回顧はつづく(音楽編-11-) エルヴィス・プレスリー Elvis Presley
キング・オブ・ロックンロールとして20世紀の象徴
時々昔の唄や曲をふと聴きたくなることがあるが、前回ブレンダ・リーの”好きにならずにはいられない Can't Help Falling Love”の話をしたので、この曲となるとエルヴィス・プレスリーを取り上げないわけにはゆかない。エルヴィスはこの曲を1961年に唄って英国でも一位になっている。映画「ブルー・ハワイ」でお披露目して、そしてその後は彼のステージでは必ずお別れの曲として唄われてきたもの。ロックン・ロールはもちろんだが、こうした彼の唄うスロー・バラードも人気があった。
ロックン・ロール、ロカビリーという言葉も日本の一般大衆には、エルヴィスによってもたらされたと言っていいし、あの軽快で楽しい音楽というものが日本にとっては如何にも外国の先進性すらも感じ取らせたものであった。
エルヴィス・プレスリー(本名 Elvis Aron Presley、 1935.1.18-1977.8.16 、アメリカ合衆国ミシシッピ州イースト・トゥペロ生まれ)
既にエルヴィスのヒット曲をリアル・タイムに喜んで聴いた年齢層は、少なくとも70歳前後になっているわけで、彼の社会に及ぼした”反社会道徳としての評価”のエピソードなどは、現在の若者には全く信じられない昔話の世界となってしまう。なにせ下半身を動かしてリズムにのることすら猛抗議を受けたのであるからやはり1950年代というのは過去そのものであるわけだ。そして自由を売り物のアメリカ社会においてすら、”若者を悪くする音楽”として、排斥運動が展開された。
エルヴィス自身貧しい幼少時代で育ち、生活環境もメンフィスの貧しい黒人労働者にまぎれてのものであり、そこから黒人音楽の因子(ブルース、R&B、ゴスペルなど)を持ち、カントリー&ウェスタンの流れを取り入れたこの音楽は、人種差別の目からも白人社会として受け入れがたいものであったということだ。そんな中で、1958年には徴兵制度の適応によりエルヴィスは陸軍に招集され、音楽活動も無理矢理中止させられた。
しかし除隊後の彼を待つ社会には、そんな抑圧を破ってゆく大きな流れは止められず、更にエルヴィスの活動は社会現象となって展開されたのであった。
こんなロックン・ロールが、その後英国にも飛び火して、営々と続く音楽分野としての”ROCK”となって今日ある事は当時としては考えられないところであった。
THE ESSENTIAL COLLECTION 「MEGA ELVIS」
BMG MUSIC BVCP-850, 1995
日本に彼の名が轟いたのは、”ハートブレイク・ホテル Heartbreak Hotel”で1956年の話。そしてその後”I Want You, I Need You, I love You”、”冷たくしないでDon't Be Cruel”、”Love Me Tender”、更に更に”監獄ロックJailhouse Rock” と立て続けにヒット曲が届いたのである。
まあこれらの曲を始め彼のヒット曲を聴くには、手っ取り早いところで、こんなベスト盤があった。現在も多くのベスト盤があるが、当時のレコード盤よりも音も安定していてこちらのタイプの方が聴きやすい。
このベスト盤のTracklistは左のように全27曲。そしてエルヴィスの徴兵義務を果たして後、”GIフルース”のヒットから、1960年になると、”It's Now Never”、”Surrender”、”今夜はひとりかい? Are You Lonesome Tonight ?”など止まるところを知らずヒットは続き、’61年には彼の生涯のステージのエンディング・テーマ曲”好きにならずにはいられない Cant's Help Falling in Love”が唄われ、甘さも十分発揮してファンをうならせた。まさに世界はエルヴィス・プレスリーの一色となったのである。
あのロックン・ロール(ロカビリー)のしゃくり上げる唱法は、この1960年代を通して世界の若い世代に支持された。そこには社会の底辺をしっかり掴んだ音楽の色と、若者の主張の大きな場所としての音楽が発見され、そしてヨーロッパでは更に新しいロックの世界が流れ始め、英国のビートルズの誕生となる。
たまたまこの歴史そのままに生きてきた私にとっては、やっぱりエルヴィス・プレスリーの誕生から始まってロックそのものが世界の歴史に見えてしまう。そんな中での回顧シリーズの一幕でした。
(試聴)
[PHOTO 今日の一枚]
(NIKON D800 AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4G )
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コメント
私のよく行く神戸ハーバーランドに、彼の死後10周年に、日本のファンたちによって建立されたプレスリー像が建っています。もともとは東京渋谷に建てられたものだが、縁あって命日の2009年8月に神戸に移設されたもの。小泉元首相も来て除幕式をしたプレスリーの銅像の前には、今でもファンからの献花が沢山おかれています。
投稿: 爵士 | 2013年6月 1日 (土) 10時40分
爵士さん、こんにちは。コメント有り難うございます。私は時々こんな回顧をしてしまいます。
プレスリー像は神戸でしたか。今でもファンからの献花があるとか、おじいちゃん、おばあちゃん以外の若い人からもあるのかしら?。
ところで、G.Mirabassiの「VIVA V.E.R.D.I.」を聴きましたけど、ストリングスのバックの意味が解りませんね。これは明らかにないほうがいいです。トリオの味ってこうしたところではないのですよね。ちょっと残念です。次のアルバムは何時になるのでしょうかね。もうそちらに期待してしまいます。
投稿: 風呂井戸 | 2013年6月 1日 (土) 14時29分
東京(水戸)のASです。1月には突然で失礼いたしました。先日「灰とダイアモンド」のビデオを初めて見ました。なかなか難しい映画ですね。ロックについては私はサッパリで、コメントも遠慮させていただいていました。でも、このプレスリーの歌は、マルティーニの「愛の喜び」から知り、映画ブルーハワイで好きになった歌で、私も英語で歌えます。私は青春歌謡、GS、フォークの世代ですので、現在はこの種の曲をA-SAXで吹くのを趣味にしています。また、機会がありましたらコメントさせていただきます。
投稿: 水戸老公 | 2013年6月 4日 (火) 10時52分
水戸老公(AS)様、ご無沙汰いたしております。お付き合い下さいまして有り難う御座います。そうでしたね、「好きにならずにはいられない」は、マルティーニの”愛の喜び”が原曲でしたね。「ラブ・ミー・テンダー」は、南北戦争の南軍の兵士たちの愛唱歌”オーラ・リー”ですし、「イッツ・ナウ・オア・ネバー」は、”オー・ソレ・ミオ”ですし、プレスリーのヒットも結構原曲がありますが、彼なりきに歌い込んで我々を喜ばせて頂きました。A-SAX とは、アルト・サックスですよね。それは良いですね。羨ましいです。又コメント頂ければ嬉しいです。音楽をジャンルを問わず楽しみましょう。又よろしくお願いします。
PS:アンジェイ・ワイダの「灰とダイアモンド」は、ポーランドの民族の心ですね。あの国の分散の歴史、他国による統治下の悲惨さ、民族的蜂起、挫折、悲惨な戦争の歴史などの一コマなんですね。
投稿: 風呂井戸 | 2013年6月 4日 (火) 18時38分