チェロを操る シェイナ・タッカーShana Tucker のアルバム「 SHiNE」
オリジナリティーある『チェンバー・ソウル』の世界は・・・・・
<Jazz>
SHANA TUCKER 「SHiNE」
Impartmaint Inc. / JPN / RCIP-0230 / 2015
しかしジャズ界も多種多様な世界、このシェイナ・タッカーShana atucker という女性ミュージシャンも希有な存在って言って良いのだろう。とにかくチェロを操ってのシンガーソングライターだ。しかもそのチェロを演じては一流でクラシックの素養を持ちながら、彼女自身の奏法によってジャズにアプローチ。聴きようによってはフォークっぽく、ソウルの味付けと、はた又聴きやすいポップな面も持っていると言うのだ。
そしてこの作り出される音楽をして、自ら『チェンバー(室内楽)・ソウル』と称し、その独自のスタイルを推し進めている。又シンガーとしての実力とその魅力も十分というところで、チェロを弾きながら歌うという我が道を行くというスタイル。こうしたパターンに私は飛びつくということはあまりないのだが、友人からの紹介アルバムなのだ。もともとクラシック・チェロの楽曲は好きでよく聴いてきたこともあって興味をもった次第。
01. Intro
02. November
03. The Precious Ones
04. Just Go
05. Just a Moment
06. No Get-Back
07. Lazy Afternoon
08. A Secret That I Keep
09. Amazing Grace
10. Bow Out Gracefully
11. Repeat Again
12. Fast Lane
13. Shine
彼女のオリジナル曲が中心の構成。曲によってバンドの編成が変わっているが、彼女のチェロに、ピアノ、エレクトリック・ギター、ベース、ドラムスといったところに、女性のバッキング・コーラスが加わる。まあジャズ寄りの構成ですね。
又、彼女はチェロを単に弓による奏法に拘らず、ピツィカートは勿論、コル・レーニョその他かなり多様な操りを熟しているようだ。
彼女が歌い演ずる曲調を一口で表現するのは難しいが、やはり主体はソウルというところか?。声量は十分でかなり美声の持ち主。高音の伸びもいい。
M1.”Intro”は、ピアノ、ドラムスの流れが襲ってかなりコンテンポラリー・ジャズ的で面白いが、M2.”November”になって彼女のヴォーカルが入るとイメージは変わってソウルっぽい世界であることが解る。そこにチェロの調べが流れて不思議なと言うか聴き慣れない世界に引きずり込まれる。
そしてM2.M3.M4.と聴いて行くと、彼女の唄の巧さや声の質の良さがはっきり認識できて、これには多分お気に入りになる輩も出てくるのは解る。ソウル、フォーク調と言えば良いのか?、しかしどうもユーロ・ジャズ系を好む私にとっては、若干好むムードが違っている。
M7.” Lazy Afternoon”、M8.” A Secret That I Keep”は、なかなかJazzyでムードも私好み。このパターンが良いですね。
M9.”Amazing Grace”はクラシック・チェロの響きにピアノが落ち着いたメロディーを演じて、聴きようによってはトラッド的な雰囲気を感ずる曲で聴き惚れるところがある。
最後のアルバム・タイトル曲M13.”Shine”は、フォーク調の彼女のヴォーカルをしっかり聴かせる曲。
私にとっては、中盤から後半に好みの味が感じられた世界があった。
彼女はNYのロングアイランド出身で、”ジャズをルーツにしながらも、ジョニ・ミッチェルやトレイシー・チャップマン、ダイアン・リーヴスなどの系譜を継ぐ優れた女性シンガー・ソングライターにして、チェロ奏者としても一流というクラシックの素養も持つ多才なアーティスト”と紹介されている。
彼女の演ずるスタイルは、つまりモダン・ジャズではなく、フュージョンでもなく、フリー・ジャズ、ロフト・ジャズでもなく・・・・なかなか私の感覚では表現に困る。まあこれを彼女の言う『チェンバー(室内楽)・ソウル』という独自スタイルを構築しているところの姿なのだろう。このことはアーティストとしての生き様まで感じられるところである。
(視聴)
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コメント
こんにちは、お邪魔いたします。
そう言えば、チェロとjazzの組み合わせをあまり考えたことがなかったですね。
なかなかいいと思いましたよ。
投稿: jamken | 2016年4月17日 (日) 11時39分
jamkenさん、コメントどうも有り難うございます。
なかなか考えられない組み合わせだったもので驚きましたが、この「チェンバー・ソウル」という独自スタイルを構築して、ちゃんと弾き語りの演奏はお見事です。なかなかミュージシャンの目指すモノも奥深いですね。
投稿: 風呂井戸 | 2016年4月17日 (日) 17時54分
今はどうしているか不明ですが、チェロのハンク・ロバーツがジョーイ・バロン、ティム・バーンと組んだユニットは面白かったし、ボーカルを入れたバーズ・オブ・プレイも良かった。
N.Y.のニッティング・ファクトリー関係に変わったミュージシャンが多いと思います。ジャズの鈴木勲もたまにチェロを弾きますね。
投稿: Log | 2016年4月17日 (日) 19時47分
Logさん、こんばんわ。
いやはや、そうでしたね、ハンク・ロバーツがいましたね。でも私はその気で聴いてないんです。
私のジャズ系チェロで感動モノでは、このブログでもかって取りあげたのですが、深遠な世界を描くデヴィッド・ダーリングのチェロですね。彼のチェロはクラシックに通ずるところがあると思いますが、彼がピアニストのケティル・ビヨルンスタと組んでの世界(ECMからのリリース「The River」「The Sea」)は、異色の美学でした。
投稿: 風呂井戸 | 2016年4月18日 (月) 00時08分
どうもありがとうございます。
コメントを書いた直後に思い出しましたが、フリー系のトリスタン・ホンジンガーがいます。近藤等則とアルバムを出していました。
近藤は普通じゃないアーティストが好きらしく、二人旅をしていたギターのユージン・チャドバーンもかなり変わっています。
チェロの溝口肇は今も「世界の車窓から」の音楽をやっているんですかね?
投稿: Log | 2016年4月18日 (月) 06時12分
Logさん、いろいろとチェロ系には詳しいんですね。いやはやテレ朝日系列ですか?、長寿番組「世界の車窓から」の溝口肇まで出てきて・・・最近ちょっと見てないのですが。
トリスタン・ホンジンガーはベテランで名前は聞いてますが、まだ私にとっては未知の領域です。又機会をみてアプローチさせてください。
投稿: 風呂井戸 | 2016年4月18日 (月) 10時49分