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2013年7月14日 (日)

ポーランド・プログレの宝石=クィダムQUIDAM 3rd「The Time Beneath The Sky」

プログレッシブに展開するトラッドをベースにしたロック・ミュージックの美学

 ポーランド・プログレの代表グループ QUIDAM を先日紹介したが、かっての「3rdアルバム」のクリスタル・ヴォイスの女性を擁した美しさを強調したままで、男性のみにになった「5thアルバム」を取り上げたため、”その「3rd」をちゃんと取り上げろ”というお叱りを受けたのでここにあわてて取り上げる次第。

<Prigressive Rock> QUIDAM 「The Time Beneath The Sky」
                                              
(原題「POD NIEBEM CZAS」)
                                ROCK-SERWIS   RSCD104  ,  2002

Quidampod2

 当時のクィダムは、なんと言っても女性リード・ヴォーカルのエミラ・ターコウスカ Emila Derkowska のクリスタル・ヴォイスを前面に出してのややトラッドぽいアプローチで、実にエレガントにしてメロディー重視のシンフォニック・バンドという印象だった。
 特にキーボードの流れの中でのフルートとギターによるメロディーの展開の美しさなどはその典型のパターン。そして特にこの3rdアルバムはその極致。取り敢えず東欧といわずヨーロピアン・プログレの一つの宝物として取り扱ってよいと思う。

Quidammembers1 メンバーは左の6人。曲によっては、Oboe, Flugelhorn, Mandolin, Accordion のゲストも加わる。
 実はこの時までの彼等は、トラッドをベースにファンタジックに、ロマンティックに、そしてメロディアスというロックを目指していたのだろうと思う。しかし先日紹介したアルバムのように、リード・ヴォーカルのエミラの脱退後の彼等は、やはりかってのプログレの雄であるピンク・フロイドの世界にも大いに魅力を感じていたのであろうことが解るのである。そしてそんな因子も既にこのアルバムで芽生えているが為に、この価値観を高めているのである。
  (TRACKLIST)
  * Letter From The Dersert (1.  2.Still wating)
    * 3.No Quarter
    * 4. New Name
    * 5.Kozolec
    * THE TIME BENEATH THE SKY
       (6.Credo1   7.Credo2   8.You are   9. Quimpromptu    10. The Time Beneath The Sky)

    
 TrackListは組曲構成があるが上の10曲。フルートの美しさとギターの哀愁感もこのバンドの一つのポイントである。そこにきて面白いことに3曲目の”No Quarter”はレッド・ツェッペリンのカヴァーなんですね。これには彼等の世界とのギャプに驚きなんですが、ここではまさにクィダム演奏でなんら違和感ないところが不思議なくらいである。まあ彼等のアンビエントな演奏もみられるところから、そうは言っても我々はロック・グループなんだと言っているようで面白い。

Quidammembers3rd
 このアルバムには3種の曲が収録されている。一つはエミラのヴォーカルを聴かせる曲(”New Name”、”Kozolec”)。二つ目は曲の中に彼女のヴォーカルも楽器の一部のように取り込んでゆく(”Letter from the Desert”、”No Quarter”)。三つめはインストメンタル曲( ”Quimpromptu” )。このように構成されているが、私としては二つ目三つ目の曲群に軍配を上げる。つまり1stアルバムにおいての彼女の重要性もこの傑作アルバムでは後退し、もはやこのバンドの演奏の主たるところはむしろプログレッシブなロック演奏に発展しているというところだ。

 アルバム・タイトル曲”THE TIME BENEATH THE SKY”は5曲より成り立っていて、スタートからフロイドを思わせる展開。フロイド流の口笛を吹きながら床を歩くSEや、エミラの美しいヴォーカル、 ”Quimpromptu”の約10分のインスト曲は、静寂からスタートしてギターの美しい旋律、次第にシンフォニックに盛り上がり、最後はシンセの音に泣きのギターと私好み。

 さてこのアルバムを最後にポーランド語のリード・ヴォーカルの彼女は脱退することになった。これは惜しむファンも多かったが、バンドの発展に伴っての必然的なことであったと思うのである(この後のアルバムからヴォーカルは男性、歌詞は英語になる)。彼女はこの後、ポーランドの1982年結成のゴスペルを中心にしたコーラス・バンドのTGD(Trzecia Godzina Dnia)に加入し、活動を続けている。

 ここに取り上げたアルバムは2009年に豪華に再発したもの。なんとふるっていることに「SEE EMILY PLAY-Live Bootleg」と記して(ご存じのようにピンク・フロイドの初期の代表曲が”See Emily Play”である)、エミラの最後のステージを納めたライブ映像のDVDが付いている。なんとも洒落ていますね。そしてこれが彼等の一つの締めくくりであったことは間違いない。

(試聴)http://www.youtube.com/watch?v=3pKLj_7kZ_8
 
 

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Quidam - Time Beneath the Sky (2002)  感動って幾つになってもするもんだけど、それを表現するのってのが難しくなっていくのかな。皆が皆アメリカ人みたいに「Wow!」なんてなってくれるとわかりやすいけどそんなのはアメリカ人だけで他は目を見張って息を呑むだけ、とかも多いしさ、実は感動してるんだけど傍目から見たら全然わからなくてつまらなそうにしてるみたい...... [続きを読む]

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