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2015年11月28日 (土)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi ニュー・ライブ・アルバム「TALES FROM THE UNEXPECTED」

エンリコ・ピエラヌンツィの詩情ピアノ・トリオ・ジャズが帰ってきた!

  <Jazz>
    Enrico Pieranunzi 
    「TALES FROM THE UNEXPECTED」
                                  ~Live at Theater Gütersloh~
           ETERNAL MOMENT / KKE054 / 2015

Talesfrom

Enrico Pieranunzi(p)
Jasper Somsen(b)
André Ceccarelli(ds)

Recorded live at Theater Gütersloh 29. 08. 2015

Proximity エンリコ・ピエラヌンツィ(1949年イタリアのローマ生まれ)は、いろいろと動いていますね。このところのCAM JAZZ最新作は、ラルフ・アレッシ(tp,cor,flh)、ダニー・マッキャスリン(ts,ss)、マット・ペンマン(b)というNYの世界でしょうか”アメリカン・カルテット”で挑んだまたもややや変則と言いたくなる意欲作の「PROXIMITY」というアルバムもリリースされたが、・・・・ここで取り上げたこちらは今年のドイツにおける「European Jazz Legends」においての、ヨーロピアン・トリオ・ライブの登場だ。全10曲オリジナル曲で4曲が即興演奏。ドラマーにアンドレ・チェカレリAndré Ceccarelliが参加。

1. Improtale 1 (4:46)*
2. The Waver (8:03)
3. Anne Bloomster Sang (6:59)
4. Improtale 2 (6:13)*
5. B.Y.O.H. (6:41)
6. Tales From The Unexpected (8:41)
7. Improtale 3 (7:41)*
8. Fellini's Waltz (6:41)
9. Improtale 4 (2:24)*
10. The Surprise Answer (6:22)
(11. Interview with Enrico Pieranunzi by Götz Bühler (11:50))
Total Time 76:33
               (*印 即興演奏)


Enricopieranunzi3 スタート曲” Improtale 1”からBassのアルコ奏法から入る即興曲を展開、これが又魅力的なヨーロッパ的な美しさが伝わってくる。これはしめしめと聴き入るのである。
 M2”The Water”、M3”Anne Bloomster Sang ”と、懐かしきピアノの繊細にして美旋律が聴き取れる。特にM3でこのアルバムの良さが全開、Bassが思いの外哀愁感ある旋律を奏で、そこにピアノの流れるようにして艶やかな緻密なピアノ・タッチは端正なヨーロッパ詩情そのもので、両者の交互に描き展開する彩りは快感。
 しかしやっぱりピエラヌンツィの演奏は何時聴いても優雅にして清々しい。

 そして一方、” Improtale (不体裁?)”という4曲の即興演奏は、特に2曲目からドラマティックの3者の交錯が非常に前衛的なセンスを生かしての展開で、その他の曲との対比が素晴らしい。その為M5”B.Y.O.H.”、M8”Fellini's Waltz ”が非常に抒情的な印象を倍増して迫ってくる。私は即興演奏の中では” Improtale 3 ”がお気に入り。
 そしてM6アルバム・タイトル曲”Tales From The Unexpected”が、このトリオのテクニック的な充実度を見せつけるが如きの心憎い快演である。

(参考) これは参考までにVillage Vangardでのライブ

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2015年11月25日 (水)

<時にはクラシック?> ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ「クロイツェル」「スプリング」

 ヴァイオリン・ソナタ の味わい
  ~そしてロック話も=デヴィッド・クロス、ダリル・ウェイ

 やっぱり初冬の臭いのする晩秋のせいでしょうかね、私は時にクラシックが聴きたくなるんですが、このところそんなムードなんです。
 そして好きなものの一つは”ヴァイオリン・ソナタ”なんですが、とにかくなんだかんだ言っても、このベェートーヴェンの2曲”クロイツェル”そして”スプリング(春)”には敵わないですね。これも先日の ジャズ・アルバムAdam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」 を聴いての流れなんです・・・・・    

   <Classic>
          MAEHASHI/ESCHENBACH 「Kreutzer & Spring」
          CBS/Sony / JPN / 32DC679 / 1986

Kreutzerspring2
  LUDWING VAN BEETHOVEN
   Sonata No.9 in A Major for Piano and Violin. Op.47
    Sonata No.5 in F Major for Piano and Violin. Op.24

