e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)は何処に流れてゆくか?(1):ダン・ベルグルンドの革新性のプログレッシブ・ロック
残った二人は歩み始めた(1)~ダン・ベルグルンド
tonbruket 「Dig it to the end」
ACT Music 9026-2, 2011
スウェーデンのe.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)のベーシストのダン・ベルグルンドDan Berglund は、ピアニストのスベンソン死後に、2010年、アルバム「Dan Berglund's Tonbruket」をリリース。その美と過激さを備えた格好良さに周囲をおどろかした。そして2011年はこの2ndアルバムが誕生。
エスビョルン・スベンソンが、元々実力派の彼を知り勧誘してジャズ・トリオe.s.t..を結成した経過があり、以前からの彼なりきの世界は歴然と存在していることは周知のとおりだ。そしてこのトリオは、リーダーによるリーダーのトリオというのでなく、次第にお互いの音楽性を尊重しての三者の個性をぶつかり合わせて構成してゆくパターンをとってきた。しかし、彼らの演奏するオリジナル曲の原案は、やはりピアニストのスヴェンソンによるところが大きかったことから、彼の亡き後のベルグルンドのパターンはどう展開するのか大きな関心もあったところ。
Dan Berglund : double bass
Johan Lindström : guitars, lap- and pedalsteel
Martin Hederos : piano, pumorgan, keybords, violin
Andress Werliin : drums, percussion
ディープ・パープルを愛していたという彼のロック指向は、ギターを加えたカルテット構成で、ジャズ・センスと合体してプログレッシブなスリリングな世界を作り上げている。
特に、e.s.t.の後半のジャズを超えての「Tuesday Wanderland」、「Leucocyte」の両アルバムにみる過激性は彼によるところが大きかったことを改めて知ることになる。
11曲の収録であるが、ギタリストのLindströmの曲が6曲で、Berglundは2曲のみ、その他キーボードのHederosが3曲と、完全に"Tonbruket"というグループ活動としてのアルバムになっている。 スタートの”vinegar heart”のドラムスとキーボードの荒々しさと静とのバランスも見事で、このアルバムの期待度を高める。”lilo”に聴かれるようにBeruglundのベースも十分生きているし、逆に彼の曲に安堵の姿が描かれているところが不思議だ。
”lighthouse”の異様空間とピアノの響きはe.s.t.を思いおこす世界。しかし”Dig it to the end”の危機感、”gripe”の美とその対比も見事で圧倒される素晴らしい演奏だ。
しかしこのグループの世界はe.s.tのジャズ・トリオと言う世界ではなく、あの”Leucocyte”に描かれたような、前衛性の高まったどちらかというとキング・クリムゾンも真っ青のプログレッシブ・ジャズ・ロックの世界である。そして北欧独特の美しい旋律が見え隠れするからたまらない。
このダン・ベルグルンドの体質から産まれる先進性、革新性、先鋭性の進化ともいえる”Tonbruket”の音楽は、ジャズ・ピアノ・トリオとは別の意味で、ロック・ファンを刺激しつつの今後の活動に興味が湧くところである。
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