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2013年8月30日 (金)

アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohen : 「七つの海 SEVEN SEAS」

これはやっぱりユーロでなく、アメリカンでもなく・・・・不思議なジャズ

 アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のジャズ・ベーシスト。私が何でこの中東イスラエル系のジャズを聴くのかと言うと、先日取り上げたピアノ・トリオ("アビシャイ・コーエン・トリオ"参照)がなかなか異色作で魅力もあるところからちょっと気になっている為です。このアルバムも友人からの紹介なんですが、その友人がなんでこれにご執心なのかは実は聞いてないのです。

<Contemporary Jazz> AVISHAI COHEN 「SEVEN SEAS」
                               Blue Note   TOCJ 90070  ,  2011

Seven_seas3
 このアルバムはベーシストのアヴィシャイ・コーエンの12作目のようだ。先日話題にした彼の名を冠したピアノ・トリオものとは異なって、これはかなり彼の拘りの世界。つまりイスラエルの臭いのするジャズ、民族色のあるコンテンポラリーなもので、彼の活躍の舞台であるアメリカン・ジャズそのものとは別物と言って良い。従ってそれだけ異色のメロディー、リズムが交錯しくると、私にとってお気に入りになると言うより、興味を持つと言う点においての注目もの。しかし彼のベースはしっかり楽しめるところは、ファンにとっては貴重なんでしょうね。この盤は録音も良く、ベースの音が厚く低音が充実していて良好~これも魅力。

(クレジット)
Avishai Cohen: Bass, Vocals. (Piano on 'Dreaming' and 'Tres Hermanicas Eran').
Shai Maestro: Piano.
Itamar Doari: Percussion, Vocals on 'Two Roses'
Karen Malka: Vocals.
Amos Hoffman: Oud and Electric Guitar.
Jenny Nilsson: Vocals on 'About a Tree'.
Jimmy Greene: Soprano and Tenor Saxophone.
Lars Nilsson: Flugelhorn.
Bjorn Samuelsson: Trombone.
Bjorn Bholin: English Horn.


Ak2Recorded, mixed and mastered by Lars Nilsson at Nilento Studios, Goteburg, Sweden in September and October 2010.

All songs written and composed by Avishai Cohen, except 2.9. and 10. (下記Tracklist参照)
All songs Arranged by Avishai Cohen except 1. and 3. by Avishai Cohen and Itamar Doari/ Horns arrangements on 6. by Shai Maestro.

 上のクレジットを見ても解るように多くの楽器、そしてアヴィシャイ自身とその他のヴォーカルも入る。特にあの中東の楽器ウード(日本の琵琶みたいな撥弦楽器)も入っての聴き慣れないアンサンブルを展開する。収録されている曲は彼自身の7曲を中心に、全て彼のアレンジで演奏されている。
 

Tracklist
1. Dreaming
2. About a Tree (oyfn weg shteyt a boym)
3. Seven Seas
4. Halah
5. Staav
6. Ani Aff
7. Worksong
8. Hayo Hayta
9. Two Roses (shnei shoshanim)
10. Tres Hermanic Eran

 第一曲目の” Dreaming”がピアノ・トリオ風の演奏で取っ付きやすく、なかなか旋律も魅力的、バックに女性のスキャト風なヴォーカルが入るが、途中のリズムはラテンもの風なところも入って面白い。
 続いての ” About a Tree”も自然に聴けるピアノによる親しみやすいメロディーが流れ、その後からアヴィシャイのヴォーカルが入りつつ、ベースがしっかりとそれを受け継いで旋律を奏でて、そうそうこれはベーシストのアルバムであるのだと自覚させる。このように全体を通してもイスラエルの若きシャイ・マエストロのピアノがメロディを聴かせる良い役割を果たしていて、無くてはならない世界を構築している。そして少なくともこの二人の描くところがイスラエル節なんでしょうね。
 アルバム・タイトル曲” Seven Seas”は、やはり奇妙なリズムが軽快に展開し、後半のピアノ・プレイはアメリカン・ジャズの臭いも出てくる。なるほどこのあたりが彼らの独特のジャズなんだろうなぁ~~。
 ” Halah”ではウードの音色がしっかり聴かれ、如何にも中東世界を頭に描かせてくれる。なかなかこの曲魅力あります。 
 そして” Ani Aff”となると、いやはや馴染みの無い旋律、リズムが展開してちょっとついて行くに大変。
 ”Hayo Hayta”は曲名の意味は解らないが、哀愁感を醸しだし中東社会を頭に描かせる。落ち着いた良い曲。

 とにかく、ちょっと聴いてみるには異色の世界で、ご馳走の味直しには最適なアルバムだ。しかしこれがインターナショナルにジャズ・ファンに広く受け入れられて行くとはちょっと考えにくい。まああのトリオ・アルバムぐらいが私にとっても良いところといった感じだった。

(参考)"Avishai Cohen Trio" http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/avishai-cohen-t.html

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=2p6nlhe9jy8

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2013年8月27日 (火)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziのジャズ・ピアノの美学 : 「Canto nascosto」

イタリア・ジャズ・ピアノの強力な世界を知らされる

 イタリアの抒情派ジャズ・ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィの話が出てきたので、何と言っても彼の美学の頂点にあるアルバムをここで取り上げる。

<jazz~Piano solo> Enrico Pieranunzi 「Canto nascosto」
                             EGEA  SCA 080,  2000
 

