[ハイレゾ音源] 寺村朋子「Capriccio お気に召すまま」
ハイレゾ音源(PC-Audio)で聴く醍醐味
<Classic> Tomoko Teramura-harpsichord 「Capriccio」
DVD-ROM WAON Records WAONXA-156/157
しかし時代は新しいものを生み出すと言うことをしみじみと実感する。カメラがいつのまにかあっという間にフイルム機がどうのこうのと言っても、デジタル機がメインとなったこと。そしてオーディオについてもついにデジタル時代の第2期(もしかしたら第3期)に入った。
もともとオーディオ界では、デジタルの冴えたる物がCDであったわけだが、SACDの出現、DVD-Audio、Blu-ray-Audio の流れはそれなりに理解できるが、いよいよデジタル録音そのもののデジタル・データをユーザ供給して、それを我々がPCを介してリアルに再生して聴くという新時代を迎えた訳だ。
もう既に音質を追求する輩には、CDの100倍以上の情報量をもつ「ハイレゾHigh resolution 音源」というものは、それなりに浸透してきている”PC-オーディオ”であるが、多分まだまだ二の足を踏んでいるものも多いと思うが、それなりに手を付けてみると、新し物に結構興味のある私にとっては久々に刺激があった。
現在のところ所謂高音質高解像度ハイレゾ音源には2つのタイプがある。一つはデジタル録音の「リニアPCM」、それともう一つはソニーが開発したSACDの原理になる「DSD(Dirct stream Digital)」がある。もともとPC-オーディオはPCからダイレクトにデジタル信号出力してUSB-DAC(USB-Digital to Analog Converter)を通して再生と言うことから、リニアPCMを考えて構築されたが、DSDのアナログ世界の良さ評価が上がりASIO(Audio Stream Input Output)というドイツ・スタインバーグ社規格が取り入れられ、USB-DACでこの両方のハイレゾ音源の再生が可能となっているのだ(これから購入の場合は、このLPCMとDSD両対応をお勧めする)。
さて前書きが長くなったが、今回はクラシックの話題である。このアルバムはクラシックとは言え、気軽に聴ける寺村朋子のチェンバロ演奏集である。私がここで取り上げたのは、これはLPCMの24bit/192kHzハイレゾ音源DVD-ROM(WAVEファイル)であり、如何にもハイレゾ音源と高音質を感ずることの出来る一枚であるからだ。
そもそも”Capriccioカプリッチォ”とは、音楽的には奇想曲(綺想曲)と言われるが、イタリア語では”気まぐれ”という意味らしい。従って音楽としては芸術の規則の遵守よりは想像力が成功を収めている音楽作品を指すらしい。特定の技法とか形式があるわけで無いのだが、時代(ルネッサンス、バロックなど)により性格を異にしてきたという経過があるようだ。フランス語でcaprice(カプリス)とのこと。
とても快活で面白みのある戯れ的な楽曲と表現されているが、17世紀のバロック時代には自由な初期のフーガの一つを指していて、19世紀にはいって、ロマン派の作曲家によって、自由で気まぐれ、軽快な器楽曲の名称に用いられ、性格的小品の一種として多くの曲が作曲されたのだという。
我々の知るところではチャイコフスキー 「イタリア奇想曲」 、リムスキー・コルサコフ「スペイン奇想曲」 などが有名であるが、このアルバムで寺村朋子が演奏するのは16-17世紀の8人の作曲家の作品で、それぞれどちらかというと難しくなく気楽に聴ける小品集。
私は彼女の演奏の質に関して評論できるところには無いのだが、聴いて気分が良いか悪いかは、それこそ私の自由の世界、このアルバムは少なくとも音質の良さの快感と共に極めて楽しい世界に入って行ける。
イタリア語でのチェンバロCembalo(英語ではHarpsichord)は17-18世紀に全盛期を迎えた楽器で、その後ピアノ取って代わられてしまったものだが、しかし20世紀にはその音の繊細さと響きのある優雅さに魅力を感じて復活しているものだ。このアルバムでも、その魅力がハイレゾ音源により、目の前で弾いている実感とともに肌に伝わってくる。ここまでくると我が家が演奏会場に変身だ・・・と言うくらいの醍醐味を感ずる。又Capriccioという曲の気楽さとともに如何にもリラックスした優雅な時代を感じつつ聴くことが出来て非常に価値あるアルバムである。
寺村朋子[Tomoko Teramuma│チェンバロ]
第7回古楽コンクール・チェンバロ部門第2位入賞。イタリア、オーストリー、ベルギーなど国内外のアカデミーに参加し研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」出演、その他多くの団体と様々な演奏活動を行う。
トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「J.S.バッハ作品集」(2009年再版)を編曲、出版。小金井アネックス(宮地楽器)チェンバロ科講師。
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コメント
[ハイレゾ音源] 寺村朋子「Capriccio お気に召すまま」: 灰とダイアモンドと月の裏側の世界
投稿: nfl jerseys | 2013年8月29日 (木) 07時07分
Summer of love, but you better be wearing protection.
投稿: wholesale nfl jerseys cheap | 2013年9月 4日 (水) 14時30分