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2013年8月 2日 (金)

プログレの求道者=スティーヴン・ウィルソンSTEVEN WILSON :ソロ・アルバム 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING」

何故ソロ・アルバムが必要か?~プログレの道を究める手段?

<Progressive Rock> STEVEN WILSON 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING and other stories レイヴンは歌わない
                           (Blu-ray Disc)    Kscope     KSOPE516  ,   2013

Swsolotheraven

 ポーキュパイン・ツリーPorcupine Treeのリーダー"スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson"がソロ・アルバムを今年もリリースしている。ポーキュパイン・ツリーとしては、目下近作のスタジオ・アルバムは2009年の「The Incident」であり、そろそろニュー・アルバムが当然リリースされてよさそうであるが、昨年(2012年)ライブ盤「Octane Twisted」が出たのみで目下休息状態。そんなところに今年彼のこのソロ・アルバム3作目がリリースされたわけだ。

 とにかく、目下ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック界きっての重要人物、彼の作り出すミュージック世界は単純にこれだと言い切れない。サイケデリック、プログレッシブというところは当然としても、ややヘビー・メタルっぽい音をだしたり、アンビエントの世界がみえたり、インダストリアルと言われたり、エクスペリメンタル・ロックとしての評価もある。又彼自身がミュージック・エンジニアとしてアルバム作りに関わっている(KING CRIMSON、E.L.Pなどのリマスター)など、その才能はずば抜けている。

Steven Wilson (vocals, guitar, keyboards, bass)
Marco Minnemann (drums)
Guthrie Govan (lead guitar)

Nick Beggs (bass)
Theo Travis (flute, sax)
Adam Holzman ( Fender Rhodes, organ, piano)

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 このウィルソンのソロ・ユニットは、ツアー・メンバーが主力(既にオフィシャル映像がある「Gett All You Deserve」)。面白いことにアラン・パーソンズが関わっていることだ。さて作り出された世界は?・・・・と言うと、これぞ70年代から40年経ての”今時のプログレ”だ。このメンバーは聴いてゆくとそれぞれ恐ろしい強者集団だということが解る。ロバート・フリップが彼を支えてきた因子がここに結実していると言えばそんなところだ。つまりクリムゾンの派生系であって、あのポーキュパイン・ツリーが描く世界よりは、スリリングにしてエネルギッシュで、ジャズィでアヴァンギャルドで、フルートが美しく、一方ベースはロジャー・ウォーターズ風の柔らかく太い音でなく金属音でリズムを叩き刻んでくる。
 私が何時も言うところの「現代プログレ」の中では、ミュージックとサウンドの探求派のプログレだ。キング・クリムゾンの歩んだ道のウィルソン的世界。かなり暴力的な面を持つ、しかしそこはウィルソン、決してそれに終わらず心憎い叙情サウンドもみせるのである。しかし過去のピンク・フロイドを始めとしてのあの時代の音を回顧させてくれる泣きギターを伴っての心に哀愁を引き起こすというパターンの範疇のものでは無い。

Swsolotracklist Track-Listは左。とにかく6曲立て続けに流れる実験的サウンドを織り交ぜての流れは圧巻である。”Luminol”はその代表格。そして最後の”The Raven that refused to sing”は美しさ故の暗さで(Ravenとは、わたり烏(カラス)で不吉の兆とか)一度聴くと忘れられない名曲、最後の数秒のピアノの音が救い。

 これによって、もともとポーキュパイン・ツリーも彼の実験ユニットから始まったのであるが、バンドとして一つの形が出来上がって来ている現在、彼は更に一歩殻を破って一つのプログレッシブな道を探求している結果がこのソロ・ユニットで仕上げたアルバムだと言うことが理解できる。

 しかし彼にとってポーキュパイン・ツリーは、やはり大切な一つの世界、時にソロ・ユニットで実験を繰り返しつつも、あの世界はおそらく続けてゆくものと思う。私のような70年代の歴史的サウンドに染まってきているものにとっては、ポーキュパイン・ツリーにその世界を感ずることが出來、しかも現在のロック・サウンドも聴けるという欲張りバンドなのだ。それゆえに、このソロ・ユニットとは別の意味でやはり期待をしているのである。

 
 さてこのアルバム、私はBlu-ray盤で買ったのだが、それはまさに正解であった。まずサウンドにうるさいウィルソンだけあって、ここにはCD盤の音を遙かに超えるLPCM 24bit/96kHz のステレオと5.1サラウンド 及び5.1DTS HD MASTER AUDIO で収録されている(残念ながら最近のブルーレイ・オーディオ2.0 LPCM 24bit/192kHzのハイレゾ音源ではないが)。又ボーナス・トラックとして、2012年9月15-21日にロスのEast West Studio にての録音風景がみれる。これはなかなかリアルである。
 又なんとその最後にキング・クリムゾンが、1969年に「In The Court of the Crimson King」を録音した際に使われたOriginal King Crimson MK2 Mellotronをウイルソンが弾いてみせる映像があるのである。これは感動ものだ。
 

(試聴) ①アルバム http://www.youtube.com/watch?v=9XmhD15azO0
           ②ライブ映像 http://www.youtube.com/watch?v=E3MpGBwGdVk

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コメント

さっそく、ウィルソンのソロ・アルバムを取り上げてもらってありがとうございます。決して懐古主義にならずに、自分のサウンドを追及するミュージシャンの一人ですね。自分も購入するつもりです。

 またクリムゾンのメロトロンを使っているようですが、その映像も素晴らしいですね。クリムゾンのメロトロンはムーディ・ブルーズも使用したといわれていますね。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2013年8月 6日 (火) 15時38分

 プロフェッサー・ケイさん、こんにちわ。
 何時の時代になつても、プログレッシブなロックをその時代の中で求めようとする活動は決して無くならないというところが嬉しいところです。Nosoundのような世界も貴重ですし、スティーヴン・ウィルソンのような世界も嬉しい限りです。
 しかし、フロイド、クリムゾン、イエスなどはこうしてみても、現代にそれぞれ何らかの影響を残しているところは、やっぱり偉大だということですね。

投稿: 風呂井戸 | 2013年8月 7日 (水) 12時58分

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