メロディ・ガルドーMelody Gardot のニュー・アルバム「The Absence」
メロディ・ガルドー世界(jazzy not jazz)への意欲作
Melody Gardot 「The Absence」
DECCA B0016816-02 , 2012
私の最も期待株のメロディ・ガルドーの3rdとなるニュー・アルバムが3年ぶりに登場した。彼女のアルバムについては何度と語ってきたが(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/jazzymelody-gar.html)、久々のニュー・アルバムの登場は大いに歓迎である。
シンガー・ソングライターとしての全曲自己の曲であるスタジオ・フルアルバム。
Vocal : Melody Gardot
Piano : Melody Gardot, Heiter Pereira 他
Guitar : Heiter Pereira
Bass : John Leftwich
Potuguese Guitar : Melody Gardot
orchestra conductor : Nick Glennie Smith
<収録曲>
1. ミラ
(Mira - Melody Gardot)
2. アマリア
(Amalia - Melody Gardot / Heitor Pereira / Phil Roy)
3. ソー・ロング
(So Long - Melody Gardot)
4. ソー・ウィ・ミート・アゲイン・マイ・ハートエイク
(So We Meet Again My Heartache - Melody Gardot)
5. リスボン
(Lisboa - Melody Gardot)
6. インポッシブル・ラヴ
(Impossible Love - Melody Gardot)
7. イフ・アイ・テル・ユー・アイ・ラヴ・ユー
(If I Tell You I Love You - Melody Gardot)
8. グッバイ
(Goodbye - Melody Gardot / Jesse Harris)
9. セ・ボーセ・ミ・アマ
(Se Voce Me Ama - Melody Gardot / Heitor Pereira)
10. マイ・ハート・ウォント・ハヴ・イット・エニー・アザー・ウェイ
(My Heart Won't Have It Any Other Way - Melody Gardot)
11. イエマンジャ
(Iemanja - Melody Gardot)
・・・・(これに続いて隠しトラック)
まず私の印象としては、このアルバムは意外であった。もともと”Jazzy not jazz” 路線とは言え、2ndアルバムのその後の流れからも、若干想像したジャズへの流れが異なり、むしろボサ・ノヴァやサンバ、更にタンゴ、その上にカリプソの味まで取り入れての意欲作だ。
南米各地やヨーロッパでもスペイン、ポルトガル、フランスのラテン系に彼女はライブ活動とともにその地に関心を持って接してきたと言われているが、その結果としてうなずけるところでもある。
彼女の交通事故による後遺症から、自己を解放してゆく道としての音楽、それが身を結んできた現在の形としての3rdアルバムとして位置づけて良いのかも知れない。
しかしその南国の開放的世界と言っても、彼女のアルバムにはその独特の派手さはない。むしろ異国情緒を醸し出すところに逆に寂しさすら感ずるところもある。
フランス語、ラテン語も登場しての今作は、彼女の一つの挑戦的意欲作であるとも言える。
スタート曲”mira”の軽快な南国タッチのギターをバックにしての曲には驚いたが、・・・・・
3曲目の”so long”、続く”so we meet again my hearttache”などでメロディ・ガルドー節が本番となる。彼女独特の細部に及ぶ繊細で深みがありそして説得力あるヴォーカルは相変わらずで、聴く者を引き込んでゆく。
更にバックの演奏陣もストリングス・オーケストラ、そしてそれにも増してギターなどの演奏陣の相変わらずセンスの良さが滲んでいる。
”lisboa”もバック演奏の明るさに反して彼女のヴォーカルは陰影を残すがごとく歌われ、このあたりの彼女の描く世界が見えてくる。SEも独特の効果を上げている。
6曲目”impossible love”、7曲目”if i tell you l love you”の曲は、シャンソン調も取り入れてバックの演奏陣のアレンジの妙も絡んで曲自身の仕上げが見事である。このあたりは、プロデュースとアレンジを行っているギター奏者のヘイター・ペレイラHeitor Pereira の成せる技か?。
11曲の”iemnja”終了後に約10分の間隔を空けて突如出てくる鐘の響きに続き前衛的な演奏の隠しトラックがある。この演奏パターンは私好み、こうしたバックにメロディの唄も聴いてみたいところ。この隠しトラックのアルバム造りには賛否両論あろうが、メロディ含めて制作陣の何か挑戦が感じられるアルバムであった。
(最近、彼女は自分自身も患った事故による外傷性脳損傷の後遺症に対して、その治療の為の施設を作る活動をスタートさせたとか・・・)
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コメント
遅ればせながら…。
このジャケット、やっぱ良いですねえ〜!
気品あるベッド、ソソられます。
そして中味もそんな変化がある音だっとは…。
発売日から時間を掛けて書かれただけあって内容が濃いです。参考になります。
さ、買わなきゃ…。
投稿: フレ | 2012年6月 5日 (火) 21時37分
フレさん、今日わ。
私は今回のメロディ・ガルドーのCDは、少々発売より遅れて買いました。実はこのリリース待っていたんですが、私はDVD付きを買おうと思ってましたが、そちらは発売が遅れてしまったので、やむなくこのCD盤を後から発注して・・・・というところです。そのうち又DVD付きも届くと思いますが・・・。
ところで今回のアルバムは若干私の期待とは別物でした。やっぱりメロディ・ガルドーは、南国、ラテンというよりは都会の夜の雰囲気の方が好きですね。しかもジャケはモノクロがいいです。目下の印象はそんなところですが・・・まぁもう少し聴いてどうなるかというところですが・・・。ボサノヴァはイリアーヌ・イリアスで私は十分納得していますから。
投稿: 風呂井戸 | 2012年6月 6日 (水) 17時04分