    Teiko Maehashi : Violin
      Christoph Eschenbach : Piano

Beethoven  ヴァイオリン・ソナタというのは、ヴァイオリンとピアノによる二重奏の演奏形態でソナタ形式(3部分からなる楽曲形式、つまり提示部,展開部,再現部から成る)の楽曲のことを一般には言うので、ヴァイオリンと言えどもピアノも対等なかなり重要な位置を占める。むしろ古典的にはヴァイオリンの助奏付きピアノ・ソナタであって、ピアノのウェイトが高いのだが、特にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、彼自身がピアノ奏者だけあって、そのピアノの役割の重要さが大きい。ところがしかしこの「クロイツェル」はヴァイオリン奏者に捧げる意味もあったためか、ヴァイオリンがピアノと対等に協奏させたところに魅力がある(この曲はいろいろと曰くがあるが、フランスのヴァイオリニストのルドルフ・クロイツェルに捧げられたもので「クロイツェル」と呼ばれているもの)。

 こんな講釈はそれまでとして、やっぱり私の好みからはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの1から10番までの中で、この第9番イ長調作品47「Kreutzerクロイツェル」は最高なんです。それはやっぱりヴァイオリンが助奏役で無く、ピアノとバトルを展開するところが面白い。もともとヴァイオリンというのは美しい旋律を聴かせてくれるところが魅力の楽器だと思うのだが、弾きようによっては、それ以上のものがないと言うくらいにスリリングな展開と迫力のある楽器だと思う。そのあたりがこの曲では見え隠れするんですね。


Starless_s (ちょっとロック話)

KING CRIMSON
 実はそのヴァイオリンの迫力に気がついたのは、恥ずかしながら昔から聴いてきたクラシックと言うよりは、1960年代からのロックに魅せられた当初、あのプログレッシブ・ロックの雄:キング・クリムゾンKing Crimsonを聴くと、70年代にデヴィッド・クロスDevid Crossのヴァイオリンが入ると、ものすごくスリリングな音と展開になるんです。
  最近リリースされた彼とロバート・フリップによるアルバム「STARLESS STARLIGHT」 (VIVID SOUND / VSCD-4294 / 2015 ~これは当時と違ってかなりアンヴィエントな世界ですが)がまさしくそれを思い出させます。

CURVED AIR
Curvedaircondition 又ロックのついで話となれば、やっぱり1970年デビューのカーヴド・エアCurved Airを思い出しますね。ソーニャ・クリスティーナの魅力のヴォイスは勿論ですが、ダリル・ウェイDarryl Wayのヴァイオリンが忘れられない。彼らの1st「Airconditioning」の”Vivaldi”には度肝を抜かれ圧倒された。
 そうそうダリル・ウェイズウルフWolf「CANIS-LUPUS」もスリリングでした。
 そしてそして更に再結成されたカーヴド・エアの1974年の「Curved Air Live」の迫力。と、ロック話になってしまいそうであるので、なんとか元に話は戻すが・・・・・・。

Photo・・・・・・話は戻って
 ここに取り上げた前橋汀子とクリストフ・エッシェンバッハのベートーヴェン「クロイツェル」は、このアルバムのリリースされた1980年代の当時、CDとしては、なかでも録音が良かったために良く聴いた懐かしのアルバムなのである。今Amazonで探してみると、まだこのアルバム販売していますね、クラシックものはなかなか長生きです。

 これを聴いてみると解りますが、クラシック・ヴァイオリン・ソナタと言えどもなかなか熱い演奏に惹かれます。非常にダイナミックであると同時に、ヴァイオリンの美しさ、ピアノの美しさもきちっと備えていて良いと言うところですが、特にクラシックですから多くの演奏家のものに接することが出来ますが、特にこの前橋ものは熱いですね。

 前橋汀子は1943年生まれですから、現在は既に七十歳を超えてデビュー50周年も既に経過しているバイオリニスト。17歳にして当時のソ連サンクトペテルブルグ音楽院に留学している。2004年日本芸術院賞受賞、2007年エクソンモービル音楽賞受賞、2011年紫綬褒章受章。

 しかしいずれにしてもこれはクラシックのヴァイオリン・ソナタであって、この晩秋に突入している今にして、なかなかシーズンを感ずるには良い気分で聴いているのである。
 なお、このアルバムは更に日本では一番愛されている第5番へ長調作品24「スプリング(春)」も収録されていて、まさに典型的なベートーヴェンものと言って良い物です。

(参考)

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2015年11月22日 (日)

