私の映画史(14) ジョン・ウェイン「ラスト・シューティスト THE SHOOTIST」
久々にウェスタン映画の話題 ~ これぞ締めくくり作品「THE SHOOTIST」
久しぶりに本屋を訪れ諸々探っていたら、”今どき何で?”と・・・・思わせた「ウェスタン映画入門」(洋泉社MOOK (左))というちょっとした冊子があったので懐かしく買ってみた。
思い起こせば私は10代から映画浸りで、それもなんと特にウェスタンもの、そして和ものは時代劇というところに集中していた。
この別冊特集本は、どうも「ジャンゴ 繋がれざる者」という昨年のアカデミー賞2部門獲得した最近の映画(クエンティン・タランティーノ監督)を取り上げるべく、西部劇映画を特集して出版されたもののようだ。
ところで、私自身の青春時代は、マカロニ・ウェスタン前のハリウッド西部劇であり、既に私自身の好きであった作品としてジョン・ウェイン主演のハワード・ホークス監督による「赤い河」(1948)をここで取り上げた(このコンビは後に最も愛される「リオ・ブラーボー」(1959年)を制作した)。
(参照)映画「赤い河」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/red-river-2c35.html
よき時代の西部劇というのはB級映画も圧倒的に多いが、名作としては、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのコンビでは「駅馬車」「捜索者」が好きでしたし、「リバティー・バランスを射った男」(1962年)が意外にいい。
ゲイリー・クーパーものでは「真昼の決闘」と言うところに尽きるでしょうね。
西部劇映画も思い起こすときりがなく出てくるのだが、そうした中で、ハリウッド西部劇の締めくくりとしての作品と言っていいと思う1976年の「ラスト・シューティスト」、これは意外に挙げる人も少ないが、私は取り敢えず名作だと思っている。そして結構お気に入りの映画であった。(もうこの頃はマカロニ・ウェスタンが主力でしたが・・・・・)
米国映画 「ラスト・シューティスト THE SHOOTIST」
1976年作品 制作:M.J.フランコヴィッチ、ウィリアム・セルフ
監督 ドン・シーゲル
原作 グレンドン・スワザウト
脚本 マイルズ・フッド・スワザウト
スコット・D・ヘイル
音楽 エルマー・バーンスタイン
出演 ジョン・ウェイン
ローレン・バコール
ロン・ハワード
ジェームス・スチュワート
リチャード・ブーン
時代はマカロニ・ウェスタン・パターンに流れた中で、取り敢えずハリウッド西部劇のオールド・スタイルをしっかり守って作り上げた作品といって良いだろう。
ガンマンも歳をとって病気も持つようになると、どんな生き方が出來、そしてどんな形で人生の最後が迎えられるかを描いたところにこの映画の価値があるとみる。
とにかくジョン・ウェイン演ずるかっての射撃の名手が、寄る年波には勝てず、しかも腰痛持ち。そしてそれは末期の癌によるもので、命もわずかであることが解った。
このガンマンの若き時代の映像がふるっていて、ジョン・ウェインの過去の映画の先に取り上げた「赤い河」、そして「ホンドー」、「リオ・ブラボー」、「エル・ドラド」などの射撃シーンが使われていて、我々からするとそうした名作の主人公の人生の行く末を知らしめられる気持ちになって、心に迫ってくるところがミソ。
この映画で描かれる死の迫った男が、最後に出来ることは何か、そしてその死に方はどうあったらよいか考えながら過ごしてゆく姿をじっくり一日一日を追って描いてゆく。美しい自然の姿に心を寄せてみたり、それも家族を持たなかった人生の結果ではあるが、一人では寂しいために、下宿の主人である後家夫人ボンド(ローレン・バコール)に相手を求めたり、若い少年に自分の何かを伝えたいと思ったりするところは見るものの気持ちをひきつける。
そして30人もの人を殺した男が、どうして生きて来れたかと問われたときに”幸いに背部から撃たれなかっただけだ”という答えが面白い(実はこの事が最後に彼に訪れることになるのだが)。
しかし主人公のガンマンの生き様が、下宿の少年ギロムに銃に対する憧れといったものから一歩進んで、人間の大切な姿が認められてゆく過程がうまく描かれているし、又下宿屋の未亡人ボンドも最初はこうしたガンマンは嫌ってはいたが、19世紀の西部に生きてきた彼がその生き方を変えずに貫こうとする姿をみるにつけ心が通じるようになる。実はそんなところがこの映画の主テーマであることが解かってくる。そして彼は確実に自分の人生を次の時代に繋ぐことが出来たのである。
いずれにしても静かに「死」をみつめようとするも、伝説のガンマンをまわりは放っておかない。儲けようとする者、弱ったところを狙って恨みを晴らそうとする者、その死を面白がる者等々自分の死が見世物にされる残酷さにも彼は耐えてゆく。
最後は西部劇映画らしい打ち合いのシーンが登場するも、それがかっての西部劇映画と異なってこの映画の目的化されていないところが、この時代になっての西部劇であることを感じさせる。
ジョン・ウェインの遺作となる作品であるが、日本では敢えて数年後の彼が癌の再発で死亡した直後の1979年に公開したといういわく付きの作品でもある。
そしてこの作品は、彼の多くの出演作のなかでも出来の良い作品であったということは意外に知られていないので、久しぶりのウエスタン映画の話題として取り上げた次第。
(参考) 「THE SHOOTIST」 http://www.youtube.com/watch?v=yioJEv54_bw
| 固定リンク
「趣味」カテゴリの記事
- 「ジャズ批評」誌=ジャズオーディオ・ディスク大賞2021 (追加考察) セルジュ・ディラート Serge Delaite Trio 「A PAZ」(2022.03.19)
- MQAハイレゾで蘇る・・(1) シェルビィ・リンShelby Lynne 「Just A Little Lovin'」(2021.09.18)
- ハイレゾHi-Res音楽鑑賞「MQA-CD」 = そして スーザン・ウォンSusan Wongの3アルバム(2021.08.13)
- 2020-2021 冬の想い出 (3)(2021.04.24)
- 2020-2021年 冬の想い出 (2)(2021.03.25)
「私の映画史」カテゴリの記事
- 私の映画史(25) 感動作ジョン・フォード作品「捜索者」(2016.06.15)
- 私の映画史(24) マカロニ・ウエスタンの懐かしの傑作「怒りの荒野 I GIORNI DELL'IRA」(2016.06.05)
- 懐かしの西部劇と音楽=モリコーネEnnio Morriconeとマカロニ・ウェスタン -私の映画史(23)-(2016.03.25)
- 「月の裏側の世界」の話 :・・・・・・・・映画「オズの魔法使」とピンク・フロイド「狂気」の共時性(2016.01.07)
コメント