アヴィシャイ・コーエン・トリオAvishai Cohen Trio:「覚醒 Gently Disturbed」
独特なリズムが襲ってくるコンテンポラリー・ジャズ
ジャズ・ベーシストであり、トリオもの等で素晴らしいアルバムを作成しているスウェーデンのラーシュ・ダニエルソンは私が一押しのベーシストであり、ちょっと友人に紹介したら喜んでくれて、そのお返しが来た。それがこのアヴィシャイ・コーエン。なるほど、ここにも異色(”簡単には語れない”の意味)のベーシスト作品があるのだなぁ~~と、感心しながら聴いているところ(感謝)。久々にジャズ・トリオを取り上げる。
<Jazz> Avishai Cohen Trio 「Gently Disturbed 」
Sunnyside 4607 , 2008
アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のベーシスト、このトリオのピアニストShai Maestroも21歳のイスラエル人である。さてこのジャズ・アルバム とにかく不思議なリズムと意外に優しいメロディーが漂うのである。
コーエンはイスラエルで幼少の頃からピアノを弾き、14歳にアメリカ・セントルイスへ父親の仕事の関係で移住。そこでジャズを知り15歳からベースを奏するようになる。その後イスラエルに帰るも、ジャス音楽の道に志しを持って、十代にして今度は単身アメリカ・ニューヨークに渡ったという経歴。そして彼の活動の場は地下鉄、公園など所謂ストリート・ミュージシャンとしての人間最低限の生活から這い上がってきたという。
ジャズ・クラブに出ることが出来るようになって(1993年)、チック・コリアに認められたことが彼の開花の発端だったらしい。その後2003年まではチック・コリアと活動を共にしている。
Avishai Cohen - Bass
Mark Guiliana - Drums
Shai Maestro - Piano
Avishai Cohen uses Aguilar Amplifiers.
Mark Guiliana uses Sabian Cymbals and Vic Firth Drumsticks.
Nilento Studios AB. Algvagen 1 428 34
Kallered. Gothenburg. Sweden
www.nilento.se
演奏曲は、以下の通りtraditionalが2曲(*印)入って、他はコーエン中心ののオリジナル。
1 Seattle
2 Chutzpan
3 Baiom Velo Balyla *
4 Pinzin Kinzin
5 Puncha Puncha *
6 Eleven Wives
7 Gently Disturbed
8 Ever Evolving Etude
9 Variations in G Minor
10 Umray
11 Structure In Emotion
~All compositions written and arranged by Avishai Cohen GADU MUSIC/BMI
~Tracks 4 and 6 Co-written with Shai Maestro and Mark Guiliana (HEERNT Music/BMI)
このアルバムは・アヴィシャイ・コーエンにとっては9作目とのこと。かっては中近東色を打ち出しての作品作りをしていたようだが、ここに来てトリオ・アルバム制作に着手。アルバムの醸し出す雰囲気がイスラエルであると言うことではないと思うが一種独特な世界がある。彼は全曲ウッドベースを使用していて、そして前面に出ると言うことでなく、トリオとしてのバランスは保ちつつ、どちらかと言うとオーソドックスなベースを聴かせる。と言っても、やはりあまり聴くことのない変拍子手法が出現する。このあたりは特徴と言えばそうなるところ。
曲ではイスラエルのトラディッショナルという”Baiom Velo Balyra”、”Punca Punca”の2曲も登場するが、ピアノが美しい世界を展開してゆく中で、それにに続いてベースのサウンドもリズムを刻みつつその上になんとなく哀愁感があるメロディを奏していて気に入ってしまった。
ピアノのシャイ・マエストロShai Maestroはなかなか良い役をこなしており、結構クラシックっぽいところにある(特に”Variation in G Minor”など)のが特徴。彼は1987年生まれで新鋭そのもの。テルアビブ郊外のギバタイムというところにあるテルマ・イェリン国立芸術高等学校でジャズ、クラシックを学んだという。いずれにしてもなかなかの注目株。
このアルバムにみるコーエンの曲は、多分イスラエルということとは関係なしに彼の築いた世界なのであろうが、何か不思議なリズムを持っていて、そしてトリオで次第に盛り上げていく手法がなかなか魅力的。特に”Eleven Wives”はアメリカン・ジャズとの違いを十二分に感ずるのだが・・・・どちらかというとヨーロッパ的な方向だ。これが彼のコンテンポラリー・ジャズなのであろう。
(試聴)
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