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2015年9月26日 (土)

映画 時代劇回顧シリーズ(1) 嵐寛寿郎 と「鞍馬天狗」 -私の映画史(15)-

映画は唯一の娯楽の時代があった!!

 私の映画好きは、小学生時代にその原点がある。隣に住んでいたお兄さんが映画好きで、よく私を連れて行ったのだ。私がまだ幼い小学校低学年の時であり、当時の映画館では入場料は私の分は取らなかった。そんなこともあったのか、よく連れて行ってもらったのである。・・・・こんな事が私と映画の関わり合いの始めであったのだが。

Kuramatengu1_2 その記憶にある中で、主たる映画は、なんとアラカン(嵐寛寿郎)の「鞍馬天狗」(左)。今思えば多分その映画は日活版の「鞍馬天狗」(1938-1941 8本制作)なのではなかったか?、と推測するのだ。と言うことは、戦前の映画になる。多分旧作の映画上映館であったと思うから。
 なにせ、勿論テレビなども無い時代であったから、その映される映像はモノクロではあっても、動く映像を観るというそのものにも感動があった。そして時代劇のその内容には、幼き私にとっては強烈な印象があり、帰ってきて夜寝ても恐ろしく夢に見てうなされるぐらいインパクトがあったものである。このような”痛快時代劇”なんてところは、成人に近い人に言えることで、とにかく幼き子供には恐ろしい映画であったのです。

 私が映画をその額面通り楽しむものとして、アラカンの「鞍馬天狗」を観たのは、美空ひばりの杉作少年の登場する松竹版(4本)以降のことである。それは1951年の「鞍馬天狗 角兵衛獅子」からだ。当初この映画は映画館で観たのではなく、とにかく戦後娯楽も無くただただ民衆は働いて生活する世の中であった為、これはどこのどういった企画かは知らないが、駅前広場に夜になると大きな白幕を張ってスクリーンとし、そこに投影して多くの人が集まって楽しむというものである。だからおそらくこれは映画館での一般公開も済んでの作品であって、こうして娯楽というものも殆ど無い市民の”憩いの場作り”として行われた上映であったと思う。劇場で演芸を観るのと同じに皆拍手をして観たものだった。

松竹映画 「鞍馬天狗 角兵衛獅子」 (昭和26年(1951年))

Kuramax_2
制作 小倉浩一郎
原作 大佛次郎
脚本 八尋不二
監督 大曽根辰夫
撮影 片岡 清
出演 嵐寛寿郎 (鞍馬天狗)
    美空ひばり (杉作)
    山田五十鈴 (礫のお喜代)
    月形龍之介 (近藤勇)
    川田晴久 (黒姫の吉兵衛)

 「鞍馬天狗」というのは大佛次郎原作ものであり、大衆小説の冴えたるもので、そこで作られた勤王の使命感を持った主人公。大正13年(1924年)にスタートして、47作ある。その中で人気のあるのは、この少年向きとして書かれた「角兵衛獅子」は「少年倶楽部」に連載(1926~27)されたもの。
 この鞍馬天狗の物語の時代背景は、幕末の混乱期に於ける尊皇攘夷派らの王政復古、武力討幕路線の台頭期にある。娯楽的には幕府側の新撰組(近藤勇)と鞍馬天狗の勤王の志士との闘いを描いたもの。
 佐幕派の勝海舟や勤皇派の西郷隆盛、桂小五郎、木戸孝允といった実在人物が登場するところも面白い。

 とにかく「鞍馬天狗」と言えば「アラカン」と誰もがと言ったもので、「アラカン」こと「嵐寛寿郎」の演ずるものが抜群に支持されてきた。マキノ映画の1927年から最終は宝塚映画の1956年の作品まで、なんと40本のアラカンの「鞍馬天狗」映画があるのだ。

Photo_2 この美空ひばりの杉作少年が登場する映画は、戦後の映画復興の最先端を行ったもので、嵐寛寿郎にしてみれば、一連のシリーズの最後の1/3に入った頃のものだ。とにかく格好良いアラカンの鞍馬天狗と可愛い美空ひばり、そして魅惑の山田五十鈴、武士の姿を最も格調高く演ずる月形龍之介と役者が揃っている。これほどの娯楽映画は過去に無かったといってよいほどのもの。
 今はDVDものとして鑑賞できる数少ない鞍馬天狗ものの一本だ(左)。
 この映画でも、美空ひばりは凄い。子役ながらも、とにかく圧倒的な支持を得た。有名な話だが、なんと子供ながら山田五十鈴の色気に負けないところを見せたとアラカンは感じたということだ。その後、映画の制作上、人気維持のため「鞍馬天狗 鞍馬の火祭」(1951年)、「鞍馬天狗 天狗廻状」(1952年)と続けて彼女の出演が望まれ、そして制作された。
 
147949_m2 こんなことから、私が映画ファンとして最も好きだった俳優がこの嵐寛寿郎であった。そして最も映画に夢中になった年頃では「明治天皇と日露大戦争」(1957年)が最大の作品。とにかく日本初の大型シネマスコープ作品作成として注目され、明治天皇役ということに恐れおののいたアラカンであったが、結果的には絶賛の嵐(笑)であった。
 その後、もうアラカンも映画界では一歩下がって、別の味を出してくれたのだが、それがあの高倉健の「網走番外地」シリーズでの登場であった。嵐寛寿郎が演じた“八人殺しの鬼寅”は映画史に残る名キャラクターとして語り継がれている。

(参考映像)

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