映画 時代劇回顧シリーズ (7) 勝新太郎「座頭市物語」  -私の映画史(21)-

一世を風靡した勝新太郎の”座頭市シリーズ”

 1960年代前半に東映は既に時代劇に精細を欠き”任侠路線”に主なるところは切り替え、そこに来て1966年中村錦之助退社で時代劇は打ち切られた。一方大映は市川雷蔵の1963年”眠狂四郎シリーズ”と1962年「座頭市物語」をヒットさせ、その後1973年「新座頭市 笠間の血祭り」まで勝新太郎の”座頭市シリーズ”は25作と連続ヒットさせた。しかしその大映も1969年に市川雷蔵の死去などにより一次の華々しさは消え、なんと1971年は倒産している。
 しかしその座頭市は、勝プロによって1989年には勝新太郎が自らのメガフォンをとって「座頭市」26作目を制作した。

大映映画 勝新太郎「座頭市物語」
                         (1962年公開)

  • B
    企画:久保寺生郎
    原作:子母沢寛
    脚本:犬塚稔
    監督:三隅研次
    撮影:牧浦地志
    録音:大谷巌
    美術:内藤昭
    照明:加藤博也
    音楽:伊福部昭
  •  (キャスト)
    座頭市:勝新太郎
    平手造酒:天知茂
    おたね:万里昌代
    飯岡助五郎:柳永二郎
    笹川繁造:島田竜三
    松岸の半次:三田村元
    飯岡の乾分・猪助:中村豊
    飯岡の乾分・蓼吉:南道郎
    飯岡の乾分・政吉:千葉敏郎

     あの時代劇映画に新風を吹き込んだ勝新太郎の「不知火検校」から発展したという座頭市シリーズ。その第一作が1962年に公開されたのがこの「座頭市物語」であった。これもシリーズとして作られたのではなく、大ヒットでこの後次々と制作されるに至ったもの。

    Photo_2
     もともとこの座頭の市というのは、子母澤寛が雑誌「小説と読物」へ1948年に連載した「ふところ手帖」の一編「座頭市物語」が原作だという。しかしこの原作の座頭市像と映画ではかなり違いがあって、この映画にみる座頭市像は、脚本の犬塚稔や監督の三隅研次、そして勝新太郎によって作られたモノと言ってよいようだ。
     同じめくらと言っても、不知火検校のような悪人像で無く、世間からはまともに相手にされない者の生き様を描いたのであり、そんな中でのしぶとさとしたたかさ、そしてその強さには感服する。
     しかし、これはハンディを背負った人間の哀歌でもある。万里昌代演ずるおたねとの関係も決して対等に相対すことの出来ない市の一歩退いた哀しさを描いているのである。
     そして天知茂の平手造酒と勝新の座頭市との全く異なったタイプの対比とその運命の流れがこの映画では良いですね。いずれにしても人間ドラマなんですね。
     やっぱりヒットの要因は、盲目の市の瞬速の居合い斬りの迫力、そして仕込み杖・逆手刀殺法がお見事だったことでしょうね。それに人情味溢れた物語には、やっぱり痺れたんです。

    Photo_4
     この後、このシリーズは、次第に市の不気味さとスーパー・マン的強さを見世物に観衆を沸かせるシリーズとなって行くのであるが・・・・。
     最大のヒットは1970年の第20作「座頭市と用心棒」でした。人気の三船敏郎=用心棒を登場させたのには、ファンも驚きだった。しかも嵐寛寿郎までも登場して脇を固めた。これがこのシリーズの絶頂期と言って良いのであろう。

