キース・ジャレット・トリオ Keith Jarrett Trio :ニュー・アルバム 「Somewhere」
2009年録音もので健在ぶりを披露~それが又好評です
そういえば、キース・ジャレットの前アルバムは、ソロの「RIO」でしたね(参考①)。あれは2011年録音・同年リリースもので、彼の慢性疲労症候群という難病を克服してのもう心配ない健在ぶりを十分堪能させてもらったわけだが、その2年前のトリオものがここに来てリリースされたということになる。・・・と、言うことはその「RIO」の前にリリースされたやはりソロ・アルバムの「Testament」が2008年録音であったので(参考②)、丁度その間の録音と言うことになる。つまこのトリオもののリリースは、2011年「RIO」発表時にも既に練られていると言われておりここに来てお披露目となった。
<JAZZ> Keith Jarrett Gary Peacock Jack DeJohnette 「Somewhere」
ECM Records ECM 2200 B0018362-02 , 2013
ECM らしいジャケであるが、若干キース・ジャレットのムードとしては少し違う感もあるが、まあそれはそれ結構でありますが、このアルバムはどうも巷で非常に評判が良い。
先日も”最後の伝統のトリオ公演”と言う話で日本公演を果たしたわけであるが、考えてみるとこのスタンターズ・トリオと言われる1983年以来のこのトリオもののリリースも、録音日でいうと久しぶりのものになる。
なんと言ってもベースのゲイリー・ピーコックは、キース(68歳)より10歳年上になるので、今年78歳になる。しかし彼はこのトリオのスタートから重要な役を果たしてきた。このトリオの性質を決めてきたキーであることも知っておかねばならない。そうであるからこそ、寄る年波は、そのあたりはやっぱり厳しいのだろうなぁ~~と思うところ。さてさてそんな30年キャリアのこのトリオの演奏はどうだったのかといろいろと考えながら聴いたというのが今回のこのアルバムだ。
(tracklist)
1. Deep space ~ Solar
2. Stars fell on Alabama
3. Between the Devil and the deep blue sea
4. Spmewhere ~ Everywhere
5. Tonight
6. I thought about you
このアルバムはスイスのKKL Luzem Concert Hall でのライブものであるが、なかなかの好録音で、是非ともハイレゾ音源で聴きたいところである。
そして選曲はいろいろなピアニストが取り上げているものであるが、バーンスタインの”Tonight”以外は若干渋めの曲である。
”I thought about You”は、前回取り上げたイリアーヌ・イリアスのニュー・アルバムのアルバム・タイトル曲であり、彼女の場合は冒頭のスタート曲として気持ちが高ぶるような意気揚々とした曲に仕上げているが、キースの場合はアルバム・エンディング曲としてかなりムーディーに気持ちが安まる曲になっていて、この両者の違いが面白い。
このアルバムは既に多くの好評を得ている。オープニングもキースのインブロビゼイションのソロ・ピアノ演奏の”Deep space”でスタートして気持ちを次第に引き込んでゆくが如くに展開し、そして”Solar”に入ってゆくところがにくいところ。多分このあたりでファンはもう参ってしまうのである。もともと私はキースの場合、オリジナルものやインプロビゼイションの方が好みであるので、当然こうした演奏は大歓迎である。
”Stars fell on Alabana”は、キースのピアノ・ソロとゲイリーのベース・ソロを織り込んでの曲構成で美しさと心に響く一つ一つの音を大切にした世界を作り上げている。
”Somewhere”も、このトリオはしっかり自分たちの歴史を噛みしめるが如くに説得力のある流れを醸しだし、彼等のオリジナル曲”Everywhere”と流れ、このアルバムの核をなす20分に及ぼうとする曲となっている。
しかし考えてみれば、このトリオ・メンバーの歳を考えると、この充実ぶりは恐ろしさすら感ずるのである。録音日からみると前アルバムは「Up for It」だと思うが、あれは2002年の録音であったから、それから7年の間があるわけだ。しかしこうした充実した演奏が展開されたことに万歳をしたいところである。
今回は、かなり彼等のトリオものとしてはしっかり練ってのニュー・アルバムであったことは、世界各地での多くのコンサートの中でもやっぱりこの日の出來は出色であったのであろう、アルバムとしての曲の配列を含めてのまとめも見事であった。
さてさて最後に一言、このアルバム、いやに巷にて好評なんですが・・・・、しかし思い起こせば、私が彼の演奏を眼前で観てジャズ・ピアノの魅力を思い知らされたのは1984年、又このトリオとしての私の感動はアルバム「CHANGES」、「CHANGELESS」にあったのだが(既にこれは30年前の話になる)、今でもそちらの方により強い私の心や感動があることには変わりは無いのです。( 参考③)
(参考) ① http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/keith-jarrett-r.html
② http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/keith-jarrettte.html
③ http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/keith-jarrett-7.html
(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=XYJDGhur4AM
[PHOTO 今日の一枚]
(NIKON D800 AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4G)
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コメント
おはようございます。TBありがとうございました。
本作が巷での評判がいいのは当然でしょう。このトリオの作品としては,近年で最高の作品だと思いました。どこから切ってもKeithのピアノは美しく,Peacockのベースは音がよく,DeJohnetteの煽りも入ってバランスがいいです。そして,選曲の妙ですね。Bernstein作の"West Side Story"の2曲には驚きましたが,演奏を聞いてあまりの素晴らしさに驚きました。
いいです,これは。まじでいいです。久々に彼らの魅力を堪能できた気がします。ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年6月22日 (土) 10時18分