繊細にしてクール、しかし抒情感も漂う「OWL trio」
さりげなさ風の演奏に、思索の夜のムードが・・・・・
<Jazz>Lage Lund・Will Vinson・Orlando Le Fleming 「OWL Trio」
Losen Records LOS1232, 2013
この世界はなんだか久しぶりの思索と安らぎの世界って感じのアルバム。
このトリオは・・・・・・
Lage Lund-Guitar
Will Vinson-Saxophone
Orlando Le Fleming-Bass
このような構成。ドラムスなしの、ギター、サックス、ベースによるトリオで、演奏は物語の始まりといったムードを展開させる。よく解らないが、多分ノルウェー出身のギタリストのラージュ・ルンドによるトリオ構成なのかと想像する。サックスとベースの他の二人はロンドン出身とか。
さてそのラージュ・ルンド(ラーゲ・ルンドとも言われている)は、1977年生まれと言うから目下36歳というところか。高校卒業後、アメリカのバークリー音楽院に特待生として迎えられ、その後ジュリアード音楽院に学んでいる。とにかく2005年のモンク・コンペティションにてギター部門の優勝者ということで脚光を浴びた。このアルバムの前にカルテット(ピアノ・トリオ+ギター)の2ndアルバム「Unlikeiy Stories」(2010)をリリースしているが、今年のこのアルバムの構成はちょっと意外なトリオで三人の頭文字で”OWL trio”としたところは、今後も続けて行くというところか?。しかし聴いてみると一つの挑戦の姿が見えてくる。ノルウェーからのリリース。
Tracklist は左のようで、スタートの曲がDuke Ellington、続く曲がJim Hall と、ちょっと懐かしのオールド・ジャズの回顧のムードが感じられ、若い割には古めかしい雰囲気だなぁ~と思いきや、なになに聴いていくと、これはやはり若者の未来感覚の挑戦である事が解ってくる。録音もブルックリンの教会で行われたというし、チェンバー・ジャズの道を探りつつ、彼等の一つの宇宙空間を構成している。それはドラムスがないだけに、非常に繊細にして、計算しつくされた音が迫ってきて、思索への道を開いて行く世界なのである。
彼等のオリジナル曲は4.7.10の3曲。これははっきりオールト・ナンバーのカヴァーと世界が違う。やっぱり彼等の前衛性のある曲だということが解るが、それが静かに一つ一つの音を大事にしてのデリケートな展開に、若者という感覚から一歩前に進んでいることを知らしめられた。
このアルバムでは、どちらかというと旋律はギターよりサックスによってリードされている。これはアルト・サックスと思うが、ちょっと聴いたところクラリネット風にも聴ける演奏タイプ。つまりうるさくなく語り聴かせる。そのサックスの音の空間を埋めるが如くのギターの音が、実に繊細で音一つも聞き逃すことの出来ない感覚に誘導されてしまう。ベースはどちらかというと静か。
しかし、いやはやここまで三人でそれぞれの個性を出し語り挙げてゆき、そしてジャズの一つの世界を追求するところは結構楽しめる。
彼等がオリジナル曲を演奏し続けると、どっか別の宇宙空間に飛んで行きそうな雰囲気があり、こうしたスタンダード曲を多く取り上げたところは、結果的にはそのバランスにおいて成功しているように思う。
寒い夜に暖房を効かせて静かに自分を見つめるには良いアルバムだ。
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コメント
なにか気が休まりますね。ノルウェーですか、よく見つけましたね。スペインまでは行ったことがありますが、ポルトガルはまた違った印象のようですね。
投稿: 爵士 | 2013年12月 2日 (月) 22時53分
爵士さん、おはようごさいます。
北欧系はなんとなく日本にはうける因子を持っていると思います。そしてこのような若いミュージシャンが一つの世界を持とうと探求するところはいいですね。すでにこのLageらは一つの世界を作っています。
さて、ポルトガルは小さい国ですが、ヨーロッパ最西南端、温暖で海との接触の生活が多いためか、非常に親しみある人柄を感じてきました。
投稿: 風呂井戸 | 2013年12月 3日 (火) 09時12分