ティアニー・サットンTierney Sutton : 「AFTER BLUE」 & 「DESIRE」
ベテランの初聴きシリーズ第二弾
<Jazz> TIERNEY SUTTON BAND 「DESIRE」
TELARC / US / CD / CD-83685 / 2009
これは、ティアニー・サットンTierney Suttonのジャズ・スタンダートを中心としたアルバム。このところ彼女の最新作の「AFTER BLUE」も含めて取り敢えず数枚聴いてみたが、このアルバムが私にとってはベスト。ちょっとジャケが野暮ったいが、それは彼女の年齢(1963年生まれ)も加味して許すとして中身はなかなか充実している。
彼女の1990年代からの築き上げられた歴史をみると、なにを今更と言われそうだが、私にとっては、驚きのテクニシャン・ヴォーカルに巡り会ったと最近若干感動しているのである。
今回ちょっと興味を持って調べてみると、彼女はロサンゼルスを拠点として活躍しているが、バークリー音楽大学を出ている学歴が有り、南カリフォルニア大学にて教鞭もとっているという。なにせグラミー賞の”ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム”に2度ノミネートされたという実力派であったのだ。
注目すべきは、彼女はもう十数年来のクリスチャン・ジェイコブ・ジャズ・トリオと共に歩んできていて、このアルバムでは”Tierney Sutton Band”と名乗っている。
メンバーは
Tierney Sutton : vocals
Christian Jacob : piano
Trey Henry : bass
Kevin Axt : bass
Ray Brinker : drums ・・・・・の5人。
馴染んだスタンダード集と甘くかかるとパンチが飛んでくる。とにかく”BAND”と言っているだけあって、演奏陣の果たす役割の多さも収録曲に見えてくる。このクリスチャン・ジェイコブ・トリオがお気に入りで、もともと東海岸の彼女は、彼等の活動する西海岸にて活動するに至ったというだけあって、このトリオのジャズ手法に絶妙な絡みのヴォーカルを披露する。
このバンドの曲の展開や流れにおいて、ジャズ・アレンジとは?と、ふと考えさせる程の過去の曲のイメージをガラッと変える手法、それにより別世界へのお誘いが展開するのである。それが又たまらなく魅力的。これにはピアニストのクリスチャン・ジェイコブ(彼はフランス人)の力量が大いに働いているらしい。
彼女の声の質は、あまり癖も無くそう声量があるわけで無いので、逆に技巧をこらしてもあまり嫌みにならない。このアルバムは知れ渡ったスタンダード集であるだけに、特にヴォーカルにこれだけ変化をもたらすと、今時の”Jazzy not jazz”が流行の中では、少々一般向きで無く、これぞ”ジャズ好み”という世界になる。
しかし”long daddy green”の物語調のお聞かせヴォーカルがあったりする。一方”fever”の変容ぶりは私のお気に入りで、ダブル・ベースとドラムスの展開する夜のジャズ・ムードに彼女の不思議なヴォーカルで、これはご満悦。”then i'll be tired of you”のピアノとのバラードも絶妙。又私の好きな曲”cry me a river”もピアノ・トリオとこうしたドラマチックな変化を歌い上げ、このパターンは刺激的であった。
とにかく、女性ジャズ・ヴォーカルもなかなか奥深く、この方面にこよなく愛する人のお勧めに耳を傾け、その推薦盤を聴かせていただいて、お気に入りに巡り遇うことに期待しているんです。そんなわけで、私の友人からの紹介が結構多いのですが、今回は爵士さんの熟女シリーズからのティアニー・サットンでした。
<Jazz> TIERNEY SUTTON 「AFTER BLUE」
BFM JAZZ / US / CD / 302062419-2 / 2013
これは彼女の最新アルバム。なんと一癖も二癖もあるジョニ・ミッチェルの作品をづらっと並べたカヴァー集。これは異色の挑戦である。今までの彼女のパターンを一つ又変化させたもの。
このアルバムには12曲収められているが、これが又彼女得意のアレンジの妙を施し、バックの演奏陣も曲によってギター、フルート、オルガンと登場させ一風変わった世界を描く。又ヴァイオリン・ビオラを擁するTurtle island quartetとの共演なども2曲有り、やっぱりこれは異色作の体を成している。私としては、彼女の場合ピアノ・トリオとの共演の方ががいいと思うのだが・・・・、そのことは、彼女の長くのファンはどう評価しているのだろうか?。
このアルバムのtracklistは、このような12曲。
<Tierney Sutton - Discography>
1998 - Introducing Tierney Sutton
2000 - Unsung Heroes
2001 - Blue in Green
2002 - Something Cool
2004 - Dancing in the Dark
2005 - I'm with the Band
2007 - On the Other Side
2009 - Desire
2011 - American Road
2011 - Grade 3 featured on the Shine On! Volume One album
2013 - After Blue
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コメント
やはり「AFTER BLUE」は異色でしょう。同アレンジして歌うのかと興味があったのですが、今まで聴いていたファンの一人としては、おっしゃるように「Christian Jacob」のピアノトリオの方が安心して聴いていられます。闘病中だというミッチェル70歳へのリスペクト、オマージュ、エールだったのかもしれません。「After Blue」というタイトルにそれが感じられます。 とはいえ、ティアニーのチャレンジに対しては敬意を払うものです。
投稿: 爵士 | 2014年2月 5日 (水) 23時54分
爵士さん、コメント有り難うございます。彼女のヴォーカルはなかなか味付けに中身が濃いように思いました。そしてそれはやはりジャズといっても大編成で無くピアノ・トリオぐらいのバックで、じっくり歌い上げて欲しいと思います。そんなところで一番栄えるのではとも思って聴きました。多分「AFTER BLUE」は一つの挑戦でもあったのでしょうか、次作は多分元のパターンに戻るでしょうから、又楽しみにしています。
投稿: 風呂井戸 | 2014年2月 6日 (木) 20時22分