ゴンザロ・ルバルカバGonzalo Rubalcaba のピアノ・ソロ・ライブ・アルバム「Faith」
優しさのメロディーに単に浸るという甘さは無い
~これぞルバルカバの描くミュージック空間~
<Jazz>
Gonzalo Rubalcaba Live 「Faith」
5passion LIC / USA / 040232013621 / 2015
コンザロ・ルバルカバについては、、彼のピアノ・プレイの超越した技巧には定評があるところだが、つい最近のリリース・アルバムは、惜しくも我々の世界から去ってしまったチャーリー・ヘイデンとのデュオ作品「TOKYO ADAGIO」が話題になったところだ(参照:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/tokyo-adagio-57.html)。そしてここに来て久々にカヴァーとオリジナル曲のソロ・アルバムにお目にかかることが出来た。
Disc 1
1. Derivado / Maferefun
2. Improvisation
3. Con Alma
4. Blue in Green
5. Yolanda
6. Joao
Disc 2
1. El Cadete Constitucional
2. Preludio Corto No.2 (Tu Amor Era Falso)
3. Joan
4. Faro
5. Imagine
しかし考えてみると、私は、彼のソロ・ピアノ・アルバムはしっかりと聴いてこなかったため、このアルバムは実は興味津々といっところだったのだ(9年前にソロ・アルバム「Gonzalo Rubalcaba Solo」がある)。若い若いと思っていたが、彼は1963年5月27日キューバ、ハバナ生まれということだから、今年には50歳を超えたところで、いっやーー、まさに近年は絶頂期と言ってもいいと思う。
そしてもともと技巧派のピアニストとしての評価が高かった訳で、ハバナの音楽学校でクラシックを学んだという実力派であり、グラミー賞の受賞経験もある訳で、彼のジャズ・ピアノ界における存在は既に確固たるところにある。そんな意味でもこのソロ・アルバムを聴いておきたかったというところなのである。
さてこのアルバムは2枚組のライブものである。
まず1枚目(Disc 1)のそのオープニング曲”Derivado / Maferefun”は、硬質の打鍵音からスタート。なるほど一撃にして会場を集中させるにふさわしい方法論だ(ライブでは実際にこの曲からスタートしたかどうかは知らないのだが)。そしてメロディー中心の曲展開でなく、かなり技巧と音の余韻を生かした空間に絵を描くような演奏内容と言っていいだろう。残念なのは、丁度その空間に浸ったところに曲が終了すると拍手が入ることだ。急に現実に戻されてしまうところだ。ライブものと言えども、この拍手は省いて欲しいところだった。
2曲目”. Improvisation ”は、やはり題名そのものの即興曲。短く纏めてあるからというわけでは無いが、これはそう注目するところでも無い。
3曲目 ”Con Alma ”、4曲目” Blue in Green ”、5曲目”Yolanda ”と聴いていくが、流麗で美しいメロディ・ラインがふと流れるかと思いきや・・・・・その世界をたっぷりと言う甘さは無く、彼の澄んだピアノの音が次には異空間に導くのだ。そのあたりのテクニックは相当に計算されたスピード感と空間を漂う感覚とが交互に襲ってきて静かな中にも圧倒される。
続く”Joao ”でも同様で1枚目は終了する。
そして2枚目(Disc 2)に流れ込んで、浮かれリズムの美旋律が顔を覗かせるが、しかしここでもやや不安な影のある美の世界は、聴く者に簡単には安堵などは与えてくれない。このパターンはDisc1と一向に変わらない。とくに音と音との間のとり方と音の強弱と美しさの混在は絶妙で、少しでも気を休めてくれないといったところ。そしてよく演奏される彼独特の”Imagine ”で全てを納める。なかなか一筋縄に行かないゴンザロ・ルバルカバのソロであった。
(参考視聴)
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