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2015年8月 6日 (木)

ピンク・フロイド・のマニアックな話~(続)ロジャー・ウォーターズのリマスター「AMUSED TO DEATH」

オリジナル盤との相違点=R・ウォーターズのトリック
  ~ピンク・フロイド・マニヤに捧げる

 やはりロジャー・ウォーターズはやりました。このリマスター盤『死滅遊戯 AMUSED TO DEATH』で、よく聴いてみるとオリジナル盤と異なったところがあるのです。

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Carlcourt630x420 それは、ロジャー・ウォーターズが1999年から2000年にかけて行った全米ツアー「in the flesh - live」にて(この後日本公演も行った)、このアルバム『死滅遊戯 AMUSED TO DEATH』の一つのポイントである曲”Perfect Sence, Part1 完全真理パート1”を演ずるに、初めて登場させた”語り”が、今回のリマスター盤にも挿入されたことだ。
 
 実はこの”語り”は・・・ロジャー・ウォーターズらしい二つのトリックが絡んでいる。

① 映画「2001年宇宙の旅 2001:A Space Odyssey」(1968年作品)との関係

 あの歴史的価値の認識されているSF映画スタンリー・キューブリック監督作品『2001年宇宙の旅』をウォーターズはイメージさせる。
 この挿入された”語り”は、この映画の人工頭脳スーパー・コンピューターHALの声である。「怖いんだ、デイヴ……止めてくれ」というHALが回路が切断される直前の声だ。もともとこの映画とピンク・フロイド特にロジャー・ウォーターズとの関係は既に多く語られている。      

 最も面白かったのは、あの映画の最後の無言のシーン24分間とピンク・フロイドのアルバム『おせっかい』の曲「エコーズ Echoes」が完全シンクロする話だ。(映画の最終章サブタイトル「Jupiter and Beyond the Infinite」が現れると同時に「エコーズ」をスタートさせると映像と音がシンクロする。最後は「エコーズ」が終わと映画も終わる)ウォーターズはこのくらいのトリックはやってみせる男だからファンは常に憶測をする。とにかく多くの話で監督キューブリックとロジャー・ウォーターズの関係は話題になってきたところだ。

(参考視聴=ピンク・フロイド「エコーズ」と映画「2001年宇宙の旅」のシンクロ)

 それに輪をかけて更に盛り上がったのは、ウォーターズが”今になって後悔していることは、『2001年宇宙の旅』の曲を担当しなかったことだ”なんてことを今から何年か前に言ったのだから、騒動は大きくなった。
 もともとあの映画は1968年公開だから、ピンク・フロイドはまだまだ駆け出しの頃で、この映画の音楽担当のオファーがくるかどうか?、ただサイケデリックなサウンドを持ち味に売り出した当時ではあったのでそのあたりは解らない。逆にウォーターズが持ちかけたが断られた?と言う話もある。しかしその後のキューブリックは後の映画『時計じかけのオレンジ』の音楽にピンク・フロイドのアルバム『原子心母』の曲を依頼したが、”どうせバラバラ編集されるだろう”とウォーターズは断ったとか?、そんな両者には「逆関係」の話もある。何かと両者の関係が面白おかしく語られるが、とにかく個性の強い二人のこと、実のところ「対立」だったのか、「協調」だったのかよく解らない。

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 ただこの映画『2001年宇宙の旅』は、ウォーターズにとっても非常に関心があったことは後の彼の作品をみても明らかだ。『死滅遊戯 AMUSED TO DEATH』と『2001年宇宙の旅』の”猿の登場”や”眼球のフォト”など、又彼のツアーのスクリーン映像なども、『2001年宇宙の旅』が関係したモノが多く登場する。・・・・・と言うことは、ウォーターズはキューブリックには良い意味での関係を持っていたとの想像も出来るところである。

