メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasioの1st「a stomach is burning」
ブルーな世界、憂鬱なる哀愁によって描かれる「メラニーの奥深い心情の世界」
<Contemporary Jazz, Soul>
Melanie De Biasio 「a stomach is burning」
Igloo / EU / IGL193 / 2007
<a atomach is burning> was a "3 days live session"recorded and mixed in Dec.2006 at Igloo Studio by Daniel Léon
MELANIE DE BIASIO (vocal)
PASCAL MOHY (P)
PASCAL PAULUS (HAMMOND他)
TEUN VERBRUGGEN (DS)
AXEL GILAIN (B)
FEAT.STEVE HOUBEN (SAX,FL)
ベルギーの個性的異色女性シンガーのメラニー・デ・ビアシオは、有能なコンポーザーでもあり、どうも私の気になるところである。
その為なんとなくいろいろと知りたくなるのだが、その結果、この1stアルバムも、しばらく前に海外発注で手に入れてみたものである(今から9年前のリリースものであるのだが)。
そこで、このアルバムを考察してみたいのだが、彼女を取りあげるのはこれで3回目ということになってしまった。
彼女には自己名義のアルバムが3枚ある。その3枚を私の場合は、2nd『No Real』(2014)から聴いて、次に3rd『Blackened Cities』(2016)を、そしてその後この1st(2007)という順に聴いたんですが、異色性は1st<2nd<3rdの順にニューアルバムに従って濃くなり、この1stも異色ではあるが最も一般ジャズに近いアルバムだった。
このアルバムでも、彼女のヴォーカルは近代ジャズ演奏とともにその芸の域は深い。声の質も中低音に幅の広さがあり端麗ヴォイス、高音域はクリアーで快感。2ndで受けた印象通りのブルーな世界、憂鬱なる哀愁が漂っていて、しかしそこには彼女の不思議な魅力が溢れている。歌詞は英語であるが歌詞カードが無いため詳しくは知り得ていないが、ここには彼女の奥深い心情の世界が訴えられているのでは?と思うところ。
”a stomach is burning”という曲があり、アルバム・タイトルにもなっているのだが、”胃が焼ける”という意味なのか”欲望が燃える”との意味なのか?不明だ。
しかし既にこの1stから、独特な「メラニー・デ・ビアシオ世界」が築かれていてお見事。
(Tracklist)
1 DWON *
2 A STOMACH IS BURNING *
3 NEVER GONNA MAKE IT *
4 MY MAN'S GONE NOW *
5 BLUE
6 LET ME LOVE YOU *
7 THE LATEST LIGHT OF LOVE
8 CONVICTIONS *
9 ONE TIME *
10 LES HOMMES ENDORMIS
(*印 Comp. M. De Biasio)
曲は彼女自身の手によるものと、このアルバム・メンバーの曲が中心で、基本的にはオリジナル曲構成のアルバム(←)。
アメリカン・スウィング・ジャズの軽快にして気持ちを高揚させるものとは全く異なるところで、ジャズ形式も多彩で゛、ブルースあれば、ファンクそしてスウィングもみられる。
そのバック演奏は、全体にスローではあるがそこにあるスリリングな演奏によって緊張感たっぷりの陰影を描ききる。このあたりからも、かなり洗練されたバンド・メンバーであることが解るが、特にヴォーカルとのバランスにおいてもその締める位置も控えめではあるが、ジャズ演奏の質の高さは、クールな中に繊細な演奏を極め、キラリと光るものを感ずる。特にピアノ、サックスのジャズィーな競合は聴くに十分な味を堪能させる。そしてメラニーの物語調のバラード歌唱を支えるのだ。
いや~~、これも埋もらせては惜しい異色の名盤である。
(視聴)
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コメント
風呂井戸さんのブログは、いつも参考にさせて頂いています。前にも返信したことが1回ありましたが、今回のテーマは難しいなと思っており、コメントを入れることができませんでした。
私がメラニー・デ・ビアシオに最初に出会ったのは、「NO DEAL」の視聴からであり、この独特で深い精神性をついたアルバムは、聴くのは疲れるけど買わずにいることはできないという自分自身の本質的選択を迫る作品だと思います。人が生きるというのは、喜怒哀楽の経験値を通して自分の人格的欠点を補い、自分の思索世界と経験の均衡を図る営為だと思います。これは何を言っているのと問われれば、いろんな問題はあるけれども自分のできることには一定の限界があるし、自分が理想や理念と思う部分とは違うけれど、生きるためにどう辻褄合わせをするかということだと思っています。換言すれば、年齢的予定調和、年齢的成熟とも言えることですが、メラニーが指摘するのは本当に自分の使命感を出し切ったのかということであり、誰もがうーんとうなる部分ところを歌にしていると思います。
つまり、メラニーが投げかけるメッセージは、世代を超えて個々人の人間的使命感に訴えかけているような気がしています。人間にはいろいろな側面があるよね、生きていくためには自分に都合の良いことや楽になれることを中心にして他のことは忘れるようにするよね、それでいいの?という問いかけを、メラニーから情念的に投げかけられている気がします。若いときには、好きじゃないと無視することはできますが、一定の年齢や経験値を経ると無視することができなくなります。それをメラニーは音楽的メッセージで問いかけているように感じるわけです。
風呂井戸さんから最初のブログで誰か感想を聞かせてくださいという問いかけには、知っていながら答えることはできませんでした。しかし、Ⅰ作目に戻って理解しようとする風呂井戸さんには自分なりの解釈を申し上げないと失礼かなと思い、メラニーの自分なりの解釈を記してみました。メラニーは、聴く、理解するではなく、自分を含めて「人間って何」を考えさせる思想家として受け止める存在ではないかと思っています。
投稿: issy | 2016年9月 7日 (水) 23時45分
issyさん、お心のこもった熱いコメント有り難うございます。ただただ感動しております。
おっしゃるところの"メラニーが投げかけるメッセージは、世代を超えて個々人の人間的使命感に訴えかけているような気がしています"というところに一つの重要なポイントを感じます。そうでなかったら3rd「Blackened Cities」には向かわないでしょうね。
とにかく、issyさんの含蓄ある又人間に迫る感想に私の一つの納得を得ることが出来ました。有り難うございます。
彼女の一連のアルバムは、ジャズ・アルバム(これは単純にジャズ・アルバムとは言えそうも無いですが)では、このように社会と人間をテーマにしたコンセプトをもって作り上げたものとしては筆頭にありますね。昨年のMelody Gardotの「 CURRENCY of MAN」にも同様なところを感ずるところはありましたが・・・。
issyさん又よろしくお願いします。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2016年9月 8日 (木) 18時12分