トルド・グスタフセンの新作 Tord Gustavsen Quartet : 「Extended Circle」
前作のカルテットの延長線にあるアルバム~静寂にして深遠、そして思索的世界に
<Jazz> Tord Gustavsen Quartet 「Extended Circle」
ECM Records ECM2358 / 2014
Recorded june 2013, Rainbow Studio , Oslo
私の期待のノルウェーのジャズ・ピアニストのトルド・グスタフセンの新作の登場である(このジャケもいいですね)。前作は2012年の「The Well」(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/tord-gustavsen-.html)であったが、かってピアノ・トリオ作品からスタートした彼だが、これはテナー・サックスを加えたカルテットであった。そして更にその前の「Restored,Returned」は(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/tord-gustavse-1.html)は、Tord Gustavsen Ensembleと称して、カルテットにヴォーカルまでいれて見せていたので、今回のこの新作はどんな編成のパターンかと実は興味があったんです。そしてこうして手にしてみると、あのカルテットの続編であった。・・・・と、言うことはあのEnsemble以来のメンバーで(ヴォーカルは抜きとなったが)、継続されているということになる。
メンバー及び収録曲は下記のとおり。
double Bass は、「Ensemble」以来のMats Eilertsenとなっていて、3作続いたトリオ時代とは変わって現在は彼に固定したようだ。drums は、最初のトリオ以来変わらずのJarle Vespestadである。
さてこのアルバムはと言うと、スタートの”right there”は静かにそして抒情的なピアノ、ゆったりとしたドラムス。そしてそれに続いてベースが乗ってくる。ああこれはトルド・グスタフセンだとすぐに解る郷愁を感じさせる世界に引っ張り込まれる。2曲目”Eg Veit I Himmerik Ei Borg”は、珍しくテンポが上がりこのアルバムの発展的な展開に入り、しばらくしてサックスが合流する。Noregian traditionalと記されているので、この国で愛されている曲なのであろう。
このアルバムでは、このカルテッット4人による共作は”Entrance”というインプロヴィゼイションと思われる曲のみで、3曲目と7曲目に登場し、ちょっと異様なフルートっぽい音のサックスがメロディーを流しているが、これが又異国的ムードを持ちながら、深遠にして瞑想的なグスタフセンの曲にマッチングした曲で驚かされる。
”Bass Transition”というEilertsenの短いベース・ソロが10曲目に入るが、その他8曲は全てグスタフセンの曲が続くのである。
とにかく全編メロディーが抒情的で美しく、そして静寂の極致を演ずるピアノの調べとその思索的世界にひたりながら流されていると、いつの間にか終わりに到達する。
そう言えばグスタフセンは心理学を学んできたという哲学的世界があり、それに我々誘導されているのだろうか?。それにしてもこうした作品は一人で静かな部屋で聴くことが最低条件のように感ずる。
そしてこのアルバムは完全に前作「The Well」の続編と言っていい。とにかく流れるムードは一貫している。”静謐(せいひつ)にしてストイシズム(克己主義)”という表現がされているが、まさにその通り。この世界にぞっこん惚れ込んでいる私のような人間にとっては、又々愛すべき貴重なアルバムが一枚増えたことになるのである。
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コメント
新作でましたか?気がつきませんでした。でも、あのカルテットの続編となると、正直言って少し躊躇しますが、”The Gift”を聞く限りは、グスタフセンのいままでのトリオ時代のカラーが保たれているようですね。
投稿: 爵士 | 2014年2月 9日 (日) 16時45分
爵士さん、こんにちは。
そちらは雪はどうでしたか?、私の方は当然ながら降りました(笑)。
トルド・グスタセンは楽しみに新作を待っていますので・・・・飛びついております。
おっしゃるように「Ensemble」「Quartet」の両アルバム、私も期待はピアノトリオなんですが、それでも魅力たっぷりでした。今回は完全に「Qiartet」の続編です。そして私も求めるところはやはりピアノ・トリオにつきるということです。
投稿: 風呂井戸 | 2014年2月 9日 (日) 17時29分
風呂井戸さん,こんばんは。当方ブログへのTBありがとうございました。
私もGustavsenのトリオ盤にはしびれたクチですが,このアルバムのような路線であれば,無条件にOKでした。この手のサウンド好きにはたまらない出来なのだと思います。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2014年2月 9日 (日) 20時47分
中年音楽狂さん、コメントそしてトラックバック有り難う御座います。
ECMと簡単に一口では言えないトルド・グスタフセンの世界には惹かれますね。私自身は基本的にはピアノ・トリオ派なんですが、トリオの3枚以降の流れでは現在カルテットの形をとっていますが、まだまだいろいろと挑戦は続くのでしょう。これからも最も楽しみにしているピアニストの一人として認識しています。
投稿: 風呂井戸 | 2014年2月 9日 (日) 22時34分
風呂井戸さん、こんにちはmonakaです。
グフタフセン、ECMの看板のようなサウンドになりましたね。
これからどのように展開していくのかたのしみです。
投稿: monaka | 2014年2月15日 (土) 16時12分