともとピンク・フロイドのオフィシャル映像は少なく、このカラー映像も貴重となっているが、かってのビデオ・テープ時代のものと違って、ここでのDVD映像はさすがにクオリティーは高い。

 1. soundcheck / 2. atom heart mother / 3. the embryo / 4. green is the color / 5. careful with the axe eugene / 6. set controls for the heart of the sun

 当時の1969-1971年のライブ演奏は、殆どウォーターズの作曲したこの曲群で、”atom heart mother”が、ギルモアからスタートして4人による構成の新曲であった。しかし当時の”KQED Live”ものもそうであつたが、この曲の演奏はブラス・オーケストラやバック・コーラスのない彼らの4人による演奏が、当時の最もピンク・フロイドらしい演奏で私の好むもの。中間部の彼ら独特の世界は美しくしかも深淵で、更に当時の”Embryo”や”cymbaline”がそうであったように、ウォータースのベースが刻む不思議な世界に導くサウンドに乗ってのギルモアとライトの歌声とギターとキーボードにも味があり、メイスンのドラムスも冴え渡る。このあたりはアルバムでは聴けないところ。

70westberlin_2 ② VARIOUS TV BROADCASTS 1970/1971
  (Live from germany 1971,  Hakone Aphrodite Japan 1971 などの映像もの)

③ EXTRA VIDEO. RARE LIVE FILMS
  
(Bath featival 1970,  Live Amsterdam Rock Circus 1972 などの映像もの)

<CD>

BBC IN CONCERT 1970  &  THE AMZING PUDDING

 このBBCもの(1970年7月16日 BBC Paris Cinema, Regent Street, London)も有名な音源。あえてここに登場させただけ、オリジナル・マスターからの完全収録。音質も当時のものとしては見事といえる良質もの。

1. embryo / 2. fat old sun / 3.green is the color / 4. careful with that axe,eugene / 5. if / 6. atom heart mother

 この時(BBC)の”Atom Heart Mother”は、Philip Jones Brass Ensemble のオーケストラとコーラス(the john Aldiss Choir)がバック入っている豪華パターン。
 その他、1970年1月23日のフランスでの”the amazing pudding”と呼ばれた頃の”atom heart mother”も登場する。これはまだまだ荒削りで面白い。

 この”atom heart mother”は、ロン・ギーシンの力によって、オーケストラ、コーラス入りの組曲として完成され、ウォーターズ、ギルモア、ライト、メイスンの4人によるピンク・フロイドをプログレッシブ・ロツクとして一躍世界的バンドに仕上げたのだった。このことがピンク・フロイドが商業的にも次に進むきっかけとなった(この後のあの”Echoes”も、実はこの時代のライブ演奏の”cymbaline”や、この”atom heart mother”の手法が取り入れられている)。このターニング・ポイントをまとめ上げたこのブートDVDには、取りあえず敬意を表するのである。

 

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2012年6月 8日 (金)

ルーマーRumer のニュー・アルバム「BOYS DON'T CRY」

ニュー・アルバムは70年代のカヴァー集だった

Rumer 「BOYS DON'T CRY」
ATLANTIC Records  5053105230853 ,  2012

2nd

 昨年早々に話題になって、あれから約1年でルーマーの2ndアルバムの登場だ。私が彼女の1stアルバム「SEASONS OF MY SOUL」を取り上げたのが昨年の4月(”好評のルーマー”http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/rumer-season-of.html)、実はおやおやもう来たかというのが印象だ。まあ早いことにはこしたことはないが、雑なアルバムであって欲しくないというところでの話。

