モジュジェル・ダニエルソン・フレスコ : 異色作「Polska」
レシェック・モジュジェル、ラーシュ・ダニエルソン、ゾハール・フレスコの創造的トリオ版
<Jazz> Możdżer Danielsson Fresco 「Polsca」
ACT Music / 9557-2 / 2013
ポーランドの注目すべきピアニストのレシェック・モジュジェルLeszek Możdżerの昨年リリースされた最新アルバム。今回はあのスウェーデンのラーシュ・ダニエルソンLars Danielsson(アルバム「PASODOBLE」における二人の共演作の素晴らしさは既に取り上げてきた)のベースに、イスラエルのゾハール・フレスコZohar Fresco のパーカッションも加わって、基本的にはモジュジェル主導の印象はあるが、不思議なトリオのアルバムと言ってよいものだ。このトリオはどのような事で出来た関係かは知らないが、何年か前からの既成観念を打ち破る演奏活動がこうして継続されている(「THE TIME」というアルバムがある)。
そしてなんとアルバム・タイトルが「Polska」となっている。これはまさに”ポーランド”という意味で、モジュジェルの自国の名を付けた曲を持ってきたところにその迫力がある。
Leszek Możdżer (piano, celesta, Vibraphone, synth)
Lars Danielsson (cello, bass)
Zohar Fresco (percussion, vocal) Tracklistは左のとおり。
モジュジェルが6曲、フレスコが3曲、そしてダニエルソンが2曲という構成。もともと良く解らないこの取り合わせで、一歩も二歩も異彩を放つ作品がここに登場したわけだ。
そして更に良く解らないが何故かあのロック・ギタリストのJimi Hendrix の曲”Are You Experienced?”が最後に登場(11曲目、これはジミヘン・バンド=エクスペリエンスの1960年代の最初のアルバムから)、それもオーケストラがこの曲のみにバックに加わる。このアルバムにおいてはますます理解が難しい雰囲気を放っている。つまりこの曲で、このアルバムの創造的試みを聴いてくれたか?と言いたいのだろうか?。このあたりについて解説してくれるものがないだろうか?と・・・・・・探したくなるところ。 まああまり難しく考えずにこのアルバムを聴くことにしましょうよ、・・・と、言うところで先ずは冒頭の”Chai Peimot”、この曲はモジュジェルの澄んだリリカルなピアノの響きからスタート。これはなかなか良いぞと思わせるに充分の曲。そのうち驚きはフレスコのヴォーカルが入ることだ。そしてそれを支えるようなダニエルソンのベースが入ってくる。そのあたりからこれがイスラエルの世界なのだろうか?、アヴィシャイ・コーエンをふと思い出させる異国ムードが出てくる。しかしモジュジェルのピアノが流れるとやっぱりポーランドと思わせるヨーロッパの響きなのである。最初から聴く者を迷わせる感動が襲う。
モジュジェルのアルバム・タイトル曲”Polska”は、5曲目にお目見え。これが又不思議なメロディー、ポーランドにある曲なのであろうか?、しかしクレジットは彼の曲になっている。これを聴く限りに於いて、ジャズといったところにこだわらない世界を感ずる。
そしておもむろにダニエルソンの”Africa”が続いて登場するが、彼の美しさが垣間見れる曲。10曲目の”Spirit”になって、あの「PASDOBLE」を思わすメロディーが美しく流れる。
とにかくこの三者の異なった持ち味をミックスさせた私にとっては不思議な世界。彼等の挑戦的な創造的アプローチを表しているアルバムと言って良いものなのか?。
(試聴)”Chai Peimot”
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コメント
パーカッションは加わっていますが、ラーシュ・ダニエルソンとモジュジェルの組み合わせは健在というところですかね。国も違うし、55歳と42歳ですか。特にいつまでたっても衰えないラーシュ・ダニエルソンの気迫と円熟には、すっかり脱帽というところです。
投稿: 爵士 | 2014年2月25日 (火) 10時34分
爵士さん今晩わ。
モジュジェルとダニエルソンのコンビは、ダニエルソンの叙情的美学とモジュジェルの前衛的なアプローチのバランスが素晴らしいものを生み出しているように思います。従ってダニエルソン主導的の作品の方が私には受け入れやすい結果になりそうです(あの「PASODOBLE」のように)。このコンビはこれからもアクティブに発展して欲しいと願っています。
投稿: 風呂井戸 | 2014年2月25日 (火) 19時50分