名器ファツィオリFAZIOLI を聴く ~大石学、山本英次
イタリアの名器ファツィオリで聴くジャズ
イタリアのピアノの名器ファツィオリFAZIOLIを聴くということで、音にこだわる日本人として日本人プレイヤーのソロ・アルバム2枚ここに取り上げてみた。
ジャズとピアノと言うことでも、我々が接することの多いピアノは、やっぱり透明感溢れる音ということで世界のピアノ生産国であるドイツの「スタインウェイSteinway & sons」が最右翼であろう。私のように音楽に関する学問のらしきものは全くない人間だが、それでもその音には快感という世界があって、やはり納得の音を聴きたいものである。日本のピアノと言えば「YAMAHA」 とか「Kawai」 を思い浮かべるが、この両者も健闘している。とにかくドイツ、日本は世界の主要なピアノ生産国である。
そんな中で歴史は古いわけではないが、世界で名器との看板を張っているピアノにファツィオリがある。このピアノはイタリアの北部の小さな田舎町サチーレで作られている。世界に名を馳せているスタンウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファーなどは、1800年代創設されたものだが、なんとこのファツィオリは1980年に最初のモデルが出来た新参者である。
イタリアの家具製造業の家に生まれたパオロ・ファツィオリは、子供の頃からピアノに接していたが、ローマ大学で工学を学び、家具生産工場で働いていたと言われているが、一方ロッシーニ音楽院でピアノを、そしてローマ音楽院で作曲を専攻したという話もある。いずれにしてもピアノに関する興味は人一倍で、1970年代はピアノの需要は世界的に頂点に達していたこともあり、自己の納得のゆくピアノ生産に手を出したのであった。
そして大量生産的手法でなく、全てに材質を始め良質手作りを追求して作り上げた。そして世界で最も高額のピアノとなり、2010年以降は国際的コンクールのピアノとしても採用される名器という看板を張ることが出来たものだ。
<Jazz>
Manabu Ohishi 「WATER MIRROR」
Atelier Sawano, AS 108 , 2011
Manabu Ohishi (piano)
1. Calm *
2. Water Mirror *
3. Pleasure *
4. After The Rain *
5. Hanauta *
6. How Insensitive
7. 'Round Midnight
8. Alone Together
9. Fly Me To The Moon
10. Tosca *
11. Ocean *
(*印:大石学オリジナル曲)
私が大石学Manabu Ohishi の演奏を初めて聴いたのは、彼のピアノ・トリオ・アルバム「Gift」 (Atelier Sawano , AS-122, 2012)であった。これはベーシストがJean-Philippe Viret で、話題性もあり手に入れたのだが、このアルバムはフランスでの録音で、ピアノはファツィオリを使っている。彼のジャズを越えたメロディーラインの美しさとピアノの透明感ある音に感動を知ったのだが、この大石学のソロであるこのアルバムは、その前年の2011年に同じフランスでの録音ものだ。これを実は聴かずに来ていたが、つい最近爵士さんの紹介で聴くことが出来たものだ。やはりアルバム・タイトルどおりの透き通った水面の鏡に映ったような美しい響きがソロ故に倍増して聴け、音の余韻が素晴らしい。そして彼の優しさの曲作りが伝わってくる。ファツィオリを充分研究しての曲作り音作りであったのだろう。
・・・・・さて、そんなことを感じていて思い出したのが、これはなんと更に10年以上前のものであるが、やはりかって私の友人から紹介してもらったアルバムである。(↓)
・・・・・・・・ ・・・・・・・・
<Jazz>
Eiji Yamamoto 「to fazioli」
インデペンデントレーベル, YPM-7, 1998
Eiji Yamamoto (piano)
(1) Softly As In A Morning Sunrise
(2) Am Ha Arets"SUGA"
(3) Summer Time In VENICE
(4) St.Louis Blues
(5) Stella By Starlight
(6) Alice In My Dream *
(7) Lullaby Of Bay YOKOHAMA *
(8) Autumn Leaves
(9) If I Had You
(10) Someone To Watch Over Me
(11) Mood Indigo
(12) Sweet Gerogia Brown
(13) Alice and Flowers *
(14) Dinah
(15) Alice In Wonderland
(16) Alice In Wonderland
(17) To FAZIOLI *
(*印:山本英次オリジナル曲)
1941年生まれの山本英次、映画音楽、オリジナル曲、ジャズ・スタンダード曲など幅広くピアノ演奏。彼が1996年にピアノソロ集「ララバイオブピアノマン」で話題になり、その後ドイツの名器ベヒシュタインによるピアノ・ソロ集など経て、このアルバムは名器ファツィオリにてピアノ・ソロ集第4作としてリリースしたのだ。ファツィオリには6種のグランド・ピアノがある。F308という特大コンサート・グランド・ピアノがあるが、通常のフル・コンサート・グランド・ピアノはF278である。そのF278を凝りに凝った状況下で、録音もマイクの位置も研究を重ね、録音機器も最先端機器によった。こうして透明感の上に気品のある演奏と音を提供する自己のオリジナル曲4曲を含む17曲のアルバムを完成させたのだった。初めて聴いた当時の感動は今も忘れない一枚である。今もこの音は最右翼の録音モノである。
(試聴) "TOSKA" from Manabu Ohishi「WATER MIRROR」
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コメント
イタリアの名器「ファツィオリ/FAZIOLI」の存在を、このアルバムで初めて知りました。それにしても「大石学」、日本人にしては、希な音色をピアニストですね。「Lady Kim」の歌伴のころから少し注目していました。
投稿: 爵士 | 2014年8月16日 (土) 10時05分
爵士さん今晩わ。
大石学は、彼のトリオのメンバーを見ても、又FAZIOLIを選ぶところとか、何かにつけてかなりこだわりのあるピアニストと思います。そして彼の曲も素晴らしいですね。これからも活躍して欲しいです。
投稿: 風呂井戸 | 2014年8月16日 (土) 20時57分