Cantonascosto

 思い起こせば、エンリコ・ピエラヌンツィのピアノの音に痺れたままで、今日までそのままここで取り上げるきっかけも無く放置していたというのが実のところ。とにかく彼のピアノ・トリオ・アルバムSeawardを始め、彼のイタリアの抒情派としての作品はジャズの世界から一歩別の世界に存在している感がある。いずれにしても彼は純粋にクラシック・ピアノ・アルバムをリリースするくらいに、ジャズとクラシックの関係は密である。
 イタリアのビル・エヴァンスと言われる彼の作品の世界は、更に強力な要因はイタリアという音楽の伝統の国のメロディーが体の中に流れていて、そして又その音楽の環境の中で育ってきたというところにあるのではないだろうか。いずれにしてもこのアルバムは私が思うにはピエラヌンツィの美の世界を最も代表しているのではないかと思い取り上げるのである。

                   (収録曲)Cantonascostolist_2
 このアルバムは彼のピアノ・ソロ演奏集である。そして全12曲彼のオリジナル曲。そして全曲使用したピアノが記されている。そこまで収録曲の彼の演奏のピアノの音にこだわっていることが解る(Steiway, Kawai, Fazioli, Borgato 等のピアノ名が挙がっている。この盤でピアノの音が耳の良い人であれば聴き分けられるのでは?と思うのである)。
 そして私にとってはこのアルバムの場合、実は曲のタイトルはどうでも良い。ということは全曲余すこと無く美学で綴られており、どれがどうということでなく一枚のアルバムが一つの世界になっていることだ。それはお恥ずかしいながら、私がかって手にしたこのアルバムは輸入盤であったので、ブックレットの記載内容が解らないこと、そして勿論イタリア語のタイトルが意味不明であって、私にとってはわからない物はどうでも良いと言うことになってしまうのである。言葉を換えればそれほどそれぞれの曲が優劣無く美しいのだ。

Ep4 とにかく聴くと同時にあっという間にピエラヌンツィの美の世界に引きこまれる。そしてアルバム・タイトル曲”Canto nascosto”にくると美しさの頂点に達する(この曲はトリオ盤にも登場)。そして最後の”Todes las tardes”に至るというまさにアルバム・トータルの美の世界。

 彼はローマで1949年生まれ、5歳からピアノを始めていたとか?。父親はギタリストというところで音楽の中でそだったようなもののようだ。10歳代後半にはイタリア・フロジオーネ音楽院で作曲とピアノの学位を取得しているとの紹介がある。19歳からプロの世界入り、多くのミュージシャンと共演。そして26歳には自己の世界を作り上げている。

Ep2 なにせクラシック室内楽の演奏家でもあって、ジャズ、クラシックの壁を越えて活躍中。
 いずれにしても彼のピアノは、曲によってはアバンギャルドな演奏もみせるが、言い方が悪いが現代イタリアにしては品があって、全体に彼自身のオリジナルはスローな曲仕上げが多く抒情的でクラシック風の世界であると言って良いだろう。

(試聴)"canto nascosto"(Enrico Pieranunzi - pianoforte, Marc Johnson - contrabasso, Gabriele Mirabassi - clarinetto TRIO盤 )http://www.youtube.com/watch?v=PAQdudWY1sM

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2013年8月26日 (月)

アヴィシャイ・コーエン・トリオAvishai Cohen Trio:「覚醒 Gently Disturbed」

独特なリズムが襲ってくるコンテンポラリー・ジャズ

 ジャズ・ベーシストであり、トリオもの等で素晴らしいアルバムを作成しているスウェーデンのラーシュ・ダニエルソンは私が一押しのベーシストであり、ちょっと友人に紹介したら喜んでくれて、そのお返しが来た。それがこのアヴィシャイ・コーエン。なるほど、ここにも異色(”簡単には語れない”の意味)のベーシスト作品があるのだなぁ~~と、感心しながら聴いているところ(感謝)。久々にジャズ・トリオを取り上げる。

<Jazz> Avishai Cohen Trio 「Gently Disturbed 」
            Sunnyside    4607 ,  2008

Gently_disturbed
 アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のベーシスト、このトリオのピアニストShai Maestroも21歳のイスラエル人である。さてこのジャズ・アルバム とにかく不思議なリズムと意外に優しいメロディーが漂うのである。
 コーエンはイスラエルで幼少の頃からピアノを弾き、14歳にアメリカ・セントルイスへ父親の仕事の関係で移住。そこでジャズを知り15歳からベースを奏するようになる。その後イスラエルに帰るも、ジャス音楽の道に志しを持って、十代にして今度は単身アメリカ・ニューヨークに渡ったという経歴。そして彼の活動の場は地下鉄、公園など所謂ストリート・ミュージシャンとしての人間最低限の生活から這い上がってきたという。
 ジャズ・クラブに出ることが出来るようになって(1993年)、チック・コリアに認められたことが彼の開花の発端だったらしい。その後2003年まではチック・コリアと活動を共にしている。

560858Avishai Cohen - Bass
Mark Guiliana -  Drums
Shai Maestro -   Piano

Avishai Cohen uses Aguilar Amplifiers.
Mark Guiliana uses Sabian Cymbals and Vic Firth Drumsticks.

