アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohen : 「七つの海 SEVEN SEAS」
これはやっぱりユーロでなく、アメリカンでもなく・・・・不思議なジャズ
アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のジャズ・ベーシスト。私が何でこの中東イスラエル系のジャズを聴くのかと言うと、先日取り上げたピアノ・トリオ("アビシャイ・コーエン・トリオ"参照)がなかなか異色作で魅力もあるところからちょっと気になっている為です。このアルバムも友人からの紹介なんですが、その友人がなんでこれにご執心なのかは実は聞いてないのです。
<Contemporary Jazz> AVISHAI COHEN 「SEVEN SEAS」
Blue Note TOCJ 90070 , 2011
このアルバムはベーシストのアヴィシャイ・コーエンの12作目のようだ。先日話題にした彼の名を冠したピアノ・トリオものとは異なって、これはかなり彼の拘りの世界。つまりイスラエルの臭いのするジャズ、民族色のあるコンテンポラリーなもので、彼の活躍の舞台であるアメリカン・ジャズそのものとは別物と言って良い。従ってそれだけ異色のメロディー、リズムが交錯しくると、私にとってお気に入りになると言うより、興味を持つと言う点においての注目もの。しかし彼のベースはしっかり楽しめるところは、ファンにとっては貴重なんでしょうね。この盤は録音も良く、ベースの音が厚く低音が充実していて良好~これも魅力。
(クレジット)
Avishai Cohen: Bass, Vocals. (Piano on 'Dreaming' and 'Tres Hermanicas Eran').
Shai Maestro: Piano.
Itamar Doari: Percussion, Vocals on 'Two Roses'
Karen Malka: Vocals.
Amos Hoffman: Oud and Electric Guitar.
Jenny Nilsson: Vocals on 'About a Tree'.
Jimmy Greene: Soprano and Tenor Saxophone.
Lars Nilsson: Flugelhorn.
Bjorn Samuelsson: Trombone.
Bjorn Bholin: English Horn.
Recorded, mixed and mastered by Lars Nilsson at Nilento Studios, Goteburg, Sweden in September and October 2010.
All songs written and composed by Avishai Cohen, except 2.9. and 10. (下記Tracklist参照)
All songs Arranged by Avishai Cohen except 1. and 3. by Avishai Cohen and Itamar Doari/ Horns arrangements on 6. by Shai Maestro.
上のクレジットを見ても解るように多くの楽器、そしてアヴィシャイ自身とその他のヴォーカルも入る。特にあの中東の楽器ウード(日本の琵琶みたいな撥弦楽器)も入っての聴き慣れないアンサンブルを展開する。収録されている曲は彼自身の7曲を中心に、全て彼のアレンジで演奏されている。
Tracklist
1. Dreaming
2. About a Tree (oyfn weg shteyt a boym)
3. Seven Seas
4. Halah
5. Staav
6. Ani Aff
7. Worksong
8. Hayo Hayta
9. Two Roses (shnei shoshanim)
10. Tres Hermanic Eran
第一曲目の” Dreaming”がピアノ・トリオ風の演奏で取っ付きやすく、なかなか旋律も魅力的、バックに女性のスキャト風なヴォーカルが入るが、途中のリズムはラテンもの風なところも入って面白い。
続いての ” About a Tree”も自然に聴けるピアノによる親しみやすいメロディーが流れ、その後からアヴィシャイのヴォーカルが入りつつ、ベースがしっかりとそれを受け継いで旋律を奏でて、そうそうこれはベーシストのアルバムであるのだと自覚させる。このように全体を通してもイスラエルの若きシャイ・マエストロのピアノがメロディを聴かせる良い役割を果たしていて、無くてはならない世界を構築している。そして少なくともこの二人の描くところがイスラエル節なんでしょうね。
アルバム・タイトル曲” Seven Seas”は、やはり奇妙なリズムが軽快に展開し、後半のピアノ・プレイはアメリカン・ジャズの臭いも出てくる。なるほどこのあたりが彼らの独特のジャズなんだろうなぁ~~。
” Halah”ではウードの音色がしっかり聴かれ、如何にも中東世界を頭に描かせてくれる。なかなかこの曲魅力あります。
そして” Ani Aff”となると、いやはや馴染みの無い旋律、リズムが展開してちょっとついて行くに大変。
”Hayo Hayta”は曲名の意味は解らないが、哀愁感を醸しだし中東社会を頭に描かせる。落ち着いた良い曲。
とにかく、ちょっと聴いてみるには異色の世界で、ご馳走の味直しには最適なアルバムだ。しかしこれがインターナショナルにジャズ・ファンに広く受け入れられて行くとはちょっと考えにくい。まああのトリオ・アルバムぐらいが私にとっても良いところといった感じだった。
(参考)"Avishai Cohen Trio" http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/avishai-cohen-t.html
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