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2012年9月11日 (火)

アンナ・マリア・ヨペクAnna Maria Jopekの近作3部作アルバム検証 : 「SOBREMESA」

締めくくりのポルトガル文化から生まれた世界は

Anna6_2   アンナ・マリア・ヨペクの3部作「POLANNA」「HAIKU」「SOBREMESA」は、作品の意味と音楽的完成度の高さ、そして彼女の魅力はちょっと一言では語れない作品として受け止めている。
 三部作は、波蘭(ポーランド)、日本、葡萄牙(ポルトガル)のそれぞれの国情(その国の背負ってきた民族的歴史)から生まれてきた音楽に迫りつつ、彼女自身の音楽と歩んできた結晶として見ていってよいと思う。そこには彼女の味がそのまま詰まっている。

(参照)
「POLANNA」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/3-4392.html
「HAIKU(俳句)」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-2332.html 

ANNA MARIA JOPEK 「SOBREMESA」
AMJ MUSIC ,  UNIVERSAL  278 3521 ,   2011

Sobremesa_2

さて、この3部作の最後はこの「SOBREMESA」だが、彼女のホーム・ページにあるように”「POLANNA」「HAIKU」の非常に洗練されたCDを味わった後のデザートになることを願っています”と紹介されている。しかしこのアルバムも、ポルトガルの魅力を凝縮しつつ単にポルトガル音楽を歌ったというのでなく、彼女のポーランドを基盤としての世界との融合が試みられている。ここにもポーランド、日本とは又異質の民族性がしっかりと浮き彫りにされ、そこに郷愁の薫り高い哀愁と人間的な美しさが混在し、これも又愛すべきアルバムとして作り上げられている。

Sobremesalist_2 収録は左の13曲。バンド・メンバーは下記のとおりである。
Anna Maria Jopek - vocals
Joao Balao - cavaguinho, percussions, kalimba
Ernesto Leite - piano, keyboards
Marito Marques - percussions
Ruca Rebordao - percussions, berimbao
Tiago Santos - guitar
Yami - vocals, bass guitar, guitar


そして、曲によって更に次のメンバーが加わる。
Ze Antonio - cavaquinho
Nelson Canoa - piano
Ivo Costa - percussions
Krzysztof Herdzin - flute
Roberto Majewski - flugekhorn
Henryk Miskiewucz - clarinet, soprano saxophone
Marco Oliveira - guitar
Paulo Paz - double bass
Victor Zamora - piano


このように、まさに総力戦で、更に更にゲストとして次のような男女のヴォーカルが色を添える。
Sara Tavares - vocals
Beto Betuk - vocals
Camane - vocals
Paulo de Carvalho - vocals
Luis Guerreiro - guitar
Ivan Lins - vocals
Tito Paris - vocals


Anna5_2  ヨペクの優しいややハスキーなそして高音になると少し鼻にかかる独特のヴォーカルがスタート。ポルトガル語文化圏のミュージックらしくギター(キターラ、カバキーニョ、ヴィオラ?)がバックを支えるが、そこはそれジャズ色の加味としてか?ソプラノサキソフォンが加わったりする。続いて軽快な曲、哀愁たっぷりの曲などが続く。そして曲によっては男性ヴォーカルが優しく包み込むように曲を盛り上げ、フルート、クラリネットなども登場する。

 そうそうポルトガル音楽と言えばFadoというところですね。Fadoは宿命という意味のようだが、ポルトガルの民族歌謡といっていいのだろうか?、旧くは歴史をたどると諸説があるが、ポルトガルの植民地ブラジルから黒人哀歌の流れの逆輸入の形で首都のリスボンで育ち庶民に広く広がったとか?。 そしてすぐ思い浮かぶのはアマリア・ロドリゲスだ。彼女の歌によって我々は知るところとなるが、決して明るくはなくサウダージと言われるむしろ郷愁、哀愁、思慕のある歌としての印象が強い。