Nilento Studios AB. Algvagen 1 428 34
Kallered. Gothenburg. Sweden
www.nilento.se


演奏曲は、以下の通りtraditionalが2曲(*印)入って、他はコーエン中心ののオリジナル。
  1 Seattle
  2 Chutzpan
  3 Baiom Velo Balyla *
  4 Pinzin Kinzin
  5 Puncha  Puncha *
  6 Eleven Wives
  7 Gently Disturbed
  8 Ever Evolving Etude
  9  Variations in G Minor
10 Umray
11 Structure In Emotion
  ~All compositions written and arranged by Avishai Cohen GADU MUSIC/BMI
  ~Tracks 4 and 6 Co-written with Shai Maestro and Mark Guiliana (HEERNT Music/BMI)


 このアルバムは・アヴィシャイ・コーエンにとっては9作目とのこと。かっては中近東色を打ち出しての作品作りをしていたようだが、ここに来てトリオ・アルバム制作に着手。アルバムの醸し出す雰囲気がイスラエルであると言うことではないと思うが一種独特な世界がある。彼は全曲ウッドベースを使用していて、そして前面に出ると言うことでなく、トリオとしてのバランスは保ちつつ、どちらかと言うとオーソドックスなベースを聴かせる。と言っても、やはりあまり聴くことのない変拍子手法が出現する。このあたりは特徴と言えばそうなるところ。
 曲ではイスラエルのトラディッショナルという”Baiom Velo Balyra”、”Punca Punca”の2曲も登場するが、ピアノが美しい世界を展開してゆく中で、それにに続いてベースのサウンドもリズムを刻みつつその上になんとなく哀愁感があるメロディを奏していて気に入ってしまった。
 ピアノのシャイ・マエストロShai Maestroはなかなか良い役をこなしており、結構クラシックっぽいところにある(特に”Variation in G Minor”など)のが特徴。彼は1987年生まれで新鋭そのもの。テルアビブ郊外のギバタイムというところにあるテルマ・イェリン国立芸術高等学校でジャズ、クラシックを学んだという。いずれにしてもなかなかの注目株。
 このアルバムにみるコーエンの曲は、多分イスラエルということとは関係なしに彼の築いた世界なのであろうが、何か不思議なリズムを持っていて、そしてトリオで次第に盛り上げていく手法がなかなか魅力的。特に”Eleven Wives”はアメリカン・ジャズとの違いを十二分に感ずるのだが・・・・どちらかというとヨーロッパ的な方向だ。これが彼のコンテンポラリー・ジャズなのであろう。

(試聴)

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マッズ・ヴィンディング・トリオMads Vinding Trio : 「The Kingdom (where nobody dies)」

やはり名盤だけあって聴き応え有りだ

 ベーシスト名(Mads Vinding)を冠してのジャズ・トリオ・アルバム。ピアニストがエンリコ・ピエラヌンツィということもあって、なかなかその道では評判の良いアルバムということのようであったが、私は実は聴いてなかった。しかし名盤といわれるものは聴いておかねば・・・・と思いつつ日が経ったが、今回来日することもあり、しかもその上にやはり友人からの勧めによって聴くことになった(感謝)。

 <Jazz>
Mads Vinding Trio 「The Kingdom (where nobody dies)」
 M-Plus Domestic  ,  MSTUCD-19703 , 1998
 

Thekingdomb
Mads Vinding (B)
Alex Riel (Ds)
Enrico Pieranunzi (P)


 ピアノ・トリオであるが、リーダーはデンマークのベーシストとしての大御所であるマッズ・ヴィンディングMads Vindingである。彼はデンマークのベテラン・ドラマーのアレックス・リールAlex Rielとはよく共演しているが、ピアニストとしてはイタリアのビル・エヴァンスと言われる人気者でありベテランのエンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziを引っ張り込んでのアルバムだ。もう十数年前のアルバムだが今こうして始めて聴いてみて、いやはやその出來の良さに感心する事しきりというところなのである。

Badsb←Mads Vinding

(TrackList)
1. Alba Prima*
2. Lover
3. Kingdom (Where Nobody Dies) *
4. Someday My Prince Will Come
5. My Foolish Heart
6. Somewhere
7. New Lands*
8. Autumn Song*
9. September Waltz*
10. Interlude No. 948
11. I Remember Clifford

 なにせスタンダード曲5曲の登場はよいのだが、実は他の5曲はピエラヌンツィのオリジナル曲(*印)。そしてトリオとして1曲という構成なんですね。

Phoca_thumb_l_enrico06_rid←Enrico Pieranunzi

 まずスタート”Alba Prima”によってこのアルバムは貴重品になる。ピエラヌンツィの抒情的なメロディーに圧倒される。私などはピアノ・トリオものはどうしても夜の静かなときに聴くために、2曲目の”Lover”はアップテンポの3人の絡み演奏が素晴らしいのだが、多分これはライブ会場では最高でしょうが、どうしても自分の部屋で聴くにはやはり”Alba Prima”ということになるんです。
 このアルバムはピエラヌンツィの5曲とスタンダード曲との速緩のバランスが最高なんですね。そしてアルバム・タイトル曲”The Kingdom”は緩やかで濁り無く穏やかなクラシックを想わせる流れで、ベースの響きも印象的。

Alex_riel←Alex Riel

  とにかくもう今は70歳(1940年生まれ)を超えているドラマーのアレックス・リールは、結構重い音を聴かせる人だと思うが、ピエラヌンツィの曲では、むしろ繊細で演奏で控えめな感じ、というかサポートに徹しているんではないだろうか。

 とにかくピエラヌンツィ・トリオって感じで彼の曲は美しいメロディーがほとばしっている。そしてスタンダード曲においては、マッズのベースの味が表に出ながらも、トリオとしての絡みはそれぞれベテランらしくお見事。特に”いつか王子様がSomeday My Prince Will come”のベースの多彩な音に始まってスリリングな展開は注目、この曲ってこうなるの?ってところ。しかしそればかりでなく、トリオ名義の曲となっている”Interlude No.948”では、インプロビゼーションかと思わせる演奏でやや前衛的なタッチをみせて、これ又三者の兼ね合いがスキ無く良いのです。ならばもう一曲ぐらいやって欲しい感じだ。