     勝新太郎は当時別に映画「悪名」「兵隊やくざ」などもヒットさせていたが、やっぱりこの座頭市は群を抜いて人気があり、彼の俳優生活の看板にもなったのであった。

     そして時代は劇場公開映画から茶の間のテレビ時代と変化する時でもあって、後にテレビでも「座頭市」をシリーズ化して、茶の間を湧かしたのである。

    <映画 座頭市シリーズ>

    ①座頭市物語(1962年)
    ②続・座頭市物語(1962年)   
    新・座頭市物語(1963年)
    ④座頭市兇状旅(1963年)
    ⑤座頭市喧嘩旅(1963年)
    ⑥座頭市千両首(1964年)
    ⑦座頭市あばれ凧(1964
    ⑧座頭市血笑旅(1964 
    ⑨座頭市関所破り(19641230日)
    ⑩座頭市二段斬り(196543日)
    ⑪座頭市逆手斬り(1965918日)
    ⑫座頭市地獄旅(19651224日)
    ⑬座頭市の歌が聞える(196653日)
    ⑭座頭市海を渡る(1966813日)
    ⑮座頭市鉄火旅(196713日)
    ⑯座頭市牢破り(1967812日)
    ⑰座頭市血煙り街道(19671230日)
    ⑱座頭市果し状(1968年810日)
    ⑲座頭市喧嘩太鼓(19681228日)
    ⑳座頭市と用心棒(1970年115日)
    ㉑座頭市あばれ火祭り(1970812日)
    ㉒新座頭市・破れ!唐人剣(1971113日)
    座頭市御用旅(1972115日)
    ㉔新座頭市物語・折れた杖(197292日)
    ㉕新座頭市物語・笠間の血祭り(1973421日)
    座頭市(198924日)

    (参考)

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    2015年11月18日 (水)

    企画ものの恩恵 :リッチー・バイラーク Richie Beirach 「BALLADS Ⅱ」

    歓迎: プライスダウン、デジタルリマスター で登場

          <Jazz> 
              RICHIE BEIRACH 「BALLADS Ⅱ」
              Sony Music / JPN / SICJ98 / 2015

    Ballads2

       Piano : Richie Beirach
        Recorded at Masonic Temple, New York City, Jan. 20 & 21,1987

     久々に企画モノの恩恵を受けている。リッチー・バイラークRichie Beirach(1947年、ニューヨーク生まれ)と言えば、私の最も愛するジャズ・ピアニストの中の一人であるが、特に彼のソロ・アルバムには過去には何度となく感動を受けてきた。

     (参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat57671441/index.html

    Richie_beirach2
     ところがここで紹介する1987年「Ballad Ⅱ」は手元に欠になっていてため、今回のSonyの名盤・レア盤をプライスダウン、デジタルリマスター盤サービスの”Jazz collection 1000”企画で手に入れることになった。いっやー、こうした企画は大歓迎ですね。それは音質のかなりの向上があることだけでも快感であるが、廉価であることも何に付けても大歓迎なのである。

     過去に「Hubris」、「BALLADS」、「JAZZ ADAGIO」、「Live in Japan」、「Impression of Tokyo」などなどソロ・アルバムに魅了されていたのだが、 そもそも彼のピアノ・ソロ・アルバムは人気があるためか、過去に20枚という数に上っている。
      この「BALLADS Ⅱ」「BALLADS」」が好評にて、日本CBSソニーの依頼によってニュー・ヨークにて録音されたものだった。

    Ballads2list
     内容は、オリジナルは4曲、スタンダードやカヴァー10曲という構成。それが素晴らしく音が改良している。
     スタートの”My Funny Valentine”での澄んだ美しい音のピアノの響きには、当然彼の技量によるところは大きいが、それを生かした録音とCD作成技術の向上によって素晴らしい盤になっていて、背筋が寒くなるほどである。そして更にこの曲自身のバイラークの解釈による旋律の美しさも屈指の出来だ。
     3.、6.、9.、12.の4曲がオリジナルだが、このアルバムに登場するものは過去のスタンダード曲として愛されているものに負けない美旋律を聴かせる。もともとバイラークはクラシックの教育もしっかり受けているところからか、その音楽的な評価も高いのは周知のところだ。

     しかし過去の名盤を、このようにリマスターにより音の改良がなされると言うことは、大歓迎である。今ここにある過去の盤「BALLADS」と聴き比べると明らかに改善しているのが解る。
     そしてその上にこのように廉価でのサービス提供を盛んにしてもらえれば、近年のCDの販売低下の寒い時代には、一つの開けた道として意義あるのではないかと、ちょっとこちらの都合のみ考えているが、実のところはどうなんでしょうかね。

    (参考視聴)

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    2015年11月14日 (土)

    アダム・バウディフ&ヘルゲ・リエン・トリオAdam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」

    トラディッショナル・ジャズ・ヴァイオリンとピアノ・トリオの描く不思議なカルテットの世界

    <Jazz, Traditional>

          Adam Bałdych & Helge Lien Trio 「Bridges」
           ACT Music / Germany / 9591-2 / 2015

    Bridges

    Adam Bałdych (vn)
    Helge Lien (p)
    Frode Berg (b)
    Per Oddvar Johansen (ds)

