ドリーム・シアターDream Theaterのニュー・アルバム 「Astonishing」
壮大なテーマをロック・オペラで・・・・だが賛否両論
<Progressive Rock, Progressive Metal, Neo Progre>
DREAM THEATER 「Astonishing」
Roadrunner / JPN / WPCR-17071 / 2016
John Petrucci – guitar, backing vocals
John Myung – bass guitar, chapman stick
James LaBrie – lead vocals
Jordan Rudess – keyboards, continuum
Mike Mangini – drums, percussion
<DISC-1>
1.Descent Of The NOMACS /2.Dystopian Overture /3.The Gift Of Music/4.The Answer /5.A Better Life /6.Lord Nafaryus /7.A Savior In The Square /8.When Your Time Has Come /9.Act Of Faythe /10.Three Days /11.The Hovering Sojourn /12.Brother, Can You Hear Me? /13.A Life Left Behind /14.Ravenskill /15.Chosen /16.A Tempting Offer /17.Digital Discord /18.The X Aspect /19.A New Beginning /20.The Road To Revolution
<DISC-2>
1.2285 Entr'acte /2.Moment Of Betrayal /3.Heaven's Cove /4.Begin Again /5.The Path That Divides /6.Machine Chatter /7.The Walking Shadow /8.My Last Farewell /9.Losing Faythe /10.Whispers On The Wind /11.Hymn Of A Thousand Voices /12.Our New World/13.Power Down /14.Astonishing
前作『Dream Theater』から2年半ぶり、いっやーーやりましたねぇ~~。なんと2枚組2時間10分の超大作。ロックもここまで来れば本物だ!と、言いたいところだが・・・・ポートノイからマンジーニに変わっての第3作目、やっぱりと言うところか?、賛否両論の嵐。
そりゃ~そうですね、あのドリーム・シアターの世界であるヘヴィにして複雑なシンフォニック・メタルのこれでもかこれでもかと畳み込んでくるバトルとも言える曲展開は確かに影を潜め、オーケストラをバックにしてどちらかというとシンフォニックな音構成で、メロディの洪水という展開はまさにオペラ。
これはかっての彼らのプログレ・メタルの世界とは明らかに異なっている(と言っても、時に彼ららしいハード・メタル・シンフォニック・ロックの様も展開して見せてますが・・・)。
基本的にはポートノイから解放されたジョン・ペトルーシのアイデアからスタートしているようで、作詞はそのペトルーシ、作曲はペトルーシとジョーダン・ルーデスが主として任を果たしての作品のようだ。そして更にオーケストラが重要な役割を果たしていてデイヴィッド・キャンベルによってアレンジされ作り上げられた(しかしこの延々34曲、ちょっと長すぎやしませんかね?、一時昼寝をしてもまだ十分聴けます(笑))。
更にラブリエのヴォーカルも、前作ではちょっと引っ込んだ感もあったが、今作では全編通しての物語の展開があって、そこに登場する人物を全てカヴァーするという結構重要な役割を果たしている。そのため彼のヴォーカルもかなり丁寧に美しくと意識されたバラード調のものが多くを占める。それでも、時にメタリックなロックの展開もみせて、例のハイトーンの張り上げ声も聴けるところがないではない。
いや~しかしそれにしても、えらいところまで発展させたものですね。このスケールの大きさは見事です。ポートノイ派にすれば納得作とはいかないとするだろう事は十分解るところだが、その為今作には頭からの否定派もいるのだ。しかし私は結構これはこれいけると実は思っている。賛否両論、これは結構なことである。
まあ二十数年前の『Images and Words』時代に拘るのも解るが、もともと私は当時のキーボードのケヴィン・ムーアのムードも好きだったし、今作のこうしたアップテンポの曲は少なめであることに淋しさは無いでは無いが、これはこれでオーケストラ・サウンドと共に十分聴き込むところがあるので、今回は一つの流れの頂点として堪能して聴けると思っているのである。
さて、これをピンク・フロイドの『THE WALL』とオーバーラップして聴いているという輩もいるようだが、ロック・オペラということだけではそうした世界にあることは解るが、私は全く異質のモノと思って聴いた。時にSE、人の声なども挿入して手法は真似とも思えるところもあるが、その洗練度はフロイドには及ばないし、そもそも曲の質が異なり、又テーマが全く異なっている。
このアルバムは、2285年アメリカ大北部帝国という設定の世界から、中世の帝国をオーバーラップさせた異次元の世界の物語であって、印象的にはかって流行したロールプレイゲームのような一面を持っている。しかしそこあるものは、ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズによる『THE WALL』に描く、現実社会に存在する多様な”壁”の問題と、自己の負の部分を吐露し、人間の深層心理に至ろうとしたモノとは全くの別物であって一緒にしない方がよい。
結論的には。ドリーム・シアターとしての今作は、彼らの持っている体質の一部を大々的にぶち上げた一つの作品として私は大いに評価したいのである。むしろ”何時も同じモノの化粧直し”よりは、むしろ”価値ある試みの大作”と言っておきたい(前作からちょっとそんなところも少し見えてはいましたが)。結論的にロック・ファンなら取り敢えずは聴いてみて欲しいと思っている。
(視聴)
* * * *
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コメント
前略、風呂井戸さま
実はこのアルバムも前から気になっていたのですが、口コミでは何かと言われていて、イマイチ購買意欲に欠けている状態です。
個人的にはオーケストラ抜きで、ギターとキーボードなどの壮大なオーケストレーションを期待していたのですが…
やはりテクニックのあるこの手のバンドは、一度はロック・オペラというものに挑戦してみたいのでしょうね。
今まで悩んできましたが、風呂井戸氏の言葉を信じて、聞いてみようかと思っています。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2016年2月24日 (水) 22時27分
プロフェッサー・ケイさん、こんばんわ。
ちょっと責任が大きくなってしまいましたね(笑)。(心配です)
それでも、聴きようによっては、このドリーム・シアターは疲れずにゆったり聴けると言っても良いかもしれません。
否定派も多いと思いますが・・・これはこれ、ちょっと長すぎて、若干盛り上がりを欠いてしまうとも言えますが・・・・、それでも彼らの一面は確実に感ずることが出来ます。持っていてよろしいのでは・・・・。
投稿: 風呂井戸 | 2016年2月24日 (水) 23時18分