 このアルバムはそれぞれの曲の演奏のセンスが抜群で、しかもその繋ぎのバランスがよく、そこに美しいメロディーが加味されている。名盤と言われる所以が聴いてみると実感できるのである。
 


(試聴)"Alba Prima" http://www.youtube.com/watch?v=W7WjaCXhHmw

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2013年8月20日 (火)

ジョエル・レンメル・トリオJoel Remmel Trio : 「Lumekristall」

バルト三国のエストニアからの贈り物

<Jazz> Joel Remmel trio 「Lumekristall」
             Atelier Sawano(PAW MARKS MUSIC)  PMM-003  ,  2013

Lumekristallb

Joel ‐ Rasmus Remmel: piano
Heikko ‐ Joseph Remmel: bass
Aleksandra Kremenetski: drums

 さてさて、このアルバムの宣伝文句は・・・・・・”流れるように美しい調べ。次代を担う若き俊英ピアニスト、ジョエル・レンメル。目を閉じて耳を傾ければ、粒立ちの良い一音一音が構築する綺麗な雪華模様”と言ったところ。友人よりの勧めで聴く事が出来たアルバム(感謝)。
 

 ライナーノーツも”流れるように美しい調べ。次代を担う若き俊英ピアニスト、ジョエル・レンメル。彼こそは欧州ジャズピアニストの次なる担い手だ”というところから始まる。
 我々には意外となじみの無いエストニアの出身というのだが、エストニアと言えば、ポーランドと非常によく似た境遇の歴史を持つ国である。ナチス・ドイツそしてソ連の支配化に置かれ、独立には非常に苦労をしたバルト三国の一つだ。近年、ナチスドイツの「鉤十字」とソビエト連邦の「鎌と鎚」を禁止しているというところからもこの国の信念が見えてくる。音楽においてはポーランド、北欧と我々の目から見ると近いところにあるように思うのだが・・・・彼等は果たしてどんな環境なのか?。

Triophoto4(左)が、上のジャケの元の写真はこんなところ。中央がジョエルで、左の女性がドラマーのアレクサンドラである。雪の積もった線路を歩いているのだろうか?、いずれにしても寒い冬の国を思わせるジャケで登場。
 更に紹介をみると、”地元エストニア音楽アカデミーでジャズをマスターしたジョエルは、ボボ・ステンソンやブラッド・メルドー、E.S.T.のエスビョルン・スヴェンソンから強く影響を受けており、北欧フリー・インプロビゼーションを習得すべく、2011年からの一年間をスウェーデンのイエテボリ音楽アカデミーに出向いて、ECM等で活躍する欧州を代表するベーシスト、アンダーシュ・ヨルミンからジャズ理論を習得する。直後の2012年春にレコーディングしたファーストアルバムが、この「Lumekristall」である”と・・・・・。

Triophoto6(Track-List)
1. Viis tiiru ümber enda
2. Humble mustang
3. Tühjus
4. Lumekristall
5. Vaikse aja ilu
6. Ma kiitlen ükspäinis neist verisist haavust
7. Oodatud ootamatus
8. Yet I don't know
9. 11 am
10. Anna hinge avarust

(6曲(1,4,5,7-9)がジュエルの作曲、他3曲(2,3,6)が他のメンバーの作品、10曲目がトラッド)

Triophoto1 2曲以外は曲タイトルも英語で無く意味不明。アルバム・タイトル「Lumekristall」とは「雪の結晶」を意味するとか?、それを聞いただけでも美しさが伝わってくるが、まさにそんなアルバムだ。
 一曲目”Viis tiiru ümber enda ”は思索的静かなピアノで始まる。しかしフリー・インプロヴィゼーションも学んだと言うだけあって後半は転拍子してトリオの掛け合いも有り、最後は再び抒情的に終わるというなかなか味な演奏。
 ”Tühjus ”の出だしのフリー・ジャズっぽいところは後半の憂いのある演奏と対比がお見事な曲。アルバム・タイトル曲” Lumekristall ”はこのアルバムの中でもやや華のある曲。
 いずれにしても北欧風のメロディがきれいなところはなんといってもこのアルバムの特徴。そこに”11 am”などE.S.Tを想わすところもチラっと有り、フリー・ジャズっぽい展開もみせて楽しませてくれる。これが1stアルバムとしては完成度が高い。

 これからの活動に期待を持ちたいピアノ・トリオであった。

(参考) http://www.jazz-sawano.com/products_360-4-1.html

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2013年8月17日 (土)

大人のジャズ・ヴォーカル~デニース・ドナテッリDenise Donatelli 「SOUL SHADOWS」

女性ジャズ・ヴォーカルのお手本のようなアルバム

<Jazz> DENISE DONATELLI 「SOUL SHADOWS」
             SAVANT Records   SCD2117  ,  2012

Soulshadows

 なんとなく大人の雰囲気を醸し出す女性ジャズ・ヴォーカルはいいものである。ここでも数多く取り上げてきたが、実力、美貌からいっても、もっと日本で騒がれてもよいのではと思うのがこのデニース・ドナテッリだ。と、言っても私もそれほど以前から聴いてきたというわけでなく、実はこのアルバムが二枚目なんです。
 最初聴いたのもつい前作の「When Lights are Low」で、グラミー賞ノミネートされた美人歌手として知ってのアプローチであった。
 彼女はペンシルヴァニア州アレンタウンの生まれと言うことになっているが、年齢不詳、母はプロ歌手であったとか。そもそも私がみるに遅咲きである。多分これが4作目だが、学生結婚して後プロとしての活動は1980年代後半よりということで、2000年にロスに移って活動を本格化させている。経歴からも目下四十歳代は超えているというところか?。
 このアルバムも、今年の第55回グラミー賞”最優秀ジャズ・ボーカル・アルバムにノミネート作品。