2ndlist  さて収録曲をみると左のようにボーナス・トラック4曲で16曲。ところが、1stは殆どSarah Joyce (ルーマーの本名)の曲で、彼女の心を歌った見事なアルバムであったが、今回は手抜きと言ってはまずいのかも知れないが、全てカヴァー曲。実はそれだけで私の興味は半減したのだった。
 しかも、付いてきたブックレットを見ると、カヴァーした曲のアルバムを全てジャケ写真入りでズラっと並べてのもの。う~~ん、このあたりは何か一つの目的があってのことなのか?、知る人ぞ知る解説を見てみたいものだ。
 そしてカヴァー曲は1970年代前半のものが圧倒的に多く、全て男性歌手のもの。この時代は実は私が最も夢中になっていろいろと聴いた時代だが、どうも私の世界とは違っていて、意外と知る曲がない。

 それでもアルバムを通して聴いてみると、やっぱりルーマーなんですね、あのカーペンターズを想わせる清楚で心休まる歌声と曲の流れはほんとに安息の世界。なるほど、ルーマーに言わせると、カヴァー集でも、私には私の世界があるのだと言っているのかも知れない。キャチフレーズは”大人のための子守歌”と・・・・・・。
 このアルバムの一つ一つの曲はなかなか出来はいいのである。締めの曲”we will”なんかは結構聴き応えあり。

20110603_rumerb_2  さてさて、いずれにしてもこのアルバムは、全体を通して、なんと言ってもインパクトのある山とか谷がない。なんとなく始まってなんとなく終わってしまう。これはこれで良いのだと言えば良いのかも知れないが・・・・ちょっと刺激がなさ過ぎる?。それを期待してはいけないのかも・・・と言うところで、まあ評価は聴く人にお任せという結末になる。
 
 しかし、結論として私としては1stの彼女自身の世界を見事に唄った曲の詰まった中身の濃さというものは、このアルバムには感じられなかった。収録の歌は、安らぎを導くうまさは感ずるがただそれだけ。それは昨年1stを聴いて、ここまで”自己の歩み”と”心”を自分の曲で集大成すると、2ndアルバムはどうなるのか?と心配したとおりになってしまったと言う印象である。やはりシンガーソングライターとしての彼女の心の歌を聴きたいというのが私なのである。特にネガティブ環境から一転して現在にあってのこれからの世界観を唄って欲しいというところ。

 
Swrnewpopfes  さてここで紹介したいのが、最近ルーマーのライブ映像盤としてブートBootlegではあるが、映像もプロショットで、サウンドも良好盤がある。(左)

Rumer 「SWR3 NEW POP FESTIVAL 2011」 2012

 この映像盤は、2011年9月16日のドイツでのライブSWR3 New Pop Festival 2011(Theater Baden-Baden)を納めたもの。
 1stアルバムからのヒット集と、今回の2ndに登場した”sara smile”他新曲が5曲登場している。

(収録曲)
Come to Me High / Am I Forgiven / Saving Grace / Being at War / Slow / Thankful / Sara Smile / Take Me As I Am / Goodbye Girl / On My Way Home / Driving Wheel / Aretha / Stoned Soul Picnic / Lady Day / Alfie
Bonus Unplugged Session Am I Forgiven / Aretha / Interview 


 とにかくブートとしては下手なオフィシャル盤より出来は良い。バックはキーボード、ギター、ベース、ドラムスにトランペット、サックスという布陣で、バック・コーラスも2人の女性が参加している。そしてライブだけあって彼女の情感のある歌い回しもアルバム以上。
 そして思った通り、会場はかなり大人の雰囲気。そしてほぼ同時時期に話題になったアデルと比べると全くの異なったタイプに思い知らされる。この映像盤はお勧めである。好きな人は探して手に入れて欲しい。
 ただ、これは言っていいかどうか?、外人のいわゆるおばさんタイプの体型の彼女は(そう言えばアデルも若いのに?)、もっと若さを見せて欲しい。現在33歳ということのようだが、もう少し努力しても良いのでは?と思ってしまった。
 

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2012年6月 6日 (水)

大人のジャズ・ヴォーカル~クレア・マーティンClaire Martinのニュー・アルバム「Too Much In Love To Care」

ケニー・バロンのピアノにのってのバラード集

Claire Martin  Kenny Barron 「TOO MUCH IN LOVE TO CARE」
Linn Records  AKD 390  SACD(multi-ch, hybrid),  2012