② デヴィッド・ギルモアとの関係

 とにかくウォーターズは、「ピンク・フロイド」をまんまとギルモアに乗っ取られた。それはウォーターズが自らバンド・メンバーとの亀裂で、既に他の三人の協力が得られなくなった事(ニック・メイスンに言わせると、当時のウォーターズは、まさにスターリン独裁だったと)により維持することは困難と判断して、封印したことから始まっている。最も売れたアルバム『狂気』とそれ以降の4アルバムは、彼のアイデアで作られてきた「ピンク・フロイド」であった為に、まさか彼は自分抜きで「ピンク・フロイド」が動くとは思わなかった誤算。
 そこにたまたまウォーターズ独裁の「ピンク・フロイド」に嫌気をさしてデヴィット・ギルモアは離れ、自己名義でソロ・アルバム『アバウト・フェイス ABOUT FACE』を作りとそれにまつわるツアーを行ったが全く売れず、その空しさを知ったギルモアが、「ピンク・フロイド」の名の大きさを知って、それを何が何でも欲しがった。この二つが重なって起きたのが「ピンク・フロイド」の”ウォーターズ脱退、ギルモアの乗っ取り騒動”だ。

8a166efb しかしこれは法廷闘争にまで行った醜い争いにもなった。ウォーターズはそれに対する怨念は大きかった。あの映画『風の吹くとき』のサントラにもその事が”あれは、マイ・バンド”と歌っている。
 そしてこの”Perfect Sence, Part1 完全真理パート1”の曲においても、ギルモアの「ピンク・フロイド」に対して”止めろテイヴ(デイヴ・ギルモアを指している)、私は残念だ。デイブ止めろ”と、この”HALコンピューターの声”を使って、ピンク・フロイドのストップを暗に訴えたのだった("afraid"と言う語の意味を巧みに使っている)。これはウォーターズの得意のトリックである。これを1999年のライブでやってみせたのだが、なんと今にして、2015年のこのリマスター盤にも登場させる事は、彼がシド・バレットの精神的崩壊後、必死で作ってきた「ピンク・フロイド」をギルモアに乗っ取られた事への彼の表向きとは異なって、その恨みとしての執念は恐ろしいほど凄い。そしてピンク・フロイドの最終盤『The Endless River』のリリースに対して、真の「ピンク・フロイド」はこれだと言わんばかりに、リマスターで『死滅遊戯』を登場させた・・・とまで憶測させるのだ。

Stop Dave   Will you stop, Dave?  Stope Dave   I'm afraid.  Dave   
My mind is going.   I can feel it.   I can feel it.   My mind is going.
There is no question about it.  I can feel it.  I can feel it. ・・・

I'm afraid.


<追記>
  更にこのリマスター盤にて、演奏面の大きな変更部もある。それは曲「THE BRAVERY OF BEING OUT OF RANGE」に於いて、前奏部と特に後半の歌詞”old timer who you gonna kill next”の後の”Hey bartender over here”と歌われるまでの間奏部において、ライブでSnowy Whiteのソロ・ギターが奏でたメロディーが入っている。これは多分ウォータースが気に入ってのことだと思う。こうしてリマスター盤は変更も加えつつ完成度を高めている。

(参考視聴)

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コメント

語り入りとは…。やはり何かしてくれるロジャーですね。
そして映画との関連性についても興味深く読ませてもらいました。昔何かで読んだ記憶があったんですが、実践したことないので24分間、やってみようかな…。

投稿: フレ | 2015年8月 7日 (金) 22時30分

 フレさん、コメントどうも・・・です。
 とにかくロジャー・ウォーターズは同じアルバムは基本的には作らないという主義のようで、確かにピンク・フロイド作品も、「the final cut」までは、常に良きにつけ悪しきにつけ同タイプではなく造ってきています。それと必ずトリックが隠されていますね。この”エコーズ”のシンクロは間違いなく意識したモノと思いますが・・・・?、彼は相当、映画「2001年宇宙の旅」は意識して来ていますから。
 さあ、これから今公開の「The Wall Live」の秋のDVDリリースと、噂されているニュー・アルバムに期待しているのですが・・・。

投稿: 風呂井戸 | 2015年8月 8日 (土) 22時35分

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