List2 さて、このアルバムのTrack-Listは左のようで、全てカヴァーであるが、彼女なりのジャズ・ヴォーカル世界を堪能させてくれる。それもピアニストのジェフリー・キーザーGeoffrey Keezer の力も大きいのだろうと思うが、全ての曲はアルバム・プロデュサーとして彼がアレンジし、そして彼のピアノ演奏によって仕上げられている。
 それにしてもデニースの歌声は力みが無く、しつこさも無く、そしてサラッと唄ってくれるところが大人の味だ。若干ハスキーな声であるところが、一層表現に味付けを増している。
 
Denisephoto1  Denise Donatelli : Vocals on all tracks
  Geoffrey keezer : piano
  Peter Sprague : guitar
  Carlitos del Puerto : bass

 メンバーは上記4人が主で、曲によってpercussion、Trumpet、Violinなど加わって編成を変えて味付けされている。やはりハイライトはアルバム・タイトル曲の”Soul Shadows”だが、ボサ・ノバ調でギター、ピアノをバックに軽快にしてメロディアスな味がよい。ちょっとムーディーな”No better”もなかなかしっとりしていて聴きどころ。一方”Another day”はベースをバックしての唄が良いし、ギター、ピアノでジャズィなスウィングするところも旨くこなしていて、とにかく聴くに安心感があって気持ちが落ち着く。締めの”Too late now”は、キーザーの美しいピアノのみのバックで聴かせてくれるが、こんな落ち着いた味は最高である。

                     *       *       *

Whenlightsarelow(左)は私がかって初めて聴いた彼女の3rdアルバム
Denise Donatelli 「When Lights are Low」 SAVANT Records  SCD 2109 , 2010

 このアルバムもグラミー賞にノミネートされたもの。それにより私は知ったのですが、これもジェフリー・キーサー演奏・監督による作品。こちらはアメリカン・ジャズらしいところが随所に聴かれ、それに乗ってやはり大人の味のデニースの歌が響く。特に”Why did I choose You?”はキーサーのピアノの美しさと彼女のしっとりとしたヴォーカルが印象深い。しかし参考までに私の好みからは、アルバムとしては上記「Soul Shadows」に軍配が上がる。

(このアルバムの収録曲は下記)
Whenlightlist
 女性ジャズ・ヴォーカルものは、こんなタイプは大いに堪能してしまうのである。

(試聴)
"Soul Shadows"http://www.youtube.com/watch?v=cp2h_GVzPys

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2013年8月11日 (日)

スティーヴン・ウィルソンのライブ映像盤(BD)2枚:「Anesthetize」「Get All You Deserve」

まさに70年代から現代、そして未来へのプログレッシブな総集編
    ~ロックは、やはりステージ・ライブだ!~

 スティーヴン・ウィルソンの音楽エンジニアの活動はさておき、演奏家としての活動は目下「ポーキュパイン・ツリー」から「ソロ・ユニット」への2面に遭遇するが、その両者の映像盤である。

<Progressive ROCK> Stoeven Wilson 「get all you deserve」
                           Blu-ray   Kscope     Ksope514 ,   2012

Bdgetall

 スティーヴン・ウィルソンのソロ・ユニット・ライブ映像。主として近年「Porcupain Tree」から離れての2011年の彼の2ndソロアルバム「Grace for Drowing」リリース直後の2012年4月のメキシコ・ツアー映像。
 従ってメンバーはアルバム制作群:Steve Wilson(Vocals,guitar,keybords), Marco Minnemann (drums), Nick Beggs (bass), Theo Travis (flute and sax), Adam Holzman (keys) and Niko Tsonev (guitars)。

 List は下記、明らかにクリムゾン・タイプのウィルソン世界。6人バンドとしてそれぞれの楽器の繊細さとダイナミックさを見事に取り混ぜての迫力と説得力は素晴らしい。各メンバーの演奏力も高く、ウィルソンにとっては納得ユニットと思われる。はっきり言って全体的には暗い、しかしその暗さが深遠さを増して素晴らしい。”Veneo Para Las Hadas”のようにスローな説得力がある曲、”raidderII”の各演奏陣との連携プレイの妙と静粛な音の間の取り方、一転しての激しさの展開、この大会場の聴衆を彼等に惹きつけてしまう。なかなかプログレッシブなステージは感動もの。彼はこの世界で次のアルバム作りにも進むわけだ(「The Raven That refused to sing 」(2003) 参照①)

Bdgetallstage

1. Intro ('Citadel')
2. No Twilight Within the Courts of the Sun
3. Index
4. Deform to Form a Star
5. Sectarian
6. Postcard
7. Remainder the Black Dog
8. Harmony Korine
9. Abandoner
10. Like Dust I Have Cleared From My Eye
11. Luminol
12. Veneno Para Las Hadas
13. No Part of Me
14. Raider II
15. Get All You Deserve
16. Outro ('Litany')

<progressive ROCK> Porcupine Tree 「anesthetize」
                        DVD+Blu-ray   Kscope     Kscope506  , 2010