 ロドリゲスとヨペクということになると、ちょっと簡単には共通点は感じないが、しかし、3.”Mae Negra”になるとヨペクの哀愁の歌声がバックのピアノの調べにのって納得のゆくところに誘ってくれる。この曲にはゲスト・ヴォーカルにPauro de Carvakhoが盛り上げ、ポルトガル・ギター(ギターラ?)、ストリングス、ドラムス、マラカスなどのバックが色づけている。 又6.”Noce Nad Rzeką”もCamaneとの哀愁の唄声。更に10.”Smuga Smutku”もヴォーカルIvan Linsの支えの中でのヨペクの郷愁色の強い曲だ。
 一方、5.”Kananga Do Amor”は男性ヴォーカリストYamiとのデュエットでは、なかなか良いムード。
 12.”Spójrz.Przeminęło”ギターラ、ヴィオラ、ヴィオラ・バイジョの響きか?、ポルトガルの世界にヨペクが浸透してゆく。
 
 ここに取り上げた曲群は、ポルトガルは当然として、かっての植民地であったブラジル、そしてアフリカのアンゴラ、カーボ・ヴェルデなどを含めてポルトガル語文化圏の音楽の凝縮集のようだが、ヨペクがこのように違和感なく歌い上げるとは予想外でした。もともと近年のカーネーション革命など複雑な政治情勢をも乗り越えてきたポルトガルは、陰影と陽気の両面を持った音楽の多彩さがあるように思う。
 デザートとしてはえらい豪華なアルバムを作り上げたと十分納得のゆくところであった。

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コメント

わたしも3部作が最高傑作だと思います。3部作に関する力作記事参考にさせてもらいます。

投稿: 爵士 | 2012年9月12日 (水) 22時50分

 爵士さんコメント有り難うございます。
 私のブログのタイトルからもお察しして頂けると思いますが、諸々の因子からポーランドというのは私にとっての一つのテーマでもありましたので、私の場合昨年、女性ジャズ・ヴォーカルはアガ・ザリヤンから入りましたが、爵士さんの今年の「UPOJENIE」から始まった展開は、私にとっては非常に目下有意義なエポックとなって進行中です。更に深めて頂けることを期待しています。
 

投稿: 風呂井戸 | 2012年9月14日 (金) 17時54分

風呂井戸さん  netのブログで偶然にこんな歌手を見つけました。「パンクより激しいシャンソン」といわれていたポーランド出身でフランスに亡命した女優で歌手の「アンナ・プリュクナル」。彼女のCDにヨペックも歌っている、ワルシャワ蜂起の時市民の間で歌われた「Dzis Do Ciebie Przyjsc Nie Moge/今夜は帰れない」が収録されているそうです。やはりポーランド人にとっては特別な歌のようですね。シャンソン歌手「杉田真理子」さんのブログから。
http://marikos.exblog.jp/4574587/

投稿: 爵士 | 2012年9月14日 (金) 21時52分

爵士さん、情報有り難うございます。
 この、ヨペクが唄う”今夜は帰れない”そしてそれに続く”モンテ・カシーノの赤いケシの花”は感動の曲でした(ショバンの旋律がこれらを繋ぐ)。その”モンテ・カシーノの赤いケシの花”という曲(歌)は、私のテーマでもある「灰とダイアモンド」(アンジェイ・ワイダ監督の映画)にて、映画の中でも唄われるのです。
 それから、私のブログのプロフィールに使っている写真は赤いケシの花の咲く草原に立つ映画のフィルムを持って背にナイフの刺さっている兵士の姿、これはピンク・フロイドの「ファイナル・カット」からです。ここでは彼は”灰とダイアモンド”を取り上げています。ロジャー・ウォーターズの最大の意味深なポイントです(”月の裏側”=the dark side of the moon は、ロジャーのコンセプトによるピンク・フロイドのアルバム)。
 ・・・・と、いうところが私のブログのタイトルのトリック(?)なんですが・・・あまり説明したことはないのですが、こんなところを是非ご理解下さい。

投稿: 風呂井戸 | 2012年9月14日 (金) 23時19分

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