Toomuchinlovetocare

  Claire Martin : vocals
  Kenny Barron : piano
  Peter Washington : bass
  Kenny Washington : drums
  Steve Wilson : saxophone & flute

 ここでは過去に何度かクレア・マーティンは取り上げているので紹介は抜きとしても、昨年の大英帝国勲章(OBE)を授かったというのはビックなニュースだった。(英国、1967年産まれ)
 そして待望のニュー・アルバム。今回はケニー・バロンのピアノがフィーチャーされた。
 内容は1990年代の前半のミュージカル・ナンバーを中心としているだけあって、なにか落ち着いてゆったり聴いてられる。聴きようによっては若干古めかしい感じもあって、あまりスリリングでないというところでもあるが、ケニー・バロンのピアノもよき時代と現代の両面に器用に対応して聴かせてくれる。

Toomuchinlovetocarelist  収録曲は左のようで、スタートはアルバム・タイトル曲”too much in love to care”で、いやに軽快であるが、2曲目ガーシュウィンの”embraceable you”からクレアのバラードが全開する。”crazy he calls me”はベースの響きもなかなか説得力あり、クレアのヴォーカルとのマッチングもいい。
 ”how long has this been going on?”ではバックにサックスも加わって演奏陣も充実した音を聴かせる。
 ”a time for time”ではケニー・バロンのピアノが物語り、クレアが歌い上げるパターンがいい、そこにフルートが登場してなかなかムードたっぷり。
 そして”I'm glad there is you”や”too late now”のバラード曲は、大人のムードは更に盛り上がって最も私好みと言ったところかなぁ~~、ピアノも美しい。

Clairemartin6_3  彼女の過去のアルバムでは私は2004年の「SECRET LOVE」とか2007年の「He never mentioned love」が好きなのだが(参照1:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/claire-martin-d.html、参照2:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/claire-martin-0.html)、しかしこのアルバムも大人のジャズ・ヴォーカルとして一級品で、安心して聴いてられる。ほんとはこの過去の2アルバムのように、もうちょっと不安を感じさせてくれた方が別の魅力もあるのだが。
 この盤はSACDのmuti-channel盤 であるが、あまり後方には音も配置せず、自然な配置で聴けるところがよい。又録音もなかなか秀れている。
 

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2012年6月 3日 (日)

メロディ・ガルドーMelody Gardot のニュー・アルバム「The Absence」

メロディ・ガルドー世界(jazzy not jazz)への意欲作

Melody Gardot 「The Absence」
DECCA  B0016816-02 ,  2012

Absence

 私の最も期待株のメロディ・ガルドーの3rdとなるニュー・アルバムが3年ぶりに登場した。彼女のアルバムについては何度と語ってきたが(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/jazzymelody-gar.html)、久々のニュー・アルバムの登場は大いに歓迎である。
 シンガー・ソングライターとしての全曲自己の曲であるスタジオ・フルアルバム。
   
    Vocal : Melody Gardot
    Piano : Melody Gardot, Heiter Pereira 他
    Guitar : Heiter Pereira
    Bass : John Leftwich
    Potuguese Guitar : Melody Gardot
  orchestra conductor : Nick Glennie Smith

<収録曲>
1. ミラ
(Mira - Melody Gardot)
2. アマリア
(Amalia - Melody Gardot / Heitor Pereira / Phil Roy)
3. ソー・ロング
(So Long - Melody Gardot)
4. ソー・ウィ・ミート・アゲイン・マイ・ハートエイク
(So We Meet Again My Heartache - Melody Gardot)
5. リスボン
(Lisboa - Melody Gardot)
6. インポッシブル・ラヴ
(Impossible Love - Melody Gardot)
7. イフ・アイ・テル・ユー・アイ・ラヴ・ユー
(If I Tell You I Love You - Melody Gardot)
8. グッバイ
(Goodbye - Melody Gardot / Jesse Harris)
9. セ・ボーセ・ミ・アマ
(Se Voce Me Ama - Melody Gardot / Heitor Pereira)
10. マイ・ハート・ウォント・ハヴ・イット・エニー・アザー・ウェイ
(My Heart Won't Have It Any Other Way - Melody Gardot)
11. イエマンジャ
(Iemanja - Melody Gardot)
 ・・・・(
これに続いて隠しトラック)