Anesthetize

 こちらは2008年のスティーヴン・ウィルソン率いる「Porcupine Tree」 の”Fear of a Blank Planet-Tour”のNetherlandsのステージ模様だ。4人のメンバー(Steven Wilson(v, g,key)、Richard Barbieri(key)、Colin Edwin(bass)、Gavin Harrison(dr.))にお馴染みJohn Wesleyが、Guitarとbacking Vocalsで加わっての5人バンド。
 この後の2009年に彼等のスタジオ・アルバム「The Incident」、ライブ・アルバム「Octane Twisted」(2012年)がリリースされたが、目下活動はそれ止まり、映像はこれが近作。

Anesthetizetracklist
 ステージ演奏はアルバム「Fear of a Blank Planet」全曲+αで135分に及ぶ。彼等のベースにはヘヴィ・ロックのビートをもっていることが解るが、元ジャパンのリチャード・バルビエリのキーボードが重要な役割を果たしている結果、クリムゾン的要素を持っているスティーヴン・ウィルソンでありながら、このバンドはどちらかというとピンク・フロイド、マリリオン流の曲展開をする(参照②)。曲の印象も内省的であるが、意外にウィルソンのギター音はエコーを効かせた方向に行かずやや乾燥感のあるデジタル・ロック傾向にある。しかしJohn Wesleyがなかなか泣きとヘヴィ・メタル両面のギターを効かせて貢献度大(18分に及ぼうとする物語を感ずる”Anesthetize”がたっぷり堪能できる)。
 多分、ウィルソンは、もう少しヘヴィーで攻撃的、クリムゾン的アプローチを期していたのであろう。この後のアルバム「The Incident」にはその方向が見えたし、その後の彼のソロ・ユニットの流れをみるとそんな点が明瞭だ。ウィルソンはこのバンドの20年の歴史をこれからどう生かして行くのであろうか?。

(参照) ① http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/steven-wilson-t.html
           ② http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/porcupine-tree-.html

(試聴)"Luminol"http://www.youtube.com/watch?v=E3MpGBwGdVk
         "Anestthetize"http://www.youtube.com/watch?v=AKeTD8E8Nkg

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2013年8月 8日 (木)

[ハイレゾ音源]  寺村朋子「Capriccio お気に召すまま」

ハイレゾ音源(PC-Audio)で聴く醍醐味

<Classic> Tomoko Teramura-harpsichord 「Capriccio」
                DVD-ROM   WAON Records     WAONXA-156/157

Capricciodvdrom

 しかし時代は新しいものを生み出すと言うことをしみじみと実感する。カメラがいつのまにかあっという間にフイルム機がどうのこうのと言っても、デジタル機がメインとなったこと。そしてオーディオについてもついにデジタル時代の第2期(もしかしたら第3期)に入った。
 もともとオーディオ界では、デジタルの冴えたる物がCDであったわけだが、SACDの出現、DVD-Audio、Blu-ray-Audio の流れはそれなりに理解できるが、いよいよデジタル録音そのもののデジタル・データをユーザ供給して、それを我々がPCを介してリアルに再生して聴くという新時代を迎えた訳だ。
 もう既に音質を追求する輩には、CDの100倍以上の情報量をもつ「ハイレゾHigh resolution 音源」というものは、それなりに浸透してきている”PC-オーディオ”であるが、多分まだまだ二の足を踏んでいるものも多いと思うが、それなりに手を付けてみると、新し物に結構興味のある私にとっては久々に刺激があった。

 現在のところ所謂高音質高解像度ハイレゾ音源には2つのタイプがある。一つはデジタル録音の「リニアPCM」、それともう一つはソニーが開発したSACDの原理になる「DSD(Dirct stream Digital)」がある。もともとPC-オーディオはPCからダイレクトにデジタル信号出力してUSB-DAC(USB-Digital to Analog Converter)を通して再生と言うことから、リニアPCMを考えて構築されたが、DSDのアナログ世界の良さ評価が上がりASIO(Audio Stream Input Output)というドイツ・スタインバーグ社規格が取り入れられ、USB-DACでこの両方のハイレゾ音源の再生が可能となっているのだ(これから購入の場合は、このLPCMとDSD両対応をお勧めする)。

 さて前書きが長くなったが、今回はクラシックの話題である。このアルバムはクラシックとは言え、気軽に聴ける寺村朋子のチェンバロ演奏集である。私がここで取り上げたのは、これはLPCMの24bit/192kHzハイレゾ音源DVD-ROM(WAVEファイル)であり、如何にもハイレゾ音源と高音質を感ずることの出来る一枚であるからだ。

List

 そもそも”Capriccioカプリッチォ”とは、音楽的には奇想曲(綺想曲)と言われるが、イタリア語では”気まぐれ”という意味らしい。従って音楽としては芸術の規則の遵守よりは想像力が成功を収めている音楽作品を指すらしい。特定の技法とか形式があるわけで無いのだが、時代(ルネッサンス、バロックなど)により性格を異にしてきたという経過があるようだ。フランス語でcaprice(カプリス)とのこと。
 とても快活で面白みのある戯れ的な楽曲と表現されているが、17世紀のバロック時代には自由な初期のフーガの一つを指していて、19世紀にはいって、ロマン派の作曲家によって、自由で気まぐれ、軽快な器楽曲の名称に用いられ、性格的小品の一種として多くの曲が作曲されたのだという。
 我々の知るところではチャイコフスキー 「イタリア奇想曲」 、リムスキー・コルサコフ「スペイン奇想曲」 などが有名であるが、このアルバムで寺村朋子が演奏するのは16-17世紀の8人の作曲家の作品で、それぞれどちらかというと難しくなく気楽に聴ける小品集。

