私の映画史(24) マカロニ・ウエスタンの懐かしの傑作「怒りの荒野 I GIORNI DELL'IRA」
マカロニ・ウエスタンのマカロニ・ウエスタンらしからぬ味
~「ガンマン十戒」と人間の生きる道~
<マカロニ・ウエスタン1967年作品>
伊/独 映画
「怒りの荒野 I GIORNI DELL'IRA(Days of Anger)」
監督:トニーノ・ヴァレリィ
脚本:エルネスト・ガスタルディ、トニーノ・ヴァレリィ
撮影:エンツォ・セラフィン
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ジュリアーノ・ジェンマ、リー・ヴァン・クリーフ、アンドレア・ボシック、ワルター・リラ、イヴォンヌ・サンソン
ロン・バーカーの小説から生まれたイタリア西部劇。
あの1964年のマカロニ・ウエスタン「荒野の用心棒」(セルジオ・レオーネ監督)の大成功から数年後(1967年)に生まれた作品。セルジオ・レオーネの助監督を務めたトニーノ・ヴァレリィの監督で、”マカロニ・ウエスタンらしからぬ残虐性を押え、人間性に迫った傑作”と私は思っている。
これまでにこのマカロニ・ウエスタンで重要俳優となったリー・ヴァン・クリーフLee Van Cleefと人気のジュリアーノ・ジェンマGiuliano Gemmaの共演がみものであった。
(物語)
スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は、売春婦の児。町の住人は彼を人間扱いしない。汚物回収をしながら暮らすスコットは、金を貯めていつか拳銃を手に入れ、ガンマンとして成り上がり皆を見返すときを夢見ていた。ある日、町にタルビー(リー・ヴァン・クリーフ)という凄腕のガンマンが現れた。スコットを認めてくれた彼にすっかり心酔し弟子入りする。そして銃の手ほどきを受けながら「ガンマン十戒」をたたき込まれ、片腕として活躍する。しかし、師のタルビーの非情さに疑問を持ち不信感を抱くようになる。そこに恩人であるマーフをタルビーが射殺した時、スコットの怒りはついに爆発。タルビーとの対決の時を迎える。
とにかくこの映画を一流にしたのは、リー・ヴァン・クリーフの演ずるニヒルなガンマンの魅力によって支えられたところと、ジュリアーノ・ジェンマの演ずる人間としての姿の交錯がみごとであったところによる。
娯楽作であるからこそ、銃撃戦や決闘シーンなどの見せ所は十分に盛り込んでいるし、一方単なる殺しの映像で無く、珍しく残虐性は控えている。そして「ガンマン十戒」(下記参照)や「早撃ちの為の拳銃」という西部劇の面白みの本質にも迫っている。そして重要なことは、”人間としての大切さの部分”も忘れていないことだ。
更に映画としての展開も見事で、クライマックスへの運びも上手いし、又リズ・オルトラーニによる音楽が素晴らしい。躍動と哀愁とそして映像の盛り上がりを聴かせるのだ。
映画文芸作品と言われるモノとは相対するマカロニ・ウエスタンであったが、観る者は人間であるから、これはそこに差し込んでくる魅力があった傑作と言いたい。映画は所詮娯楽もの、仰々しく「文芸大作」なんて銘打たなくても、この映画のように娯楽に徹しながらも、キラっと光るモノがあると言うのが最も傑作・名作と私は思うのである。
最後に、ここに登場する如何にも西部劇と言う「ガンマン十戒」をここに記す。
(教訓の一) 決して他人にものを頼むな( Never beg another man.)
(教訓の二) 決して他人を信用するな( Never trust anyone.)
(教訓の三) 決して銃と標的の間に立つな( Never get between a gun and its target.)
(教訓の四) パンチは弾と同じだ、最初の一発で勝負が決まる( A punch is like a bullet. If You don't make the first one count good.)
(教訓の五) 傷を負わせたら殺せ!見逃せば自分が殺される(You wound a man, You'd better kill him. Because sooner or later, he's gonna kill You.)
(教訓の六) 危険な時ほどよく狙え( Right put it, right time, well aimed.)
(教訓の七) 縄を解く前には武器を取り上げろ( Gonna untie a man, take his gun before then.)
(教訓の八) 相手には必要な弾しか渡すな(Don't give a man any more bullet, You know he's gun use for.)
(教訓の九) 挑戦されたら逃げるな、全てを失う事になる( Every time You have exact challenge, You lose everything in life, anyway.)
(教訓の十) 殺しは覚えたらやめられない(When You start killing, You can't stop it.)
(視聴1)
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