Melody3tr  まず私の印象としては、このアルバムは意外であった。もともと”Jazzy not jazz” 路線とは言え、2ndアルバムのその後の流れからも、若干想像したジャズへの流れが異なり、むしろボサ・ノヴァやサンバ、更にタンゴ、その上にカリプソの味まで取り入れての意欲作だ。
 南米各地やヨーロッパでもスペイン、ポルトガル、フランスのラテン系に彼女はライブ活動とともにその地に関心を持って接してきたと言われているが、その結果としてうなずけるところでもある。
 
 彼女の交通事故による後遺症から、自己を解放してゆく道としての音楽、それが身を結んできた現在の形としての3rdアルバムとして位置づけて良いのかも知れない。
 しかしその南国の開放的世界と言っても、彼女のアルバムにはその独特の派手さはない。むしろ異国情緒を醸し出すところに逆に寂しさすら感ずるところもある。
 フランス語、ラテン語も登場しての今作は、彼女の一つの挑戦的意欲作であるとも言える。

 スタート曲”mira”の軽快な南国タッチのギターをバックにしての曲には驚いたが、・・・・・
 3曲目の”so long”、続く”so we meet again my hearttache”などでメロディ・ガルドー節が本番となる。彼女独特の細部に及ぶ繊細で深みがありそして説得力あるヴォーカルは相変わらずで、聴く者を引き込んでゆく。
 更にバックの演奏陣もストリングス・オーケストラ、そしてそれにも増してギターなどの演奏陣の相変わらずセンスの良さが滲んでいる。
 ”lisboa”もバック演奏の明るさに反して彼女のヴォーカルは陰影を残すがごとく歌われ、このあたりの彼女の描く世界が見えてくる。SEも独特の効果を上げている。
 6曲目”impossible love”、7曲目”if i tell you l love you”の曲は、シャンソン調も取り入れてバックの演奏陣のアレンジの妙も絡んで曲自身の仕上げが見事である。このあたりは、プロデュースとアレンジを行っているギター奏者のヘイター・ペレイラHeitor Pereira の成せる技か?。

 11曲の”iemnja”終了後に約10分の間隔を空けて突如出てくる鐘の響きに続き前衛的な演奏の隠しトラックがある。この演奏パターンは私好み、こうしたバックにメロディの唄も聴いてみたいところ。この隠しトラックのアルバム造りには賛否両論あろうが、メロディ含めて制作陣の何か挑戦が感じられるアルバムであった。

(最近、彼女は自分自身も患った事故による外傷性脳損傷の後遺症に対して、その治療の為の施設を作る活動をスタートさせたとか・・・)

 

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2012年6月 1日 (金)

ロック、ジャズを超越して逝ってしまった~E.S.T.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)

エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(Esbjörn Svensson Trio)よ、永遠に

 私の愛視聴盤の紹介だ。と、言っても・・・・・Bootleg DVDであるのだが、

 Estpat2003b
DVD 「E.S.T. & PAT METHENY jazzbaltica  2003」

 スウェーデンのジャズ・トリオであるE.S.T.(Esbjorn Svensson Trio)のライブ映像盤。
 
 Esbjörn Svensson : piano
  Dan Berglund : bass
  Magnus Öström : drums


 彼らの演奏は、ジャズなんだが単なるジャズでない。サウンド・マシーンが使われたり、音を歪ませたりというところは、好みの別れるところであるが、昔のプログレッシブ・ロックの精神という雰囲気もある。でもやっぱりジャズですね。
 そして北欧らしい郷愁と優しさと哀愁と・・・そして曲によっては悲壮感まで漂う。しかも一方革新的なアプローチによるエネルギッシュでアグレッシブなプレイも聴かせてくれる。
 多分、キース・ジャレットの世界の影響は十分にあると思われる。