 私は彼女の演奏の質に関して評論できるところには無いのだが、聴いて気分が良いか悪いかは、それこそ私の自由の世界、このアルバムは少なくとも音質の良さの快感と共に極めて楽しい世界に入って行ける。
 イタリア語でのチェンバロCembalo(英語ではHarpsichord)は17-18世紀に全盛期を迎えた楽器で、その後ピアノ取って代わられてしまったものだが、しかし20世紀にはその音の繊細さと響きのある優雅さに魅力を感じて復活しているものだ。このアルバムでも、その魅力がハイレゾ音源により、目の前で弾いている実感とともに肌に伝わってくる。ここまでくると我が家が演奏会場に変身だ・・・と言うくらいの醍醐味を感ずる。又Capriccioという曲の気楽さとともに如何にもリラックスした優雅な時代を感じつつ聴くことが出来て非常に価値あるアルバムである。

Tomoko_teramura2
寺村朋子[Tomoko Teramuma│チェンバロ]

東京芸術大学音楽学部チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。
第7回古楽コンクール・チェンバロ部門第2位入賞。イタリア、オーストリー、ベルギーなど国内外のアカデミーに参加し研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」出演、その他多くの団体と様々な演奏活動を行う。
トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「J.S.バッハ作品集」(2009年再版)を編曲、出版。小金井アネックス(宮地楽器)チェンバロ科講師。

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2013年8月 5日 (月)

オーペスOpeth (瑞典プログレ)のアルバム「Heritage」

北欧スウェーデンのプログレ重鎮バンド

 このところまあ私の”本来の姿”と言えばそうなんですが、「プログレッシブ・ロック」にお茶を濁しているわけですが・・・、ご本家現代ブリティッシュ・フログレのエース、ポーキュパイン・ツリーそしてその中心人物スティーヴン・ウィルソンと話が進んでしまうと、彼の関係しているスウェーデンのオーペスOpethを挙げなきゃいかんだろうと、ここに登場するわけです。

<progressive Rock> Opeth 「Heritage」
                 Roadranner Records  RR7705-2 , 2011

 

Heritage

 スティーヴン・ウィルソンSteven Wilsonとオーペスの関わり合いは知られているところだが、さてさてそのきっかけは何なんだったのか?、そのあたりは不明。たぶんプログレ系のバンドとして顔を合わせたことは当然だろうし、ウィルソンがエンジニアとして関係したことも事実。いずれにしてもウィルソンとオーペスのリーダーのミカエル・オーカーフェルトMikael Åkerfeldt で「Storm Corrosion」という作品を残したところは相当に濃密だ。このアルバム「Heritage」にも制作エンジニアとしてウィルソンが携わっている。

 なにせ、このオーペスというバンド、1995年にお目見えしその歴史も長い。既に11枚のアルバムをリリースしている。その作品は所謂ゴシック調の流行の中、デスメタルのパターンをベースにプログレの因子は評価されていたが(いわゆるプログレッシブ・デスメタル)、どうもデス嫌いの私は取っ付くことも無く来た訳である。
 ところが最近何がどうしたのか、メンバーも大きく入れ替わり、キーボードも多用され、70年代プログレの味が強化され、デス因子が無くなってきたというので、このアルバムに初めてとりついたところである。

Opethmembers

MUSICIANS: (*印 現メンバー)
*Mikael Åkerfeldt – All vocals, lead, rhythm and acoustic guitars, mellotron, grand piano
*Fredrik Åkesson – Lead, rhythm guitars, acoustig guitars on ”Pyre”
*Martin Mendez – Bass guitars
*Martin Axenrot – Drums and percussion
  Per Wiberg – Mellotron, grand & electric pianos, hammond B3
*Joakim Svalberg – Grand piano on ”Heritage”
  Alex Acun­a – Percussion on ”Famine”
  Björn J:son Lindh – Flute on ”Famine”

 なかなか切れ味の良い演奏、緩急の取り合わせの妙がいい。作曲はリーダーのミカエル(このバンドのオリジナル・メンバーは彼のみ)を中心に造られていて、彼はヴォーカル、リード・ギターでこのバンドを引っ張っているわけだが、キング・クリムゾンの影響を強く受けている。特に曲の展開に急の部分を入れ、そして荒々しく展開するところには、まさにクリムゾンの流れを感ずるが、やっぱりスウェーデンらしく北欧のメロディーが乗ってくる。
 ヴォーカル部分は、私にとってはそう好むタイプでないのだが比較的占めるところ少なくインスト曲に近い仕上げで納得。

Opeth_10Tracks:
1. Heritage
2. The Devil’s Orchard
3. I Feel The Dark
4. Slither
5. Nepenthe
6. Häxprocess
7. Famine
8. The Lines In My Hand
9. Folklore
10. Marrow Of The Earth


 かなり静かに叙情的に流れる曲の構成も多く取り入れていて、アコースティック・ギターを中心に美しく迫ってくる。そして曲によっては(”Famine”)、結構神秘的・幻想的ムードも描いて私の気持ちをくすぐってくれる。
 やはりアルバムをトータルに構築していくパターンで、オープニングの”Heritage”は抒情的なピアノ、続く”The Devil`s Orchad”は荒々しく、”I Feel the Dark”、”Slither”の重厚なヘビー・サウンドで圧倒し、そして中盤の北欧風な静とヘビーなサウンドの交錯。最後の締めの”Marrow of the Earth”は説得力のあるゆったりしたギターの美を聴かせてくれる。まあアルバム作りの巧さは一等級といってよいものだ。

 これは明らかにデスメタルとは違う。何がそうさせたのか?、スティーヴン・ウィルソン効果?、ミカエル・オーカーフェルトがやりたいことに向かって来た?、かって聴きかじったオーペスとは明らかに違う。これなら私も十分対応出来る現代プログレのパターンである。ならばそろそろこの後の作品も欲しいところ。

(試聴)「Heritage」http://www.youtube.com/watch?v=1t8fl96HPQI

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2013年8月 2日 (金)

プログレの求道者=スティーヴン・ウィルソンSTEVEN WILSON :ソロ・アルバム 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING」

何故ソロ・アルバムが必要か?~プログレの道を究める手段?