    Recorded by Klaus Scheuermann at Hansa Studio, Berlin, March 13-15, 2015

    Adambaldych_h_l_trio
     ポーランドのトラッドやフォークの因子を持って創造的ミュージックを展開するジャズ・ヴァイオリニストのアダム・バウディフとノルウェーのヘルゲ・リエン・トリオとの共演作品の登場。
     共演と言っても、あくまでも主としてアダム・バウディフの曲によって主導するアルバムで、ヘルゲ・リエンはサポートと言って良いでしょう。若くしてこうしたヴァイオリニストがいることだけでも驚きだが、それにどんな関係にて成立したのか解らないが、ヘルゲ・リエン・トリオがこれ又絶大な効果を上げていて、現代音楽とトラッドとジャズ・ピアノ・トリオの一体化によるまさに不思議な世界が聴かれる。

    Bridgeslist スタート曲がアルバム・タイトルの”Bridges”、この曲でこのアルバムの世界が見えてくる。とにかくトラッドといってよいヴァイオリンの技巧的な音と調べ、そしてあのヘルゲ・リエンの叙情的なピアノがそれに協調して美しい世界を展開。しかしそれは我々の馴染んでいる世界とは遙かに離れた異世界。当然私はこのアダム・バウディフという人の演奏と描く世界を知るのは初めてなので、いやはやこれが彼の創造の世界なのかと初聴きの興味で聴き入ってしまった。
      ”Requiem”はさすがに哀愁そのもの。何故か北欧の自然をイメージしてしまう。
     ”Karina”では、ヘルゲ・リエン・トリオならではの北欧トリオが生きている。
     そしてACT Music は相変わらず良い録音盤を提供している。ここでもヴァイオリンとピアノの澄んだ音色が素晴らしい。この音があってこそこの世界が迫ってくるのだ。

    Adambaldych
     アダム・バウディフは2011年のベルリン・ジャズ・フェスティバルでセンセーショナルなデビューを飾ったポーランド出身の目下30歳前後の若きヴァイオリニスト。バークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークをベースに活動しているらしい。2012年にラーシュ・ダニエルソンらと1stアルバムをリリースしている(Adam Bałdych & Baltic Gang「Imaginary Room」(ACT/ACT9532/2012))。
     彼のこのトラッディッショナルな世界はポーランドの民族音楽が基礎にあるのかそのあたりはよく知らないが、かなり好みも別れるところと思うが、一度は聴いておいて損は無い。
     ただ、さすがにヘルゲ・リエンの尖った角がなく、力みも無く、そして優雅にして繊細な演奏が聴き応えある。そしてここでは彼の持ち合わせている北欧の叙情性と前衛的なセンスが貢献しているのだろう。実はこれはヘルゲ・リエンに引きつられて購入したアルバム。いずれにしても彼のトリオの活動の一つの世界として位置づけて聴いたと言ったところだ。

    (視聴)

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    2015年11月10日 (火)

    ゴンザロ・ルバルカバGonzalo Rubalcaba のピアノ・ソロ・ライブ・アルバム「Faith」

    優しさのメロディーに単に浸るという甘さは無い
     ~これぞルバルカバの
    描くミュージック空間~

       <Jazz>
                Gonzalo Rubalcaba Live 「Faith」
           5passion LIC / USA / 040232013621 / 2015

    Faithliveblog

     コンザロ・ルバルカバについては、、彼のピアノ・プレイの超越した技巧には定評があるところだが、つい最近のリリース・アルバムは、惜しくも我々の世界から去ってしまったチャーリー・ヘイデンとのデュオ作品「TOKYO ADAGIO」が話題になったところだ(参照:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/tokyo-adagio-57.html)。そしてここに来て久々にカヴァーとオリジナル曲のソロ・アルバムにお目にかかることが出来た。

    Disc 1
    1. Derivado / Maferefun
    2. Improvisation
    3. Con Alma
    4. Blue in Green
    5. Yolanda
    6. Joao

    Disc 2
    1. El Cadete Constitucional
    2. Preludio Corto No.2 (Tu Amor Era Falso)
    3. Joan
    4. Faro
    5. Imagine

    Gr2

    Solo_2 しかし考えてみると、私は、彼のソロ・ピアノ・アルバムはしっかりと聴いてこなかったため、このアルバムは実は興味津々といっところだったのだ(9年前にソロ・アルバム「Gonzalo Rubalcaba Solo」がある)。若い若いと思っていたが、彼は1963年5月27日キューバ、ハバナ生まれということだから、今年には50歳を超えたところで、いっやーー、まさに近年は絶頂期と言ってもいいと思う。
     そしてもともと技巧派のピアニストとしての評価が高かった訳で、ハバナの音楽学校でクラシックを学んだという実力派であり、グラミー賞の受賞経験もある訳で、彼のジャズ・ピアノ界における存在は既に確固たるところにある。そんな意味でもこのソロ・アルバムを聴いておきたかったというところなのである。

