映画 時代劇回顧シリーズ (7) 勝新太郎「座頭市物語」 -私の映画史(21)-
一世を風靡した勝新太郎の”座頭市シリーズ”
1960年代前半に東映は既に時代劇に精細を欠き”任侠路線”に主なるところは切り替え、そこに来て1966年中村錦之助退社で時代劇は打ち切られた。一方大映は市川雷蔵の1963年”眠狂四郎シリーズ”と1962年「座頭市物語」をヒットさせ、その後1973年「新座頭市 笠間の血祭り」まで勝新太郎の”座頭市シリーズ”は25作と連続ヒットさせた。しかしその大映も1969年に市川雷蔵の死去などにより一次の華々しさは消え、なんと1971年は倒産している。
しかしその座頭市は、勝プロによって1989年には勝新太郎が自らのメガフォンをとって「座頭市」26作目を制作した。
大映映画 勝新太郎「座頭市物語」
(1962年公開)
企画:久保寺生郎
原作:子母沢寛
脚本:犬塚稔
監督:三隅研次
撮影:牧浦地志
録音:大谷巌
美術:内藤昭
照明:加藤博也
音楽:伊福部昭
(キャスト)
座頭市:勝新太郎
平手造酒:天知茂
おたね:万里昌代
飯岡助五郎:柳永二郎
笹川繁造:島田竜三
松岸の半次:三田村元
飯岡の乾分・猪助:中村豊
飯岡の乾分・蓼吉:南道郎
飯岡の乾分・政吉:千葉敏郎
あの時代劇映画に新風を吹き込んだ勝新太郎の「不知火検校」から発展したという座頭市シリーズ。その第一作が1962年に公開されたのがこの「座頭市物語」であった。これもシリーズとして作られたのではなく、大ヒットでこの後次々と制作されるに至ったもの。
もともとこの座頭の市というのは、子母澤寛が雑誌「小説と読物」へ1948年に連載した「ふところ手帖」の一編「座頭市物語」が原作だという。しかしこの原作の座頭市像と映画ではかなり違いがあって、この映画にみる座頭市像は、脚本の犬塚稔や監督の三隅研次、そして勝新太郎によって作られたモノと言ってよいようだ。
同じめくらと言っても、不知火検校のような悪人像で無く、世間からはまともに相手にされない者の生き様を描いたのであり、そんな中でのしぶとさとしたたかさ、そしてその強さには感服する。
しかし、これはハンディを背負った人間の哀歌でもある。万里昌代演ずるおたねとの関係も決して対等に相対すことの出来ない市の一歩退いた哀しさを描いているのである。
そして天知茂の平手造酒と勝新の座頭市との全く異なったタイプの対比とその運命の流れがこの映画では良いですね。いずれにしても人間ドラマなんですね。
やっぱりヒットの要因は、盲目の市の瞬速の居合い斬りの迫力、そして仕込み杖・逆手刀殺法がお見事だったことでしょうね。それに人情味溢れた物語には、やっぱり痺れたんです。
この後、このシリーズは、次第に市の不気味さとスーパー・マン的強さを見世物に観衆を沸かせるシリーズとなって行くのであるが・・・・。
最大のヒットは1970年の第20作「座頭市と用心棒」でした。人気の三船敏郎=用心棒を登場させたのには、ファンも驚きだった。しかも嵐寛寿郎までも登場して脇を固めた。これがこのシリーズの絶頂期と言って良いのであろう。
勝新太郎は当時別に映画「悪名」、「兵隊やくざ」などもヒットさせていたが、やっぱりこの座頭市は群を抜いて人気があり、彼の俳優生活の看板にもなったのであった。
そして時代は劇場公開映画から茶の間のテレビ時代と変化する時でもあって、後にテレビでも「座頭市」をシリーズ化して、茶の間を湧かしたのである。
<映画 座頭市シリーズ>
①座頭市物語(1962年)
②続・座頭市物語(1962年)
③新・座頭市物語(1963年)
④座頭市兇状旅(1963年)
⑤座頭市喧嘩旅(1963年)
⑥座頭市千両首(1964年)
⑦座頭市あばれ凧(1964年)
⑧座頭市血笑旅(1964年)
⑨座頭市関所破り(1964年12月30日)
⑩座頭市二段斬り(1965年4月3日)
⑪座頭市逆手斬り(1965年9月18日)
⑫座頭市地獄旅(1965年12月24日)
⑬座頭市の歌が聞える(1966年5月3日)
⑭座頭市海を渡る(1966年8月13日)
⑮座頭市鉄火旅(1967年1月3日)
⑯座頭市牢破り(1967年8月12日)
⑰座頭市血煙り街道(1967年12月30日)
⑱座頭市果し状(1968年8月10日)
⑲座頭市喧嘩太鼓(1968年12月28日)
⑳座頭市と用心棒(1970年1月15日)
㉑座頭市あばれ火祭り(1970年8月12日)
㉒新座頭市・破れ!唐人剣(1971年1月13日)
㉓座頭市御用旅(1972年1月15日)
㉔新座頭市物語・折れた杖(1972年9月2日)
㉕新座頭市物語・笠間の血祭り(1973年4月21日)
㉖座頭市(1989年2月4日)
(参考)
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