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2013年3月 9日 (土)

私の映画史(13) : 「ローズマリーの赤ちゃん」~ストーリーの怖さと音楽の美しさと

”妊婦は絶対に観てはいけない”と言われた映画「ROSEMRY'S BABY」

 近年は、映画「戦場のピアニスト」で日本では一般に浸透した映画監督のロマン・ポランスキーの1968年の作品。見方によっては呪われた映画と言われているもの。それは一つはこの映画のストリーで、純真な女性にまつわる衝撃な結末の怖さ、二つ目はこの映画が公開されてから起こった監督の悲劇。三つ目はこの撮影場所で起きた悲惨な事件があるからだ。
 しかし私がここに取り上げるのは、ソコに流れる美しいクリシュトフ・コメダの音楽があり、又衝撃的ストーリーが印象的であるからだ。

Rosemarysbabyblog_2

ROSEMARY'S BABY

監督    ロマン・ポランスキー
脚本    ロマン・ポランスキー
原作    アイラ・レヴィン
出演者 ミア・ファロー
音楽   クリシュトフ・コメダ
撮影   ウィリアム・A・フレイカー
配給   パラマウント映画
公開   米国 1968
      日本 1969
上映時間 136分
制作国  米国
言語    英語

Photo (ネタばれ少々の概略ストーリー(要注意))
 舞台はニューヨーク(1966年の設定)。若い俳優ガイ(ジョン・カサベテス)と妻ローズマリー(ミア・ファロー)が、マンハッタンの古いアパートに引越してきたところから始まる。隣人はローマンとミニーのカスタベット夫妻。一見親切だが、おせっかいでなにかいわくのありそうな老夫婦だ。
 その頃から夫ガイの仕事の上に幸運と言える変化が起こり始めた。いつも彼よりはいい役にありついていた俳優が急に盲になり、ガイに役がまわってきたりした。又新生活の中で、赤ちゃんを作ろうと彼はローズマリーに提案した。ローズマリーも幸せに感じ期待する。その当夜、夕食の時、隣のミニーがデザートを持ってきてくれた。だが、味が変でローズマリーは食べたくなかったが、夫は変に強く勧める。そこで半分ほど食べたが、その結果、目まいがして意識を失ってしまった。その夜、ローズマリーの見た夢は、まさに悪夢というにふさわしいもの。翌朝目ざめると、彼女の身体は、不思議にひっかき傷だらけだった。おかしな、そして不気味な一夜であったが、夫が彼女に寄り添ったことの話しを聞いて納得する。そして彼女は妊娠した。
 隣のカスタベット夫妻は知っている産科医を勧めたり、栄養があるという飲物を毎日運んできたりした。だが日が経つにつれ、ローズマリーの身体は弱まり顔色は悪くなるばかり。訪ねてきたローズマリーの友人ハッチは異常を感じ心配して事情を聞いてくれた。彼は翌日、彼女と会う約束をして帰っていったが、急病で倒れて数ヵ月後に死んでしまった。しかし、かたみに古い本をくれた。ローズマリーは読みふけり、すべての謎を解けたと確信した。それは周囲の者の悪魔の伝説の陰謀が渦巻いていることを知ったのだ。
 ローズマリーは、意識喪失の下なんとか無事に子を生んだ。だが、みんなは死産だったという。しかし、アパートの隣の部屋から子供の泣き声がする。彼女の生んだ子なのか?。
 そして・・・・・・・・全ての謎が明らかになる。怖い。

 アメリカ映画といえども、監督はポーランド人のロマン・ポランスキーRoman Polanski、そして音楽もポーランド人のクリシュトフ・コメダKrizysztof Komedaというところが焦点(二人とも1933年生まれ)。

Photo_2  特に監督のポランスキー(左)は、実はユダヤ人で少年の頃ポーランドにて第二次大戦下クラクフのゲットーに拘束され、両親と共に収容所送りにならんとしたときに、父親の機転により有刺鉄線に穴を空けて子供の彼のみ逃げることが出来た。そして逃亡生活を送っている。18歳で映画の道に入り、1962年になって監督としての本格的作品「水の中のナイフ」を発表した。いずれにしても戦後ソ連統治下から西側に逃れている。
 同様に、音楽のクリシュトフ・コメダ(このアメリカ映画ではクリストファー・コメダChristopher Komedaと記されている)は、ポーランドのジャズ・ピアニスト、彼の描くところは哀愁と美とそして凄みのある陰影とが売りどころ。彼もポランスキーとの関係もあり、自己の芸術を求め西側に逃れた一人である。そしてこの映画のオープニングから哀愁のテーマ”sleep safe and warm”が、ミア・ファローの”ララララ~”のスキャットで流れるのである。
 こうした両者のコラボによって作り上げられたこの映画には、その描くところ二人の人生の歴史的背景から生まれる凄みが何となく感ずるのである。

 妊娠した女性の情緒不安定な世界を描きつつも、人間のオカルト世界に踏み込んでのこのホラーなストーリーの怖さと、一方それに引き換え今時の映画のような残酷な描写は全くなく、それでいて恐ろしいところがこの映画の芸術性の高さであると思う。既に40年以上前の映画だが必見の代物だ。

 さて、冒頭に述べたこの映画は何故”呪われた映画”と言われるのか?、それはこの公開後に、監督ポランスキーの妻の映画女優のシャロン・テートが妊娠中に、カルト集団チャールズ・マンソン・ファミリーにより悲惨な状態で殺害される事件が起きる。これもまさに獣奇事件であったこと。
 更にこの撮影現場であった古い10階建てのアパートは、あのジョン・レノンとオノ・ヨーコが住んでいたダコタ・ハウスなのです。そして1980年レノンは玄関前で射殺されたのであった。

(追加)ローズマリー役のミア・ファローMia Farrowは、フランク・シナトラと結婚し、この映画の公開後離婚した。後にジャズ・ピアニストでありクラシック音楽指揮者のアンドレ・プレヴィンと結婚。多くの映画に出演。

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=VQFwW8eAy4U

[PHOTO 今日の一枚]

Photox
(OLYMPUS PEN E-P3,  M.ZUIKO DIGITAL 12-50mm 1:3.5-6.3 EZ)

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