Esbjorns  テクニックのレベルの高さは誰もが認めるところだが、特にスヴェンソンのピアノは、クラシック的なところから、一方ロック色があったり、そして前衛的ジャズまでの範囲をこなしていて、次にどんな展開が来るのかと聴いていて興味が尽きない。

  エスビョルン・スヴェンソンは1964年、スウェーデンのスクルトゥナというところで生まれ、母はクラシック・ピアノを弾き、父はジャズ愛好家という家庭で育つ。子供の頃から近くにいたマグヌスのドラムスと彼はピアノで楽しんでいたという。
 そしてストックホルムの大学で4年間音楽を学んでいる。その後子供の頃からの友マグヌスと共にジャズ・シーンで活躍。
Photo  1993年に有能なダン(bass)との出会いで、”エスビョルン・スヴェンソン・トリオ”の結成となりアルバムデビューとなった。 1999年ドイツのACTレーベルから「From Gagarin's point of View」でヨーロッパに知れ渡る。その後、アメリカにも進出、日本でも知るようになり、2003年にはアルバム「Seven days of falling」は日本にてもリリースされるようになった。彼らの共同活動の結晶としての独特のバンドの色合いを持った音楽活動もあって、”E.S.T.”と名乗るようになった。そしてあのキース・ジャレットが絶賛している。

 しかし、残念ながらスヴェンソンは2008年、44歳という若さで、スキューバダイビング中の事故で亡くなってしまったのだ。我々に残された彼のロック、ジャズを超越した世界は、これで空しく散ってしまったのだった。


Trioplay  そんな空しい近年であるが、手に入れたこのDVDは2003年のライブもので、映像はプロショットでサウンドも良好、そしてなによりもこのトリオの活躍が手に取るように見れるところにある。まさに貴重品なのである。
 このライブ、ドイツのザルーザでのジャズバルチカ・ジャズ・フェスティバルの模様だ。バックにSchleswing Holstein Chamber Orchestratが共演。更にパット・メセニーPat Methenyのギターがコラボしている。そしてジャズを超えたジャズというE.S.T.ならではの荘厳な世界を展開。

Estpat2003list2 収録は9曲100分である。ストリングスを中心としたオーケストラをバックに、トリオが演奏するわけであるが、スヴェンソンはピアノの右上にPOD(デジタル・アンプ/エフェクト・シュミレーター)を置いて、これも操作する。
 6曲目”behind the yashmak”から、パット・メセニーが登場してギター・プレイが加わる(このDVDのジャケ写真)。これによって又この演奏世界が変化してみせるのだ。
 又7曲目”believe belwft below”(アルバム「Seven days of falling」)には、Nils Landgren のヴォーカルも入る。しかしこの曲が終わった後、Landgrenが使ったヴォーカル用の歌詞を乗せるスタンドをスヴェンソンが片付けたり、彼のあらゆるところへの労を惜しまない姿勢が見える一コマある。こんなところがこのトリオがうまくいっていたところであろう。
 ”dodge the dodo”(アルバム「somewhere else before」)は、前半のオーケストラ、トリオ、メセニーのギターの合奏は壮大で、中盤にはスヴェンソンのソロに近いピアノ・プレイと後半のメセニーのギター・プレイと圧巻で素晴らしい。最後にアンコール曲”round mindnight”は、ピアノ・ソロから始まってトリオのプレイとなり、静かに流れるようなオーケストラのバックで、静穏な安らぎの世界に導いて幕を降ろす。

 又、いずれ彼らのアルバムについても書きたいが、クラシックがベースにあって各種のミュージック・スタイルを吸収して自らのトリオ・ジャズを発展させた北欧の彼らの独特なプレイは歴史に残る名品である。

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