エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziのジャズ・ピアノの美学 : 「Canto nascosto」
イタリア・ジャズ・ピアノの強力な世界を知らされる
イタリアの抒情派ジャズ・ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィの話が出てきたので、何と言っても彼の美学の頂点にあるアルバムをここで取り上げる。
<jazz~Piano solo> Enrico Pieranunzi 「Canto nascosto」
EGEA SCA 080, 2000
思い起こせば、エンリコ・ピエラヌンツィのピアノの音に痺れたままで、今日までそのままここで取り上げるきっかけも無く放置していたというのが実のところ。とにかく彼のピアノ・トリオ・アルバム「Seaward 」を始め、彼のイタリアの抒情派としての作品はジャズの世界から一歩別の世界に存在している感がある。いずれにしても彼は純粋にクラシック・ピアノ・アルバムをリリースするくらいに、ジャズとクラシックの関係は密である。
イタリアのビル・エヴァンスと言われる彼の作品の世界は、更に強力な要因はイタリアという音楽の伝統の国のメロディーが体の中に流れていて、そして又その音楽の環境の中で育ってきたというところにあるのではないだろうか。いずれにしてもこのアルバムは私が思うにはピエラヌンツィの美の世界を最も代表しているのではないかと思い取り上げるのである。
(収録曲)
このアルバムは彼のピアノ・ソロ演奏集である。そして全12曲彼のオリジナル曲。そして全曲使用したピアノが記されている。そこまで収録曲の彼の演奏のピアノの音にこだわっていることが解る(Steiway, Kawai, Fazioli, Borgato 等のピアノ名が挙がっている。この盤でピアノの音が耳の良い人であれば聴き分けられるのでは?と思うのである)。
そして私にとってはこのアルバムの場合、実は曲のタイトルはどうでも良い。ということは全曲余すこと無く美学で綴られており、どれがどうということでなく一枚のアルバムが一つの世界になっていることだ。それはお恥ずかしいながら、私がかって手にしたこのアルバムは輸入盤であったので、ブックレットの記載内容が解らないこと、そして勿論イタリア語のタイトルが意味不明であって、私にとってはわからない物はどうでも良いと言うことになってしまうのである。言葉を換えればそれほどそれぞれの曲が優劣無く美しいのだ。
とにかく聴くと同時にあっという間にピエラヌンツィの美の世界に引きこまれる。そしてアルバム・タイトル曲”Canto nascosto”にくると美しさの頂点に達する(この曲はトリオ盤にも登場)。そして最後の”Todes las tardes”に至るというまさにアルバム・トータルの美の世界。
彼はローマで1949年生まれ、5歳からピアノを始めていたとか?。父親はギタリストというところで音楽の中でそだったようなもののようだ。10歳代後半にはイタリア・フロジオーネ音楽院で作曲とピアノの学位を取得しているとの紹介がある。19歳からプロの世界入り、多くのミュージシャンと共演。そして26歳には自己の世界を作り上げている。
なにせクラシック室内楽の演奏家でもあって、ジャズ、クラシックの壁を越えて活躍中。
いずれにしても彼のピアノは、曲によってはアバンギャルドな演奏もみせるが、言い方が悪いが現代イタリアにしては品があって、全体に彼自身のオリジナルはスローな曲仕上げが多く抒情的でクラシック風の世界であると言って良いだろう。
(試聴)"canto nascosto"(Enrico Pieranunzi - pianoforte, Marc Johnson - contrabasso, Gabriele Mirabassi - clarinetto TRIO盤 )http://www.youtube.com/watch?v=PAQdudWY1sM
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コメント
「エンリコ・ピエラヌンツィ」、やっと登場ですか ・・・。実は、なかなか登場してこないのでちょっと不思議に思っていたところです。私は彼をエヴァンスの系譜に連なる最右翼だと思っています。ヨーロッパ・ジャズ・ピアノの糸口となったEJTを別にすれば、彼こそが私にこの世界を開いてくれたといっていいほどです。出会いは、アルバム「The Chant Of Time」、「The Night Gone By」。そして「Racconti Mediterranei (地中海物語)は私の臨終のときの音楽にとおもっているくらいです。
投稿: 爵士 | 2013年8月28日 (水) 16時01分
爵士さん、ようやく涼しくなってきて、そして又夜長のシーズンも近々で、音楽に接するには良い季節となりましたね。
ピエラヌンツィの登場が遅くなって失礼しました(笑)。そこまで爵士さんの思い入れがあるとは知らずにおりました。ニュー・アルバムのきっかけが無くて、最近ちょっと離れていたのは事実です。むしろ回顧側に登場というところとなりました。しかし彼のアルバムでも「美女ジャケの二枚」と「Rocconti Mediterranei」ですか・・・・。そうそう「Play Morricone」もありましたね。来週東京でのライブが近づいています。平日でちょっと私は無理で悔しがっているのですが・・・・。
投稿: 風呂井戸 | 2013年8月28日 (水) 20時43分
風呂井戸さん どうも東京のみのライブのようでわたしもちょっといけません。アルバムが多くてとてもすべてを聴くことはできないのでsが、最近作では、「1685: PlaysJ.S.Bach,G.F.Handel, D.Scarlatti」にちょっと首をかしげ、新メンバーによる「Permutation」には、まだまだ衰えてはいないなと新しい可能性を感じたりしています。「canto nascosto」のはいっている「Rocconti Mediterranei」、「Ballads」、「Live In Japan」、「Transnoche」、「Parisian Portraits」 などがお気に入りでしょうか。
投稿: | 2013年8月28日 (水) 23時11分
どうもどうも・・・コメント有り難うございます。
近作の「Permutation」は、ちょっと今までの抒情性のピエラヌンツィとは違うと言うことで、このアルバムは実は未聴なんです。新しい可能性というところがどんな具合なのですか?ちょっと不安ですが。
それと「Parisian Portraits」は、これ又持っていませんので未聴です~お勧めでしょうか?。
投稿: 風呂井戸 | 2013年8月29日 (木) 19時00分
若手を加入させた新トリオでの「Permutation」。1949年生まれのもう老境といってもいい「エンリコ・ピエラヌンツィ」。たしかに見違えるようにアグレッシヴな演奏になっているのですが、あの抒情性に魅かれていたファンはとまどうかもしれません。しかし初期の頃にはアグレッシヴな時代もあったのです。これを挑戦ととらえるか、あがきととらえるかは難しいところですが、わたしは挑戦ととらえたい。そうなるとすこし離れた世界へ行ってしまったのかな ・・・。
「Parisian Portraits」。もうこれはピエランンツイ節のソロの世界。
投稿: 爵士 | 2013年9月 1日 (日) 10時46分
風呂井戸さん、こんにちはmonakaです。
このアルバムこの記事でしれアマゾンに申し込んだのですが届くまでとても時間がかかりました。
やっと素晴らしい世界を堪能することができました。
ご紹介ありがとうございました。
投稿: monaka | 2013年10月19日 (土) 21時00分
monakaさん、こちらこそいつも発見をmonakaさんのブログでさせて頂いてます。これからも・・・よろしくお願いします。
しかしそれにつけてもこのアルバムは美しいですね。
投稿: 風呂井戸 | 2013年10月20日 (日) 22時16分