    Gr1 さてこのアルバムは2枚組のライブものである。
     まず1枚目(Disc 1)のそのオープニング曲”Derivado / Maferefun”は、硬質の打鍵音からスタート。なるほど一撃にして会場を集中させるにふさわしい方法論だ(ライブでは実際にこの曲からスタートしたかどうかは知らないのだが)。そしてメロディー中心の曲展開でなく、かなり技巧と音の余韻を生かした空間に絵を描くような演奏内容と言っていいだろう。残念なのは、丁度その空間に浸ったところに曲が終了すると拍手が入ることだ。急に現実に戻されてしまうところだ。ライブものと言えども、この拍手は省いて欲しいところだった。
     2曲目”. Improvisation ”は、やはり題名そのものの即興曲。短く纏めてあるからというわけでは無いが、これはそう注目するところでも無い。
     3曲目 ”Con Alma ”、4曲目” Blue in Green ”、5曲目”Yolanda ”と聴いていくが、流麗で美しいメロディ・ラインがふと流れるかと思いきや・・・・・その世界をたっぷりと言う甘さは無く、彼の澄んだピアノの音が次には異空間に導くのだ。そのあたりのテクニックは相当に計算されたスピード感と空間を漂う感覚とが交互に襲ってきて静かな中にも圧倒される。
     続く”Joao ”でも同様で1枚目は終了する。

     そして2枚目(Disc 2)に流れ込んで、浮かれリズムの美旋律が顔を覗かせるが、しかしここでもやや不安な影のある美の世界は、聴く者に簡単には安堵などは与えてくれない。このパターンはDisc1と一向に変わらない。とくに音と音との間のとり方と音の強弱と美しさの混在は絶妙で、少しでも気を休めてくれないといったところ。そしてよく演奏される彼独特の”Imagine ”で全てを納める。なかなか一筋縄に行かないゴンザロ・ルバルカバのソロであった。

    (参考視聴)

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    2015年11月 7日 (土)

    映画 時代劇回顧シリーズ(6) 市川雷蔵「眠狂四郎 女妖剣」   -私の映画史(20)-

    1960年代の多様な映像時代、遂にエロティシズムeroticismの登場

     映画の下降線、そして更に時代劇の下降線に入った60年代。又社会も多様化して、映画に求めるモノも多様化した。
     時代劇の東映は、その線を繋ぎながらも人気の出てきた”任侠路線”に次第にシフトしてゆく。

     そんな中で華の50年代のスター中村錦之助は「関の彌太っぺ」「沓掛時次郎 遊侠一匹」と時代劇任侠路線と「反逆児」のような戦国武将ものを、三船敏郎は「椿三十郎」、「侍」など浪人モノなどで、まだまだそれなりの興行成績を上げていた。しかしここに剣術とエロティシズムとの新路線として市川雷蔵の「眠狂四郎シリーズ」、又勝新太郎のかっては考えられなかった兇状持ちで盲目の侠客という「座頭市シリーズ」が成功する。


    大映映画 市川雷蔵「眠狂四郎 女妖剣」 (1964年公開)
           監督:池広一夫、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
            出演:市川雷蔵、藤村志保、久保菜穂子、城健三朗、春川ますみ、根岸明美

    Photo  「眠狂四郎」というのは、虚無主義なる浪人モノの世界を描くを得意とした柴田錬三郎の昭和31年5月から「週刊新潮」に連載された「眠狂四郎無頼控」(読切連作の形で書きつがれた狂四郎シリーズは、以後約二十年にわたって続いたから人気の度合いも解るところ)からのもの。

     映画化された中でも人気は1963年から1969年までの市川雷蔵で描いた大映映画12作。市川雷蔵の当たり役となった。
     実は1950年代にも東宝であの鶴田浩二で3作の「眠狂四郎」(1956-1958年)があるがあまり話題にならなかったモノ。
     又市川雷蔵の後に松方弘樹で続けたが当たらず(1969年2作)というところだった。雷蔵と松方ではちょっとイメージが違いすぎたのだろう。

