マシュー・ボーンMatthew Bourne のピアノ・ソロにみる前衛性「MONTAUK VARIATIONS」
驚きの前衛ジャズ・フュージョンの世界
英国のジャズ・ピアニストであるマシュー・ボーン Matthew Bourne のソロ作品。 ある評論によると”Ambient/Chill Out から Jazz/Rare Groove” と表現されている多彩な技法と構成により、見事に描かれるミュージック世界が迫ってくる。ちょっとこの雰囲気は、英国というのが不思議なくらいである。
<Jazz> MATTHEW BOURNE「MONYAUK VARIATIONS」
The Leaf Label BAY77CD , 2011
このアルバムは、実はMonakaさんのブログ「ジャズ最中」で教えていただいたもの。私の物好き(笑)から手に入れて聴いてみたものであるが、久々に前衛ジャズの世界浸ることが出来、そのダイナミックさに圧倒されたわけである。
マシュー・ボーンのソロ・ピアノ、チェロのアルバムである。
TRACKS
1. I. Air (for Jonathan Flockton)
2. II. The Mystic
3. III. Phantasie
4. IV. Infinitude
5. V. Étude Psychotique (for John Zorn)
6. VI. Within
7. VII. One For You, Keith
8. VIII. Juliet
9. IX. Senectitude
10. X. The Greenkeeper (for Neil Dyer)
11. XI. Abrade
12. XII. Here (in memory of Philip Butler-Francis)
13. XIII. Gone (in memory of Philip Butler-Francis)
14. XIV. Knell (in memory of Philip Butler-Francis)
15. XV. Cuppa Tea (for Paul Bolderson)
16. XVI. Unsung
17. Smile [written by Charles Chaplin]
これは一枚でトータル・コンセプト・ピアノ・アルバムとして聴いたほうが良さそうだ。聴きようによっては”大宇宙の地球の誕生から終息”へ、又は、スケール・ランクを落として、”人間の誕生から一生を描く”、または”人間の一日の始まりからの夜の安息までの姿”?と、一つの世界を構築している。しかし最後の16章のピアノ重低音の締めくくりがクエッション(?)。そして最後の最後に昔ナット・キング・コールの歌で痺れたチャップリンの”Smile”で終わらせるところが・・・・にくいところ。
ⅠからⅩⅥまで当然彼のオリジナル、インプロヴィゼーションも加味された世界はお見事と言いたい。
確かにスタートⅠはアンビエント風というか静かにしかも安定した情景を描く。
曲Ⅱ、Ⅲは、静かではあるが、次に何かを暗示しているようなやや不安感を導く、このアルバムで最も長い曲。
曲Ⅳは、このまま行くのかと思わせる安定感。音色の美しさと間の取り方が並でない。これがこのアルバムのパターンか?と思いきや・・・・・。
曲Ⅴになって、突然激しく早弾き、曲Ⅵで重低音が圧巻。・・・・・こんな調子で意外性の演奏が展開。弦を叩く、擦るの不安感の構成は思わず引き込まれる。しかし時に聴かれる美しい音。更にcelloの音が、再び安息に導く。
曲Ⅸ、Ⅹあたりは、何か一つの達成感のような雰囲気すら感じられる。そしてピアノの音の余韻がたまらない。
しかしそこで終わらない、再びⅩⅠの”abrade”は、その意味どおりの神経をすり減らす姿を弦の擦りや引っ掻き音で迫ってくる、厳しい。
ところがⅩⅢ、ⅩⅣで再びほっとする。叙情性のある美しく心が落ち着く美の音が流れる。ⅩⅤはまさに安息。
そして最後ⅩⅥは結末のピアノ重低音。
・・・・・・・・・更に更にここで終わらないところが彼の世界であろう。冒頭に紹介したチャップリンの”smile”の演奏が最後の最後に登場、なにかほっといさせてくれるような、人間を讃えてくれているかのような?。
いやはや、哲学的アルバムといってもいいのだろうか?、時にはこうしたアルバムを聴いて思索にふけるのも貴重である。ただし、これだけ描いてしまうと次作が大変であろうと、余計なことを心配してしまう。
(試聴)① http://www.youtube.com/watch?v=PeOwZJER3tA
② http://www.youtube.com/watch?v=hqWtMWc4dJM
③ http://www.youtube.com/watch?v=6MUPxwXxwQs
<Today's PHOTO>
| 固定リンク
« ケヴ・モ Keb' Mo' のブルース、ロック、フォークの世界 | トップページ | 大人の女性ジャズ・ヴォーカル~モニカ・ボーフォースMonica Borrfors 「a certain sadness」 »
「音楽」カテゴリの記事
- 寺島靖国氏の看板アルバム 「Jazz Bar 2024」(2024.12.10)
- ジョン・バティステ Jon Batiste 「BEETHOVEN BLUES」(2024.12.05)
- ヨーナス・ハーヴィストJoonas Haavisto 「INNER INVERSIONS」(2024.11.25)
- コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」(2024.11.20)
- エミル・ヴィクリッキー Emil Viklicky Trio 「Moravian Rhapsody」(2024.11.30)
「JAZZ」カテゴリの記事
- 寺島靖国氏の看板アルバム 「Jazz Bar 2024」(2024.12.10)
- ジョン・バティステ Jon Batiste 「BEETHOVEN BLUES」(2024.12.05)
- ヨーナス・ハーヴィストJoonas Haavisto 「INNER INVERSIONS」(2024.11.25)
- コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」(2024.11.20)
- エミル・ヴィクリッキー Emil Viklicky Trio 「Moravian Rhapsody」(2024.11.30)
コメント
風呂井戸さん、こんにちはmonakaです。
記事にされましたね。
とても壮大な感じで受け取られたのですね。
誰かにささげる曲がつづいていてきっとトータルを見つめたアルバムを考えたのでしょうね。
マシュー・ボーンがほかにどのような演奏をしているか2枚手にいれました。
記事にしようと思いますが、わたしのblogでトラブルが起きてしまいました。
TBさせていただきます。
投稿: monaka | 2013年2月 6日 (水) 08時56分
monakaさん、コメント、トラックバック有り難うございます。確かに曲によって”for ***”と言ったぐわいに捧げるパターンをとっていますが、私は全て無視して私なりきの印象で聴きました。
時にこんな世界もインパクトがあって歓迎です。彼のその他の演奏はどんな世界か?、と気になるところです。又感想聞かせてください。楽しみにしています。
投稿: 風呂井戸 | 2013年2月 6日 (水) 17時45分