北欧ジャズ・トリオ=ソレン・ベベ(サン・ビービー)・トリオ Søren Bebe Trio : 「A Song For You」
SØREN BEBE TRIO 「A Song For You」
Spice of life SOL SV-0022 , 2012
Søren Bebe : piano
Anders Mogensen : drums
Niels Ryde : electric bass
デンマークの若手ピアニストを中心としたトリオもの。最近北欧ものにおいては、ジャズとはいわず、ロックにおいても目がない私ですが、それを知ってか知らずか友人よりの紹介もの。
このアルバムは彼らの3rdアルバムであるが、日本に紹介されたのはこの前の2ndアルバムからであった。
1. maria / 2.a song for you / 3. oh,shenandoah / 4. hope / 5. nocture / 6. country road / 7. remembering B / 8. again and again / 9. a song for you, too / 10. free,free,set them free 収録曲は”シェナンドー”以外は全てオリジナル曲。いずれにしても一般に評価はなかなかよい。確かに内容は曲のタイプは民謡、フォークやポップスからの影響もあるようなところも垣間見るが、ピアノ・トリオ・ジャズを美しく、しかも優しく、そして丁寧な演奏を聴かせる。
オープニングの”Maria”は、スローに静かに澄んだ北欧の風景を描かせるに十分な展開。続く”A Song for You”はアルバム・タイトル曲、やはりどちらかというと静かに優しさを前面に語り聴かせるように演奏される。
そして私のあくまでも想像の域をでないが、デンマーク地方にかってからあった民謡的なフレーズを諸々の曲に取り込んでいるのではないだろうか。さらに曲によってはクラシックっぽい味の演奏もみせる。
ただし、全体的な曲の仕上げにおいてはやや近代感覚に若干こなれ不足が感じられるが私だけだろうか?。北欧と言ってもスウェーデンのE.S.T.などと聴き比べると特にそんな印象で、つまり刺激性が少ないのである。
ベースのRydeは、double-bass でなく、electric bas でピアノを支えるパターン。これについては人によって好みがあろう(私はdouble-bass の方に魅力を感ずるが)。
ドラムスのMogensenは歴戦の勇士で実績のある演奏を聴かせる。シンバル・ワークとブラッシングが印象的。
リーダーであるSøren Bebeのピアノの響きは美しい。彼は2004年にデンマークのRoyal Academy Of Musicを卒業している。直ちにトリオ演奏に着手して、2008年にこのメンバーにて1stアルバム「Searching」をリリースした。これはまだ私は聴いてないが、日本で最初に取りあえず輸入盤としてリリースされたものは、次の2ndアルバムがあるのでそれは聴いている。
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SØREN BEBE TRIO 「FROM OUT HERE」
YOUR FAVOURITE JAZZ YFJC 012, 2010
これはこのトリオの2010年の2ndアルバムであり、日本では初めてのお目見えした(輸入盤発売=diskunion)したもの。 収録曲は左の9曲。もちろんメンバーは3rdと同じ。立派なのは全てオリジナル曲。Bebeが7曲、RydeとMogensenそれぞれが1曲ずつである。
私はこの2ndは、上の3rdより後で聴いたわけであるが、このアルバムも同様にリリカルというという言葉が当てはまる演奏で、そして美しさがにじみ出ている。
若干3rdと異なるのは、エレクトリック・ベースとドラムスが3rdほど引っ込んでいないで、トリオとして3者のインタープレイが前面に出ているところが多いと言っていいのかも。
従って、実はこちらのアルバムの方がジャズっぽい。そしてやや前衛的なところも加味されて面白みもあるというところである(Bebeの曲の3曲目”wheeling”など)。
”heimat”はピアノも美しく、どこかで聴いたようなフレーズが出てきて心安まるし、8分に及ぶが中間部に盛り上がりもあって纏まった曲仕上げになっている。
アルバム・タイトルとなった曲”from out here”は、Søren Bebeの力量を示しつつ、確かにオリジナルさを感じさせる曲だ。どちらかというと彼のピアノが主体をなしていて、後半ようやくドラムスとベースの音が絡んでくる。この曲と次の”song for alberte”がアルバムの中間部に位置していて、彼ららしいアルバムに仕上げる重要な役割を果たしていると言っていいのだろう。
”unresolved Love”はMogensenの曲だけあって、珍しくドラムスの音からスタートして、追いかけるようにピアノが、ベースが続くといた形をとっている。
全編オリジナルであるだけ、アルバムトータルにみても統一感覚ある一つの世界を感じさせる出来だ。
どうもこの2枚を聴いてみると、2ndの方がトリオらしさが出ているし刺激性もある。一方最近作(3rd)においては、Bebeのピアノがかなり優先されてきたと言うか主役の立場が強まった感があるが、今後はどの方向に歩んでゆくのか?、いずれにしても楽しみなトリオではある。
(試聴)
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コメント
初めまして、こんにちは。
松尾と申します。
私はSoren Bebeのレーベルのサポートをさせてもらっている者なのですが、新しいアルバム「HOME」の記事を書いていただけないでしょうか?彼は日本での活動も強く希望していますので、書いていただけると嬉しいです。
CDもしくは、フリーダウンロードURLをお送りいたします。
書いていただけないでしょうか?
よろしくお願いいたします。
投稿: 松尾 哲治 | 2017年4月21日 (金) 07時27分
松尾哲治様、嬉しいコメント有り難うございました。
ただ、私は素人の好き者でして音楽的な学問や知識そして技能もありませんので、とにもかくにも私の感覚的な世界でのジャズ観賞で、おそらくご期待にはそわないだろうと思います。
アルバム「HOME」は、Søren Bebe Trio のニュー・アルバムなんですね、まだ日本では発売していないようですね。私はこのトリオはお気に入りですので発売と共に購入させて頂いて、又感想が書ければ嬉しいと思っています(多分書くと思いますが?)。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年4月21日 (金) 20時07分
松尾哲治様、
先日教えて頂いたSøren Bebe Trio のニュー・アルバム「HOME」を聴きました。
ここで取りあげた2アルバム同様、素晴らしいピアノ・トリオの北欧美学の内容に感動いたしました。
明日、このブログ「灰とダイヤモンドと月の裏側の世界」に紹介と感想を書かせて頂きます。
リリースを知らずにいましたので、紹介有り難うございました。そうそう、マーク・ジョンソンとのトリオ・アルバムも素晴らしいですね。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年4月28日 (金) 23時26分