    Photo_2 この市川雷蔵の眠狂四郎シリーズと言えども、第一作(1963年)は興行成績は不振。二作目は良く出来ていた割には、やはり売れず。三作目はボチボチであったが、しかしこの四作目からのエロティシズムの濃厚登場で人気沸騰。
     この4作目「眠狂四郎 女妖剣」では、久保菜穂子、春川ますみ、根岸明美ほか、藤村志保までもエロティシズムの役柄を披露しているし、物語としては、眠狂四郎の生まれの秘密に迫り、転びバテレンと武士の娘との間に生まれた宿命を教える。

     虚無の剣士の生き様を通して、暦年の時代劇の正義の剣の姿ではなく、武士の魂をも描くのでは無い。眠狂四郎は女性に対しては犯すこともあれば、凶器としての剣によって斬ることも容赦しない。そして虚無の意識と孤独感を更に深めて行く。こんな姿は60年代の日本の裏も表もある高度成長社会には見事に受け入れられたのだった。
     凶器の剣の円月殺法は相手を惑わす剣法で、その姿は見るものにとっては美しい。この4作目から狂四郎の円月殺法のシーンで初めてストロボ撮影が用いられ、剣の流れを見事に描写した。この手法はこれ以降の作品で使われるようになった。

    Photo_3  狂四郎の素性の説明があったこと、この後続くエロティシズムのスタートであったこと、そして円月殺法の描写が確立したこと、そして何よりもヒットしたことなどから、この作品が市川雷蔵の眠狂四郎のスタートとも言える作品であった。
     柴田錬三郎に言わせると”剣豪としての姿で無く、現代にある罪悪を背負った狂四郎という主人公が、ある意味では人としての感覚を抑えざるを得ない状況の中で、内面的には苦しみながらニヒルに生きていく姿を描いた”と言うことであったのだろう。
     
     つまり時代劇というものを背景にしてはいるが、最も社会の歪みが顕著になりつつある当時の60年安保闘争以降の日本社会の中で、現実的にはあり得ない人間像に思いを馳せた。こんな近代的な感覚を盛り込んだところに多くの関心と支持を得た作品になった。

    (市川雷蔵の「眠狂四郎」全作品)

    1. 眠狂四郎殺法帖(1963年11月2日公開)  
          監督:田中徳三、脚本:星川清司、音楽:小杉太一郎
          共演:中村玉緒、城健三朗、小林勝彦、真城千都世
    2. 眠狂四郎勝負(1964年1月9日公開)
          監督:三隅研次、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
          共演:藤村志保、高田美和、久保菜穂子、加藤嘉、須賀不二男
    3. 眠狂四郎円月斬り(1964年5月23日公開)
          監督:安田公義、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
          共演:浜田ゆう子、丸井太郎、成田純一郎、毛利郁子
    4. 眠狂四郎女妖剣(1964年10月17日公開) 
          監督:池広一夫、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
          共演:藤村志保、久保菜穂子、城健三朗、春川ますみ、根岸明美
    5. 眠狂四郎炎情剣(1965年1月13日公開)
          監督:三隅研次、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
          出演:中村玉緒、姿美千子、島田竜三、西村晃、中原早苗
    6. 眠狂四郎魔性剣(1965年5月1日公開)
          監督:安田公義、脚本:星川清司、音楽:斎藤一郎
          出演:嵯峨三智子、長谷川待子、須賀不二男、明星雅子、稲葉義男
    7. 眠狂四郎多情剣(1966年3月12日公開)
          監督:井上昭、脚本:星川清司、音楽:伊福部昭
          出演:水谷良重、中谷一郎、五味龍太郎、毛利郁子
    8. 眠狂四郎無頼剣(1966年11月9日公開)
          監督:三隅研次、脚本:伊藤大輔、音楽:伊福部昭   
          出演:天知茂、藤村志保、工藤堅太郎、島田竜三、遠藤辰雄
    9. 眠狂四郎無頼控 魔性の肌(1967年7月15日公開)
          監督:池広一夫、脚本:高岩肇、音楽:渡辺岳夫
          出演:鰐淵晴子、成田三樹夫、久保菜穂子、金子信雄、遠藤辰雄
    10. 眠狂四郎女地獄(1968年1月13日公開)
          監督:田中徳三、脚本:高岩肇、音楽:渡辺岳夫
          出演:高田美和、田村高廣、水谷良重、小沢栄太郎、伊藤雄之助
    11. 眠狂四郎人肌蜘蛛(1968年5月1日公開)
          監督:安田公義、脚本:星川清司、音楽:渡辺宙明
          出演:緑魔子、三条魔子、川津祐介、渡辺文雄、寺田農
    12. 眠狂四郎悪女狩り(1969年1月11日公開)
          監督:池広一夫、脚本:高岩肇、宮川一郎、音楽:渡辺岳夫
          出演:藤村志保、江原真二郎、久保菜穂子、松尾嘉代、小池朝雄

