ミレニアムMillenium の 9thアルバム「Ego」~ポーランド・プログレの花
ここ十数年の健闘を集約した今年のこのアルバムは聴きやすかった
<Progressive Rock> MILLENIUM 「EGO」
LYNX MUSIC LM80-DG , 2013
さてさて、ポーランドのプログレッシブ・ロックもフロイド派 Riverside、 Quidam 。そしてイエス派 Collage、 Satellite などなど話題は尽きないが、そこはポーランドだけあって彼等はやっぱりそれなりに自分の世界をしっかり持っていることは、今まで語ってきたところである。
そこで今度は、どっちかというとジェネシス派のミレニアムMilleniumだ、そうは言ってもやっぱりジェネシスそのものではない。ポーランドという国は、国民の基礎にしっかりとポーランドの伝統の音楽の血が流れていて、特にロックにおいてはプログレ派に非常に馴染みやすいのである。彼等も叙情的な世界もたっぷり聴かせてくれる。人によっては聴き方でマリリオンっぽいとか、フロイドの流れも感ずるとか、まあそれは聴いてのお楽しみ。
さてこのアルバム「Ego」のミレニアムは5人バンドでピーター・ガブリエルばりでありながらややハイトーンのヴォーカル担当のGallがじっくりと唄って聴かせてくれる。そこに素晴らしいメロディーを持って、Plonkaは泣きのギターも響かせてくれるので飽きるところが無い。なんとゲストに女性ヴォーカルを迎えてバックを美しく流す。
2000年にデビューして、これは彼等の9作目と実に多作。かって「Exist」なる私が興味を持ったアルバムがあったが、ここに来て彼等はポーランド・プログレの中心的バンドに育ちつつあるといったところ。
さて収録曲だが、左のように、プログレらしく10分前後の曲が4曲。
とにかくメロディアスなシンフォニック・ロックを聴かせてくれる。
どうもテーマはちょっと明るそうな世界では無いのだが、曲のイメージはそう暗さは無く、物語りを聞いている感じにアルバム・トータルに聴きやすく流れる。
オープニングのアルバム・タイトル曲”ego”のシンセの音の流れをバックにしてのギターの音で、もう聴き耳を立ててしまう魅力がある。何となく壮大な物語の始まりを示唆しているような曲。メタル色は全くなく全体にゆったりと流れる。この曲は後半の盛り上がりとギターの泣き叫びもいい。最後は美しいピアノの調べ。もちろんGallのヴォーカルの歌詞は英語であって耳に馴染みやすい(初期のアルバムはポーランド語)。なかなか纏まって良く出来た曲だ。
そして ”dark secrets”の序盤の泣きギターは確かにギルモアの音に似ているところがあって、フロイドに似ているという人のいるのも解るが、キー・ボードのパターンが少々異なっているし、全体的にはメロディーが溢れていてロジャー・ウォーターズの内省的な深刻性のフロイド流とはこのアルバムではちょっと違うと思う。
”when i fall”のピアノは実に美しく、中盤のシンフォニック・サウンド、そして後半へ流れるギターも美しさに満ちている。
彼等はスタートは1998年「Framauro」というバンド名でスタートして、2ndから「Millenium」に改名している。そして既に十数年順調に9枚のアルバムをリリース。自己のパターンをしっかり堅持してここに来ているところは立派。見方を変えれば、つまるところポーランドにはロック界に於いてもプログレッシブなミュージック探求派を支える母体があるというところだと思う。
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コメント
ハモリヴァースの最後の部分だけユニゾン、みたいな感じで同じバンドが出て来ましたね(笑)。
ジェネシス派かぁ…そういう発想はなかったなぁ〜、言われてみればそうなんですけどね。にしても、ポーランド的深みが面白く、バンドの個性が強く出ているので面白いなと思います。ちょっとこの深み、良い感じでハマれますね。こちらの作品もいずれは…と思ってます。
投稿: フレ | 2013年7月22日 (月) 22時02分
フレさん今日わ。
私はこの系統に偏っていますが、フレさんのような多方面をこなしている人に共感が得られるとなんとなく嬉しいものです。
どうしてもプログレ系は、昔のクリムゾン、フロイド、イエス、ジェネシス等と比較して振り分けたがるのは、良いことか、悪いことか・・・?。まあ我々の原点がそこにあるので許してもらいたいというところですね。
しかしポーランドもの(ロック)は、日本においても、もっと広く知って欲しいと思うところがありますね。ジャズの世界の方は結構浸透していると思いますので(コメダのように神様みたいな人が出現したせいでしょうか)。
投稿: 風呂井戸 | 2013年7月23日 (火) 12時47分