<Progressive Rock> STEVEN WILSON 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING and other stories レイヴンは歌わない
                           (Blu-ray Disc)    Kscope     KSOPE516  ,   2013

Swsolotheraven

 ポーキュパイン・ツリーPorcupine Treeのリーダー"スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson"がソロ・アルバムを今年もリリースしている。ポーキュパイン・ツリーとしては、目下近作のスタジオ・アルバムは2009年の「The Incident」であり、そろそろニュー・アルバムが当然リリースされてよさそうであるが、昨年(2012年)ライブ盤「Octane Twisted」が出たのみで目下休息状態。そんなところに今年彼のこのソロ・アルバム3作目がリリースされたわけだ。

 とにかく、目下ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック界きっての重要人物、彼の作り出すミュージック世界は単純にこれだと言い切れない。サイケデリック、プログレッシブというところは当然としても、ややヘビー・メタルっぽい音をだしたり、アンビエントの世界がみえたり、インダストリアルと言われたり、エクスペリメンタル・ロックとしての評価もある。又彼自身がミュージック・エンジニアとしてアルバム作りに関わっている(KING CRIMSON、E.L.Pなどのリマスター)など、その才能はずば抜けている。

Steven Wilson (vocals, guitar, keyboards, bass)
Marco Minnemann (drums)
Guthrie Govan (lead guitar)

Nick Beggs (bass)
Theo Travis (flute, sax)
Adam Holzman ( Fender Rhodes, organ, piano)

Stevenwilson27_2
 このウィルソンのソロ・ユニットは、ツアー・メンバーが主力(既にオフィシャル映像がある「Gett All You Deserve」)。面白いことにアラン・パーソンズが関わっていることだ。さて作り出された世界は?・・・・と言うと、これぞ70年代から40年経ての”今時のプログレ”だ。このメンバーは聴いてゆくとそれぞれ恐ろしい強者集団だということが解る。ロバート・フリップが彼を支えてきた因子がここに結実していると言えばそんなところだ。つまりクリムゾンの派生系であって、あのポーキュパイン・ツリーが描く世界よりは、スリリングにしてエネルギッシュで、ジャズィでアヴァンギャルドで、フルートが美しく、一方ベースはロジャー・ウォーターズ風の柔らかく太い音でなく金属音でリズムを叩き刻んでくる。
 私が何時も言うところの「現代プログレ」の中では、ミュージックとサウンドの探求派のプログレだ。キング・クリムゾンの歩んだ道のウィルソン的世界。かなり暴力的な面を持つ、しかしそこはウィルソン、決してそれに終わらず心憎い叙情サウンドもみせるのである。しかし過去のピンク・フロイドを始めとしてのあの時代の音を回顧させてくれる泣きギターを伴っての心に哀愁を引き起こすというパターンの範疇のものでは無い。

Swsolotracklist Track-Listは左。とにかく6曲立て続けに流れる実験的サウンドを織り交ぜての流れは圧巻である。”Luminol”はその代表格。そして最後の”The Raven that refused to sing”は美しさ故の暗さで(Ravenとは、わたり烏(カラス)で不吉の兆とか)一度聴くと忘れられない名曲、最後の数秒のピアノの音が救い。

 これによって、もともとポーキュパイン・ツリーも彼の実験ユニットから始まったのであるが、バンドとして一つの形が出来上がって来ている現在、彼は更に一歩殻を破って一つのプログレッシブな道を探求している結果がこのソロ・ユニットで仕上げたアルバムだと言うことが理解できる。

 しかし彼にとってポーキュパイン・ツリーは、やはり大切な一つの世界、時にソロ・ユニットで実験を繰り返しつつも、あの世界はおそらく続けてゆくものと思う。私のような70年代の歴史的サウンドに染まってきているものにとっては、ポーキュパイン・ツリーにその世界を感ずることが出來、しかも現在のロック・サウンドも聴けるという欲張りバンドなのだ。それゆえに、このソロ・ユニットとは別の意味でやはり期待をしているのである。

 
 さてこのアルバム、私はBlu-ray盤で買ったのだが、それはまさに正解であった。まずサウンドにうるさいウィルソンだけあって、ここにはCD盤の音を遙かに超えるLPCM 24bit/96kHz のステレオと5.1サラウンド 及び5.1DTS HD MASTER AUDIO で収録されている(残念ながら最近のブルーレイ・オーディオ2.0 LPCM 24bit/192kHzのハイレゾ音源ではないが)。又ボーナス・トラックとして、2012年9月15-21日にロスのEast West Studio にての録音風景がみれる。これはなかなかリアルである。
 又なんとその最後にキング・クリムゾンが、1969年に「In The Court of the Crimson King」を録音した際に使われたOriginal King Crimson MK2 Mellotronをウイルソンが弾いてみせる映像があるのである。これは感動ものだ。
 

(試聴) ①アルバム http://www.youtube.com/watch?v=9XmhD15azO0
           ②ライブ映像 http://www.youtube.com/watch?v=E3MpGBwGdVk

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