ポーキュパイン・ツリーPorcupine Tree 「The Sky Moves Sideways」~ご本家ブリティッシュ・プログレの迫力
クリムゾンからピンク・フロイドまでを凌駕する
久々にご本家ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックに目を向けたい。嬉しいことに70年代プログレの波は世界各地でそれなりに現代においても、脈々と流れ繋がっていることで、特に東欧・北欧に注目することが多いというところ。そんな中で意外にご本家ブリティッシュ・プログレの重要なところをご粗末にしていて叱られそうであるので、ちょっと恰好付けに「ポーキュパイン・ツリー」でお茶を濁すという始末であります。
<Prigressive Rock> PORCUPINE TREE 「The Sky Moves Sideways」
KSCOPE KSCOPE124 , (originai 1995)
ご存じスティーヴン・ウィルソンSteven Wilson 率いるブリティッシュ・プログレの今や重鎮バンドのポーキュパイン・ツリーpocupine tree。ここで登場させるは、彼等の20年の歴史の多くのアルバムの中から、バンド結成2年後1995年リリースの3rdアルバムである。もう18年前にならんとしているこのアルバムをここで取り上げるのは、彼等の近作(2009年)の「THE INCIDENT」がそれほど評判良くなかったといことでなく(私は結構気に入ってますけど)、これは当時ギルモア・ピンク・フロイドが進歩なしの「対 DIVISION BELL」をリリースした翌年のリリースであり(実は私はこの3rdは、リリース当時は日本盤のリリースはなく、まだ知らずに少々遅れて知ったのであるが)、なんと言ってもプログレの暗黒時代にユーロ・ロックの発掘で欲求不満を解消し、それも種尽きの頃に、なんと英国にこんなプログレッシブな現代版ピンク・フロイドと言って良いアルバムがある事を知って歓喜したものだった。当時、ネオ・サイケデリック・プログレッシブ・ロックなんて言ったりして感激し万歳したのである。そんなところから彼等の話になると、どうしても先ずはこのアルバムを登場させたいわけである。
そしてここに紹介したアルバムは後に再発した2枚組豪華盤。若干曲の配列が変わり、又alternate version とbonus track が加わっておりお勧め盤。
ピンク・フロイド系サウンドであるのだが、皮肉にもリーダーのスティーヴン・ウィルソンにはクリムゾン系が支えているから面白い。彼は多彩なギターのサウンドを聴かせてくれるが、時にギターのゲストを加えツイン・ギターにしてサウンドを現代風にも変化させる。又この作品には、Gavin Harrisonが参加して、攻撃的なサウンドを展開しているし、この後のアルバムにはRobert Frippがゲストで登場したり、更にAdrian Belewもギターで参加したアルバムもある。そして後にウィルソン自身エンジニアとして、クリムゾンの作品のリマスターに手を付けている。
面白いのは、このバンドによるアルバムは一枚一枚性格を異にするのでプログレッシブと言えばプログレッシブであり、フロイド系好みならまずはこのアルバムでしょうね。しかし最近のメタル色のあるアルバムもドリーム・シアターとは一味違う”フロイドのメタル版”みたいで楽しいのだ。
とにかく多芸な彼だが、2010年にはスウェーデンのプログレ・バンドOpethとStorm Corrosionを結成したりしている。
さて話はもどってこのアルバム・・・・・
members
*Steve Wilson : guitars, key, vocals
*Richard Barbieri : synthesizers, key
*Gavin Harrison : drums
*Cris Maitland : percussion
*Colin Edwin : bass
Suzanne Barbieli : vocals
Rick Edwards : percussion
Theo Travis : flute
(*印 中心メンバー)
こちらの再発豪華盤は左のようなCD2枚組、とくにアルバム・タイトル曲”The Sky Moves Sideways”は組曲になっていて、当初6曲より成り立っていた。従って35分の長曲。かってのピンク・フロイドの”Shine On You Crazy Diamond”のように二分割してスタートと締めくくりに分けている。この曲は山あり谷あり、深遠な海有り水平線有りで満足のピンク・フロイド世界を知らされる。
”The Moon Touches Your Shoulder”はアコギと静かなヴォーカルで始まり、そしてエレキ・サウンドを堪能させまさにピンク・フロイド。
