メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasioの問題作「BLACKENED CITIES」
ロック、ソウルからの発展型?=異色の女性ヴォーカル・ジャズ
<Soul, Jazz, Alternative Rock>
Melanie De Biasio「BLACKENED CITIES」
Play It Again Sam / UK / PIASLO-50CD / 2016
(Tracklist)
M1.Blackened Cities 24:14
ベルギーの異色の個性派女性ジャズ・シンガーのメラニー・デ・ビアシオ。彼女の最新作3rdアルバムだ(このアルバムは約25分の1曲のみ)。
これを取りあげたいために、先日彼女の前作2ndアルバム(2014年『ノー・ディールNo Deal』((参考) ”Melanie De Biasio「No Deal」” ))を紹介した訳だが、この3rdアルバム『BLACKENED CITIES』は、更に負けず劣らずの衝撃の問題作である。私にとっては今年の注目作の最右翼。
このアルバム(というかこの曲)は、明らかに社会派の作品とみれる。まずジャケからみても暖かさの感じられない工業都市のモノクロ写真。真っ黒な雲の合間からさす逆光によって浮き出る工業建造物の影は印象深い。そこに果たして人間の世界はどのように構築されているのか?、そして人間性の回復は得られたのか?、まずそんなテーマを感ずるアルバム・ジャケなのだ。
この”Blackened Cities”という作品、”黒ずんだ工業都市”ということなのだろうが、メラニーが18歳までに過ごした事のある街、マンチェスター(英国)、デトロイト(米国)、バルバオ(スペイン)そして地元でもあるシャルルロワ(ベルギー)などの脱工業地域の街の風景から、インスピレーションを得て完成させたものだという。
曲は深く暗く静かにして荒涼たる世界を聴く者に描かせるところから始まり、メラニーの美しい中・低音の訴えかけるようなヴォーカルが静かにスタートする。繰り返し歌え上げる”goldjunkies”という言葉が焼き付けられる。
明らかに、「黒ずんだ工業都市」にうごめいてきた人達の生活は・・・・・そこにはこの曲が描くところにみるとおり”明るさ”というものは感じとれない。彼女はこの曲によってこのような都市の再生を期して歌うのであろうか?・・・それに関しては、今聴いている私には解らない。
前作『ノー・ディール』とはテーマは異なるところであろうが、その暗さはやはり共通している。しかしそこに響くメラニーの歌声が、妙に暖かく美しく心に響いてくるのである。
このアルバム製作に当たっては、メラニー自身の発想と曲づくりから行われているが、ブリュッセル王立音楽院で出会ったバンド・メンバーや気の知れたアーティスト達と本作を作り上げようだ(←参照)。
Melanie De Biasio : Voice, Flute
Pascal Mohy - Piano
Sam Gerstmans - Double Bass
Dre Pallemaerts - Drums
Pascal Paulus - Synth, Backing Vocals
Bart Vincent - Backing Vocals
メラニー・デ・ビアシオは、1978年7月12日、ベルギーのCharleroiに生まれ38歳、フルート奏者にしてコンポーザー。紹介は前回アーティクルを見てもらうことで省略するが、彼女のアルバムは既に世界的に評価が高く、2015年度「ヨーロピアン・ボーダーブレーカーズ(EBBA)賞」を受賞している。
コンセプティブな発想が盛り込まれていることや、その曲のタイプからも、Jazz分野から見ればContemporary Jazz、 Crossover Jazz、Club Jazz、 Experimental Ambientと言えるのか、一方Rock側からも、Alternative Rock として評価されたりで、一種のProgressive Rockとも言えるところにある。こんなところからもおおよその彼女の世界が見えてくるところである。
とにかくJazz界からは、その曲の異色性からも関心度が高く、抜群の歌唱力と相まってクールにして、聴きようでは熱い心が感じられ、その矛盾した世界は高評価を持って注目されているわけだ。
ある紹介によると、彼女は、影響を受けたミュージシャンとしてNina Simone, Betty Davis, Abbey Lincoln, Betty Carter, Funkadelic, Billie Holiday,Siouxsie and The Banshees, Duke Ellington, Sly and The Family Stone, Delroy Washington, burning spearなどの名が挙げられている。
取り敢えずの評価としては、私が興味を持った前作『No Deal』を彼女のアルバムとしては、お勧めだ。
(視聴) ”Blackened Cities”
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