突っ込みシリーズ~ステファン・オリヴァStephan Olivaのピアノ・ソロ :「Film Noir」
前衛性とクールさで・・・・あの暗い時代を描く
<European Jazz>
STEPHAN OLIVA 「Film Noir」
ILLUSIONS (Atelier Sawano)/ ILL313005 / 2010
ステファン・オリヴァの映画音楽を題材にした近作ピアノ・ソロ・アルバム「VAGUEMENT GODARD」、そして2007年の「GHOSTS of BERNARD HERRMANN」を検証してきたのだが・・・、ここまでくれば当然彼の映画音楽ピアノ・ソロ3部作のこのアルバムにもアプローチしてみようと聴いてみた。
(参考):http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/stephan-oliva-v.html
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/stephan-oliva-g.html
これは2010年リリースで、先日取り上げた「GHOSTS of BERNARD HERRMANN」に続いての映画音楽第2弾だった。
このタイトル「フイルム・ノワールFilm Noir」というのはフランス語で「暗い映画」という意味だが、このアルバムのライナー・ノーツでは少々説明不足であるのでここに書くが、・・・・・・これはフランス語ではあるが、実はハリウッド映画を指している。フランス人の映画評論家の言葉が広がった結果であって、このアルバムに取り上げられた映画の製作時期をみて解るとおり、1940年から1950年代の主としてハリウッド製作の犯罪ドラマ、退廃性が主体で、ドイツ表現主義撮影という撮影技法が基礎にあるモノクロの影や光のコントラストを使った映像で見せる。つまりそんなどちらかというと制作費を節約した当時の世相の暗さを描いた映画群を言うのである。そしてオリヴァは画像に明暗をうまく取り入れたこの時代の映画に焦点を当てたのだ。多分それは彼のピアノ演奏の一つの世界であるからであろう。
澤野工房は勿論宣伝の意味もあるが、このアルバムを・・・”「フィルム・ノワール」の巨匠達へのオマージュを込めて。閉塞と悲観、退廃の中にこそ生まれる美しさに戦慄を覚えるピアノソロの傑作が登場!”と表した。なかなか意味深でしかも旨い表現である。( Tracklistは以下の通り(クリック拡大))
異次元の世界の音空間を作り上げるピアノ・ソロ、そこには美しいメロディーとスリリングな音の交錯が迫ってくる。こうして彼のピアノ・ソロ映画音楽3アルバムを聴いてみると彼の音楽世界が見えてくる。いっやーなかなか飽きることを知らない名演である。とくにこのアルバムは、決して明るい世界ではない。やはり暗いと言えば暗い。そして破滅に導くような音、暗闇の静と動、残酷な人間関係など浮き彫りされる。オリヴァの演ずる表現力に脱帽である。しかし、1.5.7.9.10.の曲には優しい美しさがあって如何にも恐いくらいだ。
アメリカン・ジャズのスウィング感などみじんもなく、これはジャズと言っていいのか?、でもやっぱり前衛的センスと心に響くジャズなのである。
映画は、「拳銃の報酬」から「アスファルト・ジャングル」「ロング・グットバイ」「狩人の夜」などなどで、そしておまけに「黒澤明」まで登場する。
ステファン・オリヴァに関わって、このアルバムまで突っ込んで到達したことに喜んでいるのである。
(試聴)
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