バンドになっての2作目であるが、曲によってメンバーが異なるのもまだまだウィルソンのユニット色が強いところ。特に”Dislocated Day”は彼のマルチ・プレイにGavin Harrisontが効果をあげているのか?攻撃的で刺激的で面白い。いずれにしても、フロイドとクリムゾンを聴く感じで欲張り向きだ。この曲の効果によりアルバムの味付けが素晴らしい。
いまでも、このポーキュパイン・ツリーはプログレッシブな変化を遂げつつある。曲も攻撃性と抒情性の織り交ぜが巧み、ギターもヘヴィーであったりアコギの美しさがあったり、そして不思議とフロイド色が必ず見えるところが私を泣かせるのである。まずはこの私にとっての感動の3rdアルバムを紹介したのだが、この後の彼等の多彩な変化も注目度が高い。当然そのあたりにも機会をみて焦点を当てるつもりだ。
(試聴 ) http://www.youtube.com/watch?v=yGc66wTvmVE
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コメント
まじめまして
この人がリマスターしたJethro TullのAをチェックしましたがすごくいい仕上がりでした
あとは元Asiaのガスリー・ゴーヴァンをソロアルバムでで起用したり色々人脈があるなと思います
私はオーストラリアのバンドをよく聞いたんすがプログレ方面では近年Caligula's HorseやSouthen EmpireやToehider等面白いバンドが出ててるので楽しいです
投稿: akakad | 2021年7月20日 (火) 22時42分
akakadさん
コメントどうも有り難う御座います
いやはや既にこの記事を書いて8年の経過で、ちょっと何を書いたのかと・・恥ずかしい状態ですが・・、
スティーヴン・ウィルソンも当時から又一皮二皮と剝けて自身の活動がプログレッシブな流れで歩んでいているのでしょうか、技術者としての充実も相当なんでしょう・・・。
もっともっと、ミュージシャンの活動も期待しているのですが・・・
さて、オーストラリアですか、北欧系に向かってしまう傾向があって、意外に私にとっては穴でしたね。おっしゃるところ参考にさせていただきます、又貴ブログも拝見させて頂きます。有り難う御座いました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年7月21日 (水) 16時15分
オーストラリアについて一つ言うと昔のバンドはSebastian Hardieレベルより上のバンドはいないってことです
メロディアス系はUnitopiaのThe Gardenにヘヴィ系はほぼクリムゾンヌーヴォメタルのKarnivoolのSound Awakeが出てくる00年代後半まで大した作品はほぼないってところですね
はっきり言ってそこから現在が盛期で新しいバンドを聴いたほうがいい作品に出合える確率は高いってところです
投稿: akakad | 2021年8月 1日 (日) 20時33分
akakadさん
続いて、示唆的なコメントどうも有り難う御座います
オーストラリアに目を向けさせてくれて有り難うございます
いっやーー、Sebastian Hardieと聞いただけで、懐かしさに浸ってしまいます。(リアルタイムには美に圧倒されました)
Southen Empire の長曲に描くところ、ここについこないだのRoger Waters「is this the life we really want」のようなドラマティックな刺激性と哀愁性があると面白いと思うのですが・・・
などなど、語るところの対象があることに満足しています。いろいろとどうも、これからも刺激をください。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月 2日 (月) 09時32分
Southen Empireはある程度明るいのが売りですからね
フロイド的もしくはどんよりしたなやつってことですかね
それでしたら
Turtle SkullのMonoliths
https://turtleskullmusic.bandcamp.com/album/monoliths
AnubisのHitchhiking to Byzantium
https://anubismusic.bandcamp.com/album/hitchhiking-to-byzantium
とりあえず知ってるのはこんなところです
後は豪プログレとして単純に注目してるのがShaun Holtonの3rdフルアルバムのEarth Meet Worldの内容です
前の2作がよかったのでとりあえず合う物であればいいなと
投稿: akakad | 2021年9月26日 (日) 18時26分