ヴォルフェルト・ブレデロ-デ・トリオWolfert Brederode Trio「Black Ice」
静と思索を透明感ある演奏で・・・・
<Jazz>
Wolfert Brederode Trio 「Black Ice」
ECM / Germ / ECM 2476 4776462 / 2016
Wolfert Brederode (piano)
Gulli Gudmundsson (double bass)
Jasper van Hulten (drums)
Engineer: Stefano Amerio
Recorded July 7-9, 2015 at Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano
(Tracklist)
1. Elegia
2. Olive Tree
3. Bemani
4. Black Ice
5. Cocoon
6. Fall
7. Terminal
8. Conclusion
9. Curtains
10. Rewind
11. Bemani (var.)
12. Glass Room
13. Fall(var.)
これは、このところECMを愛する多くの輩が、ブログで取りあげているオランダのピアニストのヴォルフェルト・ブレデロ-デWolfert Brederode(1974年生まれ)のトリオ作品だ。
彼に関しては実は私は詳しくはない。ところがタイミングよく、このトリオ・メンバーではないが、現在異色の女性ジャズ・ヴォーカリストのスザンヌ・アビュール Susanne Abbuehl のサポート役(ピアノ演奏)で来日ライブを行っていた。
会場は東京、横浜もあるが、新潟県上越市にある浄土真宗の浄興寺本堂でのライブに、これは面白いと私は興味を持って参加してきたのだ。ここにはピアノは立派な「Bøsendorfer」が、デンと構えていた。(ちょっと私の顔は隠してあるが、その時の彼とのツーショット(浄興寺本堂にて)2016.5.12)
とにかくECMから何枚かのアルバムをリリースしているスザンヌ・アビュールは、いずれ取りあげたいと思うが、スイス出身で広くヨーロッパで活躍し評価の高い女性歌手。前衛ジャズという範疇としてよいか、深遠にして思索的な世界を歌い上げ、異色の世界を構築する。そしてヴォルフェルト・ブレデロ-デは、彼女のECM作品「The Gift」、「Compass」、「April」などのアルバムで、ピアノ演奏面で支え、大きな役割を果たしてきた。又彼自身はECMには3枚のアルバムをリリースして来ている。そんな事で今回の彼女の来日公演にも彼が同行しているし、このような経験が、ここで取りあげたトリオ作品にも活きていることは間違いない。
これまでに、ブレデロ-デのアルバムは、カルテット編成でのアルバム「Currents」(2007年)、「Post Scriptum」(2011年)をECMからリリースしているが、この「Black Ice」は、ECMでは初のピアノ・トリオ作品。
リーダーのヴォルフェルト・ブレデロ-デは、ベーシストGudmondsson(アイルランド出身)とは1990年代に出会い、それ以後、フリー・インプロヴィゼーションから演劇のための音楽までコラボレーションは多く経験しているのだという。又ドラムスのJasper van HultenはGudmundssonと共に演奏活動をしてきている。そんな関係で出来上がったトリオであるようだ。
さて彼らのこのアルバムを聴くと、先ずはECMということもあってトルド・グスタフセンの作品と比較したくなる出来である。
落ち着いた世界が全編に流れ、透明感ある演奏によって静と思索と優しい旋律が漂ってくる。Gulli Gudmundssonのベースもピアノと負けて劣らず十分に聴かせる思索の余韻ある音で迫ってくる。ドラムスのJasper van Hultenはしっかりとバックでの世界作りに貢献して、シンバルの余韻には透明感ある情景を描く。
トータル・アルバム的流れでこの作品は作られていて。Gudmundsson作の1曲を除き、全てブレデローデのオリジナル曲。
彼らの描く世界は、究めてECM的といえばそうなのだが、トルド・グスタフセンとの違いも聴きどころ。若さの割にはこの落ち着きは何なんだろうと不思議にも思う。しかしこのトリオECM第一作は好評に受け入れられており、続いての第二作に流れていくのは間違いないと思うが、彼らがこれだけの世界に馴染んでしまうのか、それとももう少しアグレッシブな冒険的音も築くようになるのか、目下は未知数。いずれにしても私は大歓迎で今後を楽しみにしているところだ。
(試聴) ”Elgia” from 「Black Ice」
(参考視聴) ”Common Fields”
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コメント
ライヴに行かれたとのことで、うらやましいです。
彼はクァルテットも良かったけれど、やはり日本人にはピアノトリオで、って思うときがあります。たぶん好評だと思うので、次回もピアノトリオ作を期待してます。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年5月15日 (日) 11時12分
910さん、コメント・TB有り難うございます。
ECMに長年関心を寄せている工藤さんからみると、ニュー・ピアノ・トリオは頼もしい限りでしょうね。
しかしヨーロッパのミュージシャンは、国境を越えて、意気投合すればかなり自由にトリオを組んだりで・・・頼もしい限りです。
投稿: 風呂井戸 | 2016年5月15日 (日) 16時37分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございました。
ライブに行かれると,この人のピアノの本質が更につかめたのではないかと想像し,羨ましく思います。いずれにしても,本作はECMファンの心を鷲掴みにすること間違いなしですが,Tord Gustavsen,Marcin Wasilewski, Stefano Battaglia,Giovanni GuidiとEicherが囲い込む欧州ピアニストは皆凄いです。アメリカ側もVijay Iyerがいますし,いやはや素晴らしいです。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年5月15日 (日) 18時39分
中年音楽狂さん、コメント、TB有り難うございます。
昔は、私はECMと言えば、Keith Jarrettの世界が中心で、あまりその他に眼を向けなかったんですが・・・今や凄いですね。皆まだまだこれから円熟期で、楽しみがこれからに期待できて嬉しい限りです。そうそう私はおっしゃるアメリカ側のVijay Iyerが未消化で、丁度ご指摘頂いて良いチャンスです、少々聴き込んでみます(笑)。
投稿: 風呂井戸 | 2016年5月15日 (日) 20時49分
ベーシストはアイルランドではなくアイスランドの人です。ちなみにGudmundssonは厳密に言えば苗字ではなくGudmundの息子という意味です。
投稿: | 2017年3月 5日 (日) 11時34分