    (参考映像) 「眠狂四郎」

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    2015年11月 4日 (水)

    デニース・ドナテッリDenise Donatelli のニュー・アルバム「Find a Heart」

    堂々たるヴォーカルを披露するデニース

       <Jazz>
               DENISE DONATELLI 「Find a Heart」
               SWANT RECORDS / USA / SCD 2150 / 2015

    Find2
    2014年5月6日,7日,13日 録音

    Denise Donatelli(vocal)
    Geoffrey Keezer(piano)
    Leonardo Amuedo(guitar)
    Carlitos Del Puerto (bass)
    Marvin “Smitty” Smith(drums)

    Walter Rodriguez (percussion),Chris Botti(trumpet),Bob Sheppard (tenor saxophone),Christine Jensen (soprano saxophone),Michael Thompson (guitar),Giovanna Clayton (cello),Alma Fernandez (viola),Matt Funes (viola),Darrin Mccann (viola),Yutaka Yokokura (background vocals),Sy.Smith (background vocals),Julia Dollison (backround vocals)


     大人のジャズ・ヴォーカルものとして、デニース・ドナテッリもここに来て5作目のニュー・アルバムを登場させたので取り上げる(彼女は2005年に1stアルバムデビュー~末尾のDiscography参照)。
     西海岸を拠点として活動している彼女だが、今作もプロデュースそしてアレンジ(ミュージカル・ディレクター)は、NYを中心に活躍しているピアニストのジェフリー・キーザーGeoffrey Keezerが担当している。そしてギターはブラジルのLeonardo Amuedoが、曲の一味アップに貢献。

    (参照)   前作 ”Soul Shadows” http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/denise-donatell.html

    Denisedonatelli4w
    (Tracklist)
    1. Big Noise, New York (D.Fagen / M. Clements)
    2. Love and Paris Rain (R.Ferrante/W.Kennedy/ B.Russell)
    3. Spaced Out (En Babia) (G.Keezer / S.Marder)
    4. Practical Arrangement (R.Mathes / G.Sumner)
    5. Find a Heart (J.Lubbock)
    6. Not Like This (D.Crosby/M.Eaton/J.Raymond)
    7. Eyes That Say I Love You(D.Beck)
    8. In This Moment (B.Childs /D.Donatelli / S.Marder)
    9. Troubled Child (S.Perru /J.Cain /N.Schon)
    10. Midnight Sun (S.Burrke /L.Hampton / J.Mercer)
    11. Day Dream (B.Strayhorn / E.Ellington / J.LaTouche)

     オープニング” Big Noise, New York ”は、圧巻のジャズ。このあたりは私的には尻込みするのだが、2曲目の”Love and Paris Rain ”では、ギターがなんとなくラテン・ムードを醸し出して、彼女の落ち着いたヴォーカルでほっとするスタートだ。
     4曲目”Practical Arrangement ”にくると、彼女のヴォーカルのバックにミュート効果のトランペット、そしてパーカッションが曲の中心に登場して、ようやく私の期待するムードが盛り上がる。
     アルバム・タイトル曲の5曲目” Find a Heart ”は、ピアノ、ギターが交互に演奏の中心になって熱演し、ドラムス、パーカッション、バック・コーラスが奮戦。次第に彼女のヴォーカルも盛り上がる。
     そして6曲目” Not Like This”になり、このアルバムでは珍しくギターのみのバックで彼女はしっとりと歌い上げる。

     とにかくスウィング感と、ラテン・ムードとゴージャス・バンド・ジャズの展開と、多彩そのもののアルバムで、そこに大胆にしてマイルドなデニースのヴォーカルと言うことで、ジャズを楽しむというには事欠かない。

    (参考)デニース・ドナテッリの過去のアルバム(Discography)

    ④‘Soul Shadows’ (2012) received a GRAMMY® Nomination
    ③‘When Lights are Low’ (2010) received 2 GRAMMY® Nominations
    ②‘What Lies Within’ (2008)
    ①‘In the Company of Friends’ (2005)

    (視聴)

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